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里芋の芽は食べられる?処理方法は?食べる場合はアク抜きが必要?

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里芋の芽は食べられる?処理方法は?食べる場合はアク抜きが必要?

里芋を保存していたら芽が出てきたという経験がある方は多いのではないでしょうか。芽が生えてしまうと食べられるのかどうか心配になりますよね。実は里芋の芽には毒性はなく、食べることができます。本記事では里芋の芽について詳しく解説します。

里芋の芽は食べて大丈夫?

里芋の芽の正体は葉柄

里芋は保存しているとじゃがいもと同じように芽が出てくることがあります。

普段私達が食べている部分は、里芋の「根」だと思われがちですが、実は「塊茎(かいけい)」(茎の地下部)と呼ばれるでんぷんなどを蓄積し変形した茎の部分です。そのため里芋から出てくるのは、厳密には「芽」ではなく「葉柄(ようへい)」と呼ばれる葉を支える柄の部分です。

出典:東京都福祉保健局

里芋の芽に毒性はない

里芋から芽(葉柄)が生えてきたら、食べられないのではと不安になる方も多いと思いますが、里芋の芽は毒性がないため、芽が生えた里芋も食べることができますし、里芋の芽も食べることができます。

ご存知の方も多いと思いますが、じゃがいもの芽の場合はソラニンやチャコニンといった天然毒素が含まれているため注意が必要です。食べてしまうと吐き気や腹痛といった中毒症状が起こる可能性があります。じゃがいもの芽はもちろんのこと、芽元にもソラニンやチャコニンが含まれていることがあるので芽元からしっかりと取り除いてから食べましょう。

ちなみに、玉ねぎの芽も里芋と同じように毒性はないため芽が生えた玉ねぎも食べることができます。じゃがいもの芽に毒性があることから、芽が生えた=食べられないと認識している方も多いですが必ずしも食べられないわけではないということを覚えておくと良いです。

栄養素が含まれる

里芋の芽は毒性がないどころか多くの栄養素が含まれています。

里芋の芽100gあたりに含まれている栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…0.5g

  • 脂質…0g

  • 炭水化物…4.1g

  • 食物繊維…1.6g

  • ビタミンA…110μg

  • ビタミンE…0.5g

  • ビタミンK…9μg

  • ビタミンB1…0.01mg

  • ビタミンB2…0.02mg

  • ナイアシン…0.2g

  • ビタミンB6…0.03mg

  • ビタミンC…5mg

  • 葉酸…14μg

  • パントテン酸…0.28mg

  • ナトリウム…1g

  • カリウム…390mg

  • カルシウム…80g

  • マグネシウム…6mg

  • リン…13mg

  • 鉄…0.1mg

  • 亜鉛…1g

  • 銅…0.03mg

  • マンガン…2.24mg

三大栄養素と言われるたんぱく質や脂質、炭水化物の含有量はそれほど多くないものの、ビタミン類やカリウムやカルシウムといったミネラル類も含まれています。

出典:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(文部科学省)

里芋の芽の色の違い

里芋から生える芽には赤色・緑色・白色の3種類あります。主に食用として食べられているのは赤色と白色の芽です。

赤色(赤がら)

里芋から生える赤い色の芽は「赤がら」と呼ばれます。赤色の芽はアク(灰汁)が少ないため、アク抜きの下処理をすれば美味しく食べることができます。アクとは、一般的に苦味やえぐみ、渋みなどを感じさせ味を損ねる成分の総称です。

赤色の芽は八ツ頭や唐の芋、セレベス、海老芋などの品種から出ます。

白色

里芋から生える白い芽も赤い芽と同じようにアクが少ないため、下処理をすれば美味しく食べることができます。

ちなみに、赤色の芽が出る里芋は、きめ細やかでほっくりとしていて柔らかく煮崩れしやすいという特徴がありますが、白い芽が出る里芋には粘質で、ぬめりが多く煮崩れしにくいという特徴があります。

緑色(青がら)

里芋から生える緑色の芽は「青がら」と呼ばれます。緑色の芽はアクが強いため、アク抜きの下処理をしても苦味やエグみが残るため食用には向きません。

里芋の芽の強い苦味やエグミはシュウ酸によるものです。シュウ酸はほうれん草やたけのこなどにも含まれている成分です。ほうれん草などのシュウ酸は水に溶けるカリウム塩やナトリウム塩の形で液胞という袋の中に閉じこめられていますが、植物によってはシュウ酸カルシウムの結晶となって液胞の中に含まれています。里芋にはシュウ酸カルシウムが針状結晶となっています。そのため、食べると喉にイガイガとした不快感を与えます。

里芋の芽が出たら?

