じゃがいものえぐみは天然毒素ソラニンやチャコニンによるものです。本記事ではじゃがいものえぐみについて詳しく解説します。
じゃがいもにえぐみを感じる原因は下記の通りです。
じゃがいものえぐみの正体は、有毒な配糖体であるα-ソラニンやα-チャコニンなどのグリコアルカロイドです。
じゃがいもに含まれているソラニンやチャコニンといった天然毒素は、じゃがいもが害虫などの天敵から身を守るために生成されるようになったと言われています。ソラニンやチャコニンは日光に当たることで増えていきます。日光に当たるとソラニンやチャコニンが生成されるのと同時に葉緑体が生成されて皮が緑色になります。緑色になった皮の部分には、100gあたり100mg(0.1g)以上のソラニンやチャコニンが含まれているといわれています。また傷がついたりすることでも増えます。
ソラニンやチャコニンは皮だけではなくじゃがいもの芽にも多く含まれています。じゃがいもの芽を取り除いて食べる必要があるのはこのためです。
ソラニンやチャコニンが多く含まれているじゃがいもを食べると、えぐみがあるだけではなく腹痛やめまいなどの中毒症状を引き起こす可能性があります。
出典:ソラニンやチャコニンとは(農林水産省)
じゃがいも以外にも苦味やえぐみが強い野菜はたくさんあります。例えば、ごぼうやなすなどのエグミは、ポリフェノールです。ポリフェノールとは、植物に含まれる苦味・えぐみを感じさせる成分の総称です。
ポリフェノールは人体に害がある成分ではないので、食べても問題ありません。
一方、じゃがいもには上記で紹介したソラニンやチャコニンなどのグリコアルカロイド以外にえぐみを感じさせる成分は基本的に含まれていません。そのため、食べてえぐみを感じたときは天然毒素によるものであるため注意が必要です。
えぐみだけではなく、後味が酸っぱい感じがする場合は腐敗している可能性があります。
じゃがいもに限らず、食材は腐敗すると多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がしたりします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象があるときに「腐敗」とよばれます。
じゃがいもの天然毒素が多く生成されてしまう原因として、栽培中の発育環境が悪いということがあげられます。
上述したように、天然毒素であるソラニンやチャコニンはじゃがいもが日光に当たることによって多く生成されます。そのためじゃがいもが成長していき土から出てしまうなど、直射日光に当たる環境で育ってしまうとソラニンやチャコニンが多く生成されます。じゃがいもを栽培するときにはじゃがいもが土から出ないように土寄せを行うことが大切です。
未熟なじゃがいもがソラニンやチャコニンが増えやすいといわれています。
未熟な状態で収穫されたじゃがいもは、皮が未発達の状態で日光に当たることにより毒素となるソラニンやチャコニンの増加が早くなるため、成長してから収穫されたじゃがいもよりも多くのソラニンやチャコニンが含まれることがわかっています。
スーパーなどで販売されているじゃがいもは成長してから収穫されていますが、家庭菜園でじゃがいもを育てて食べる場合は、未熟なじゃがいもを収穫して直射日光に当ててしまわないよう十分注意が必要です。
じゃがいもは比較的腐りにくく長期保存できる野菜ではありますが、正しく保存できていないとソラニンやチャコニンが生成されてしまいます。
例えば直射日光の当たる場所や蛍光灯の光が当たる場所での常温保存はソラニンやチャコニンが多く生成される原因となります。
また、じゃがいもは収穫後だいたい3ヶ月は休眠期間に入るため芽を出したりすることはありません。しかし、休眠期間をすぎると子孫を残そうと成長していくためソラニンやチャコニンを生成し、芽を出してしまいます。じゃがいもの品種によっては休眠期間が短く3ヶ月よりも前に成長を始めることもありますし、保存環境によって休眠期間が短くなることもあります。長持ちする野菜だからといって保存に適さない環境に長時間放置していると、知らない間にソラニンやチャコニンが生成されているということがあります。
