玉ねぎは必ずといっていいほどカレーに入っている具材の一つですが、玉ねぎを切らしてしまった場合や玉ねぎが苦手で入れたくないなど、玉ねぎなしでカレーを作れないのかと考えたことがある方は多いのではないでしょうか。本記事ではカレーに入れる玉ねぎの代用品となる野菜などを紹介します。
カレーにおける玉ねぎの役割は、甘みによってコクを深めることです。
コクに明確な定義はないと言われていますが、味や香り、食感に関する複数の刺激がバランスよく与えられ、濃厚感(複雑さや厚み)があり、持続性、広がりがある時に感じられる味わいであると考えられています。コクは料理の美味しさを決める一つの要因となります。
玉ねぎは炒めることで飴色になり甘みが増します。炒めることで玉ねぎの甘味が増すのは、下記の3つの理由が考えられます。
辛味成分である硫化アリルの揮発によって、甘みを強く感じる
水分の蒸発によって、糖濃度が上昇する。
加熱による組織の破壊や軟化により甘味を強く感じる。
カレーの場合はスパイシーな味や香りに玉ねぎの甘味が加わることによってコクが深まります。
玉ねぎにはカレーのコクを深める役割を果たしていますが、玉ねぎなしでも美味しいカレーを作ることができます。実際にカレー発祥の国として知られている本場のインドでは玉ねぎが入っていることの方が少ないです。
ただし、普段作っているカレーは本場のインドカレーとは厳密にいえば異なるものなので、単に玉ねぎを抜いて作るだけではやはりコクに深みがでず物足りなさを感じることが多いです。そのため、玉ねぎなしで作る場合は玉ねぎの代用品としてカレーに甘みを加えコクを出す食材を加えて作るのが理想的です。
玉ねぎ以外で代用する場合は、加熱することで甘みが出る野菜を使うのがポイントです。料理によっては、もやしやセロリ、大根など、玉ねぎに食感が近い野菜で代用することがありますが、カレーには向きません。
カレーに入れる玉ねぎの代用品として定番なのは長ネギです。
長ネギは玉ねぎと同じく辛味成分でありツンとした匂いの元であるアリシンを豊富に含む野菜であるため、辛いという印象が強い方が多いかと思いますが、加熱した長ネギの糖度はいちごを超える14〜15%にもなると言われています。加熱をすると甘味が強くなるのは、玉ねぎと同様にアリシンが揮発し甘さが際立つためです。
食感も玉ねぎに似ているため、玉ねぎの代用品としておすすめです。
キャベツや白菜の芯もカレーの玉ねぎの代用品に適しています。
キャベツや白菜の芯は固いといった理由から取り除いて調理をする方が多いと思いますが、実は甘味成分であるアラニンやスクロースなどの糖類が含まれていて加熱をすることで甘味が出ます。
生で食べると芯の匂いなどが気になる方も多いですが、加熱をすることで匂いも気にならなくなります。食感が気になる方は、細かく切ると気にならなくなります。キャベツや白菜の芯には栄養素も多く含まれているため栄養価も高くなります。
ただし、キャベツや白菜は水分を多く含む野菜ですので、これらの野菜を上手に使う場合は水分量に注意し、しっかりと加熱しましょう。しっかりと加熱することで旨味を凝縮させることができます。
ナスにもキャベツの芯などに多く含まれる甘味成分のアラニンやセリンに由来する「甘味アミノ酸」が増加することにより、甘味が強くなります。そのため、玉ねぎの代用品としてナスを加えることでカレーに甘味を加えコクを深めることができます。
ナスは加熱をするととろとろになり、煮崩れしやすいため形を維持しやすい「輪切り」や「斜め切り」で3cm程の厚さで切って入れるのがおすすめです。
出典:焼きナスの調理条件とおいしさの関係
さつまいもも加熱をすると甘味が出て、カレーにコクを出すことができます。
さつまいもが加熱によって甘くなるのは、さつまいもに含まれているでんぷん分解酵素「アミラーゼ」がでんぷんに作用して麦芽糖「マルトース」を生成するためだと言われています。焼きイモのようにアミラーゼが働きやすい比較的低い温度でじっくりと加熱した方が甘味が出やすいため、じっくり煮込んだ方が甘味を感じやすくなります。
前述した通り、カレーにおける玉ねぎの役割は甘みです。そのため、代用野菜がない場合は、甘味料を足すのもひとつの手段です。
Filyでは白砂糖を使用しないレシピを紹介しているので、ここでは白砂糖(上白糖)は省きます。
玉ねぎの代用になる甘味料には、まずはちみつがあります。はちみつはコクと風味を出す隠し味としてカレー以外の料理にも使われます。
