1. Fily
  2. Food
  3. Encyclopedia
  4. 大根の部位別の栄養素を解説。葉と根でもはや別の野菜?

大根の部位別の栄養素を解説。葉と根でもはや別の野菜?

公開日

更新日

大根の部位別の栄養素を解説。葉と根でもはや別の野菜?

大根の部位別の栄養素を解説していきます。

大根は部位によって栄養素が違う!

普段、わたしたちが食べているのは大根の根の部分です。この根の部分にも栄養は含まれていますが、実は大根は根よりも葉の方が栄養価が高いです。さらに含まれている栄養も違うので、どちらも料理に使うといいでしょう。また、大根の根も部位によって多く含まれる栄養素が変わります。

大根の部位別の重さについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

大根の根の栄養素・成分

大根の部位別の特徴を解説したイラスト

アリルイソチオシアネート(先端に多い)

大根の先端(下部)に多く含まれるアリルイソチオシアネートは、辛み成分のひとつであるイソチオシアネートの一種です。アリルイソチオシアネートは大根やキャベツなどのアブラナ科の野菜に含まれています。また、苦味の原因にもなりますが、有害なわけではありません。

アブラナ科の野菜に多く含まれており、ツンとすることが多いです。アリルイソチオシアネートには、抗酸化作用があります。抗アレルギー効果もあると言われているので、花粉症予防の効果も期待できます。さらに、胃液の分泌を促し、腸の働きを助けます。

大根をすりおろすことで起きる化学反応でも生じるため、大根おろしは辛みが強くなり、これは抗酸化作用が強くなっている証拠です。

糖類(首部に多い)

大根には糖類が含まれます。大根の根の糖類はブドウ糖が多く、次に果糖が多くなっています。ショ糖は少ないです。

ブドウ糖は自然界で最も多く存在する単糖類で、動植物が活動するためのエネルギーです。また、脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質であり欠かせない糖質です。果糖はフルーツや根菜に多く含まれている糖の一種です。ショ糖はサトウキビなど様々な植物によって合成される二糖類で、ショ糖を主体とした工業的製品を総称して「砂糖」と呼ばれています。

消化酵素

  • アミラーゼ(別名ジアスターゼ)

  • プロテアーゼ

  • グリコシダーゼ

  • アミダーゼ

  • オキシダーゼ

  • カタラーゼ

  • ベルオキシダーゼ

などの消化酵素が含まれています。

たとえばアミラーゼはでんぷんを分解する酵素で、食べ物の消化をサポートし、さらに胸焼けや胃もたれを防ぐ効果があります。大根のアミラーゼはpH5.2〜5.8(酸性)、60〜65℃のときが最も活性が強くなっています。浅漬けのように短期保存では活性がありますが、たくあん漬けにはありません。

また、大根をすりおろした方が消化酵素は作用しやすくなります。そのため古くから大根はすりおろして食べられています。

消化酵素が大根の根のどの部位に多いかというデータはありません。

カリウム

カリウムはミネラルの一種です。

カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。

そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。

食物繊維

食物繊維もそこまで多くはありませんが、大根はたくさん食べられることを考慮すると、食物繊維の大切な供給源といえます。また、大根の食物繊維は不溶性食物繊維の方が多いですが水溶性食物繊維も含まれています。

不溶性食物繊維は液体に溶解しない性質を持っており、不溶性食物繊維は水分を吸って腸の中で大きく膨らみ、排便をスムーズにし、有害物質が体にとどまる時間を短縮させ、便秘の予防・改善、腸内環境を整えます。水溶性食物繊維は水に溶解する性質を持っており、水溶性食物繊維は水に溶けるととろとろ・ネバネバして糖質の消化や吸収を穏やかにする作用があります。