じゃがいもの正しい保存保存はこの記事の最後にご紹介しています。
じゃがいもの品種によってはえぐみが出やすい品種もあります。例えば「とうや」とよばれる品種や「スタールビー」と呼ばれる皮が赤い品種のじゃがいもはえぐみがでやすいといわれています。
一般的にスーパーで販売されているのは「男爵(だんしゃく)」や「メークイン」という品種のじゃがいもです。男爵やメークインはどちらもえぐみが出やすい品種ではありませんので、普段の買い物ではそれほど意識する必要はありませんが、様々な品種の中から選ぶ場合はえぐみの出やすい品種を避けて購入するのも良いでしょう。
じゃがいものえぐみを取るには、調理前の下処理が重要です。
上述したようにじゃがいもの芽の部分には天然毒素が多く含まれていますので、そのまま調理をしてしまうと強いえぐみを感じたり中毒症状を引き起こす可能性が高いです。
保存中に芽が生えてきてしまっていたら、必ず取り除いて調理しましょう。じゃがいもから芽が出てしまっても、ソラニンやチャコニンがじゃがいも全体に浸透しているというわけではないので、芽の部分を取り除けば食べることができます。
また、じゃがいもの皮にも天然毒素が含まれています。上述したように日光にあたり緑色に変色している皮には天然毒素が多く含まれているので皮は必ず厚めにむいて調理をすることが大切です。中まで緑色になってしまっている場合は、緑色に変色している部分にも天然毒素が含まれていますので取り除いてください。変色している部分を取り除くことでえぐみを軽減されます。
調理後にえぐみを取ることはできないので注意しましょう。
皮が緑色(青)に変色してしまっているじゃがいもは、上述したように日光に当たっている=天然毒素が多く生成されている状態です。
そのまま調理してしまうとエグみが出てしまうので、緑化している部分は厚めに皮を剥きましょう。外側だけではなく内側も変色していることがあります。この場合もしっかりと取り除いてから調理してください。
あまりにも全体的に緑色になってしまっている場合は、破棄するのが無難です。
上述したように、ごぼうやなすなどえぐみを感じやすい野菜を調理する場合は下処理として水にさらすことがあります。これは、えぐみを感じさせる原因であるポリフェノールが水溶性で、水にさらすことで落とすことができるためです。
しかし、じゃがいもの場合はアク抜き(水さらし)はマストではありません。じゃがいものえぐみや苦味の原因である天然毒素ソラニンやチャコニンは水にさらすと一部が溶け出すことがわかっていますが、通常の調理で行われる水さらしでどれぐらい落ちるのか不明です。
煮くずれを防止するためや変色を防ぐためなど、料理によっては水にさらすことはありますが、えぐみを取るのは難しいと考えたほうが良いでしょう。
また、じゃがいもの芽に含まれるソラニンやチャコニンは加熱しても残ります。揚げたり、茹でたりすれば大丈夫ということはないので注意してください。海外ではじゃがいもの加熱調理によってソラニンやチャコニンが減少したとの報告もあります。しかし、調理前のじゃがいものソラニンやチャコニンの濃度はそれぞれ異なり、毒素の減り方にもばらつきがあります。高温で揚げたり焼いたりしても6割程度の毒素が残ったという実験結果もありますので、加熱をしても毒性は消えないと思っていたほうが良いでしょう。
出典:じゃがいもの加熱調理によるソラニン・チャコニンへの影響
えぐみの原因となる天然毒素は多くの場合、調理をしても残ります。そのため、カレーに入っていたじゃがいもを食べてみたら強いえぐみを感じたということもあります。
万が一えぐみ強いじゃがいもを食べてしまった場合は、上述したように吐き気やおう吐、下痢、腹痛、頭痛、めまいなど症状が出る可能性があります。ソラニンやチャコニンによる中毒症状は、食後 30分〜半日で発症するといわれています。食べてしまったときはすぐに症状がでなくてもしばらく様子を見ましょう。ソラニンやチャコニンの毒素は症状がでなければ問題ありません。
