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ココナッツオイルと米油の違い|栄養や料理での使い分けを解説

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ココナッツオイルと米油の違い|栄養や料理での使い分けを解説

ココナッツオイルと米油の違いをご存知でしょうか。ココナッツオイルと米油は全く異なるもののように思えますが、どちらも植物を原料に作られる植物油の一種です。本記事ではココナッツオイルと米油の違いを解説します。

ココナッツオイルと米油の違い①原料

ココナッツオイル

ココナッツオイルは単子葉植物ヤシ科の植物ココヤシの実から抽出される植物油の一種です。

ココヤシの実は「ココナッツ」といわれ、固い殻の内部に固形胚乳の層があります。この胚乳の部分から抽出した油脂がココナッツオイルです。

ココナッツオイルの原料となるココヤシはポリネシアから熱帯アジアが原産とされており、現在ではフィリピンやインドネシア、インドなどの熱帯地方で栽培されています。日本で販売されているココナッツオイルもフィリピンやインドネシア産のものが使われています。

米油

米油は、米糠(こめぬか)を原料に作る植物油の一種です。

「米糠油(こめぬかゆ・こめぬかあぶら)」ともいわれます。

米糠とは玄米を精白したときに出る果皮や種皮、胚芽などの部分で、約18%〜20%の油分が含まれています。米油は米糠に含まれている油分を抽出し精製したものです。

玄米から出る米糠はわずかであり、含まれている油分も18〜20%と少ないため例えば米油1本分(600g)作るには約43kgもの玄米が必要になります。

ココナッツオイルと米油の違い②製造方法

ココナッツオイル

ココナッツオイルの製造方法はメーカーによって異なりますが、まず胚乳から高温圧搾法、低温圧搾法または乾燥圧搾法で圧搾して液状にします。

高温圧搾法は、一気に圧力をかけて高温で加熱し搾り取る製法です。採油率が高いため大量生産に向いています。


低温圧搾法は、40℃以下の温度を保ちながら時間を掛けて丁寧に搾り取る製法です。低温で圧搾することでオイルの劣化や酸化を防ぐことができるため、栄養素が高くなります。


乾燥圧搾法は、胚乳を熱風や天日干しなどで乾燥させてから圧搾する製法です。予め乾燥させておくことで油採油率が高くなるという利点がありますが、ココナッツに含まれる栄養素が失われやすいです。

圧搾しただけでは、水分やミルク分、オイルが混ざった状態であるため、発酵分離法または遠心分離法でオイルのみを取り出します。

発酵分離法は、40℃ほどの温度で時間をかけて発酵させることにより、水分やミルク分、オイルに分ける製法です。


遠心分離法は、遠心分離機に入れて高速で回転させることによりオイルを取り出す製法です。遠心分離法は大量生産に向いていますが、オイルの中に水分やミルク分が残留していることが多く、栄養素が失われてしまったり劣化が早くなるという欠点があります。

オイルを取り出したら、濾過(ろか)して不純物を取り除き精製し、脱臭や漂白を行って商品として販売されます。

ココナッツオイルは製法によって種類が分けられ、低温圧搾法で圧搾し精製を行っていないものを「エクストラバージンココナッツオイル」、高温圧搾法で圧搾し化学処理をして脱臭や漂白を行ったものを「精製ココナッツオイル」といいます。

米油

米油の製造方法はメーカーによって異なりますが、まず米糠から圧搾式製法または抽出法で油を抽出します。

圧搾式製法は、化学溶剤を使わずに圧力だけで油を抽出します。中でも「玉締め圧搾法」と呼ばれる圧搾式製法は、機械でゆっくりと手間をかけ自然に近いかたちで抽出するため栄養価が非常に高くなります。


抽出製法は、ヘキサンなどの溶剤を溶かして油を抽出します。

米糠から抽出した油は、温水を加えてリン脂質を水和させた後に遠心分離機を使って油と分離し、リン脂質を取り除きます。リン脂質の性状からガム質と呼ばれこの製造工程を「脱ゴム」といいます。さらに、遊離脂肪酸や微量金属の一部や色素を取り除き脱臭をして、ろ過した後に容器に充填して販売されます。

ココナッツオイルと米油の違い③特徴

ココナッツオイル

ココナッツオイルは透明の液状または白い固形状です。

ココナッツオイルは20℃以下になると固まる性質があり、固形の状態で瓶に詰めて販売されていることも多いですが、固形の状態になったからといって品質が落ちるということはありません。

