菜種油と米油の違いをご存知でしょうか。本記事では菜種油と米油の違いを詳しく解説します。
菜種油は、アブラナ科アブラナ属の植物セイヨウアブラナの種子から抽出した植物油の一種です。
「菜種」とはアブラナの別名です。古くは食用としてだけではなく灯火の燃料としても利用されており、現在日本で作られている植物油のうち最も生産量が多い油です。英語では「rapeseed oil」といいます。
菜種油の原料であるセイヨウアブラナは北海道など日本でも栽培されていますが、スーパーなどで販売されているものの多くは主にカナダやオーストラリアから輸入したものが使われています。
米油は、米糠(こめぬか)を原料に作る植物油の一種です。
「米糠油(こめぬかゆ・こめぬかあぶら)」ともいわれます。
米糠とは玄米を精白したときに出る果皮や種皮、胚芽などの部分で、約18%〜20%の油分が含まれています。米油は米糠に含まれている油分を抽出し精製したものです。
玄米から出る米糠はわずかであり、含まれている油分も18〜20%と少ないため例えば米油1本分(600g)作るには約43kgもの玄米が必要になります。
菜種油の製造方法はメーカーによって異なります。基本的に菜種油などの植物油は、まず原料に含まれている茎や葉を取り除き精製した後に油分をとりやすくするために加熱したり、破砕、平たく潰すなどの前処理をして、圧搾式製法または抽出法で原料から油を抽出します。
圧搾式製法は、化学溶剤を使わずに圧力だけで油を抽出します。中でも「玉締め圧搾法」と呼ばれる圧搾式製法は、機械でゆっくりと手間をかけ自然に近いかたちで抽出するため栄養価が非常に高くなります。
抽出製法は、ヘキサンなどの溶剤を溶かして油を抽出します。
圧搾式製法では原料残油が10~20%あり、この残りを採油するために抽出法を併用する圧抽法を使うこともあります。菜種油の原料であるアブラナの種子は油分の多いため、圧抽法を使うことが多いです。
抽出した油は、温水を加えてリン脂質を水和させた後に遠心分離機を使って油と分離し、リン脂質を取り除きます。リン脂質の性状からガム質と呼ばれこの製造工程を「脱ゴム」といいます。さらに、遊離脂肪酸や微量金属の一部や色素を取り除き脱臭をして、ろ過した後に容器に充填して販売されます。
米油の製造方法もメーカーによって異なりますが、米油と同じように原料である米糠から圧搾製法または抽出法で油脂を抽出します。
菜種油と比較して化学溶剤を使わない圧搾製法で抽出されている製品が多いです。
米油も油脂を抽出したら、温水を加えてリン脂質を水和させた後に遠心分離機を使って油と分離し、リン脂質や遊離脂肪酸や微量金属の一部や色素を取り除き脱臭をして、ろ過した後に容器に充填して販売されます。
菜種油の見た目は深みがかった黄色で、米油と比較すると色が濃いことが多いです。
菜種油は原料の匂いや風味がなく、たんぱくな味です。そのため、どんな料理にもよくあいます。ただし、精製度の低い菜種油の場合、青臭さを感じることがあります。これは、アブラナに含まれている天然成分によるものです。加熱することで青臭さを消すことができます。
また、菜種油にはオレイン酸などの成分が豊富に含まれているため酸化しにくいという特徴があります。そのため炒め油や揚げ油などの加熱調理にも適しています。
米油は菜種油と比較すると色は薄く、サラサラとしています。
菜種油と同じく原料特有の香りもなく、味そのものにクセはありません。
特に米油は揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いが出ません。油を加熱したときの匂いはアクロレインと呼ばれる成分の発生によるものですが、米油は加熱をしてもアクロレインの発生量が菜種油などと比較して少ないため、揚げ物の匂いで油酔いをして食欲が減退してしまうことを防ぎ、部屋中に油の匂いが残ってしまうということもありません。
また、米油もトリエノールなど抗酸化作用がある成分が多く含まれるため、酸化しにくいという特徴があります。
菜種油はAmazonや楽天などのネット通販で購入することができます。
菜種油の値段はメーカーによって異なります。例えばボーソー油脂株式会社が製造・販売している「一番しぼりなたね油」は910g747円で、自然食品などの製造・販売を行っている株式会社ムソーが販売している「国産なたね油」は450g770円です。
輸入された原料を使っているものや抽出法で大量生産されたものは比較的安価で購入することができますが、国産の原料を使っているものや圧搾式製法で生産されているものは値段が高くなります。
米油はイオンや業務スーパーなど一般的なスーパーで購入することができます。ただし、近年では米油を取り扱う店舗が増えてきていますが、サラダ油などと比較すると必ずあるというわけではありません。店舗に確認してみてください。
近くに購入できる店舗がない場合は、Amazonや楽天などのネット通販の利用がおすすめです。
米油の値段はメーカーによっても異なりますが、900gで700〜800円、1kgだと1000円以上で販売されていることが多いです。
玄米から出る米糠はわずかであり、さらに抽出できる油量も少ないことからキャノーラ油などその他の植物油と比較して値段が高くなります。
菜種油100gに含まれている栄養素は下記の通りです。
たんぱく質…0g
脂質…100g
炭水化物…0g
ビタミンE…48.3g
ビタミンK…120μg
菜種油は不飽和脂肪酸の一種でオメガ9(n-9)系脂肪酸に属するオレイン酸と、オメガ6(n-6)系脂肪酸に属するリノール酸、ビタミンE(α−トコフェノール・β−トコフェノールなど)が豊富に含まれています。
菜種油100gあたりのカロリーは887kcalで、糖質量は0gです。
出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)
