ステーキやペペロンチーノなど、様々な料理のアクセントとして使用されるにんにくは、実は生のままでも食べることが可能です。ただし、生食する場合は摂取量や食べるタイミングなどに気をつける必要があります。この記事では、生にんにくが持つ栄養素や効果、食べる際の注意点などを詳しく解説しています。
にんにくは、加熱料理の香り付けなどに使用される香味野菜ですが、生でも食べることができます。
市販ではチューブタイプの生にんにくがあるため、気軽に取り入れることができます。韓国料理では必ずといっていいほど使用されており、中国では料理の合い間に生のままかじることもあるそうです。
にんにくは上述したように生食することができる野菜であるため、にんにくをホイル焼きにする場合など、生焼けの状態で食べても問題ありません。
にんにくの生食が危険といわれることがあるのは、食中毒などの危険性があるためではありません。食べすぎてしまうことによって胃痛や腹痛が起こることもあるためです。
生食する場合の効果や1日の摂取目安量などは後述します。
にんにくの中には「生にんにく」という品種があります。これは「生で食べるにんにく」とは異なります。
生にんにくとは、収穫したばかりの新鮮なにんにくのことを指します。水分を多く含むためフレッシュな食感や風味を味わうことができます。収穫直後の生にんにくの糖度はなんと41.5度!メロンの糖度が約12〜18度なので、いかに糖度が高いかがわかります。生にんにくは収穫時期の初期にしか採れないため、生産地以外で出回ることはほとんどありません。
ちなみに一般に市販されているにんにくは「乾燥にんにく」で、長期保存を可能にするために収穫後乾燥させてから出荷されます。
にんにくにはネギの仲間特有のアリシンという成分が含まれます。
栄養素と呼ばれるのはたんぱく質と炭水化物、脂質の三大栄養素と、三大栄養素にビタミン類やミネラル類を追加した五大栄養素と呼ばれるものなので、厳密にいえばアリシンは栄養素ではありませんが、ビタミンB1を結合すると疲労回復効果があります。にんにくにはビタミンB1も含まれているので、「スタミナ野菜」として人気が高いと言えます。
にんにくの臭気と辛味は、主に揮発性のジアリルジスルフィドなどの硫化アリル類によるものですが、生のにんにくにはアミノ酸前駆体である「アリイン」として含まれます。また生にんにくの汁液には、アリインを分解する酵素の「アリイナーゼ」があり、アリイン+アナリーゼで生じるのがアリシンです。アリシンがさらに科学変化し、臭気と辛味の主成分であるジアリルジスルフィドが発生します。
生のにんにくを切ったりすりつぶすと、細胞が壊れてアリインの分解が急速となり、臭気の強いアリシンの生成が多くなります。
にんにくは、80℃以上の高温になると酵素が失活するため、酵素反応で生成されるアリシンが極端に少なくなり、辛味や強い臭気がなくなります。
また、にんにくが持つ効能の一つである殺菌作用もなくなってしまいますが、腸内細菌の作用でアリシンが生成されるため、加熱したにんにくでも殺菌作用は期待できます。
加熱にんにくで生成される成分にアホエンやスコルジニンなどがあります。
にんにくを加熱することで、「アリイン」が「アホエン」という成分に変化します。アホエンは、加熱した油を混ぜることで生成されます。アホエンには血行促進作用や酸化ストレス抑制作用、動脈硬化予防作用などの効果が期待できます。アホエンは60〜80℃の低温加熱によって生成され、揚げ物など高温調理では生成されません。
加熱にんにくから抽出されるスコルジニンには、新陳代謝活性作用や、食欲増進作用、血管拡張作用などの効果があると言われています。
にんにくに限らず、野菜は加熱することで失われたり一部が破壊されてしまう栄養素があるため、生の状態で食べた方が最も効率的に栄養素を摂取することができます。
にんにくの場合は加熱することでアリシンが生成されなくなってしまいますし、熱に弱いビタミンB1も失われてしまいます。また、水溶性のビタミンCは煮たりする過程で流失してしまいます。
