刺身こんにゃくとは、刺身のように生で食べれるようにつくられたこんにゃくのことです。その名の通り、刺身のように薄くスライスされた状態で販売されています。バライティーに富み、プレーンはもちろん、あおさや青のり入り、ゆず入りなどが販売されています。また、形状も様々で、イカの刺身のように細くスライスされたものや、ふぐの刺身のように表面に凹凸がつけられたものなどがあります。
刺身こんにゃくの主な原料は、こんにゃく粉(精粉)、水、凝固剤です。
こんにゃく粉に水を加えよく練り、水酸化カルシウムなどの凝固剤を加えてさらに粘り気を出します。これにあおさや青のりなどを添加して様々な味の刺身こんにゃくが作られています。
こんにゃくと言えば灰色が一般的ですが、刺身こんにゃくは緑色のものが多いですよね。こんにゃくのはずなのになぜ緑色なのか気になったことがある方は多いのではないでしょうか。
刺身こんにゃくは上述したように青さや青のり、クロレラ粉末など様々なものを添加することで様々な種類があります。一般的に販売されている緑色の刺し身こんにゃくは、青さや青のりが添加されているため緑色をしていることが多いです。
刺身こんにゃくに青のりや青さが使用されることが多いのは、こんにゃく独特の香りを隠すためという説や、見た目を良くするためという説がありますが、定かではありません。
刺し身こんにゃくには、青さや青のりを添加したものの他にも様々な種類があります。
例えば、ゆずパウダーが添加したゆず風味の刺し身コンニャクや青じそ風味、レバ刺しの味を再現したレバ刺し風味、マグロやサーモン、いくらの味を再現した海鮮風の刺身こんにゃくなど、変わり種も多く販売されています。
こんにゃく自体の発祥は茨城県奥久慈地方といわれています。
水戸藩の中島藤右衛門がこんにゃく芋を粉末にする方法を考案したことがきっかけでこんにゃくが誕生しました。こんにゃく芋の栽培が広まると江戸時代には水戸藩の専売品となって財政をささえるまでになっていたといい、こんにゃくの発案者である中島藤右衛門を祀る「蒟蒻神社」もあるのだとか。
こんにゃくが一般的に食べられるようになったときに、こんにゃくの食べ方として広まったのが「刺身こんにゃく」です。
刺身こんにゃくと普通のこんにゃく(板こんにゃく)との違いをご紹介します。
上記でご紹介したように、刺身こんにゃくはこんにゃく粉(精粉)から作られます。こんにゃく粉(精粉)を製造する工程は、荒粉加工(洗浄した生いもを薄い輪切りにして乾燥したもの)と、精粉加工(荒粉を粉砕しマンナン粒子だけを分離したもの)の2パターンがあります。
これに対し、普通のこんにゃくの原材料は、大別して下記の3つに分けられます。
刺身こんにゃくと普通のこんにゃくは食感も異なります。
刺身こんにゃくは、普通のこんにゃくよりも水分を多く含むため、柔らかく食べやすいです。普通のこんにゃくは、弾力のある食感で、歯ごたえがあります。
刺身こんにゃくは、生(そのまま)で食べられるように作られており、ほとんどが事前にアク抜き(下茹で)処理が行われた状態で販売されています。そのため、刺身こんにゃくは下処理は必要ありません。
これに対し普通のこんにゃくは、調理する前に下処理が必要です。これは、こんにゃくの主成分であるマンナンにえぐみの原因となるアクが含まれているためです。また、凝固剤として使用される水酸化カルシウムや卵殻カルシウムとこんにゃくが反応した特有の臭みやヌルヌル感が出ます。そのため、普通のこんにゃくはアク抜き(下茹で)が必要なのです。
<普通のこんにゃくの下処理方法>
1. こんにゃくを水洗いする。
2. 食べやすい大きさにし、塩もみ(こんにゃく1枚に対し小さじ1/2程度)する。
3. 沸騰したお湯で2〜3分茹でる。
刺身こんにゃくは、パッケージから取り出したら軽く水洗いをして、そのまま食べることができます。
これに対し普通のこんにゃくは、煮るなどの調理が必要です。おでんや煮しめなどの具材として使ったり、茹でたこんにゃくの表面に味噌を塗る田楽(でんがく)として食べるのが一般的です。
刺身こんにゃくの基本的な食べ方を紹介します。
刺身こんにゃくはアク抜き、下茹では不要です。上述したように、ほとんどの刺し身こんにゃくはそのまま食べられるように事前にアク抜きがされています。そのため、そのまま食べても苦味や臭みが気になることはほとんどないでしょう。
アク抜きは必要ありませんが、さっと水洗いして食べるように記載されていることが多いです。記載されていないものに関しては水洗いも不要ですが、気になる場合は軽く水洗いしてから食べると良いでしょう。
ちなみに刺身こんにゃくは予めスライスされているため、カットする必要もありません。水洗いだけですぐに食べることができます。
ほとんどの刺身こんにゃくは下処理なしで食べることができるのですが、万が一生臭さや苦味が気になる場合は、水洗いした後にお湯をかけたりさっと湯通ししてアク抜きをすると良いでしょう。
生姜など臭み消しになる薬味などと一緒に食べることでも軽減されるので、食べ方を工夫してみてください。
刺身こんにゃくはその名の通り、刺し身のように醤油につけて食べるのが基本です。または、刺身こんにゃくにタレが一緒に入っていることも多いので、付属のタレをつけて食べます。
付属のタレは酢味噌や柚子味噌、ポン酢などが多いです。
刺身こんにゃくをそのまま食べる際のおすすめの調味料をいくつかご紹介します。刺身こんにゃくにタレが付いて販売されていない場合でも、ご自宅にある調味料で美味しくいただくことができます。
上記でご紹介した酢味噌や柚子味噌、ポン酢、醤油はもちろん、
