ほうれん草は生で食べられるの?と疑問に思ったことがある方は多いのではないでしょうか。本記事ではほうれん草が生食できるのかどうか、下ごしらえの方法などと合わせて解説します。
ほうれん草の原産地はペルシア(現在のイラン)です。西方へは8世紀頃に中近東からヨーロッパへ伝わり、東方へはネパール経由で中国に伝わりました。日本では17世紀頃に渡来したと言われています。
現在日本の主な生産地は、埼玉県や群馬県、千葉県、茨城県などです。2019(令和元)年の全国のほうれん草の出荷量は18万4900トンで、埼玉県や群馬県、千葉県、茨城県産のほうれん草が全国の38%を占めています。
出典:「作況調査(野菜)」(農林水産省)
ほうれん草の旬は、一般的に冬と言われています。
一般的に言われる「旬」とは、野菜や果実が全国的に露地栽培でよく収穫され、味が美味しい時期を指します。露地栽培とは、ハウスなどの施設を使わず屋外の畑で栽培する方法のことです。
冬のほうれん草は色が濃く、甘味があるのが特徴です。ほうれん草は暑さに弱い野菜で、夏は高冷地やビニールハウスで栽培されます。そのため一年中市場に出回りますが、冬のほうれん草は夏のほうれん草の3倍ものビタミンCが含まれているなど、栄養価が高いと言われています。栄養価の高いほうれん草を美味しくいただくには冬が最適です。
ほうれん草には、カロテンやビタミンC、ビタミンB1、B2などのビタミン類や貧血予防などに効果があるといわれている葉酸(ビタミンB10)などの栄養素が含まれています。
ほうれん草に苦味やエグみがあるのはシュウ酸が含まれているためです。シュウ酸は栄養素というよりも老廃物で、えぐみや苦味を感じさせ料理の味を損ねるいわゆるアク(灰汁)となる成分です。たけのこや里芋などにも含まれていることで知られています。
シュウ酸のデメリットは苦味やエグミを感じさせて料理の味を損ねるだけではありません。シュウ酸は大量に摂取することで結石を作る原因になると言われています。そのため、ほうれん草をアク抜きせずに生で食べるのはおすすめできません。
シュウ酸は歯のカルシウムと結合する性質があるため、アク抜きをセずに生で食べると歯が微妙にキシむような感触になって後味が悪くなってしまうというデメリットもあります。
ほうれん草をより美味しく食べるためにはアク抜きは必要な工程であるといえます。
上述したようにほうれん草にはシュウ酸が含まれているので、下茹でをしてから食べるのが基本です。
シュウ酸は水溶性であるため、茹でこぼすなどの下処理を行うことで取り除くことができます。たけのこなどを下茹でしてから食べるのも同じ理由です。
下茹でをすることでシュウ酸を取り除き、苦味を抑えることができるので小さなお子様でも食べやすくなります。
サラダやスムージーにほうれん草を使いたいときは、サラダほうれん草がおすすめです。
サラダほうれん草はシュウ酸の含有量が少なくなるように品種改良されたほうれん草なので、生のままサラダにしたりスムージーにしても苦味やエグみを感じにくいです。サラダほうれん草にもほうれん草と同じくカロテンやビタミンCなどの栄養素が豊富に含まれているので、ほうれん草と同じようにしっかりと栄養を摂取することができます。
ただし、シュウ酸の含有量が少ないだけで全く含まれていないわけではありません。食べすぎは一般的なほうれん草と同じように結石の原因となるので注意しましょう。
生食でなければいいのか、つまり加熱さえすればいいのか、というとそうではありません。炒めたり、揚げたり、レンジ加熱ではあまりシュウ酸を取り除くことはできません。
上述したようにシュウ酸は水溶性なので「茹でる」または「水にさらす」ことが重要です。
炒めものをするときにはアク抜きをしてから炒めるとしんなりとした食感になってしまうためアク抜きをせずに炒める方も多くいますが、やはりシュウ酸は取り除いてから食べるのが良いです。シュウ酸は減らしたいけれど食感が損なわれるのは防ぎたい場合は、水にさらしてアク抜きをすると良いでしょう。それでは詳しいアク抜きの方法を解説していきます。
本記事ではアク抜きの方法を3通り紹介しますが、どの方法でも、先に切り込みを入れて洗う必要があります。
まず、ほうれん草の根に十字の切り込みを入れます。
