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なすの食べ過ぎはNG?1日の摂取目安量は?

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なすの食べ過ぎはNG?1日の摂取目安量は?

なすを食べ過ぎるとどんなデメリットがあるのでしょうか?なすの過剰摂取した場合のリスクと1日の摂取目安量を解説します。

なすの食べすぎに注意

「秋なすは嫁に食わすな」ということわざがあります。解釈はいくつかあると言われていますが、そのうちの1つには、秋なすにはアルカロイドという毒性の成分を含有しており、食べすぎると体調不良などを引き起こす可能性があることから、一家にとって大切な嫁には食べさせないようにするというものです。それ以外にも、なすの食べ過ぎには注意をするべき点がいくつかあるので紹介していきます。

なすのカロリー

なすの調理別のカロリー・糖質を比較した表

なすの食べ過ぎで最も注意しなければいけないのは、カロリーオーバーです。

なす自体はカロリーの低い野菜ですが、かき揚げや炒め物など油を多く使って調理すれば、その分カロリーは上がってしまいます。しかもなすは油を吸いやすい性質があるので、他の野菜よりも油を含みやすいです。

なすは油によってえぐみが緩和され、うま味が感じられるので、油を吸った方が美味しいんですよね...。ですが、脂質の摂りすぎは太りますので注意しましょう。

また、味付けにも注意が必要です。甘味料を多く使えば、その分カロリーが上がります。甘辛煮などもおいしいですが、甘味料はほどほどにしましょう。

出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)

水分

なすは94%が水分です。そのため、なすばかり食べていると水分の摂りすぎでお腹がゆるくなってしまう可能性があります。

これは水分を大量に摂取することで血液中のナトリウム濃度が低下し、水中毒である「低ナトリウム血症」状態になってしまうためです。めまいや頭痛を引き起こす場合もあります。

出典:MSDマニュアル家庭版『低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が低いこと)』

栄養バランス

なすはビタミン・ミネラル類があまり多くないのが特徴です。他の野菜では豊富に含まれるβ-カロテン(ビタミンA)やビタミンB群、ビタミンCもほとんど含まれません。ビタミンA・Cは抗酸化作用があり、老化防止や疲労回復などに大切な栄養素です。ビタミンB1は糖質がエネルギーに変わるのを助ける大切な栄養素です。

また、なすに含まれていない栄養には、ビタミンDやビタミンB12があります。ビタミンDは骨の形成を助け、ビタミンB12は赤血球の中のヘモグロビンの生成を助ける働きがあります。ビタミンDは肉類や卵に、ビタミンB12はレバーや牡蠣、あさりやしじみなどの魚介類、海苔をはじめとする藻類に多く含まれています。

出典:農林水産省|食事バランスガイド

アレルギー

ナスを食べると、口腔アレルギー症候群というアレルギー症状が出る可能性があります。口腔アレルギー症候群は、生の野菜や果物を食べた数分後に、口の中や喉の粘膜に起こる食物アレルギーのひとつです。

また、ヒスタミンやアセチルコリンという、アレルギーと似た症状を引き起こす物質である仮性アレルゲンがナスには含まれています。

ヒスタミンは、かゆみやむくみ、蕁麻疹などを引き起こすことがあり、ほうれん草やトマト、なすなどに多く含まれます。ヒスタミンは、熱に強く、加熱調理をしても分解しないので、煮たり焼いたりしても減ることがありません。

アセチルコリンは、自律神経失調や血管の拡張、気管支収縮(喘息症状)を引き起こすことがあります。山芋やトマト、なすなどに多く含まれます。

出典:

ソラニン

ナス科の植物にはソラニンという有毒なアルカロイドが含まれていることがあります。ソラニンはじゃがいもの芽に含まれていることで有名ですが、実はじゃがいもはナス科なんです。

じゃがいもの芽に比べると、ナスのソラニンの含有量は少なめです。また、品種改良されている栽培品種の完熟したナスには比較的少なくなっているので、健康被害を起こす可能性はかなり低いです。ただし、未熟なものや茎や葉などは含有量が多くなっているため、注意が必要です。

ちなみに、ソラニンは水溶性なので水には溶け出しますが、熱には強いので加熱しても毒性は失われませんので注意してください。

出典:ジャガイモによる食中毒を予防するために(農林水産省)

食物繊維

食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があり、便秘・下痢の改善や腸内環境を整える際に、この2つのバランスが重要となります。

