黒にんにくとは、通常の白いにんにくを高温多湿の環境で1ヶ月ほど熟成させたものです。味やにおいが白にんにくよりもマイルドになり、栄養価も大幅にアップするスーパーフードです。この記事では、黒にんにくと通常の白いにんにくの違いを詳しく解説しています。
黒にんにくと白にんにくの最大の違いの一つは見た目です。
黒にんにくは、名の通り色が黒くなっています。皮は茶色っぽいものが多く、熟成させているため白にんにくよりも皮が乾燥しています。実(鱗片)は黒く、熟成日数によって白→茶→黒と色が変化していきます。
白にんにくも、名の通り見た目が白いです。一般に市販されているにんにくの皮は白いですが、品種によっては薄皮が紫やピンク色をなしているものもあります。皮を剥くと実(鱗片)は淡い黄色っぽい色をなしています。
黒にんにくは、白にんにくを特別な方法で熟成させて作られています。最初から黒いにんにくができるわけではありません。そのため「黒にんにくの種(苗)」は存在しません。
黒にんにくの熟成方法は生産者によって若干異なりますが、一定の温度と湿度(高温多湿)が保たれた環境で1ヶ月ほどの時間をかけて熟成させるのが主な作り方です。生産者によっては特殊な液に浸けたり、独自の遠赤外線を使って熟成させることもあるようです。
白いにんにくは、収穫後すぐに出荷されるのではなく、保存性を高めるために一定期間乾燥させてから出荷されます。
黒にんにくはよく、発酵して黒くなると言われていますが、発酵してるわけではありません。にんにくが黒くなるのは「メイラード反応」によるものです。
メイラード反応は「褐変(かっぺん)」とも言われ、調理や加工、貯蔵などによって食品が黄褐色(茶色)に着色する現象を指します。具体的には、食品中のアミノ酸と還元糖が反応してメラノイジンと呼ばれる褐変の物質ができます。例えば、パンや玉ねぎを加熱すると表面がこんがりとしたきつね色になるのもメイラード反応によるものです。
黒にんにくが作られる過程で、にんにくに含まれる糖質とアミノ化合物(アミノ酸、タンパク質)が反応することにより黒くなります。熟成期間は約1ヶ月ですが、時間の経過とともに白→薄い茶→濃い茶→黒と色が変化していきます。
国内の主なにんにくの生産地は青森県です。国内で栽培されるにんにくの内、約70%は青森県産です。青森県以外では、北海道、香川県などでも栽培されています。令和3年度の都道府県別の収穫量を見ると、青森県で13,500トン、北海道で898トン、香川県で751トンでした。
黒にんにくの発祥地は三重県と言われています。2004年頃に偶然誕生したそうです。今では三重県以外の様々な場所でも黒にんにくは作られています。
出典:
黒にんにくの見た目から、味やにおいに対していい印象を持っていない方も多いかもしれません。しかし、熟成させた黒にんにくのにおいは意外にも弱く、実(鱗片)はドライフルーツのような甘みがあります。
白いにんにくは、にんにく特有のにおいが強いですが、黒にんにくは熟成させることでにんにくのにおいがほとんどなくなります。全くしなくなるというわけではありませんが、食べる時にほんのり香る程度です。
また、白いにんにくは生で食べようとすると苦みが強く感じられますが、熟成させたにんにくはドライプルーンのような甘い味がします。熟成させるため食感も柔らかくなり、生食でも美味しくいただくことができます。
にんにくが苦手な方も、黒にんにくなら食べやすいと言われています。
にんにくは熟成させることで様々な栄養成分が増加します。特筆すべき栄養成分とその特徴を下記で詳しくご紹介します。
S−アリル−システインは、にんにくが熟成されることで生成される成分で、略して「SAC」とも言われます。アミノ酸の一種ですが、にんにくにしか含まれない成分です。生のにんにくには少量しか含まれておらず、黒にんにくには白にんにくのなんと約16倍もの量が含まれていることがわかっています。
S−アリルシステインには、強い抗酸化作用があると言われています。具体的には、疲労回復や生活習慣病予防、血行促進、美容効果などが期待できます。最近では、認知症予防も期待できることがわかってきました。
にんにくには元々様々な種類のアミノ酸が含まれていますが、熟成させることによりその含有量がアップします。特に、アルギニン(下記参照)やアスパラギン酸、チロリン、フェニルアラニン、アラニンなどは通常の白にんにくと比べて2〜7倍も含有量が増えます。
黒にんにくのアルギニンの含有量は、白にんにくの約3倍になると言われています。
アルギニンはアミノ酸の一種で、人間の「活力」に大きく関わっている成分です。具体的には、コラーゲン生成促進や免疫反応活性化、免疫力向上、血管の老化防止、疲労回復などがあると言われています。
黒にんにくには、通常の白いにんにくと比べて5〜10倍(皮も含めて)も含まれています。その含有量は、野菜の中でもトップクラスと言われています。
ポリフェノールには、強い抗酸化作用があると言われています。具体的には、疲労回復や生活習慣病予防、風邪予防、アレルギー改善、高血圧改善、動脈硬化改善などの効果があります。
ポリフェノールとは?
