見た目が似ているきび砂糖と三温糖ですが、どんな違いがあるのでしょうか。調理での使い分けを解説していきます。
きび砂糖の見た目はどちらも茶色で、とても良く似ていますよね。しかし、色は似ていても違いがあります。
きび砂糖は通常、小さな角柱状や円柱状の形をしています。表面には微小な結晶が見られ、全体的に茶色っぽい色合いをしています。きび砂糖の色は原料そのものの自然な色合いです。
黒褐色から濃い茶色をしており、きび砂糖よりも粒が大きく、ふっくらとした形状をしています。三温糖の色は製造過程でつくものであり、原料そのものの色ではありません。
三温糖ときび砂糖の原料は、共にサトウキビです。
サトウキビは、イネ科の多年性植物です。茎だけで高さが3mにもなり、茎には竹のように節があります。高温多湿で年間の平均気温が20℃以上の土地でよく育つといわれており、日本では沖縄県と鹿児島県が主な生産地となっています。日本国内で、年間約18.6万トン*のサトウキビが生産されています。
ただし、三温糖はテンサイを原料に作られることもあります。
テンサイは見た目は大根に似ていますが、植物学上ではホウレンソウと同じヒユ科に属します。紅白の2種類があり、砂糖の原料として使用されるのは白色のほうです。甜菜は温かい地域では病虫害に侵されやすいため、一般的に寒地で栽培されます。日本の主な生産地は北海道で、年間約62.1万トン*もの甜菜が生産されています。
*2009年の国内原料における砂糖生産量
きび砂糖は、原料であるサトウキビの搾り汁から不純物を取り除き、搾り汁をそのまま煮詰めて作られます。糖蜜成分を含んだまま作られるため、ミネラルなどの栄養素が多く含まれているのが特徴です。
近年では原料糖を溶かして液体にし、精製する途中で煮詰めて結晶化して作られていることが多いです。
上白糖などの一般的な砂糖は精製工程が多いため、無色透明の砂糖に仕上がります。一方で、きび砂糖は製造工程が上白糖より少ないため、もともとサトウキビに含まれる成分や風味が残ります。
きび砂糖の詳しい製法についてはこちらの記事でも紹介しているので、参考にしてください。
サトウキビやテンサイを原料に上白糖をつくる際に得られる糖蜜から作られるのが三温糖です。上白糖やグラニュー糖を分離して残った糖蜜を数回カラメル色になるまで加熱して作られます。
三温糖という名前は、「糖蜜を三度煮詰めてつくる」という工程に由来しています。三温糖が茶色いのは上述したように三温糖を作る際の加熱によって黄褐色に色付くためであり、原料そのものの色ではありません。
三温糖の製法についてはこちらの記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。
砂糖には原料による分類と、製法による分類があります。
原料による分類は、サトウキビ(正式名称は甘庶)由来の砂糖を「甘庶糖(かんしょとう)」、ビート(サトウダイコン、テンサイ)由来の砂糖を「ビート糖」または「テンサイ糖」と呼びます。
製法による分類は、分蜜糖(ぶんみつとう)と含蜜糖(がんみつとう)に大別されます。
分蜜糖は、原料を絞った搾り汁(糖汁)から不純物を取り除き、濃縮して得られる白下糖(結晶と糖蜜の混合物)を分離させて、結晶だけを取り出して乾燥させた砂糖のことを指します。さらに分蜜糖はザラメ糖や車糖、加工糖などに細分化されます。
含蜜糖は、原料の絞り汁(糖汁)から、不要な成分や不純物を大まかに除去し、そのまま加熱・濃縮して固化させた砂糖のことを指します。
きび砂糖の原料はサトウキビなので、原料による分類では甘庶糖に該当します。
製法による分類では含蜜糖に分類します。しかし、メーカーによっては製造方法が異なり、分蜜糖に分類されることもあります。近年では多くのメーカーのきび砂糖が分蜜糖に該当するようです。
三温糖はサトウキビを原料に作られている場合は「甘庶糖」に該当し、テンサイを原料に作られている場合は「ビート糖」に該当します。
日本で消費される砂糖のうち3〜4割は国産原料で、6〜7割は輸入糖です。国産砂糖のうち約7割がテンサイ由来で、約3割がサトウキビ由来です。輸入糖はほぼすべてサトウキビ由来です。つまり、日本で消費される砂糖の約8割は甘庶糖ということになります。
製法による分類は、分蜜糖に該当します。
きび砂糖は、一般的に家で使われることが多い上白糖と甘さと同じです。
ほのかに原料であるさとうきびの風味があり、どちらかといえば黒砂糖に似ています。三温糖と比較すると、きび砂糖のほうが優しい甘みを感じます。
三温糖は一般的に家庭で使われている上白糖よりも糖度は低いですが、上白糖と比較すると甘いと感じる方が多いです。これは、三温糖に含まれる不純物質(ミネラル分、アミノ酸、有機酸など)の影響であると考えられます。
