タルトタタンという焼き菓子をご存知でしょうか?タルトタタンは、無塩バターと砂糖で煮詰めたりんごを型に敷き詰めて焼いた後にタルト生地を被せてさらに焼く菓子です。本記事ではタルトタタンの原料や発祥・由来、基本的な作り方などを解説します。
タルトタタンはフランス発祥の焼き菓子です。
主な原料は、りんごと無塩バター、砂糖、タルト生地です。
無塩バターと砂糖で煮詰めキャラメリゼにしたりんごを型に敷き詰めて焼いた後にタルト生地を被せてさらに焼く菓子で、焼き上がった後にひっくり返すのが大きな特徴です。
焼き上がった後にひっくり返すので、フランス語で「 tarte renversée(タルト・ランヴェルセ)」ともいわれます。「ランヴェルセ」には「逆さま」という意味があります。ちなみに、フランスではプリンのことを「クレーム・ランヴェルセ」といいます。
タルトタタンは、りんごをバターと砂糖で煮詰めているためりんごそのものはとろとろとしており、表面はパリパリとしています。りんごの甘酸っぱさの中にほろ苦さ、タルト生地の香ばしさがとてもよく合います。
キャラメリゼにせず、甘く煮詰めるだけでも作ることができます。キャラメリゼにしない場合ほろ苦さはなくなりますが、キャラメリゼにする際に焦がしてしまい失敗してしまうというリスクがなくなるため作りやすいです。
本場のタルトタタンはりんごを使ったものですが、現在はりんごだけではなくバナナやブルーベリー、パイナップルなど様々な果物を使ったタルトタタンもあります。
タルトタタンは19世紀後半に、フランスのラモット=ボーヴロンという町でホテル「タタン」を経営していたステファニー・タタンと妹のカロリーヌ・タタンによって誕生しました。
タルトタタンが誕生したきっかけには諸説あります。
一つ目は、ホテルで調理を担当していた姉のステファニーが、りんごタルトを作ろうとしたところりんごをいつもより長く炒めてしまい、失敗をカバーするためにりんごの入ったフライパンの上に生地をのせてそのままオーブンで焼き、出来上がったものをフライパンをひっくり返して取り出したところ、おいしそうだったのでそのままお客様に出したという説です。
もう一つは、ステファニーが焦がしてしまったりんごタルトを間違ってひっくり返してしまったことがきっかけで誕生したという説です。
また、タルト生地を忘れて焼いてしまったため、やむを得ず後から生地をかけて焼いたという説もあります。
どの説においても、りんごタルトを作ろうとしたときの失敗から誕生した食べ物であるということがわかります。そのためタルトタタンは「世界最高の失敗作」なんていわれています。
タルトタタンという名はタタン姉妹の名字「タタン」に由来して「タルトタタン」と名付けられ、ホテル「タタン」の名物料理となり、やがて世界中の人から愛されるようになりました。ちなみに、ホテル「タタン」は今でも営業しており、タタン姉妹が使っていたオーブンなどもそのまま残っているそうです。
そして、現在でもホテルタタンでは本物のタルトタタンを食べることができます。近くに行った際はぜひ本場のタルトタタンを食べてみてください。
クイニーアマンも、フランスの有名な伝統菓子の一種です。
クイニーアマンはフランスのブルターニュ地方で誕生しました。「クイニー」は「菓子」「ケーキ」、「アマン」は「バター」を指す言葉であり、その名の通りたっぷりとバターを使った生地を焼き上げています。
作り手によって差はありますが、焼き菓子とパンの中間に位置します。一般的には表面は固めの食感で香ばしく、内側は柔らかく甘味だけでなく塩気があります。
表面がつややかでパリッとしている見た目はタルトタタンと似ていますが、タルト生地を使っておらずどちらかというとパンに近いという点がタルトタタンとは異なる点です。
アップルパイはアメリカを代表とする焼き菓子です。
砂糖煮にしたリンゴをパイ生地に包んでオーブンで焼いています。口に入れるとりんごの甘酸っぱさ、シナモンの香りが広がり、パイのサクサクとした食感を楽しむことができます。
タルトタタンとアップルパイは原材料は似ているものの、タルトタタンはタルト生地を使っているのに対してアップルパイはパイ生地を使っているという点や、りんごを小さく切りキャラメリゼにしないという点で味や食感が大きく異なります。
