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春菊の栄養と効能。加熱すると変化?効果的な食べ方は?

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春菊の栄養と効能。加熱すると変化?効果的な食べ方は?

春菊に含まれる栄養素と、その効果効能について解説していきます。加熱調理をした場合どのようなメリット・デメリットがあるのかも紹介していきます。

春菊の栄養の概要

春菊100gあたりの主な栄養素・成分

春菊は、ビタミンA(β-カロテン)・B群・E、カルシウム、鉄など食生活で不足しがちな栄養素をたっぷり含む実力派の野菜です。

春菊特有の香りは、α-ピネン、ベンズアルデヒドなどの精油成分によるものです。

春菊の三大栄養素

三大栄養素とは炭水化物・脂質・たんぱく質を指します。

春菊は低カロリー低糖質

春菊の可食部100gあたり

  • エネルギー...20kcal

  • 水分...91.8g

  • たんぱく質...2.3g

  • 炭水化物...3.9g

  • 脂質...0.3g

  • 食物繊維...3.2g

です。糖質は0.7gです(炭水化物から食物繊維を引いた値)。

他の野菜と比べると

  • ほうれん草:糖質0.3g、18kcal

  • トマト:糖質3.7g、20kcal

  • ピーマン:糖質2.8g、20kcla

  • じゃがいも:糖質8.4g、59kcal

  • 西洋かぼちゃ:糖質17.1g、78kcal

です。他の野菜と比べても、低カロリー・低糖質であることが分かります。

出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)

春菊の主な栄養素

実は栄養素が豊富な春菊。あまりメインで調理されないのがもったいないくらいです。

β-カロテン

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。

ビタミンE

ビタミンEは強力な抗酸化作用があります。体内の脂質が酸化するのを抑え、老化の予防をしてくれます。ビタミンEは血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑える働きがあり、酸化によって進行してしまう動脈硬化の予防に役立ちます。

さらにビタミンEは末梢血管の拡張させる働きがあるため、血行促進に繋がります。また副腎や卵巣の性ホルモンの分泌の調整にもビタミンEは関与しているので、生殖機能の維持にも役立ちます。

ビタミンK

ビタミンKは血液を凝固させる成分を合成する働きがあり、出血を止める役割があります。月経過多の症状を軽減する効果も期待できます。また、出血を止めるだけでなく、血流が悪くならないよう凝固の抑制にも働きかけます。

さらにビタミンKは、骨から血液中にカルシウムが放出されるのを抑え、骨にカルシウムが沈着するのを助けてくれます。ビタミンDと並び、健康な歯や骨を作るのに欠かせないビタミンです。

ビタミンB2

ビタミンB2は動物性食品に多いビタミンですが、植物性食品にもわずかに含まれています。ビタミンB2は脂質とたんぱく質の分解に働き、脂質の代謝を助けます。細胞の再生を助けて成長を促し、健康な肌や髪つくり、目や口などの粘膜を守ります。発育のビタミンとも呼ばれており、発育促進や健康に欠かせない栄養素です。

ビタミンB2が不足すると、脂質が体内に蓄積されやすくなるため、太りやすくなり、ニキビが増える原因のひとつになります。

またビタミンB2は「甲状腺ホルモン」が分泌されることで、体内で働けるようになるため、甲状腺の機能が低下してしまうと、ビタミンB2を補充しても生かしきれないことがあります。

カリウム

カリウムはミネラルの一種です。

カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。

そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。

カルシウム

なんと春菊には、牛乳より多くカルシウムが含まれています。

体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨の代謝に関わり骨の健康を保っています。

残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉、細胞内などに存在し、大切な情報の伝達を行っています。それによって筋肉のなめらかな動きをサポートしたり、精神を安定させたりします。

カルシウムが不足すると、骨が弱くなったりこむら返りを起こすことがあります。特に野菜などのカルシウムは吸収率が低いため、ビタミンKなどカルシウムの吸収を助ける栄養素と一緒に摂取するといいでしょう。

マグネシウム

マグネシウムはカルシウムの量を調整し、筋肉の収縮を促します。摂り過ぎたカルシウムが血管壁に貯まるのを防ぎ、動脈硬化を予防する働きもあります。そしてカルシムやリンとともに働き、丈夫な骨や歯をつくります。血液中のマグネシウムが不足すると骨から溶け出して補充されますが、このときカルシウムも一緒に放出されてしまうため骨がもろくなります。