きび砂糖との大きな違いは風味です。三温糖は糖蜜を煮詰めているためカラメル風味がするのが特徴です。
一般的なきび砂糖100gのカロリーと栄養素は下記の通りです。
エネルギー(熱量)…396kcal
たんぱく質…0g
脂質…0g
炭水化物…98.8g
ナトリウム…20mg
カリウム…142mg
カルシウム…23mg
マグネシウム…15mg
リン…1.1mg
鉄…0.3mg
亜鉛…0mg
銅…0.1mg
食塩相当量…0.14g
食物繊維総量…0g
上記の栄養成分表からもわかるように、きび砂糖にはカリウムやカルシウムなどの無機質(ミネラル)が他の砂糖と比べると豊富に含まれています。これは、きび砂糖が、糖蜜を含んでつくる「含蜜糖」だからです。糖蜜を取り除いてつくられる「分蜜糖」には、これらの無機質(ミネラル)はほとんど含まれていません。
一般的な三温糖100gのカロリーと栄養素は下記の通りです。
エネルギー…382kcal
水分…1.2g
たんぱく質…Tr
脂質…0g
炭水化物…98.7g
カリウム…13mg
カルシウム…6mg
鉄…0.1mg
食物繊維総量…0g
※「Tr」とは、微量含まれるという意味
三温糖にもミネラル類が含まれていますが、摂取できる無機質(ミネラル)の量は微々たるものなので「三温糖はミネラルが豊富」とはいいきれません。これは三温糖が糖蜜を取り除いて作られる分蜜糖であるためです。
きび砂糖のGI値は100であり、三温糖のGI値は108とこちらも大差はありません。いずれも高GI値食品に分類されます。ちなみに他の砂糖のGI値は、グラニュー糖は110、黒砂糖は99、てんさい糖は65です。GI値で見ると、てんさい糖を使用した方が、血糖値の急激な上昇を抑えやすくなります。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
三温糖は甘味が強く、カラメル風味が感じられるため、煮物や佃煮、菓子などの調理に向いています。煮魚に使うとコクが出て奥深い味が出ます。特に、サバの味噌煮には最適とされています。
ちなみに三温糖に限らず砂糖全般にいえることですが、砂糖は材料への浸透が食塩より遅いため、煮物を作る際は、砂糖を先に加えると良いといわれています。
三温糖よりもまろやかで優しい甘みを出したいときには、きび砂糖を使うと良いでしょう。まろやかな甘さが特徴です。色付きを気にしなければ、一般的に家庭で使われることが多い上白糖と同様に料理全般や菓子、コーヒーなど幅広く使用することが可能です。
きび砂糖と三温糖はともにミネラルなどの栄養が含まれているぶん、一般的に使用されることが多い上白糖よりも栄養価が高く健康に良いとされています。ミネラル類の含有量でいえばきび砂糖のほうが栄養価が高いといえますが、きび砂糖のほうが圧倒的に健康に良いというわけではありません。
きび砂糖と三温糖のどちらも糖質自体が多く含まれているため、過剰摂取は健康に悪影響を与える可能性があるので注意が必要です。
きび砂糖と三温糖は上述したように、どちらもGI値が100を超える高GI値の調味料です。急激に血糖値が上昇するぶん、急激な血糖値の下降が起こるため満腹感も持続しません。そのため、どちもダイエット中である
場合は特に過剰摂取しないよう注意しましょう。
ちなみにダイエットにおすすめなのはアガベシロップです。アガベシロップはメキシコを中心に分布している多肉植物「アガベ」から作られる甘味料です。アガベは、一般的な砂糖(上白糖、白砂糖)の1.3倍の甘さがあるのにもかかわらず、カロリーは75%と低く、またGI値は驚きの21です!血糖値の急激な上昇を抑えたり、アガベシロップに含まれるイヌリンが腸内環境を整えてくれます。健康や美容効果が期待できることから、注目を集めています。
三温糖ときび砂糖はお互いに似たような風味や甘さを持つため、一部のレシピでは代用が可能です。ただし、全く同じようになるわけではありません。
例えば三温糖は独特の風味が強いため、きび砂糖で代用することで物足りなさを感じてしまうことがあります。代用する場合は、レシピや使用用途に応じて使用量を調節したり、別のもので代用するなど適切な判断をすることが重要です。
きび砂糖と三温糖を混ぜて使うことはできます。それぞれ独特の風味や甘さがあるため、混ぜることで新しい味わいを楽しむことができます。
ただし、混ぜる割合によっては、それまでの砂糖とは違った風味や甘さが出ることがあり料理の味に影響することがあります。混ぜる割合は、お好みに合わせて調整しましょう。
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