てんさい糖ときび砂糖は見た目がよく似た砂糖ですが、原料やカロリー、味などに違いがあります。今回は、てんさい糖ときび砂糖の違いを詳しく解説しています。また、てんさい糖ときび砂糖はそれぞれ代用可能かどうかもご紹介しています。
てんさい(甜菜)糖の原料は甜菜、きび砂糖の原料はサトウキビです。
てんさい糖の原料であるテンサイは、別名「サトウダイコン」や「ビート」ともいいます。
甜菜は見た目は大根に似ていますが、植物学上ではホウレンソウと同じヒユ科に属します。甜菜には紅白の2種類がありますが、砂糖の原料として使用されるのは白色のほうです。
甜菜は温かい地域では病虫害に侵されやすいため、一般的に寒地で栽培されます。元々甜菜は、ヨーロッパ地域が主産地でした。温帯から亜寒帯を中心に栽培地域が広がり、日本では北海道で、年間約62.1万トン*もの甜菜が生産されています。
テンサイは、古代ギリシャやローマ時代から野菜として栽培されていました。テンサイから砂糖を作ることは、1770年頃から行われていたといわれています。
*2009年の国内原料における砂糖生産量
また、甜菜から作られる砂糖を総称して「テンサイ糖(ビート糖)」とよぶこともあります。その場合は、グラニュー糖や上白糖も「テンサイ糖」に分類されます。
きび砂糖*の原料であるサトウキビは、別名「甘庶(かんしょ)」ともいいます。
サトウキビは、イネ科の多年性植物です。茎だけで高さが3mにもなり、茎には竹のように節があります。高温多湿で年間の平均気温が20℃以上の土地でよく育つといわれており、日本では沖縄県と鹿児島県が主な生産地となっています。日本国内で、年間約18.6万トン**のサトウキビが生産されています。
サトウキビ自体の歴史は古く、4000年以上も前から原産地インドで栽培されていたといわれています。日本では江戸時代に奄美大島にサトウキビの苗が植えられ、栽培が始まりました。
**2009年の国内原料における砂糖生産量
*「きび砂糖」の名称で販売されている砂糖は、日新製糖独自の砂糖です。「きび砂糖」と「きび」は日新製糖の登録商標です。
日新製糖のきび砂糖と同じ原料や似たような製造方法で作られている砂糖もありますが、それらは「さとうきび粗糖」や「さとうきび糖」、「きび糖」などの名称で販売されています。
本記事では、これらの砂糖を総称して「きび砂糖」と呼ぶこととします。
砂糖には、下記の2通りの製造方法があります。
分蜜糖
原料を絞った搾り汁(糖汁)から不純物を取り除き、濃縮して得られる白下糖(結晶と糖蜜の混合物)を分離させて、結晶だけを取り出して乾燥させた砂糖のことを指します。さらに分蜜糖はザラメ糖や車糖、加工糖などに細分化されます。グラニュー糖や上白糖、三温糖などは分蜜糖に分類されます。
含蜜糖
原料の絞り汁(糖汁)から、不要な成分や不純物を大まかに除去し、そのまま加熱・濃縮して固化させた砂糖のことを指します。黒砂糖、きび砂糖、てんさい糖、パームシュガーなどが含蜜糖に分類されます。
てんさい糖は、製造メーカーによって、含蜜糖の場合と、分蜜糖と製造する際に得られる糖蜜から作られる場合があります。きび砂糖は含蜜糖と分蜜糖の場合があります。
てんさい糖は、メーカーによって製造方法が異なり、分蜜糖を製造する際に得られる糖蜜を煮詰めて作られるものと、含蜜糖があります。
分蜜糖を製造する際に得られる糖蜜からてんさい糖を作る場合の一般的な流れは下記の通りです。
ちなみに、6. で振り分けられた結晶を使うと、上白糖やグラニュー糖ができます。
含蜜糖の場合、原料である甜菜の搾り汁から不純物を取り除き、搾り汁を煮詰めて作られます。
きび砂糖もメーカーによって製造方法が異なり、分蜜糖と含蜜糖の場合があります。