しかし、上述してたように加熱することで生成される成分もあるため、加熱したにんにくの栄養価が低いというわけではありません。
加熱することで臭いや辛みが軽減されるメリットもあるので、臭いや辛みが気になる方は加熱して食べるのが良いでしょう。
市販されているにんにくは「乾燥にんにく」ですが、ここでは、天日干しなどでさらに乾燥させたにんにくを指します。
にんにくなどの野菜を天日干しすることで、下記の栄養価が増えると言われています。
ビタミンD
ビタミンB群
カルシウム
鉄分
ナイアシン
そのため、乾燥したにんにくも栄養価が高いと言えます。
生でも食べられるにんにくですが、食べる際は量や食べ方に注意する必要があります。
にんにくは生でも食べることができますが、食べ過ぎるのはNGです。強い刺激を持ちかつ殺菌作用のある香味野菜なので適量を大幅に超えた量を摂取すると、胃腸への刺激が強く粘膜を傷つけ、下痢や胃炎などを引き起こす恐れがあります。また、腸内の細菌のバランスが崩れてビタミンB6欠乏症になり、皮膚の炎症などの副作用が起こることも。さらに生のにんにくは臭気も強いため、食べ過ぎると口臭も強くなってしまいます。
にんにくの摂取上限は農林水産省や文部科学省などでも定められていませんが、生で食べる場合は1日1片〜2片を目安にしましょう。これよりも多く食べてしまうと、上述したように消化器官に悪影響を及ぼす可能性があります。あくまで目安ですが、まずは少量からスタートしてみて、体調に問題が起きないかどうかを確認しながら適量を定めましょう。
にんにくには強い殺菌・抗菌効果があります。1日の摂取目安量を守っていても、長時間に渡って食べ続けることで胃腸の動きを抑制してしまう恐れがあります。また、強い殺菌作用によって腸の善玉菌を殺してしまう危険性もあります。さらに、体臭や口臭の原因となっている成分は代謝されるまでに約16時間かかるとも言われており、新陳代謝が悪い人はより長い時間がかかることもあるため、長時間摂取は口臭や体臭がより長い時間きつくなってしまいます。
上述したように、生のにんにくは胃や腸を刺激してしまう特徴があるため、空腹時には食べない方がベターです。胃に何も入っていない状態だと、にんにくの成分の影響をダイレクトに受けて胃の粘膜だけでなく胃壁自体が荒れる原因となります。場合によっては胃痛や腹痛などの症状が出ることがありますので、生のにんにくを食べる際は、他の料理をまず始めに食べるように心がけましょう。
にんにくに限らず、生食する場合は鮮度が大事です。新鮮なにんにくを購入した方が、日持ちもするので新鮮なものを選んで購入しましょう。新鮮なにんにくの特徴は下記です。
外皮は白く乾燥し、芽が出ていない
大粒で固く、締まりがあり、重い
1片ずつ均等に膨らんでいる
軽すぎるものは乾燥しすぎている可能性が高いので選ばないようにしましょう。
ちなみに、にんにくは外皮と薄皮の両方を剥くので、農薬の心配はあまりありません。輸入ものではなく、国産を選ぶとより安心です。
にんにくを生で食べる場合は、すりおろすことが多いです。すりおろしたにんにくは、辛味や香りが強くなるため醤油に入れて馬刺しをつけて食べるなど薬味として最適です。
上述したように、にんにくの匂いや辛みの元になっているアリシンは、にんにくに含まれているアイリンが加水分解酵素アリイナーゼと結びつくことで分解され生成されます。特に生の状態のにんにくをすりおろすと、アリインが急速に分解されるためアリシンが多く生成されます。アリシンは揮発性の高い成分であるため加熱して食べるよりも、生で食べる方が辛味や香りが強くなります。
すりおろしたにんにくは、例えば醤油と合わせてにんにく醤油にして使うことができ、カツオや馬刺しなどの生臭さを軽減することができます。
すりおろしたにんにくをしばらく放置すると、青や緑に変色することがあります。これはカビや毒などが原因ではなく、化学反応によって起こる変色なので食べても問題ありません。