なすはどちらも含まれていますが、水溶性食物繊維より不溶性食物繊維が多いです。

不溶性食物繊維は摂りすぎると大腸を刺激しすぎてしまい、大腸の収縮が強くなって起こる痙攣性便秘の原因になる場合があります。

水溶性食物繊維は摂りすぎるとお腹がゆるくなってしまう可能性があります。また、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素の吸収も妨げてしまうこともあります。

出典:

カリウム

なすはカリウムが豊富な野菜です。

カリウムは普通の食事で摂りすぎることはあまり考えられませんが、腎機能が低下している方がカリウムの多い生野菜や果物、いも類、海藻類などを過剰摂取したり、腎機能に問題ない方でもサプリメントで摂りすぎた場合は「高カリウム血症」という症状になる恐れがあります。

塩や醤油、味噌を頻繁に使う日本人は塩分を摂りすぎる傾向があり、塩分に含まれるナトリウムの摂取量が多くなるため、腎機能に問題がなければカリウムを食材から積極的に摂ることが推奨されます。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

ポリフェノール

なすにはナスニン(アントシアニン系)やクロロゲン酸というポリフェノールが含まれています。ポリフェノールは体に大変よい栄養素なのですが、場合によっては体に害を及ぼす場合があります。

アントシアニン系ポリフェノールは血管を拡張させる働きがあるため頭痛になる場合があります。アントシアニン系ポリフェノールは紫色素でぶどうにも含まれており、赤ワインで頭痛を引き起こす人がいます。

クロロゲン酸は胃液の分泌を促すため、場合によっては胃痛になる場合があります。

ただ、なすにはそこまでポリフェノールが含まれていませんので、ポリフェノールによる症状はあまり心配されません。

出典:全日本民医連『けんこう教室 頭痛』

なすの1日の摂取目安量

なすの1日の摂取目安量は明確に定まっていませんが、厚生労働省が発表している野菜の摂取目標量を基準に目安を把握することはできます。

淡色野菜を基準にして

大人の野菜の摂取目安量は1日あたり350g以上と設定されており、緑黄色野菜は120g以上、淡色野菜は230g以上です。

緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。

なすは淡色野菜に分類されるので、他の野菜と合わせて230gを目安にするとよいでしょう。なす1個80gなので、淡色野菜をなすしか食べないなら4つほどが目安ということになります。他の淡色野菜を食べることを考慮すると1日1/2〜1個くらいにするのがよいでしょう。

出典:厚生労働省|健康日本21(第二次)

なすの栄養と効能

テーブルに並んだなす

ナスニン(アントシアニン)

ナスニンはアントシアニン系色素でポリフェノールの一種です。
皮が濃い紫色であることからも分かるように、皮に多く含まれています。

ナスニンを始めとするポリフェノールには抗酸化作用があります。さらにはナスニンにはコレステロール値を下げる働きもあると言われており、後述しているコリンとの相乗効果が期待できます。

アントシアニン系色素には、目の網膜にあるロドプシンの再結合の作用があるため、眼精疲労の回復効果もあります。また、肝臓の働きを活性化する効果もあります。

クロロゲン酸

クロロゲン酸もポリフェノールの一種です。クロロゲン酸はコーヒーにも多く含まれている成分で、血圧の上昇や血糖値の急上昇を抑制する効果があります。これは、糖質を分解する酵素を阻害する働きがあり、これによって糖質の吸収をゆるやかにしているからです。さらに脂肪燃焼促進の効果もあり、体内にすでに溜まっている脂肪も新しく発生した脂肪も燃焼させてくれます。特にメタボリックシンドロームの原因である肝臓脂肪の燃焼効果が期待され、ダイエットをする際にも注目される成分のひとつです。

コリン

コリンはリン脂質と呼ばれる脂質の一種です。コリンは記憶や学習に関係が強い「アセチルコリン」という神経伝達物質のもとになる物質です。アセチルコリン濃度は記憶保持や脳機能の向上を左右しているとも言われています。またこのアセチルコリンには血管を拡張して血圧を下げる作用があり、高血圧予防も期待できます。

また、コリンには肝機能を向上させる効果があります。そもそもコリンは脂肪肝を防ぐ成分として発見されており、肝臓での脂質代謝に必要とされています。

カリウム

カリウムはミネラルの一種です。

カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。

そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。

参考文献:

  • 栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

  • 栄養学博士 新出真理 監修(2014)『第2版 くらしに役立つ栄養学』ナツメ社