エクストラバージンココナッツオイルはココナッツの甘い香りと風味が特徴です。精製ココナッツオイルは、ココナッツ特有の香りが少なくさっぱりとした風味が特徴です。

ココナッツオイルには酸化しにくいという特徴があり、加熱調理にも適しています。

米油

米油は薄い黄色で、サラサラとした液状です。

米油には原料特有の香りもなく、味そのものにクセはありません。

特に米油は揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いが出ません。油を加熱したときの匂いはアクロレインと呼ばれる成分の発生によるものですが、米油は加熱をしてもアクロレインの発生量が菜種油などと比較して少ないため、揚げ物の匂いで油酔いをして食欲が減退してしまうことを防ぎ、部屋中に油の匂いが残ってしまうということもありません。

また、米油もトリエノールなど抗酸化作用がある成分が多く含まれるため、酸化しにくいという特徴があります。

ココナッツオイルと米油の違い④栄養素

ココナッツオイル

ココナッツオイル100gに含まれる栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…0g

  • 脂質…100g

  • 炭水化物…0g

  • ビタミンE…0.3mg

  • ビタミンK…Trμg

  • カルシウム…Trmg

  • 亜鉛…Trmg

ココナッツオイルは、飽和脂肪酸が含まれています。飽和脂肪酸は乳製品や肉などの動物性脂肪に多く含まれている脂肪酸の一種です。植物油にはもう一つの不飽和脂肪酸という脂肪酸を多く含むことが多いのですが、ココナッツオイルは植物油でありながら飽和脂肪酸の一種である「中鎖脂肪酸」を豊富に含みます。中鎖脂肪酸は、消化が早く一般的な油の約4倍の速さでエネルギーとして分解されるという特徴があります。そのため、エネルギーを積極的に必要とする未熟児や腎臓病患者への栄養補給として有効であるといわれています。

また、中鎖脂肪酸の一種であるラウリン酸には抗菌効果や抗酸化作用があり、免疫力を高めることができるため、風邪予防や老化抑制に効果があります。

さらに、中鎖脂肪酸は分解されると一部がケトン体になります。ケトン体は脳エネルギーとして注目されている物質で、アルツハイマー型認知症の症状改善などに効果があると期待されています。

出典:文部科学省食品成分データーベース

米油

米油100gに含まれる栄養素は下記の通りです。

  • たんぱく質…0g

  • 脂質…100g

  • 炭水化物…0g

  • ビタミンE…25.5g

  • ビタミンK…36μg

  • カリウム…Trmg

  • カルシウム…Trmg

  • リン…Trmg

  • クロム…1μg

米油には不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。例えばオメガ9(n-9)系脂肪酸に属するオレイン酸、オメガ6(n-6)系脂肪酸に属するリノール酸などです。その他ビタミンE(トコフェノール・トコトリエノール)、ビタミンKなどが含まれている他、こめ油特有の栄養素γ―オリザノール(ガンマオリザノール)も含まれています。

オレイン酸は、血液中の悪玉コレステロールと善玉コレステロールを適正に保つ働きもあり、動脈硬化防止や心臓障害の予防に繋がるといわれています。また、ビタミンE(トコフェノール・トコトリエノール)など抗酸化作用をもつ成分が多く含まれていて、特にビタミンEの一種であるトコトリエノールは圧倒的な抗酸化作用をもち、ストレスなどにより体内に発生した活性酸素が細胞へダメージを与えることを防ぐことができる他、生活習慣病などの予防にも繋がることがわかっています。また、しみやしわを予防するなどのエイジングケア効果も期待できます。

米油特有の栄養成分であるγ―オリザノールはポリフェノールの一種であり、ビタミンEなどと同じく抗酸化作用がある他、血行を良くしてコレステロールを低減させる作用があるといわれています。また、脳の機能の劣化防止、更年期障害防止の効果が期待できます。

出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)

コレステロール

ココナッツオイル100gあたりのコレステロール含有量は1mg、米油100gあたりのコレステロール含有量は0mgです。

コレステロールとは、脂質の一種です。コレステロールには善玉コレステロールといわれる「HDLコレステロール」と、悪玉コレステロールのLDLコレステロールとがあります。善玉コレステロールは、臓器で使いきれずに余ったコレステロールを回収し肝臓に戻す働きがあるため動脈硬化を予防することがでるといわれています。対して悪玉コレステロールは、血管の壁にたまり、動脈硬化を進行させる要因となります。そのため、多量に摂取するのは良くありませんが、体にとって不要な成分というわけではありません。

ココナッツにはコレステロールが含まれていますが、1mgと微量であるため揚げ物を大量に食べるなど過剰摂取を避ければ問題ないでしょう。

出典:厚生労働省e-ヘルスネット

トランス脂肪酸

エクストラバージンココナッツオイルの100gあたりのトランス脂肪酸の含有量は0g、精製ココナッツオイルには微量のトランス脂肪酸が含まれており、米油100gあたりのトランス脂肪酸含有量は0.3gです。