分蜜糖の場合、前述した通り、サトウキビを絞った搾り汁(糖汁)から不純物を取り除き、濃縮して得られる白下糖(結晶と糖蜜の混合物)を分離させて、結晶(原料糖)の部分だけを使って作られます。ただし、原料糖には不純物が多く含まれているので、そのまま食品として使用することはできません。そのため、原料糖を溶かして液体にし、精製する途中で煮詰めて結晶化してきび砂糖が作られます。
上白糖などの一般的な砂糖は精製工程が多いため、無色透明の砂糖に仕上がります。一方で、きび砂糖は製造工程が上白糖より少ないため、もともとサトウキビに含まれる成分や風味が残ります。
含蜜糖の場合、原料のサトウキビの搾り汁から不純物を取り除き、搾り汁をそのまま煮詰めて作られます。
てんさい糖ときび砂糖はどちらもやさしい甘さが特徴です。
てんさい糖は、風味豊かな甘さが特徴です。黒砂糖のような独特な風味があり、まろやかな甘さがします。きび砂糖よりも若干甘さは控えめです。普通の白砂糖と同じように、料理やお菓子、飲み物など様々なシーンで活用できます。
てんさい糖の方が、きび砂糖よりも茶が濃いので、料理やお菓子によっては、仕上がりの色が茶っぽくなってしまう可能性があります。そのため、見た目を重視したい料理やお菓子には、別の砂糖の使用がよいかもしれません。
きび砂糖の方が、てんさい糖よりもクセがなく口当たりがやさしいです。てんさい糖よりも甘さを感じます。料理全般やお菓子、飲み物など幅広く使用することができます。中でも煮物や和菓子との相性がよいといわれています。
てんさい糖よりも茶色の色が薄いため、料理やお菓子の仕上がりにそこまで影響を与えないでしょう。
一般的なてんさい糖の栄養素は下記の通りです。製造方法によって栄養素は若干異なります。
<含蜜糖に該当するてんさい糖の場合>
エネルギー・・・395kcal
たんぱく質・・・0g
脂質・・・0g
炭水化物・・・98.8g
無機質
カルシウム・・・1.0mg
カリウム・・・4.0mg
マグネシウム・・・0.3mg
鉄・・・0.18mg
食物繊維総量・・・0g
<糖蜜からつくられるてんさい糖の場合>
エネルギー・・・382kcal
たんぱく質・・・0.5g
脂質・・・0g
炭水化物・・・97.5g
無機質
ナトリウム・・・32〜78mg
カルシウム・・・0〜2mg
カリウム・・・6〜55mg
マグネシウム・・・0〜0.2mg
リン・・・0〜6mg
鉄・・・0〜0.2mg
亜鉛・・・0〜0.1mg
銅、マンガン・・・0mg
セレン、ヨウ素、クロム、モリブデン・・・0μg
食物繊維総量・・・0g
※可食部100gあたり
特筆すべき点は、てんさい糖にはオリゴ糖が含まれていることです。上白糖など他の砂糖にはオリゴ糖は含まれていません。
オリゴ糖は、糖質の一種で、ビフィズス菌などの善玉菌の栄養源となるといわれています。したがって、腸内環境を整える効果が期待できます。
ただし、オリゴ糖を摂りすぎると、おなかがゆるくなったり、ミネラルやビタミンなどの栄養素の吸収が抑制されてしまう場合があります。
きび砂糖の栄養素は下記の通りです。
エネルギー(熱量)・・・396kcal
たんぱく質・・・0g
脂質・・・0g
炭水化物・・・98.8g
無機質
ナトリウム・・・20mg
カリウム・・・142mg
カルシウム・・・23mg
マグネシウム・・・15mg
リン・・・1.1mg
鉄・・・0.3mg
亜鉛・・・0mg
銅・・・0.1mg
食塩相当量・・・0.14g
食物繊維総量・・・0g
※可食部100gあたり
きび砂糖には、てんさい糖よりもミネラル類が豊富に含まれています。
