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太白胡麻油と米油の違いと使い分け|お菓子や揚げ物はどっちがよい?

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太白胡麻油と米油の違いと使い分け|お菓子や揚げ物はどっちがよい?

太白胡麻油と米油はどちらも栄養価が高い植物油として知られています。本記事では太白胡麻油と米油の違いを詳しく解説します。

太白胡麻油と米油の違い①原料

太白胡麻油

太白胡麻油(たいはくごまあぶら)は、生の状態のごまを原料に作る植物油の一種です。

ごまには大別して「黒ごま」と「白ごま」があります。太白胡麻油の色から白ごまを使っていると思われがちですが黒ごまを使って作られていることもあり、多くは白ごまと黒ごまをミックスして使われています。

太白胡麻油は、食用油や界面活性剤の製造・販売を行っている「竹本油脂株式会社」が大正時代に料理人からの要望をうけて商品化したものです。「太白」には古代中国における金星の呼び名で、品質とおいしさに磨きをかけて作られたごま油を光り輝く金星に例えて「太白胡麻油」と名付けたそうです。

出典:竹本油脂株式会社

米油

米油は、米糠(こめぬか)を原料に作る植物油の一種です。

「米糠油(こめぬかゆ・こめぬかあぶら)」ともいわれます。

米糠とは玄米を精白したときに出る果皮や種皮、胚芽などの部分で、約18%〜20%の油分が含まれています。米油は米糠に含まれている油分を抽出し精製したものです。

玄米から出る米糠はわずかであり、含まれている油分も18〜20%と少ないため例えば米油1本分(600g)作るには約43kgもの玄米が必要になります。

太白ごま油と米油の違い②製造方法

太白胡麻油

太白胡麻油の製造方法はメーカーによって異なりますが、選別したごまから「圧搾式製法(あっさくしきせいほう)」または「抽出製法」により油を抽出した後に精製し、抽出したごま油の色味や香りを取り除きます。精製したら、ろ過して精製したごま油内の不純物を取り除き、瓶やペットボトルに充填して完成します。

圧搾式製法は、化学溶剤を使わずに圧力だけで油を抽出します。中でも「玉締め圧搾法」と呼ばれる圧搾式製法は、機械でゆっくりと手間をかけ自然に近いかたちで抽出するため栄養価が非常に高くなります。


抽出製法は、ヘキサンなどの溶剤を溶かしてごまから油を抽出します。

米油

米油の製造方法もメーカーによって異なりますが、まず米糠から圧搾式製法または抽出法で油を抽出します。

米糠から抽出した油は、温水を加えてリン脂質を水和させた後に遠心分離機を使って油と分離し、リン脂質を取り除きます。リン脂質の性状からガム質と呼ばれこの製造工程を「脱ゴム」といいます。さらに、遊離脂肪酸や微量金属の一部や色素を取り除き脱臭をして、ろ過した後に容器に充填して販売されます。

太白胡麻油と米油の違い③特徴

太白胡麻油

太白胡麻油は生のごまから油を抽出し、さらに精製・ろ過しているため色は透明に近く、ごま特有の香りやクセがなくすっきりとした味が特徴です。

また、原料であるごまには「ゴマリグナン」という抗酸化作用がある成分が多く含まれているためサラダ油などと比較して劣化しにくいという性質があります。

米油

米油は薄黄色です。

米油も太白胡麻油と同じく原料特有の香りもなく、味そのものにクセはありません。

特に米油は揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いが出ません。油を加熱したときの匂いはアクロレインと呼ばれる成分の発生によるものですが、米油は加熱をしてもアクロレインの発生量が菜種油などと比較して少ないため、揚げ物の匂いで油酔いをして食欲が減退してしまうことを防ぎ、部屋中に油の匂いが残ってしまうということもありません。

また、米油もトリエノールなど抗酸化作用がある成分が多く含まれるため、酸化しにくいという特徴があります。

太白胡麻油と米油の違い④栄養素

太白胡麻油

太白胡麻油の栄養成分は文部科学省の食品成分データーベースなどにも記載がないため不明ですが、原料は焙煎ごま油などと同じであるため、焙煎ごま油とほぼ同じであると考えられます。焙煎ごま油は煎った状態のごまから油脂を抽出しているという点が、生の状態のごまから油脂を抽出している太白胡麻油とは異なります。

焙煎ごま油100gに含まれる栄養成分は下記の通りです。

  • たんぱく質…0g

  • 脂質…100g

  • 炭水化物…0g

  • ビタミンE…0.4mg

  • ビタミンK…5μg

  • ナイアシン…0.1mg

  • カルシム…1mg

  • リン…1mg

  • 鉄…0.1mg

  • セレン…1μg

  • クロム…1μg

焙煎ごま油や太白ごま油の主成分は、不飽和脂肪酸であるオレイン酸とリノール酸です。たんぱく質や炭水化物は含まれていませんが、ビタミン類やミネラル類を含む他、ごま特有の成分ゴマリグナンなどを含んでいます。