吐き気や腹痛などの症状が出てしまった場合は、ただちに病院を受診しましょう。ソラニンやチャコニンの毒性は自分で解毒できるものではありません。また、解毒剤もないため症状が重い場合は、胃洗浄などの処置で対処することになることが多いようです。
毒素を食べてしまったと思うと症状がでなくても体内に蓄積されているのではと心配になる方も多いかと思いますが、じゃがいもの毒素が体内に蓄積されるという報告はありません。やがて代謝されて尿や便となって排出されるため心配しなくでも大丈夫です。
出典:じゃがいもに含まれる天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関するQ&A(農林水産省)
じゃがいもは正しく保存することでソラニンやチャコニンの生成を抑えることができるため、えぐみが出にくくなります。
下記でご紹介している保存方法の詳しい解説はこちらの記事でご紹介していますので、ぜひご覧ください。
じゃがいもは最も保存しやすい野菜の一つです。基本的に冷暗所で常温保存が推奨され、3ヶ月程保存することができます。上述したように、高温多湿の場所や明るい場所はソラニンやチャコニンが生成され、芽が出やすくなる他、カビを繁殖させるなど腐敗をすすめる原因となりますので避けましょう。
じゃがいもは水分が多い野菜ですが、貯蔵において低温に弱いわけではありません(低温で保存できないわけではありません)。しかし、0〜5℃の温度で保存すると、でんぷんが糖化し、ホクホクとした食感が損なわれてしまいます。そのため、冷蔵・冷凍保存にはあまり向かず、常温保存をおすすめしている次第です。ちなみに、じゃがいもを20℃の環境に1週間ほど放置しておけば、糖化したでんぷんは8割ほど元に戻ります。
じゃがいもを多く購入した場合は、新聞紙を下に敷いたダンボール等にまとめて入れて、上から新聞紙をかぶせます。
じゃがいもの数がそこまで多くない場合や、ダンボールや新聞紙がない場合は、紙袋に入れましょう。
じゃがいもはそこまで乾燥に弱いわけではないので、一つずつ新聞紙(またはキッチンペーパー)に包まなくても、長く保存できます。特に数が多いときは面倒なのでまとめて保湿。直射日光が当たらず風通しのよい涼しい場所なら、秋・冬は3ヶ月、夏場でも1ヶ月は常温保存が可能です。
ビタミンが多く「大地のりんご」ともいわれるじゃがいもですが、りんごと一緒に常温保存するのがおすすめです。りんごから放出されるエチレンガスは果実の熟成を進めますが、じゃがいもの発芽を抑える効果があります。じゃがいもは暖かく明るい場所で発芽が進むので、繰り返しになりますが、冷暗所で保存するのが大切!
前述した通り基本的には常温保存がおすすめなじゃがいもですが、下記の場合は冷蔵保存がおすすめです。
夏場に1ヶ月よりも長く保存したい(夏も安心して保存したい)
冬場であっても3ヶ月より長く保存したい
じゃがいもは正しく冷蔵すれば半年ほど保存することができます。また、じゃがいもは低温保存すると、収穫直後では少なかった糖分(0.1〜0.5%)が、増加(0.5〜2.5%)します。
丸ごとじゃがいもを冷蔵保存する場合は、一つずつキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて軽く口を締め、野菜室に入れます。キッチンペーパーに包むことで寒さからじゃがいもを守ることができます。ポリ袋に入れることで乾燥しすぎることを防ぎながら、口は軽く締めることで通気性を保ちます。1週間に1度はキッチンペーパーが湿っていないか確認し、湿っている場合は新しいものに取り替えましょう。野菜室は温度・湿度ともに冷蔵室より高いので、じゃがいもに適しています。冷蔵保存でもりんごを一緒に入れると発芽を抑える効果があります。
じゃがいもは常温や冷蔵以外に、冷凍保存や乾燥保存、漬け保存なども可能です。これらの保存方法についてはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。
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