大根の葉の栄養素・成分

大根の葉と根は栄養面では ”違う野菜” といえるほど含まれる栄養素に違いがあります。

大根の葉の栄養素・成分について解説します。

β-カロテン

大根の根には全く含まれていないβ-カロテンが、葉にはほうれん草と同じくらい豊富に含まれています。

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます

ビタミンC

ビタミンCは根にも含まれていますが、葉の含有量は根の2倍以上です。

ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。

そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。

ビタミンE

ビタミンA・C・Eはその文字から「ビタミンエース」と呼ばれ、抗酸化3大ビタミンです。活性酸素に抗酸化作用を発揮して、細菌やウイルスの体内侵入を防いでいます。また錆びついた細胞の修復も助ける、素晴らしい栄養素です。その3つが大根には含まれています。

ビタミンEは強力な抗酸化作用があります。体内の脂質が酸化するのを抑え、老化の予防をしてくれます。ビタミンEは血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑える働きがあり、酸化によって進行してしまう動脈硬化の予防に役立ちます。

さらにビタミンEは末梢血管の拡張させる働きがあるため、血行促進に繋がります。また副腎や卵巣の性ホルモンの分泌の調整にもビタミンEは関与しているので、生殖機能の維持にも役立ちます。

ビタミンK

大根の葉のビタミンKはほうれん草と同じくらい豊富に含まれています。

ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経による出血が多い場合も、症状を軽減する効果が期待できます。

さらに、ビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれるので、ビタミンDと並び健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。

カルシウム

大根の葉のカルシウムは、なんとほうれん草と比較して5.3倍も含まれています。

体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨の代謝に関わり骨の健康を保っています。

残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉、細胞内などに存在し、大切な情報の伝達を行っています。それによって筋肉のなめらかな動きをサポートしたり、精神を安定させたりします。

カルシウムが不足すると、骨が弱くなったりこむら返りを起こすことがあります。特に野菜などのカルシウムは吸収率が低いため、ビタミンKなどカルシウムの吸収を助ける栄養素と一緒に摂取するといいでしょう。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

大根の効果的な調理法

根は生で

アリルイソチオシアネートや、消化酵素であるアミラーゼは加熱すると減少してしまいます。またカリウムが水溶性なので茹でると水に溶け出してしまいます。せっかくの成分が減ってしまうのはもったいないですよね。なので、根の部分は生で食べると栄養素をしっかりと摂取することができます。サラダや大根おろしにするといいでしょう。また、熱を通す場合は汁ごといただけるスープになどがおすすめです。

葉は油と一緒に

葉の部分には脂溶性であるビタミンA(β-カロテン)やビタミンE、ビタミンKが含まれています。これらは油と一緒に摂ることで吸収率が上がります。そのため油炒めや良質な油を使ったドレッシングで油と一緒に食べる調理法がいいでしょう。

大根の食べ合わせ

たんぱく質と一緒に

ビタミンCはたんぱく質がコラーゲンになるのに必要不可欠な栄養素です。ご存知の方も多いかと思いますが、コラーゲンには美肌効果が期待されています。筋肉の発達にも貢献しますので、痩せやすい体作りにも効果が見込めます。たんぱく質が豊富な食材は鶏肉や卵などです。

ビタミンDと一緒に

葉の部分にはカルシウムも含まれているので、ビタミンDを多く含む食材と一緒に摂ると骨が鍛えられます。これは、ビタミンDが腸でのカルシウム吸収を促進させるからです。

ちなみにビタミンDを多く含む食材は魚類です。また肉類やきのこ類にも含まれています。魚の中でもまいわしや鮭、さんまに多く含まれています。

からみもちは理にかなった食べ方

おもちに大根おろしをかけて食べるからみもちがありますが、実はこれ栄養学的にとても理にかなっています。大根に含まれるアミラーゼが、おもちのデンプンを分解してくれるんです。デンプンはそのままでは体内に吸収できないので、糖に分解する必要があるのですが、それをアミラーゼが助けてくれるわけです。消化液のひとつである唾液にも含まれています。