また、ストレスが生じると、マグネシウムの消費量が増えます。そのため疲れているときやイライラしているときはマグネシウムを積極的に摂取しましょう。マグネシウムは過剰に摂取しても腸管からの吸収は抑えられ、余分なものは速やかに排泄されるので食事で摂取している限りは過剰症の恐れはありません。

鉄分はミネラル成分のひとつです。体に必要な栄養素で、成人のからだには約3〜5gの鉄が存在しています。

鉄は大きく分けて2種類あります。ひとつは機能鉄といって赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運びます。

もうひとつは貯蔵鉄といって肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられており、機能鉄が不足すると体内に放出されます。また、酵素の構成成分で、エネルギー代謝を助ける働きがあります。

α-ピネン

α-ピネンは、春菊の独特な香りである精油成分です。食欲増進や、血行促進による発汗作用、眠気防止などの作用があります。また熱冷ましの効果もあるので夏におすすめです。α-ピネンはみょうがにも含まれていますが、真夏に食べるそうめんの薬味としてみょうがを使うのも理にかなっていますね。

さらに、油料理の消化を助ける作用も含まれています。

クロロフィル

クロロフィルは葉緑素とも言われている、植物や藻類に含まれる緑色の天然色素です。主成分はマグネシウムで、体内からダイオキシンやコレステロールなどの排出をしたり、胃腸粘膜の保護や修復をする作用があります。クロロフィルには抗酸化作用と浄化作用があり口臭・便秘予防の効果があると言われています。

食物繊維

食物繊維には、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」があります。食物繊維と糖質を足したものが炭水化物です。

不溶性食物繊維は水に溶けずに水分を吸収すると膨らみます。その結果、腸が刺激されて、ぜん動運動が盛んになります。また、便のかさも増します。これらの働きによって、スムーズな排便が促されます。腸内環境も整います。

水溶性食物繊維は、水に溶けることで食べたものの粘稠性を高めます。それによって食べたものの腸への移動がゆっくりになるため、血糖値の上昇がゆるやかになります。また、水溶性食物繊維は、腸でのコレステロールの吸収を抑え、体外に排出する役割もあります。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

春菊の調理による栄養素の変化

生食できる?

春菊は生食できる食材です。栄養素を無駄なく摂取するなら生食がおすすめです。

サラダなどおいしい食べ方はたくさんあります。

野菜のビタミンCは加熱に弱くない

「ビタミンCは加熱で壊れやすい」とよくいわれますが、この説明は正確ではありません。

ビタミンCには還元型ビタミンCと酸化型ビタミンCの2種類があり、野菜や果物に含まれるビタミンCは主に還元型であり、熱に弱いのは酸化型です。

チンゲン菜など野菜や果物に含まれるビタミンCは主に還元型なので、加熱に弱いということはありません。ビタミンCには2種類あり一方は熱に弱い点、水溶性である点の2つが、「ビタミンCは加熱に弱い」と誤解される理由です。

茹でると

しかし、還元型であってもビタミンCは水溶性なので、水にさらすと溶け出してしまいます。加熱調理の中では茹でることで、ビタミンCは多く流失します。ビタミンC以外にもビタミンB群、さらにはカリウムなど水溶性の栄養素は茹でることで溶け出してしまいます。

そのため、電子レンジで調理をすることで、水溶性の栄養素の減少を抑えることができます。

また、茹で時間を短くする、スープなどにして流れ出た栄養も頂く、などの工夫をしましょう。レンジで加熱するのもおすすめです。

炒めるときは油で栄養素の吸収率アップ

β-カロテンは加熱することで吸収率が1.5〜2倍にアップ。また、脂溶性なので野菜炒めなど油と炒めることでβ-カロテンの吸収率は6倍にもなります。

炒め物などにして、積極的に油と一緒に摂りましょう。鶏肉などと一緒に食べれば、鶏肉の脂質でβ-カロテンの吸収率が高まります。β-カロテンの吸収率が高くなれば、動脈硬化の改善や美肌効果にも繋がります。また、春菊を生食する場合でも、油が入ったドレッシングと合わせるだけでそのまま食べるより4倍の吸収率になります。