塊茎(実)から切り取る

里芋から芽が出てきたら普段里芋として食べている塊茎(実)から切り取ります。

芽が生えた状態で放置してしまうと、塊茎の栄養素がどんどん吸い取られて栄養価が下がってしまったり、スカスカになってしまいます。

里芋を長く保存したい場合は芽が出たら伸びすぎないうちに切り取っておきましょう。

里芋の芽は植えると

元々里芋を栽培する際は、芽が出ている里芋(種芋)を植えつけます。そのため、芽が出た里芋は土に植えると種芋となり育ちます。里芋は乾燥と寒さに弱い野菜ですので、そのまま育てる場合は乾燥する時期には特に注意して水を与え、冬は霜が降りる前に収穫すると良いです。

里芋は親いもから子いもができ、それに孫いも、さらにひこいもが生じる珍しい増え方をします。このため子孫繁栄の象徴として、正月料理をはじめ、年中行事には欠かせないものとされています。

里芋の芽の名称

ズイキ

里芋の芽は「芋茎(ズイキ)」と呼ばれます。

ズイキと呼ぶようになった由来は、里芋槐根の髄(ずい)から出た茎という意味で「髄茎(ずいくき)」と呼んでいたのが略されて「ずいき」になったという説や、もぎとるときに「ズイっ」と音がすることから「ズイキ」と呼ばれるようになったなど諸説あります。

ズイキの歴史は古く、「東大寺正倉院文書」にズイキが利用されていたことが記載されているため天平時代には食べられていたと考えられます。特に水田が多くあった奈良盆地では、古くから良質な里芋が生産されており、ずいきも日常的に食されていたと言われています。

根芋

秋に収穫した里芋の親芋をおがくずなどに埋めて、そこから出てきた芽を日が当たらないように育てて収穫した白い芽を「根芋(ねいも)」と言います。生産量が少ないため、市場に出回ることはあまりありませんが、主に料亭などで使われます。

根芋も里芋の芽なので、アクが強いことで知られています。生食には向きませんが、アク抜きの下処理をしてから調理するとシャキシャキとした食感を楽しむことができます。

イモガラ

里芋の芽(ズイキ)の皮を剥いて天日干しして乾燥させたものを「イモガラ」と言います。地域によっては乾燥させた里芋の芽も「ズイキ」と呼ぶことがありますし、「干しずいき」や「割菜(わりな)」と呼ぶこともあります。

元々保存食として里芋の芽を乾燥させたのがはじまりで、常備菜として主に活用されています。調理をする際は水で戻してから使い、炒めものなど幅広い料理に使用されます。

里芋の芽の食べ方・調理法

アク抜きが必須

カットした里芋を茹でてアク抜き

里芋にはシュウ酸が含まれるので下茹でが推奨されますが、芽も同じくシュウ酸が含まれているため里芋そのものと同じく生食はできません。里芋の芽を食べる際は必ずアク抜きをします。

上述したようにアク抜きをせずに調理をすると、シュウ酸カルシウムの結晶が喉にチクチクとした不快感を与えます。

アク抜きの方法としては下茹でがおすすめです。酢水につけてアク抜きをするという方法もありますが、酢水に30分〜1時間つけておく必要があるため時間がかかるのと、完全にはアクを落とすことができないというデメリットがあります。

天ぷら・炒め物が一番おすすめ

里芋の芽は、天ぷらや炒めものにして食べるのがおすすめです。

里芋の芽を天ぷらにすると、里芋の芽の優しい甘みとシャキシャキとした食感と衣のサクサクとした食感が楽しめる一品になります。また、里芋の芽は油との相性が抜群なので炒めものにもぴったりです。

調理をする際は下処理をした後にしっかりと水気を切ってから使うようにしましょう。

煮物

里芋の芽は煮物にして食べられることが多いです。皮を剥いて油揚げなどと一緒に煮ると良いです。里芋の芽は味が染み込みやすいため、煮物にする際は他の具材に火が通り味が染み込んだ後に入れれば大丈夫です。