トランス脂肪酸は脂質の一種である脂肪酸を構成している成分の一つです。トランス脂肪酸は牛肉や羊肉など動物そのものが持っている場合と食品の製造過程で生成する場合があります。植物油は、原料の独特の匂いや不純物を取り除くために、200度以上の高温で処理されます。高温で処理をする際にトランス脂肪酸が生成されます。また、油剤を使う抽出法でトランス脂肪酸が生成されやすいといわれています。

トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減少させる働きがあるため、大量に摂取することにより動脈硬化などによる心臓病のリスクを高めるといわれ、WHOのトランス脂肪酸の一日の上限値は約2g未満としています。これはトンカツを揚げた場合、約10枚分に相当します。米油と大豆油のどちらも過剰摂取しない限りは問題ないといえますが、油に限らずトランス脂肪酸が含まれている食べ物は沢山あり、知らず知らずのうちに摂取していることもありますので揚げ物を大量に食べるなど過剰摂取は避けたほうが良いでしょう。

出典:農林水産省トランス脂肪酸に関する情報

ココナッツオイルと米油の使い分け方

ココナッツオイルと米油は、どちらも炒め油やお菓子作りをするときのバターの代用品として使うことができます。

バターの代用品にはココナッツオイルがおすすめ

ココナッツオイルは、バターの代用品としてクッキーやマフィンなどの焼き菓子を作るのにおすすめです。バターのように常温に戻して溶かすなどの手間がかかりませんし、ココナッツオイルを使うことでココナッツの甘い香りと風味を楽しむことができます。

ココナッツの香りや風味が苦手という方は、香りを抑えた精製ココナッツオイルや米油を使うと良いでしょう。米油を使うとさっぱりとした味わいに仕上げることができます。

ココナッツオイルはドリンクとしても

ココナッツオイルは、コーヒーや豆乳などに加えることでココナッツフレーバーのドリンクとして楽しむことができます。

液状のココナッツオイルだとサッと数滴垂らすだけで簡単にココナッツフレーバーのドリンクができます。固形状でもホットコーヒーなど暖かい飲み物に適量入れるとすぐに溶けます。ミルクティーや甘酒など色々なドリンクと相性が良いので、お好みの組み合わせを見つけてみてください。

揚げ油には米油

ココナッツオイルは引火点は234℃といわれています。揚げ物をする際の温度はだいたい170℃〜180℃ですが、引火しやすい点に加え長時間高温で加熱していると煙が出てしまうので揚げ油には不向きといえます。

一方米油は揚げ油に適しています。米油には上述したように揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いがなく酸化しにくい他、サラっとしていてベタベタとしないため揚げ油に適しています。また、米油は揚げ物をする際に気泡ができにくいという特徴があります。この気泡は、加熱することにより食材や衣から水分が蒸発することによってできます。特に油が酸化している場合などは大きな気泡がぶくぶくと出てしまいやすいです。気泡がでていると揚げむらや油っぽさの原因となります。そのため、米油を使うことで揚げむらもなく均一にカラッと揚げることができます。

米油はお米との相性が良い

米油は原料が米糠ということもあり、お米との相性が非常に良いです。そのため、ご飯を炊く際に米油を入れて炊飯するというココナッツオイルにはない使い方をすることもできます。米油を入れることで、米粒がコーティングされふっくらと粒感のよいご飯が炊きあがる他、米粒がお釜にこびりついてしまうのを防ぐことができます。また、米油によってお米本来の甘味や旨味を引き出すことができ普段より美味しい白米になります。

ココナッツオイルと米油はお互いに代用可能?

基本的に代用可能

ココナッツオイルと米油は炒め油として使う場合やバターの代用品として使う場合は、お互いに代用可能です。ただし、ココナッツオイルにはココナッツの香りや風味がするという点で全く同じになるということはありません。場合によっては米油をココナッツオイルで代用することにより料理の味を損ねてしまったり、反対にココナッツオイルを米油で代用することにより思ったような味にならないということがあります。

また、上述したようにココナッツオイルは高温での調理には不向きです。米油をココナッツオイルで代用する場合は高温で熱しすぎないように注意しましょう。

混ぜて使うのはNG

米油と菜種油など基本的に植物油は混ぜて使うことができますが、ココナッツオイルは米油を含むその他の植物油と混ぜて使うのは避けたほうが良いでしょう。

特に米油は高価であるため揚げ油として大量に使う場合などは、他の種類の油と合わせて使うことが多いかと思いますが、ココナッツオイルを混ぜてしまうと泡立ちやすくなり油が吹きこぼれて引火してしまう可能性があります。