にんにくをすりおろしたりカットすることで細胞が壊され、にんにくに含まれる成分がアリイン→アリシン→アルキルサルファイド化合物へと変化するのですが、にんにくが空気にさらされると酸化が起こり、アルキルサルファイド化合物が鉄分と反応することで青や緑っぽく変色してしまいます。
にんにくが青や緑に変色するのには、鉄分が関係しています。鉄製のおろし金にも反応してしまう可能性が高いので、生のにんにくをすりおろすときは鉄製以外のおろし金を使用すると良いでしょう。
生のにんにくをベースに作られている「チューブにんにく」と呼ばれる調味料もあります。
様々なメーカーが製造を行っており、スーパーやコンビニなどで販売されています。生のにんにくをすりおろすといった手間をかけずに手軽に利用することができます。
チューブにんにくは、一見にんにくをすりおろしたものをチューブに入れているだけのように見えますが、実は生のにんにく100%というわけではありません。メーカーによって異なりますが基本的にはでんぷん、ソルビトール、調味料、香辛料なども含まれています。そのため、生のにんにくのすりおろしとは味わいが異なります。
生のにんにくは、酢漬けや醤油漬けなどの漬物にして食べることもできます。アリシンは水溶性の成分なので、水に浸しておいてもアリシンが溶け出して匂いや辛みが軽減されて食べやすくなりますし、長期保存にも適しているのでおすすめです。
漬物にするときは、にんにくの皮を剥いてそのまま酢や醤油に入れます。醤油漬けは、にんにくを取り出したあとも「にんにく醤油」として冷ややっこにかけたり、チャーハンの味付けに使ったりと様々な調理に使えます。
生のにんにくをすりおろしたり漬物にする際には、皮を剥いた後、芽の部分を取り除くのがおすすめです。にんにくの芽の部分には周囲の実の部分と比較して、匂いや辛み成分が多く含まれています。そのため、芽の部分を取り除くことで匂いを軽減することができます。
芽は皮を剥いて縦に半分に切った後、中心の部分に包丁のアゴ(刃の角部分)を入れて芯先から押し上げるようにしてえぐると取れます。
ひと手間かかりますが、加熱調理をする際にも芽の部分はアクが強かったり、焦げ付きやすかったりするので芽を取って調理をすると良いでしょう。
にんにくの匂いや辛みの元であるアリシンは揮発性が高いため、空気にさらして置くだけでも辛味は弱くなります。そのため、皮を剥いてからすぐに食べるのではなく、しばらく置いてから食べると良いです。
匂いがきついので、密閉できる容器に入れて冷蔵庫に入れて置きましょう。密閉しておかないと他の食材にもにんにくの匂いがついてしまいます。
にんにくは繊維が壊れることで匂いや辛味が強くなります。そのため、切り方やすり方を工夫することでも匂いや辛味を軽減することができます。
匂いや辛味を抑えたい場合は、細かく刻まずに包丁などで軽く潰す程度にとどめておくと良いです。
すりおろすときは、繊維を壊さないように優しく「の」の字に動かすと匂いや辛味を軽減することができます。大根の辛味も同じ方法で軽減することができるので、覚えておくと大根おろしの辛味を抑えたいときなどにも役立ちます。
低臭にんにくとは、その名の通り低臭加工されたにんにくです。食べるときは、通常のように辛味や香りを感じますが、食べた後の口臭を軽減することができます。
また「無臭にんにく」と呼ばれるアリシンの含有量が少ないにんにくもあります。こちらはアリシンの含有量が少ないため、辛味や匂いが少なくどちらかというと玉ねぎに近い味わいです。匂いを抑えることができるというメリットがある一方で、アリシンの栄養素は少ないというデメリットがあります。
一口に「にんにく」といっても様々な品種があり、匂いや辛味がマイルドなものもありますので匂いが気になる方は匂いの少ない品種のにんにくを使うと良いでしょう。
この記事では生のにんにくについて解説していますが、アリシンは揮発性が高い成分であるため加熱をすることで気化し辛味や匂いが弱まります。そのため、にんにくは食べたいけれど匂いや辛味は抑えたいという方は、生で食べるよりも加熱調理をして食べるのがおすすめです。