さらにタルトタタンは円形型に作りカットして食べるのが基本ですが、アップルパイは円形型の他にもパイ生地でりんごの甘煮を巻いたロール型、パイ生地でりんごの甘煮を挟んだだけのサンドイッチ型など様々な形状があります。
シブーストもフランス発祥の焼き菓子です。
シブーストは、折りたたんだパイ生地(フィユタージュ)にりんごとクレーム・シブースト(カスタードクリームやゼラチン、イタリアンメレンゲを原料に作ったクリーム)を重ね、表面をカラメル状に焦がしています。
シブーストは、果物の甘さとジューシーさに加えてクレーム・シブーストのふわふわとした食感、さらに表面はカラメルの香ばしさを楽しむことができます。
タルトタタンとシブーストは形や表面がカラメル状になっている点など共通している点もありますが、シブーストはクリームを使用している点が大きく異なります。
タルトタタン1人分に含まれている栄養素やカロリーは、使われている材料や分量によって異なります。例えば、直径24cm丸型1/8個分に含まれている栄養素は下記の通りです。
たんぱく質…1.9g
脂質…17.2g
炭水化物…43.1g
食物繊維…2g
ナトリウム…42mg
カリウム…151mg
マグネシウム…7mg
リン…28mg
鉄…0.1mg
亜鉛…0.1mg
銅…0.08mg
マンガン…0.09mg
βカロテン…55μg
ビタミンD…0.2μg
ビタミンE…0.5mg
ビタミンB1…0.04mg
ビタミンC…5mg
アミノ酸…2206mg
主な原材料であるりんごには、主にカリウムや食物繊維、ポリフェノールなどが含まれているため、タルトタタンには様々な栄養素が含まれています。
タルトタタン一人前(直径24cm丸型1/8個分)のカロリーは329kcal、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)も41.2gです。カロリーは6枚切りの食パンを2枚食べたときと同じ値で、糖質量はビーフカレー1人前食べたときと同じ値です。
タルトタタンは、りんごの栄養素が多く含まれるため健康的に思えますが、一切れでもカロリーが高く糖質量が高いため、ダイエット中の食べすぎには注意が必要です。
ダイエット中の方でタルトタタンが食べたい!という方は、おからパウダーを利用して作ったり、バターを使わないなどカロリーを低くし、糖質量を少なくする工夫をすると良いでしょう。
タルトタタンは、ケーキなどを販売している洋菓子店で購入することができます。
店舗によって使われているりんごの品種が違ったり、タルト生地をパイ生地にしていたりなどそれぞれ特徴が異なるので、自分好みのタルトタタンを見つけてみるのも良いでしょう。
りんごは通年スーパーなどで購入することができますが、りんごの旬は一般的に10月~2月頃の肌寒くなる秋から冬にかけた季節です。通年市場に出回っているのは、品種や産地によって収穫時期が異なり、さらに貯蔵技術が進歩しているためです。
洋菓子店などでは美味しく食べられる時期の果物を使って作るお店がほとんどなので、りんごの生産状況から秋から冬にかけて期間限定商品として登場するお店も多いです。
クリスマスの時期に販売されていることが多いので、タルトタタンをクリスマスケーキとして購入する方も多いようです。
近年ではセブンイレブンでも購入することができます。(店舗によっては取り扱いがないこともあります)セブンイレブンで販売されているタルトタタンは、タルト生地でもパイ生地でもなくスポンジのようなふんわりとした生地を使っているのが大きな特徴です。
本場のタルトタタンとは少々異なりますが、美味しいと評判です。値段もお手頃価格なので手軽にタルトタタンの味を楽しむことができます。
コンビニでも手軽に購入できるタルトタタンですが、お取り寄せ可能な店舗もあるので、より本格的なタルトタタンを食べたいという型は、お取り寄せがおすすめです。
Amazonや楽天などのネット通販でも様々な店舗のタルトタタンを購入することが可能です。タルトタタンは来客に出すお菓子としてもピッタリです。また手土産としてもお洒落で喜ばれるでしょう。