カレーのコクを深める目的で玉ねぎの代わりに入れる場合は、ルウを溶かす前に入れることが大切です。はちみつに含まれているアミラーゼには、でんぷんを分解する作用があるためルウを入れた後に入れてしまうと、ルウに含まれている小麦粉のでんぷんを分解してしまい、サラサラとしたカレーになってしまいます。
メープルシロップは、サトウカエデなどの樹液を濃縮した甘味料です。はちみつとは異なる独特の風味があるため、カレーの味を損ねてしまうのではと心配になる方も多いかと思いますが、メープルシロップには玉ねぎの甘味を補ってコクのあるまろやかな味わいにするだけではなく、ミネラルによって旨味を加えることもできます。
また、メープルシロップは、はちみつよりもカロリーが低いためダイエット中でカロリーを抑えたいという方にもおすすめです。
アガベシロップは、アガベという植物を原料に作られる甘味料です。アガベはメキシコを中心に広がる植物で、約300種類以上存在すると言われており、主にブルーアガベの根茎の部分を絞って作られます。
アガベシロップには白砂糖の1.3〜1.5倍の甘さがあると言われており、カレーに加えることで甘味を加えコクを出すことができます。
アガベシロップは砂糖よりも甘味があるのにも関わらず、GI値21と低GI値に該当する甘味料であるという利点もあります。ちなみに白砂糖はGI値が約109と高GI値の甘味料です。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
てんさい糖は、テンサイ(甜菜)の根から取れる搾り汁を原料に作る甘味料です。
てんさい糖にはオリゴ糖が含まれています。そのため、甘味でカレーのコクを深めるだけではなく腸内環境を整える効果も期待できます。
てんさい糖を入れるタイミングとしては、野菜や肉を炒めているときがおすすめです。玉ねぎを加えて炒めているときと同じような効果があります。
黒砂糖は、サトウキビを原料に作られる甘味料です。
黒砂糖にはコクを深める甘味はもちろんのこと、ミネラルも豊富に含まれているため旨味を出すこともできます。黒砂糖を入れるタイミングもてんさい糖と同じく肉や野菜を炒めているときが良いです。
玉ねぎがないときはコクを出すために、隠し味を使うのもおすすめです。これらのアイデアは玉ねぎがあるときでも使うことができます。
玉ねぎを入れず代用となる野菜も入れない場合、スパイスを足すことで物足りなさをカバーすることができます。基本的に玉ねぎが入っていない本場のインドに物足りなさを感じないのはスパイスをふんだんに使って作られているからだと考えられます。スパイスといっても様々な種類がありますが、おすすめなのは「ガラムマサラ」です。
ガラムマサラは、主にブラックペッパーやカルダモン、コリアンダー、クミンなど3~10種類のスパイスを配合して作るインドを代表するミックススパイスです。スパイスを加えることで辛くなってしまうのでは?と思う方も多いかと思いますが、ガラムマサラは基本的には香り付けをする役割をもつスパイスであり辛さを加えるものではありません。ただし、種類によってはチリパウダーを加えて辛味があるものもありますので辛味が苦手な方は注意してください。
ギーとは、牛乳や水牛の乳、無塩バターなどを煮詰めて水分や蛋白質を取り除いて作るバターオイルの一種で、インドを中心に古くから作られています。
ギーを加えれば玉ねぎや玉ねぎの代用となる野菜を入れなくても、しっかりとしたコクを出すことができます。バターでも良いのですが、ギーにはオレイン酸やビタミンAやビタミンEなどが豊富に含まれているためおすすめです。
鰹だしや昆布だしなどの出汁は、あっさりしていますがカレーとの相性がよいので玉ねぎを使わなくてもおいしいカレーを作ることができます。
出汁には旨味成分がたっぷりと含まれていますので、旨味が加わり濃厚な味わいになります。出汁の中でも相性が良いのが鰹だしです。
また、出汁といえば魚介類を原料に作るものを思い浮かべるかと思いますが、野菜を原料に作られる「野菜出汁」もあります。野菜出汁はスーパーなどでも一般的に販売されていますが、野菜の皮や葉、根、ヘタ、茎の先などの普段捨ててしまうような部分から自宅でも簡単に作ることができます。カレーに加えるとコクを深めてくれますのでぜひ試してみてください。
カレーは「翌日が美味しい」とよく言われますが、これは一晩寝かせることによりコクと深みが増すからです。コーヒーを隠し味に入れると、作った当日でも翌日に食べるカレーのようなコクと深みがでます。