例えば、トースターやオーブンで加熱をするといった方法があります。トースターで加熱をする場合はクッキングシートを敷いた鉄板の上にバラバラにした皮付きのにんにくを並べて、軽く焦げ目がつくぐらいまで加熱します。
にんにくを調理する前に、バジル類やミント類,セージ類等を混ぜ合わせたハーブの浸漬液に皮を剥いたニンニクを浸して消臭しておくことで、匂いを軽減することもできると言われています。
ハーブにつけることで減臭される構造については解明されていませんが、ハーブ類に含まれているポリフェノール類が関係していると考えられています。
生のにんにくは栄養面ではメリットがありますが、食べた後に口臭がきつくなってしまうのでデメリットでもあります。
科学的根拠は不明であるものの、一般的に牛乳や緑茶を飲んだりりんごを食べるとにんにくによる口臭や体臭を軽減することができると言われています。
にんにくを生で食べる際、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品とタンパク質がにんにくの主成分であるアリシンと結合し匂いを抑えるとされています。特ににんにくを食べる前に牛乳を飲んでおくと、胃腸への刺激を緩和させてくれることが期待できるため、アリシンによる胃痛や腹痛を防ぐことにも繋がります。
緑茶には消臭効果があるカテキンが含まれているため、にんにくを食べたときの匂いを軽減する効果があると言われています。
コーヒーに含まれているフラボノイドには、にんにくの匂い成分であるアリルメチルスルフィド(AMS)や腸内で発生したアンモニアなどの腸内腐敗産物に複合的に働きかけ血中への吸収を妨げる効果があることが研究でわかっています。
食後にはりんごなどのポリフェノールを多く含む果物を食べると良いとされています。
ポリフェノールはアリシンを分解して全身に回るのを抑制する効果があると言われています。にんにくを摂取してからアリシンが全身に回るまで1時間程かかると言われているため、にんにくを食べたら食後1時間以内にりんごなどのポリフェノールを多く含む果物などを食べておくと良いでしょう。
保存性が高いにんにくですが、正しく保存することでより長く美味しいにんにくをキープすることができます。日本には四季がありますので、季節に応じて保存方法を変えるのがポイントです。
春・夏など暖かい季節は、ネットなどに入れて、風通しのよい冷暗所で吊るして保存がベストです。外皮は剥かずに保存しましょう。夏が終わり涼しくなると発芽してしまうので、常温保存はNGです。にんにくの匂い成分アリシンのおかげで、虫は近寄ることはありません。
常温保存した場合、約1ヶ月程度の保存が可能です。
にんにくは秋になったら冷蔵保存します。にんにくを丸ごとペーパータオルで包み、ポリ袋に入れて軽く口を閉めて、チルド室で保存します。1片ずつ包んでも◎。キッチンペーパーに包むことで、冷蔵庫の冷気と乾燥から守ります。ポリ袋に入れることでさらに乾燥を防ぐことができます。ポリ袋は軽く閉じることで通気性をよくします。
冷蔵保存した場合、約2ヶ月程度の保存が可能です。
にんにくは常温で長く保存することができるので、冷凍保存するメリットが他の野菜と比べてあまりありませんが、カットしたものを冷凍すると調理するときに楽です。やや香りが飛んでしまうデメリットもあります。切ったにんにくは常温・冷蔵保存では傷みが早いので注意です。
薄皮を剥いて1片ずつ冷凍保存したり、薄切りやみじん切りにして冷凍保存することも可能です。1片ずつ冷凍保存したにんにくは前日に冷蔵庫に移して自然解凍、カットして冷凍保存したにんにくは凍ったまま調理に使用することができます。
冷凍保存した場合、約1ヶ月程度の保存が可能です。
上記以外にも、にんにくは天日干ししたりオイルに浸けて保存することもできます。
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