手作りのタルトタタンは、直射日光の当たる場所や高温多湿の場所を避けた冷暗所で常温する場合は1日、冷蔵庫に入れて保存する場合は、3日程持ちます。
ただし、あまり長くおいておくとりんごから出た水分で、サクサクとしたタルト生地の食感が損なわれてしまいますし、ボロボロと崩れてしまいます。また、りんごの風味も落ちてしまうため、おいしく食べるためにはなるべく早く食べきりましょう。
タルトタタンは冷凍保存することもできます。
冷凍保存するときは、ラップなどにくるみ保存袋に入れて冷凍庫で保存します。冷凍販売されているタルトタタンは1ヶ月程日持ちするようですが、手作りのタルトタタンの場合はやはりできるだけ早めに食べきるのが良いでしょう。
冷凍したタルトタタンは冷蔵庫にうつし、自然解凍して食べることができます。
自宅で簡単に作れるタルトタタンの基本的な作り方を紹介します。
(りんごのキャラメリゼ)
りんご…2個
無塩バター…20g
グラニュー糖…50g
(タルト生地)
無塩バター…50g
グラニュー糖…50g
卵…2個
薄力粉…100g
ベーキングパウダー…5g
りんごはよく洗い、皮を剥いて6〜8等分に切り種や芯を取り除いておく。
オーブンを180℃に予熱しておく。
バターを室温に戻しておく。
バターなしで作ることもできます。バターなしで作る場合はバタ−の代わりに生地にオリーブオイルを練り込むと良いです。砂糖は白砂糖ではなくてんさい糖などを使っても良いです。また、生地は薄力粉でなく米粉や全粒粉などを使って作ることもできます。小麦粉アレルギーの方は小麦を原料に使っていない米粉を使って作ると良いでしょう。米粉の場合はグルテンが含まれておらず、生地がふんわりとしないためベーキングパウダーを多めに入れると良いです。
りんごには「ふじ」や「紅玉」、「ジョナゴールド」などさまざまな品種があります。どの品種のりんごを使ってもタルトタタンを作ることができますが、特にタルトタタンに適しているといわれているのが「紅玉」です。
紅玉は、りんごならではの芳醇な香りが強い他、しっかりとした甘みと酸味があるためアップルパイなどのお菓子作りによく使われている品種です。また、紅玉は肉質がしっかりとしていて煮崩れしにくいため、キャラメリゼをするのにも適しています。
りんごを購入する際は、お尻のほうまでしっかりと赤くなっていて熟しているものを選ぶと良いです。
タルトタタンを作る工程でリンゴをキャラメリゼする時、りんごの皮も一緒に入れましょう。赤いりんごの皮は、キャラメリゼしたりんごに移るため美しい色合いになり見た目がよくなります。
また、りんごの皮に多く含まれるペクチンが含まれています。野菜や果物細胞壁はセルロースからできた繊維が重なっており、その間をペクチンが塗り固めて固い壁をつくっています。ペクチンは加熱によって分解される性質があり、さらに砂糖や酸によってゲル化します。
りんごをキャラメリゼするとりんごから出た水分によって液状になってしまいますが、皮も一緒に入れることでゲル化したペクチンが加わりツルンとした仕上がりになります。
タルトタタンを作るときに、うまく固まらず方から外したときに崩れてしまうことがよくあります。
タルトタタンが固まらず崩れてしまう原因となるのは、水分量です。りんごを加えてキャラメリゼにする際にりんごから出てきた水分量が多すぎて水分を飛ばしきれないと固まらない原因となり、型から外したときに崩れてしまいます。
しっかり煮詰めて飛ばしておくことが大切です。りんごの品種によっても水分量は異なります。上記で紹介した「紅玉」は水分が少なめであることもタルトタタンに適しているといわれる理由の一つです。
また、りんごをしっかりと隙間なく並べるのもポイントです。並べ方には特に決まりはありませんが隙間が多すぎるとやはり固まりません。りんごを小さめにカットしてしまうと水分が出てきやすいことに加えて、並べるときに隙間ができてしまいやすいので大きめにカットして使うのが良いでしょう。
タルトタタンを型から抜くときに崩れてしまったら非常にショックですよね。タルトタタンは型から外すのも難しいです。
タルトタタンを型から上手に外すには、焼けたタルトタタンは粗熱が取れたタイミングでひっくり返しても良いのですが、一度冷やしてからひっくり返すのがおすすめです。しっかり冷やすことでペクチンが固まりボンドのような役目を果たしてくれるため崩れてしまうことを防ぐことができます。