ミネラルは、私たち人間の体にとって必要不可欠な成分です。ミネラルには、ナトリウムやカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など様々な種類があります。これらのミネラルは、体の成分になったり、神経や筋肉を正常に保ったり、代謝を促進するなどの役割があります。残念ながら体内では合成されないため、食事を通してミネラルを摂取する必要があります。
ただし、砂糖に配合されているミネラルは微量です。そのため、砂糖だけで十分にミネラル補給をできることは難しく、また砂糖を摂りすぎると、肥満など体に悪影響を及ぼします。
血糖値の上昇度合いを示すGI値はてんさい糖が65、きび砂糖が100です。てんさい糖は中GI値に該当するのに対してきび砂糖は高GI値に該当します。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
上述したように、てんさい糖ときび砂糖のカロリーはほぼ同じですが、血糖値の上昇度合いを示すGI値はてんさい糖で65です。そのため、てんさい糖の方が健康的といえます。さらに、てんさい糖には(きび砂糖には含まれない)オリゴ糖が含まれているため、美容・ダイエット向きといえます。
きび砂糖はてんさい糖より、体内の塩分の量を調整するカリウムが豊富ですが、カリウムは主に野菜から摂取するものなので、あまり関係ありません。カリウムを摂取するためにきび砂糖を多く摂取したら、糖質の摂り過ぎになってしまいます。
てんさい糖の平気価格は370円〜490円程で、きび砂糖の平均価格は330円〜350円程です。
てんさい糖の原料であるテンサイは手作業で収穫し加工する必要があります。一方、きび砂糖はサトウキビを原料に作られ、機械的に生産することが可能です。そのため生産コストがかかり、生産量が限られるてんさい糖のほうが値段が高くなる傾向にあります。
ただし、価格は生産地やブランドによって異なるため市場で比較して適正な価格を把握することが重要です。
てんさい糖ときび砂糖はどちらも上白糖の代用品として幅広い用途で使うことができます。
てんさい糖ときび砂糖は、どちらもまろやかな甘みで、ミネラルが含まれているので煮物などコクを出したいときにおすすめです。どちらかというとてんさい糖のほうがクセがあるので、料理の味に影響を出したくないときはきび砂糖を使うと良いでしょう。
はちみつには、ボツリヌス菌が混在している可能性があります。
ボツリヌス菌とは、土壌や海、川などの泥砂中に生息している菌です。1歳未満の乳児がはちみつを摂取することで、乳児ボツリヌス症を発症する可能性があります。乳児ボツリヌス症は、乳児の腸内環境が不安定で、ボツリヌス菌の感染に対する抵抗力が低いために起きると考えられています。数日間便秘の症状を示し、母乳やミルクを吸う力が弱くなったり、泣き声が小さくなったりなどの症状が表れます。
そのため、腸内環境がまだ整っていない1歳未満の乳児にははちみつやはちみつ入りの料理、お菓子、飲料などを与えることはできません。
てんさい糖ときび砂糖はともに加熱処理しているため、乳児ボツリヌス症を発症させるボツリヌス菌はほぼ失活しているといわれています。ボツリヌス菌は120℃で4分以上の加熱によって殺菌、ボツリヌス毒素は100℃で1〜2分の加熱によって分解(失活)されます。
てんさい糖ときび砂糖はそれぞれ代用品として使用することが可能です。
ただし、上述の通りてんさい糖の甘みは、きび砂糖と比べて控えめなので、きび砂糖の代用品としててんさい糖を使用する場合は、きび砂糖の分量よりもやや多めに使用するとよいでしょう。反対に、てんさい糖の代用品としてきび砂糖を使用する場合は、てんさい糖の分量よりもやや少なめに使用すると味の調整がしやすいです。