ゴマリグナンは、ごまに含まれているセサミンやセサモリン、セサミノール、セサモールといった成分の総称です。ゴマグリナンには高い抗酸化作用があり、体内の活性酸素を取り除くことができるため、がん細胞の成長抑制の効果が期待できる他、心血管疾患や生活習慣病の予防にも繋がります。また、ゴマリグナンの中のセサミンは肝臓を守り、機能を高めます。さらにアルコールが分解される途中でつくられる毒素やアセトアルデヒドの生成もおさえるので悪酔いや二日酔いを防ぐ効果もあります。

100gあたりのカロリーは921kcalで、糖質量は0です。

出典:竹本油脂株式会社太白胡麻油商品情報

米油

米油100gに含まれる栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…0g

  • 脂質…100g

  • 炭水化物…0g

  • ビタミンE…25.5g

  • ビタミンK…36μg

  • カリウム…Trmg

  • カルシウム…Trmg

  • リン…Trmg

  • クロム…1μg

米油にもキャノーラ油と同じく不飽和脂肪酸の一種であるオレイン酸とリノール酸、ビタミンE(トコフェノール・トコトリエノール)、ビタミンKなどが豊富に含まれている他、こめ油特有の栄養素γ―オリザノール(ガンマオリザノール)も含まれています。

オレイン酸は、血液中の悪玉コレステロールと善玉コレステロールを適正に保つ働きもあり、動脈硬化防止や心臓障害の予防に繋がるといわれています。また、ビタミンE(トコフェノール・トコトリエノール)など抗酸化作用をもつ成分が多く含まれています。特にビタミンEの一種であるトコトリエノールは圧倒的な抗酸化作用をもち、ストレスなどにより体内に発生した活性酸素が細胞へダメージを与えることを防ぐことができる他、生活習慣病などの予防にも繋がるといわれています。また、しみやしわを予防するなどのエイジングケア効果も期待できます。

米油特有の栄養成分であるγ―オリザノールはポリフェノールの一種であり、ビタミンEなどと同じく抗酸化作用がある他、血行を良くしてコレステロールを低減させる作用があります。また、脳の機能の劣化防止、更年期障害防止に効果があるといわれています。

米油100gあたりのカロリーは約921kcal、糖質量は0gで、太白胡麻油と同じです。

出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

太白胡麻油と米油の用途はほぼ同じ

炒め油

太白胡麻油と米油は炒め物をする際の炒め油として使うことができます。

太白胡麻油はごまの香りや風味が強い焙煎ごま油とは異なり、食材の持ち味を邪魔することなく食材に豊かなゴマのコクを与えスッキリとした味わいに仕上げることができます。

米油も香りや風味にクセがないため食材そのものの味を邪魔することがありませんし、サラっとしているので油っこくなくさっぱりと仕上げることができます。

揚げ油

揚げ物に使われるサラダ油などの一般的な油は高温で加熱すると空気中の酸素と反応し酸化してしまい劣化してしまうため繰り返し使うと嫌な匂いを発生することが多いのですが、太白胡麻油と米油は酸化しにくい性質があるため揚げ油として繰り返し使っても嫌な匂いが発生しません。

特に米油は、上述したように加熱をしてもアクロレインの発生量が少ないため油酔いをしてしまいやすい方や部屋に匂いを残したくないという方におすすめです。また、サラっとしていてベタベタとしないため揚げ物をした後の洗い物も楽です。

製菓に向いているのは?

太白胡麻油と米油はどちらもバターの代用品としてクッキーやマフィンなどの焼き菓子を作るのに適しています。どちらも無味無臭であるため出来上がりや味に大きな違いはありませんが、太白胡麻油を使って作ると、時間がたってもふわふわしっとりとした状態を保ちやすく、米油はサクッと軽く仕上がりやすいです。

米油は米との相性が良い

米油は原料が米糠ということもあり、お米との相性が非常に良いです。そのため、ご飯を炊く際に米油を入れて炊飯するという太白胡麻油にはない使い方をすることもできます。米油を入れることで、米粒がコーティングされふっくらと粒感のよいご飯が炊きあがる他、米粒がお釜にこびりついてしまうのを防ぐことができます。また、米油によってお米本来の甘味や旨味を引き出すことができ普段より美味しい白米になります。

同じ原理で米粉を使ってお菓子やパンを作るときは米油を使うという方も多くいます。

太白胡麻油と米油はお互いに代用可能?

代用可能

太白胡麻油と米油はお互いに代用することが可能です。どちらも香りや風味にクセがないためお互いに代用しても料理の味を変えてしまうこともありません。ただし、原料が異なるため全く同じになるというわけではありません。

例えば揚げ油として使う場合に米油の代用品として太白胡麻油を使うと、米油を使ったときと比較して油っぽく感じることがあります。油っぽいものが苦手な方はサラっとしていてあっさりと仕上がる米油を使用すると良いでしょう。

混ぜて使うこともできる

太白胡麻油と米油はどちらも植物油の一種であるため、混ぜて使っても問題ありません。例えば揚げ油として使う場合など大量に使う際に、足りないといったときは混ぜて使っても大丈夫です。

太白胡麻油と米油以外のサラダ油やキャノーラ油と混ぜて使うこともできます。ただし、同じ植物オイルでもココナッツオイルは引火点が低いため揚げ油として使用する際に混ぜて使うのは避けてください。