春菊の栄養に関する豆知識

アクの原因はシュウ酸

春菊のアクの原因はシュウ酸です。ほうれん草などと比べればシュウ酸の量は少ないですが、春菊にはシュウ酸が含まれています。シュウ酸は栄養素というよりも老廃物です。人体での合成量は微量で、ほとんどが食物から摂取されています。結石の原因になるので摂り過ぎには注意する必要がありますが、相当量摂取しない限りは過剰症にはならず、健康上の問題はあまりないとされています。

緑黄色野菜の中でもトップクラスの栄養価

春菊は緑黄色野菜の中でも栄養価がとても高いです。たとえばβ-カロテンはほうれん草よりも多く含まれています。上述しましたが、カルシウムも牛乳以上の含有量です。ビタミンもミネラルなど食生活で不足しがちな栄養素も比較的豊富に含まれており、積極的に摂取したい食材です。

一般的な旬は11〜3月

春菊は、名前に「春」が入っていますが秋から冬にかけて旬の時期となります。お鍋などで大活躍のお野菜です。ただ、春菊は暑さにも寒さにも強い野菜であるため、年間を通して出荷はされています。

品種よって味や香りが変わる

春菊は品種によって、味や香りが変わります。たとえばスティック春菊という品種は香りがまろやかでクセがないので、食べやすくなっています。大葉春菊は肉厚な品種です。香りが控えめなのが特徴です。

春菊の効果的な食べ合わせ

ビタミンCと一緒に

春菊はビタミン・ミネラル類が豊富ですが、ビタミンCが少なめです。そのため、ビタミンCを補うことで、β-カロテンやビタミンEの持つ抗酸化力がパワーアップします。春菊は「春」という漢字が使われていますが、冬野菜です。冬の風邪対策になります。

また、ビタミンCは鉄の吸収率をアップさせるので、鉄分が豊富な春菊と効果的な食べ合わせといえます。

例えば、ビタミンCが豊富なレモンやグレープフルーツと一緒に春菊をサラダにするのがおすすめです。

クエン酸と 

クエン酸には小腸からのカルシウム吸収促進作用をアップしてくれます。クエン酸はカルシウムを溶けやすい形に変える作用がありますが、これを「キレート作用」といいます。

クエン酸は食べると酸っぱいと感じる酸味の成分で、レモンに多く含まていることで有名です。他にも梅干しやオレンジ、酢などにも含まれます。

レモンに含まれるビタミンCは、ほうれん草に豊富に含まれる鉄の吸収の促進作用もあります。

春菊の栄養を逃さない保存方法

春菊の保存方法と期間【冷蔵

まずはじめに、春菊の冷蔵保存の方法をご紹介します。すぐに食べる場合でも常温での保存は避け、冷蔵庫で保存するようにしましょう。

キッチンペーパーで巻いた春菊

春菊をこのように冷蔵保存すると、5〜7日ほど日持ちします

春菊を購入した時の袋から取り出し、湿らせたキッチンペーパーを根元に巻きます(乾燥防止)。葉の部分は乾いたキッチンペーパーを巻きます。根元を下にしてポリ袋に入れ口を軽く閉じ、野菜室で立てて保存します。コップやペットボトルなどに入れるとしっかりと立てることが可能です。

春菊だけに限らず野菜全般にいれることですが、野菜が育った環境で保存することが、鮮度を保つポイントになります。横にして保存すると、余計なストレスがかかって鮮度が落ちてしまうことがあります。

春菊の保存方法と期間【冷凍】

茹でてから冷凍する春菊

春菊は冷凍でも保存することができます。冷凍保存では約1ヶ月ほど日持ちします。春菊を長く保存したい場合におすすめです。

茹でてから冷凍すれば、調理時間が短縮されるので◎。手間はかかりますが、茹でてから冷凍する方が味や食感、色の劣化が少ないです。かために茹でるのがポイントです。

春菊をさっと塩ゆでして冷水にさらし、しっかりと水けを絞ります。使いやすい長さ(4〜5cm)に切ったら小分けにしラップで包み冷凍用保存袋に入れます。

その他、詳しい春菊の保存方法についてはこちら