きゅうりのアク抜きは意味ないという意見もあります。実際、きゅうりにはアクとなる成分自体は含まれていますが、含有量がそこまで多くなく、かつ大量に摂取しなければ人体に悪影響を及ばさない成分であるため、アク抜きは不要といわれるのです。本記事ではアク抜きが意味ないといわれる理由や、アク抜きの方法などを詳しく解説します。
きゅうりに含まれている苦味成分は、ギ酸とククルビタシン(正式名称はククルビタシンC)です。ギ酸は、きゅうりに含まれている有機酸の一種です。ククルビタシンはウリ科の植物がもつ特有の苦味成分で、ステロイドの一種です。これらの成分がいわゆる「アク」と呼ばれるものです。
きゅうりのアク抜きは、ヘタを切り落として切り口同士をこすり合わせる処理を指すことが多いです。このアク抜きによって取り除くことができる成分は主にギ酸です。ギ酸はきゅうりの維管束という管の中に含まれており、維管束が切断されることで周辺の細胞からの圧力によって維管束のギ酸が滲出します。切断するだけではギ酸を含む液体が固化してしまうため十分にギ酸を取り除くことができませんが、切り口同士をこすり合わせることで内容液が固化させることなく、ギ酸を取り除くことができます。ギ酸は維管束の中でもヘタ側の先端に多く含まれているといわれています。
一方で、ククルビタシンは維管束にとどまらず全体に散らばっています。こすり合わせること自体で取り除くことは難しいのですが、ククルビタシンはきゅうりの先端(ヘタの部分)に多く含まれていることが研究結果で分かっているため、先端を切り落とすことでククルビタシンも取り除くことができます。
きゅうりのアク抜きが意味ないといわれる理由に、きゅうりに含まれるアクの量があります。
キュウリに含まれているこれらの苦味成分はそこまで含有量が多くないため、アク抜きをしなくても強く苦味を感じることはありません。これがきゅうりのアク抜きが意味ないといわれる理由です。
上記でご紹介した苦味成分は、主にきゅうりの先端(ヘタ側)に多く含まれています。
苦味成分の一種であるギ酸はヘタに近い部分(上部)に一番多く含まれていることが研究により明らかになりました。ある研究報告によると、きゅうりの果皮に含まれるギ酸濃度は上部で60.2mg/L、中部で33.4mg/L、下部で54.7mg/L、きゅうりの維管束に含まれるギ酸濃度は上部で2.13mg/L、中部で0.35mg/L、下部で1.25mg/Lであることが報告されました。
また、ククルビタシンも主にヘタの部分に多く含まれるといわれています。ある研究によると、ヘタ(茎側の端)のククルビタシンの濃度が7.2mg/Lに対し、中央部分や花側の端は0.1mg/Lであることが明らかになりました。
ククルビタシンやギ酸を多く含むヘタ側の先端をカットして食べれば苦味を感じにくくなるため、アク抜きは不要といわれることが多いです。
出典:
・キュウリに含まれるギ酸の部位別分析と味覚特性(日本栄養・食糧学会)
・キュウリの渋味要因と調理操作による低減(日本調理学会)
・Cucurbitacin C-Bitter Principle in Cucumber Plants(JARQ)
先端をカットしても苦味成分が完全になくなるわけではありません。
苦味成分の一種であるククルビタシンは確かにヘタ側に多く含まれますが、中心部分や花が咲いている側にも微量ながらにも含まれています。またギ酸に関しても同じことがいえます。
ヘタ側以外の場所にはアクが少ないとはいえ、アク抜きをしたほうが苦味が軽減され美味しく食べることができるメリットがあります。
きゅうりの苦味が気になる場合や美味しく食べたい場合は、アク抜きをすることをおすすめします。アク抜きの方法は下記で詳しく解説します。
きゅうりの苦味成分であるククルビタシンは、大量に摂取してしまうと食中毒を招く可能性があり、下痢や嘔吐などの症状が出ることがあります。また、もう一つの苦味成分の蟻酸も、摂取量が多い場合には健康への影響が懸念されます。
基本的にスーパーなどで販売されているきゅうりは苦味成分の含有量はそこまで多くないため神経質になる必要はありませんが、家庭菜園で育てているきゅうりの場合は生育環境などによって苦味成分の含有量が増えてしまっていることがあります。