光合成によってできる色素や苦み、渋みの成分で、自然界に5,000種類以上もあるといわれています。例えば、ブルーベリーのアントシアニン、お茶カテキン、大豆のイソフラボンなどは全てポリフェノールの一種です。ポリフェノールには強い抗酸化作用があり、美容生活習慣の予防などに効果的と言われています。
上記でご紹介した栄養成分以外にも、黒にんにくにはタンパク質やミネラル、ビタミンなども豊富に含まれています。
アリシンは硫化アリル類の一種で、にんにくの辛味や臭気の主成分です。にんにくを熟成させることにより、アリシンの量が大幅に減るため、黒にんにくはにんにく特有のにおいや辛味が感じにくくなります。
アリシンには様々な健康効果がある一方で、腹痛や下痢などの症状を引き起こす原因ともなります。健康効果の観点から見ると白にんにくの方が優れていますが、食べやすさや体への負担の観点から見ると黒にんにくの方が優れていると言えます。
黒にんにくは熟成させて生のまま食べることが多いです。にんにくを生のまま食べることに抵抗を感じる方は多いと思いますが、上述の通り、黒にんにくは白いにんにくと比較してすごく食べやすいです。生のまま刻んでサラダやドレッシングに加えたり、そのままデザート感覚で食べるのも◎。もちろん炒めものなどの加熱料理に加えて使うこともできます。ちなみに、黒にんにくの皮にもポリフェノールが豊富に含まれていますので、煎じて黒にんにく茶として飲むのもおすすめです。
一方で白にんにくは、生食するには辛かったり、苦みを感じることもあります。香りも強いため、加熱調理に使用することが多いです。もちろん生のままでも食べることができますが、一度に大量に食べると腹痛や胃痛、下痢などを引き起こす可能性があるため、1日1〜2片が目安量と言われています。
黒にんにくも白にんにくも、基本的に保存方法は同じです。実(鱗片)の乾燥を防ぐために皮は剥かず、常温や冷蔵、冷凍などで保存します。
保存方法によって日持ちする日数が異なります。またにんにくは寒くなると発芽し始めるので、季節に応じて保存方法を変えるのもポイントです。
主な保存方法は下記の通りです。
常温保存・・・春・夏など暖かい季節は、ネットなどに入れて、風通しのよい冷暗所で吊るして保存(保存期間:1ヶ月)
冷蔵保存・・・秋や冬など寒い時期はペーパータオルで包み、ポリ袋に入れて軽く口を閉めて、チルド室で保存(保存期間:2ヶ月)
冷凍保存・・・薄皮を剥いて、丸ごと(もしくはカットして)小分けにしてラップに包み、冷凍用保存袋に入れて保存(保存期間:1ヶ月)
乾燥保存:天日干しやオーブン、電子レンジで乾燥させて密閉容器に入れ保存(保存期間:2ヶ月)
漬物保存:しょうゆ漬けやオリーブオイル漬け、黒酢漬けにして冷蔵庫で保存(保存期間:最長1年)
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