そのまま

里芋の芽を生で食べることはできませんが、下茹でをしたらそのまま食べることができます。煮物にするなどの調理をしないで食べることにより、里芋の芽そのものの味を楽しめます。

味噌などの調味料をつけて食べても美味しいですし、刺身のつまと一緒に千切りにして食べるのもおすすめです。

芽が出ない里芋の保存方法

芽は食べられないものではありませんが、実の栄養を使って生長するため、実をおいしくいただく上では生えないにこしたことはありません。

そこで最後に、里芋の正しい保存方法をご紹介します。里芋は常温・冷蔵・冷凍・乾燥と様々な方法で保存することができます。里芋の詳しい保存方法についてはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

常温保存

新聞紙を被せて常温保存する里芋

里芋は泥がついた状態で(泥が洗い流されている場合はしっかり乾燥させてから)1個ずつ新聞紙で包みます。新聞紙がない場合はキッチンペーパーでもOKです。新聞紙やキッチンペーパーが里芋を乾燥から守り、かつ湿気を吸収する役割を果たしてくれます。

里芋を紙袋に入れ、口を軽く折って常温で保存します。紙袋の方が風通しがよく、湿度を吸収するため常温での保存には◎。ポリ袋などは風を通しにくいので、水分が溜まって傷みの原因になりかねませんので避けましょう。

里芋を大量にまとめて購入した場合は、ダンボールに入れて常温します。ダンボールの底に新聞紙を敷き、その上に里芋を並べ、里芋の上から新聞紙を被せます。新聞紙で里芋を挟むことで乾燥を防ぎ、湿度を吸収することが期待できます。

冷蔵保存

1個ずつキッチンペーパーに包んでポリ袋に入れた里芋

冷蔵保存時は、低温障害を防ぐために里芋を1個ずつ新聞紙もしくはキッチンペーパーに包みます。ポリ袋に入れて口を軽く閉じ、野菜室で保存します。

泥が洗い流されている里芋を冷蔵保存する際は、水分が残っていることで里芋が傷みやすくなるため、天日干しなどをして表面をよく乾かしてから保存するようにしましょう。

新聞紙やキッチンペーパーが湿ったら取り替えるようにしましょう。

皮を剥いた里芋は水に浸す

料理で使いきれなかった里芋は、水に浸して冷蔵保存します。

皮を剥いた里芋を3〜5分ほど酢水につけ変色を防ぎます。密封保存容器に里芋を入れ、かぶるくらいの水を加えて蓋をして冷蔵保存します。

皮を剥いた里芋は傷みが早いので、2〜3日を目安に食べきるようにしましょう。

冷凍保存

里芋を皮付きのまま丸ごと冷凍保存する

一番手軽な冷凍保存の方法は、皮付きのまま丸ごと冷凍する方法です。泥を洗い流し、キッチンペーパーで水けをしっかりと拭き取ります。1個ずつ(小さい里芋は2〜3個ずつ)ラップで包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫で保存します。ラップで包むことで霜がつくのを防ぎ、また解凍時にそのまま電子レンジで加熱することが可能です。

冷凍する前に皮を剥いた方が、調理時すぐに使えて便利です。下ごしらえする時間がある場合は、里芋の皮を剥いて軽く塩もみしぬめりを取って水洗いし、キッチンペーパーで水けを取ってから冷凍用保存袋に入れて冷凍します。

丸ごと冷凍する際は、凍るまでに時間がかかってしまうので、冷蔵庫の急速冷凍機能を使ったり、金属トレイにのせて冷凍することをおすすめします。

丸ごと冷凍した里芋の解凍方法は主に2つです。ラップに包んだまま電子レンジで2分(600W)加熱します。皮を剥く場合は、ラップから取り出し水に2〜3分ほど浸け、皮が柔らかくなったら手で剥きます。流水に当てながらだと、簡単に皮を剥くことができます。

カットしてから冷凍保存する里芋

皮を剥いた里芋をカットしてから冷凍保存する方法もあります。料理に合わせてお好みの大きさにカットして保存します。

皮を剥いた里芋を軽く塩もみし、水洗いをします。キッチンペーパーで水けを拭き取り、輪切りなど料理に合わせてカットし、冷凍用保存袋に並べて保存します。輪切り以外には乱切りや半月切り、六方むきなどがあります。

カットして冷凍したのを煮物などに使う場合は、解凍せず凍ったまま使用します。急ぎの場合は電子レンジを使って解凍してもOKです。