飲み込めないほど強い苦味を感じる場合は、アク抜きをしたとしても危険なため食べずに破棄しましょう。
出典:食品安全関係情報詳細(食品安全委員会)
きゅうりのアク抜きの基本的なやり方をご紹介します。きゅうりのアク抜きの基本的な方法は、ヘタをカットし身の切り口とこすり合わせてアクを抜きます。
こすりあわせることで維管束が刺激され、白い液体が出てきます。この白い液体の中に苦味成分であるギ酸が含まれており、予め切り口をすり合わせて液体を取り除いておくことできゅうりのアクを取ることができます。
まずはきゅうりを水洗いします。一見きれいに見えても、汚れや農薬が付いている可能性があるので、流水で洗い流しましょう。
農薬や雑菌が気になる方におすすめなのが、野菜や果物専用の洗剤で洗うことです。特におすすめなのがホッキ貝です。ホッキ貝は他の貝殻と比較しても除菌効果が高いことが研究で立証されています。
ホタテ貝やホッキ貝のパウダーを溶かした水にブロッコリーを5分~10分漬けておくと水溶液が次第に濁ってきたり薬品が浮いてきたりします。目にみえて残留農薬が落ちていることがわかるので流水で洗い流したりするよりも安心できます。
水洗いしたきゅうりのヘタをカットします。カットする側は、茎に繋がっていた部分です(花が付いている側はお尻側です)。
先端から1.5cm程度を切り落とします。切り落とした側も使用するので、捨てないようにしましょう。
ヘタを切り落としたら、切り落とした側の切り口と身の切り口をクルクルとこすり合わせます。こすり合わせる時間の目安は20〜30秒程度です。こすり合わせると白い泡のようなものが付着しますが、この中に、苦味成分である蟻酸が含まれています。
こすり合わせて白い液体が出てきたら、水で洗い流してアク抜き完了です。
出典:キュウリの「ヘタ」と「実」の切り口をこすりあわせることにより渋味を低減できる(農研機構)
アク抜きといえば、野菜全体を茹でたりすることが多いですが、きゅうりはヘタをカットして端をこすり合わせるだけなので、それだけで全体のアクが抜けるの?と思いますよね。
きゅうりの苦味成分が含まれている維管束は端から端まで通っていますが、ヘタをカットして端をこすり合わせるだけで大半の苦味成分を出すことができます。
きゅうりの板ずりの本来の目的は、表面の突起を取り口触りをよくすること、そして色を鮮やかにすることです。つまり、きゅうりの板ずりはアク抜きではありません。
しかし、板ずりすることでも若干苦味が取ることができます。
板ずりする前にある程度の汚れや農薬は落としておく方がベターなので、きゅうりを板ずりする前に流水で洗い流しましょう。
表面のイボはトゲトゲしているので、怪我には十分気をつけながら洗いましょう。心配な方は手袋を装着して洗うことをおすすめします。
きゅうりを洗ったら、きゅうり1本あたり塩小さじ1/2をまぶして、まな板の上で転がします。3本程度であればまとめて同時に板ずりすることが可能です。きゅうり表面のトゲが丸みを帯びてなめらかになるまで転がしましょう。
転がす時はゴロゴロと音がいうように少し強めの力を入れて転がしましょう。力が弱いとイボが取れにくかったり、塩がなじみにくくなります。また逆に力を入れすぎるときゅうりが潰れてしまいますので注意しましょう。
板ずりが終わったらそのままの状態で(もしくは皿などに移して)数分置いて塩をなじませます。
板ずりする際の塩には苦味成分や農薬などが含まれている可能性があるので、最後にさっと水洗いして塩や汚れを取り除くのがおすすめです。
流水で表面に付いた塩を洗い流し、最後にキッチンペーパーで水けを拭き取って板ずり完了です。あとは料理に合わせてお好みの大きさにカットしましょう。
洗い物を増やしたくない場合は、まな板を使わずに「板ずり」する方法があります。
水洗いしたきゅうりを1本手で持ち、塩小さじ1/2をきゅうり全体にまぶして手で上下にすりこみます。手だけで行うので洗い物が出ません。板ずり後は数分放置し、塩を流水で流して完成です。
手で板ずりを行う際は、イボで怪我をしないように注意しましょう。ゴム手袋を付けて行うとより安全です。
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