使えるコーヒーは、インスタントコーヒーです。インスタントコーヒーであれば、鍋にそのまま入れてもすぐに溶けます。予めお湯で溶かしてから加えてもよいです。はちみつとは異なり、ルウがしっかりと溶けた後で大丈夫です。
隠し味にチョコを加えると、コクを加えることができるだけではなくほんのりと甘くなるため辛さがマイルドになります。はちみつなどの甘味料を加えても甘くなりますが、チョコを加えることによって出る甘味は高級感のあるなんとも言えない甘味で、小さなお子様でも食べやすいです。
チョコを加えるときは、ルウを加えるときと同じように一度火を止めてから入れて溶かします。ルウを入れる前でも入れた後でもどちらでも大丈夫ですが、同時に入れないようにしましょう。チョコとルウを一緒に入れてしまうと固まってしまってうまく溶けないことがあります。一欠片ずつ入れて、味見をしながら分量を調節してください。
オイスターソースの「オイスター」とは英語で「牡蠣(かき)」を意味し、その名の通り牡蠣を原料に作られているソースです。オイスターソースは、牡蠣を茹でた煮汁を煮詰めたものに砂糖や酢など調味料を加えてとろみをつけています。
オイスターソースには旨味やコクをプラスすることができる成分が入っているため、カレーの隠し味にぴったりです。
ソースなので入れた後はさっとかき混ぜるだけで溶け込んでいきます。かなり味が濃いので入れすぎには注意が必要です。小さじ1程度を目安に味を見ながら少しずつ加えていきましょう。オイスターソースを加えることで翌日のカレーも深みが増します。
ケチャップは、トマトピューレをベースに砂糖や塩、酢などの調味料とスパイス、玉ねぎ・セロリなどの野菜を加えて作られている調味料です。ケチャップを隠し味に入れてじっくり煮込むだけで甘味が増し辛さをマイルドにすることができるだけではなく旨味をプラスすることができます。
酸味が強いため、カレーが出来上がった後に仕上げとしてプラスするとさっぱりとした味わいに仕上げることも可能です。入れるタイイングはお好みに合わせて決めましょう。
ケチャップも味が濃いため多く入れすぎると味がガラっと変わってしまいます。小さじ1程度を目安に様子を見ながら調節してください。
最後に、玉ねぎの有無に関係なく、カレーを美味しく作る方法を紹介します。
カレーは、にんじんやじゃがいもなど様々な具材を入れて作る方が多いと思いますが、具材は大きさを揃えて切ることが大切です。
具材の大きさがバラバラだと火の通りが均一にならず、にんじんにはまだ火が通っていないのにじゃがいもだけ煮崩れてしまうなどの原因になります。適当な大きさに切ってしまいがちですが、具材の大きさを揃えるようにしましょう。
肉は野菜と一緒に炒めるのではなく焼きましょう。
肉は塩こしょうをした後に熱したフライパンに並べ、表面を丁寧に少し焦げ目がつくくらいに焼きます。そうすることで香ばしさが出て風味が良くなり、コクも増します。野菜と一緒に煮込むので、この時点で中まで火を通しておく必要はありません。火を通しすぎると固くなってしまうので注意しましょう。
カレーを煮込んでいると肉や野菜から灰汁がでてきます。少々面倒ですが、灰汁はきちんと取り除いておくことが大切です。
灰汁を取らないと渋みやえぐみが出てカレーの味を損ねてしまいます。また、口に入れたときも舌にザラザラと残り口当たりが悪くなります。
灰汁はお玉で簡単にすくい取ることができます。ただし、灰汁をすくい取ったお玉をそのまま鍋に戻してしまうと、落としきれていない灰汁が再び鍋の中に戻ってしまいます。そのため灰汁をとるときは水を張ったボウルを用意し、鍋に再びお玉を入れる前に水を張ったボウルで綺麗に落とすと良いです。
カレーは誰でも比較的簡単に作れる料理の一つであるため、作り方を覚えていると目分量で作る方も多くいます。しかし、カレーに適度なとろみをつけるには水分量が極めて重要です。
水が多すぎてしまうとシャバシャバになってしまいますし、水分量が少ないともったりとしてしまいます。市販のルウを使用する場合、メーカーによって水分量が異なるのでパッケージなどに記載されている量をしっかり計って入れましょう。
カレーを作る際には軟水ではなく硬水がおすすめです。
軟水は1Lあたり120mg以上のカルシウムやマグネシウムが含まれている水のことを指します。反対に軟水は1Lあたりのカルシウムやマグネシウムが120mg以下の水です。
硬水を使うと豊富に含まれているミネラルが肉類のアクを出しやすくし、臭みを消してくれるため美味しく仕上げることができます。
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