ほうれん草は根の部分に最も砂や土がついています。そのため、根に十字の切り込みを入れて洗うことで根についている汚れを綺麗に落とすことができます。また、根は葉と比べて火が通りにくいですが、切り込みを入れておくことで火の通りが早くなるメリットもあります。
ひげ根がついている場合は、切り落としておきましょう。
根に切り込みを入れたら、ボウルに水をためてほうれん草を洗っていきます。
根本の汚れは落としにくいため、水に浸けながら根本を開いて間に入り込んでいる土や砂を綺麗に落としましょう。根本の汚れが落とせたら、茎と葉を流水でふり洗いして汚れを落とします。
ほうれん草の汚れを落としたら、鍋にたっぷりの湯を沸かして塩を加えます。塩の量の目安はお湯1リットルにつき小さじ1です。
塩を入れる理由は、変色を防ぐためです。ほうれん草の鮮やかな緑色は「クロロフィル」と呼ばれる色素によるものです。クロロフィルは熱に弱い成分であるため、茹でることで変色してしまうことがありますが、塩を加えることで色素が安定するため変色を防ぐことができます。
お湯が沸いたら、数株手にとり葉の部分をもって茎の部分を鍋に入れそのまま30秒ほど茹でます。いっぺんにたくさんの量を入れてしまうとお湯の温度が下がり、再沸騰するまでに時間がかかるのでムラができてしまうことがあります。あまりいっぺんにたくさんの量を茹ですぎないようにしましょう。
茎を30秒ほど茹でたら、全体をお湯に入れて葉にも火を通していきます。茹で時間の目安は20秒〜30秒ほどで、葉が鮮やかな緑色になったらOKです。上述したように、長く茹ですぎてしまうとビタミン類などの水溶性の栄養素も流出してしまうため注意しましょう。
ほうれん草を茹でたら、ザルなどにあげてお湯を捨て冷水にさらします。冷水にさらすことでさらにしっかりとシュウ酸を落とすことができますし、変色を防ぎきれいな色を保つことができます。
冷水にさらしたら、ほうれん草の根本を上にしても持ち、上から下へ握る位置をずらしながら水気を絞りましょう。食べやすい大きさ(4cm〜5cm)に切ってからさらに水気を絞ると、調味料が馴染みやすくなります。
下茹でせずに、簡単に水につけるだけの方法もあります。炒めものにするときなど食感を残したい場合は、こちらの方法がおすすめです。
シュウ酸は水溶性なので水につけるだけでもある程度シュウ酸を取り除くことができます。近年販売されているほうれん草は、アクが弱いものも多いので水につけるだけでも苦味やエグみを感じにくくなります。
水につけてアク抜きする場合は、一本ずつバラバラにしてから下半分を約10分程度水につけておくと良いです。水につける時間が長いと水溶性の栄養素も流出してしまいやすいので長時間つけすぎないようにしましょう。
茹でこぼすのと比較してしっかりと取り除けるというわけではありません。そのためカットすることで水に触れる面積を広げ、シュウ酸が溶け出しやすくなるようにするという方法もあります。ただし、カットしてしまうと切り口からビタミンCなどの水溶性の栄養素も溶け出してしまうというデメリットがあります。バラバラにして水につけるのが良いでしょう。
近年販売されているほうれん草は、アクが弱いものが多いためレンジを使ってアク抜きをしても苦味やえぐみを感じにくくなります。茹でたり水にさらすよりも水溶性の栄養素を残すことができるため、栄養価を下げたくない方や食感を残したい方はレンジを使うと良いでしょう。
レンジを使う場合は、ほうれん草を綺麗に洗ったら、根本を揃えて丸ごとラップに包んでレンジに入れ加熱します。加熱時間はレンジのワット数にもよりますが600Wのレンジの場合、3分程です。
ラップに包む量は200gほどに抑えると良いです。あまり量が多いと加熱ムラができてしまうので注意しましょう。
ほうれん草を加熱したら菜箸やトングを使って取り出し、ラップに包んだままの状態で冷水にさらします。ある程度粗熱がとれたら、ラップを外してさらに冷水にさらします。冷水にさらすことで、ある程度シュウ酸を落とすことができます。長い時間水につけてしまうと水溶性の栄養素も流出してしまうので注意してください。
ほうれん草を生で食べるときは、シュウ酸の含有量が少ない「サラダほうれん草」がおすすめです。
Filyのレシピはすべて小麦粉・乳製品・白砂糖不使用です。
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