型から外すときは型の表面をバーナーなどで炙り少し温めると抜けやすいです。心配な型は底抜き型を使って作るのが良いでしょう。
タルト生地を作るときは、フードプロセッサーを使って材料を混ぜると時短になります。また、パイシートでも代用可能です。パイシートで代用する場合は、りんごのキャラメリゼの上にパイシートを乗せて焼きます。
冷凍パイシートを使えば時短になりますし、タルト生地のタルトタタンとは違ったサクサクとした食感を楽しむことができます。
タルトタタンを作りたいけど1ホールでは大きすぎるという方は、
ココット
小さめのセルクル型
マフィン型
に入れて作るとちょうど一人分の小さなタルトタタンを作ることができます。冷蔵保存や冷凍保存をすることもできますが早めに食べきるほうが良いので、余ってしまいそうなときは予め小さな型を使って作るのが良いでしょう。型を小さくしても美味しいタルトタタンを作ることができます。
タルトタタンはフライパンを使って作ることもできます。
フライパンを使って作る場合はフライパンでりんごを煮詰めてキャラメリゼした後に、上から生地を流し込み焼いてひっくり返して完成です。ホットケーキミックスを使えば手軽にふんわりとした生地のタルトタタンを作ることができます。
型から外すときに崩れてしまうといったこともないため、初心者の方にもおすすめです。
タルトタタンはオーブンがなくても、炊飯器で作ることも可能です。炊飯器を使って作る場合は、りんごのキャラメリゼの材料を炊飯器に入れて炊きます。炊き終わったら煮汁を取り除き、溶かしバターを入れてさっくりと混ぜ合わせます。次に混ぜ合わせたタルト生地の材料をりんごのキャラメリゼの上に乗せてもう一度炊いて完成です。
タルトタタンはショートケーキなどの一般的なケーキとは異なり、フルーツやタルト生地が崩れやすいため綺麗に切るのが難しいです。タルトタタンを上手く切る方法を紹介します。
切る前にしっかりとタルトタタンを冷やしておくと、りんごのキャラメリゼやタルト生地が引き締まるため切っても崩れにくくなります。お店で購入したタルトタタンの場合も、1度冷蔵庫で冷やしてから切り分けると良いでしょう。
熱湯をかけて温めた包丁で切ると、生地の油分を溶かしながら切ることができるため切りやすくなり、断面が綺麗になります。
包丁自体の切れ味が悪くなってしまっている場合は、研ぐなど手入れをしてから切ることも大切です。
無理に素早く切ろうとすると崩れてしまうため、包丁を入れたら小刻みに動かしゆっくりと切りましょう。特にりんごは崩れやすいので無理に力を入れないことが大切です。
タルトタタンはそのまま食べても美味しいのですが、ひと手間加えることにより、より美味しく食べることができます。
タルトタタンを切り分けた後に、トースターで軽く焼いてから食べると、香ばしさが出てより美味しくなります。また、焼くことによりタルトのサクサク感が増すため、食感も良くなります。
レンジで温めてしまうとしっとりとしてしまうので、温めるのであれば香ばしさも加わるトースターがおすすめです。手軽にできたてのタルトタタンのような味を楽しむことができるのでぜひ試してみてください。
洋菓子店のタルトタタンでも生クリームが添えてあることは非常に多く、タルトタタンと生クリームの相性は抜群といえます。
りんごのキャラメリゼのほろ苦さと生クリームの味がとても良く合い、苦味が苦手な方でも食べやすくなるでしょう。タルトタタンを作るときはりんごをキャラメリゼする際に焦げてしまって苦くなってしまうことも多いですが、生クリームを添えるとカバーすることができます。
タルトタタンはアイスクリームを乗せて食べても美味しいです。タルトタタンに特によく合うアイスはバニラアイスです。バニラアイスはりんごのキャラメリゼにもタルト生地にもよく合います。
トースターで軽く温めたタルトタタンの上に乗せると、ほどよく溶けてタルトタタンとよく馴染みます。冷たいタルトタタンにアイスを添えても美味しく食べることができるので、ぜひ試してみてください。
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