どちらも用途が近いので、料理による使い分けなどはあまりありません。
てんさい糖ときび砂糖は混ぜて使用することができます。
混ぜることでそれぞれの独特な風味や甘みが相乗効果を発揮し、より豊かな味わいを楽しむことができます。例えば、てんさい糖のコクときび砂糖の甘みを組み合わせることで、お菓子やデザートの味が格別になることがあります。
ただし、使用量には注意が必要です。てんさい糖は一般的にきび砂糖よりも甘さが強いため、混ぜる際には、てんさい糖を少なめに使用することがおすすめです。また、料理やお菓子のレシピに合わせて適切な配合比率を選択することが重要となります。
砂糖全般には賞味期限が設けられていません。食品表示法に基づき、砂糖は長期保存をしても品質の変化が極めて少ないものとして、賞味期限や消費期限の表示が省略可能な品目に定められています。
砂糖は吸湿しやすい性質をもつため、密閉容器に入れ、なるべく冷暗所で保存することをおすすめします。砂糖が固まってしまったら、砂糖の表面に霧を吹いて密閉しておくと◎。
長期間保存してる砂糖も基本的には使用可能ですが、砂糖の状態を見て使用できるか否かを判断しましょう。湿気て溶け出していたり、部分的に変色している場合は、使用を避けるべきです。
出典:砂糖のあれこれ(農林水産省)
最後に、てんさい糖ときび砂糖に似ているその他の砂糖を紹介します。てんさい糖やきび砂糖など見た目が茶色い砂糖を「ブラウンシュガー」といいます。
三温糖は上白糖と同様に日本独自の砂糖で、三温糖という名前は、「糖蜜を三度煮詰めてつくる」という工程に由来しています。
三温糖を作る際の加熱によって黄褐色に色付き、カラメル成分が形成されるため、カラメル色になっています。
三温糖は甘味が強くカラメル風味がするのが特徴で、煮物や佃煮、角煮、菓子の甘味料に適しています。
黒糖(黒砂糖)とは、サトウキビの搾り汁を煮詰めてつくる黒褐色の砂糖です。
製法による分類では、糖蜜を含んだままの原料を煮詰めて結晶化させる含蜜糖に分類されます。糖蜜を含むため固まりやすく、ブロックを砕いた塊状をなしています。
カルシウムやカリウム、鉄、亜鉛、ビタミンB1、B2などを豊富に含んでいるのが特徴です。独特な風味とコクを生かして、かりんとうや羊羹などの菓子や煮物の甘味料、焼酎の原料に使われることが多いです。
サトウキビ栽培が盛んな一部地域(沖縄県、鹿児島県など)では、甘味料として使用されることが多いですが、それ以外の地域では健康食品として扱われることが多いです。
素焚(すだきとう)糖は、上記でご紹介したきび砂糖とほぼ同じ種類の砂糖です。素焚糖ときび砂糖の違いは、原料の生産地といわれています。
素焚糖は100%国産の砂糖です。鹿児島県の奄美大島で育ったサトウキビだけが、素焚糖の原料として使用されます。一方で、きび砂糖の原料となるサトウキビは、国産だけでなく外国産のものも使用されることがあります。
また、素焚糖に含まれるミネラル分は、きび砂糖よりも若干多いといわれています。
中ザラ糖は、白ザラ糖(ザラメ糖、上双糖ともいう)に、カラメルで着色した結晶が大きい砂糖を指します。漢字表記は「中双糖」となります。
製法による分類では分蜜糖に分類される砂糖です。分蜜糖の中は「ザラメ糖」に分類されます。ザラメ糖の大きな特徴は、結晶が大きく糖度が99%以上あるという点です。ザラメ糖に分類される砂糖には、グラニュー糖や白ザラ糖、中ザラ糖があります。白ザラ糖と中ザラ糖は、グラニュー糖よりも結晶が大きいです。
中ザラ糖は、しょうゆとの相性が良いといわれており、煮物や照り焼きなどの和食に適しています。
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