米油100gに含まれる栄養素は下記の通りです。
たんぱく質…0g
脂質…100g
炭水化物…0g
ビタミンE…25.5g
ビタミンK…36μg
カリウム…Trmg
カルシウム…Trmg
リン…Trmg
クロム…1μg
米油にも菜種油と同じく不飽和脂肪酸の一種でオメガ9(n-9)系脂肪酸に属するオレイン酸、オメガ6(n-6)系脂肪酸に属するリノール酸、ビタミンE(トコフェノール・トコトリエノール)、ビタミンKなどが豊富に含まれている他、こめ油特有の栄養素γ―オリザノール(ガンマオリザノール)も含まれています。
元々玄米はビタミンB群などのビタミン類、カルシウムなどのミネラル、食物繊維などの栄養素を豊富に含んでおり、白米より栄養価が高いことで知られています。これは栄養素の多くは糠層(ぬかそう)や胚芽(はいが)に含まれているからです。米油は栄養素を多く含んでいる糠層や胚芽から抽出した油であるため、栄養価が高くなります。
米油100gあたりのカロリーは約921kcal、糖質量は0gです。
出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)
菜種油と米油には、どちらにもオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。オレイン酸は、血液中の悪玉コレステロールと善玉コレステロールを適正に保つ働きもあり、動脈硬化防止や心臓障害の予防に繋がるといわれています。
また、どちらにも抗酸化作用のあるビタミンEが含まれており、ストレスなどにより体内に発生した活性酸素が細胞へダメージを与えることを防ぎ、生活習慣病予防の効果が期待できます。また、しみやしわを予防するなどのエイジングケア効果に繋がるといわれています。
出典:厚生労働省e-ヘルスネット
菜種油と米油を比較すると「米油のほうが体に良い」という印象をもっている方が多いと思いますが、これは菜種油に含まれる「エルカ酸」と「グルコシノレート」という成分が健康被害を及ぼすといわれているためです。これらは過剰摂取すると体に悪影響を及ぼすと危惧され、アメリカでは食用にすることを禁止されていました。カナダではエルカ酸とグルコシノレートの含有量が少ない品種「キャノーラ」が開発され日本でも「キャノーラ油」として販売されていますが、日本国内でも品種改良が進んでおり健康被害を及ぼす成分を持たないアブラナを使って製造した商品もあります。
また、製造過程で菜種独特の匂いや不純物を取り除くために、200度以上の高温で処理されます。高温で処理をする際に不飽和脂肪酸の一種であるトランス脂肪酸が生成されます。トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減少させる働きがあるため、大量に摂取することにより動脈硬化などによる心臓病のリスクを高めるといわれています。欧米ではトランス脂肪酸の摂取を制限している国もあります。しかし、菜種油に限らず米油にもトランス脂肪酸は含まれています。過剰摂取は避けるべきですが、菜種油が特に多くトランス脂肪酸を含んでいるというわけではありません。
さらに、スーパーなどで一般的に安価で売られているものは、コストを抑えて大量生産するために「ヘキサン」とよばれる溶剤を使った抽出法で油を抽出していることが多いです。ヘキサンは石油にも含まれている成分であるため「体に悪い」と言われています。商品として販売する際にはもちろん化学溶剤は除かれ、安全性のチェックしたものが販売されていますが、心配な方は「圧搾式製法」で抽出しているメーカーの菜種油の購入がおすすめです。
出典:農林水産省
菜種油と米油は、どちらも炒め油や揚げ油として使うことができる他、バターの代用品としてクッキーなどの焼き菓子を作ることができます。
米油には上述したように揚げ物をするときに感じることが多い油特有の嫌な匂いがなく、酸化しにくい他、サラっとしていてベタベタとしないため揚げ油に適しています。また、米油は揚げ物をする際に気泡ができにくいという特徴があります。この気泡は、加熱することにより食材や衣から水分が蒸発することによってできます。特に油が酸化している場合などは大きな気泡がぶくぶくと出てしまいやすいです。気泡がでていると揚げむらや油っぽさの原因となります。そのため、米油を使うことで揚げむらもなく均一にカラッと揚げることができます。
米油は原料が米糠ということもあり、お米との相性が非常に良いです。そのため、ご飯を炊く際に米油を入れて炊飯するという菜種油にはない使い方をすることもできます。米油を入れることで、米粒がコーティングされふっくらと粒感のよいご飯が炊きあがる他、米粒がお釜にこびりついてしまうのを防ぐことができます。また、米油によってお米本来の甘味や旨味を引き出すことができ普段より美味しい白米になります。
菜種油と米油の用途は同じであるため、お互いに代用することが可能です。どちらも香りや風味にクセがありませんので、どちらを使っても料理の味を変えてしまうこともありません。
ただし、原料が異なるため性質には違いがあります。例えば上述したように米油は高温で熱しても匂いが出ず油酔いしにくいですが、菜種油は高温で熱するとアクロレインが発生するため油酔いをしてしまうことがあります。菜種油も米油と同じように酸化しにくく揚げ物をサクっと揚げることができますが、油酔いしてしまいやすい方や部屋に匂いがつくのが嫌だという方は米油がおすすめです。
菜種油と米油は、どちらも植物油の一種ですので混ぜて使っても問題ありません。どちらも特に強い香りや風味があるわけではないので、味にも影響は出ません。
例えば揚げ油として使う際に高価な米油を大量に使うのは躊躇するといった場合は、菜種油と米油を混ぜて使うと良いでしょう。
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