わさび醤油
めんつゆ
ゴマダレ
コチュジャン
スイートチリソース
などの調味料ともよく合います。
その他、刺身こんにゃくに合うタレはこちらの記事でご紹介していますので、ぜひお好みのタレを見つけてみてください。
刺身のように、生のままで食べるのが基本的な食べ方ですが、刺身こんにゃくはそれ以外のレシピにも応用ができます。ここでは、刺身こんにゃくを使ったおすすめの料理をご紹介します。
ヘルシーな刺身こんにゃくは、サラダの具材として使うのもおすすめです。例えば、中華風サラダやキムチサラダ、きゅうりやトマトサラダなど。細切りなど小さくカットすることで、他の具材やドレッシングと絡みやすくなります。
刺身こんにゃくを本物の刺身に見立てて、カルパッチョとして食べるのも美味しいです。刺身の代わりに刺身こんにゃくを使用して、後は通常のカルパッチョと同じように、スライスした玉ねぎやラディッシュ、ピンクペッパーなどと一緒にお皿に盛り付けるだけです。オリーブオイルと塩だけの味付けでも美味しいですし、お好みのドレッシングなどをかけて食べても美味しくお召し上がりいただけます。
刺身こんにゃくは、和え物として食べても美味しいです。ゴマ和えや酢味噌和え、味噌和え、白和え、味噌和えなど様々な味との相性がいいです。調味料と絡みやすくするために、一口大に切ってから使うことをおすすめします。
生のまま食べる刺身こんにゃくですが、火を通す料理に使用することもできます。オイスター炒めやピリ辛炒め、キムチ炒めなど、いつもの炒め物に刺身こんにゃくを加えるだけで、一味違う炒め物を楽しむことができます。
刺身こんにゃくは普通のこんにゃくと同じように煮物にすることもできます。醤油やみりん、砂糖などの一般的な煮物に使われる調味料を使って煮込むと、美味しいのでおすすめです。
また、おでんの具にしても良いです。普通のこんにゃくは分厚くしっかりとした歯ごたえがありますが、刺身こんにゃくを使うと、普通のこんにゃくとはまた違った柔らかい食感ですし、薄いので小さなお子様でも食べやすいです。
刺身こんにゃくは、味噌汁の具材にすることもできます。豚汁には普通のこんにゃくを入れることが多いかと思いますが、もちろんこんにゃくの代用品として刺身こんにゃくを入れても美味しいです。
刺身こんにゃくという名前から、そのまま刺し身のように食べることしかできないように思えますが、万が一口に合わず余ってしまってもお味噌汁に入れるなど普通のこんにゃくと同じように扱えば美味しく食べることができますよ。
しゃぶしゃぶといえばお肉や野菜を使うのが定番ですが、刺身こんにゃくをしゃぶしゃぶにして食べるのも美味しく、人気があります。
作り方も非常に簡単です。鍋に水と昆布だしを加えて沸騰したら、刺身こんにゃくをさっとくぐらせてポン酢などのタレをつけて食べるだけです。ダイエット中の方にもぴったりな一品です。
刺身こんにゃくの水気をしっかりきった後、きなこと黒蜜をかければおやつとしても食べられます。こんにゃくにきなこと黒蜜なんて合うの?と思う方も多いかと思いますが、味わいはわらびもちに似ています。
わらびもちはカロリーや糖質量が気になりますが、低カロリー低糖質の刺身こんにゃくであればダイエット中の方も安心して食べることができます。
ただし、黒蜜はカロリーが高く糖質量も多いのでダイエット中の方はかけすぎないように注意しましょう。
メーカーや刺身こんにゃくの種類などによって若干の差はありますが、ここでは一般的な刺身こんにゃくの栄養やカロリーなどをご紹介します。
100gあたりのカロリーは、5〜10kcal前後であることが一般的です。
一般的な刺身こんにゃくの食品成分表の内容は下記の通りです。
<刺身こんにゃく(100gあたり)>
たんぱく質・・・0.1〜1g
脂質・・・0.1〜0.4g
炭水化物・・・〜11g
食塩相当量・・・0〜1.0g
刺し身こんにゃく100gあたりの糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は0.1g程です。刺身こんにゃくは食物繊維が多く含まれているため糖質量は他の食材と比較しても低くなります。
刺身こんにゃくのGI値は不明ですが、普通のこんにゃくのGI値が24と低GI値であるため、刺身こんにゃくのGI値も低めであると考えられます。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
GI値が低い刺身こんにゃくは、脂肪として体内に蓄積されにくく、食べた後の満腹感が長続きするため食べる量を抑えることができるといえます(ただし、空腹感には個人差があります)。
こんにゃく自体のカロリーや糖質量は低く、血糖値の上昇も緩やかで満腹感が長続きするためダイエット食に向いているといえます。ただし、酢味噌などのタレのカロリーには十分注意する必要があります。
かつてこんにゃくは「ノンカロリー食品」とされていました。こんにゃくの主成分であるグルコマンナン(詳細は下記で解説しています)は、人間の消化酵素では消化されず、腸内細菌によって分解され、その一部の分解物が吸収されるだけだからです。しかし、一部でも吸収されればエネルギーになるので、厳密には「ノンカロリー食品」とは呼ばないようになりました。
刺身こんにゃくの原材料であるこんにゃくいもの主成分は炭水化物です。大部分が水溶性食物繊維のグルコマンナンであり、「コンニャクマンナン」と呼ばれます。グルコースとマンノースの縮合重合体であり、グルコマンナンの濃度が高いほど歯ごたえのよいこんにゃくができます。グルコマンナンは昔から「お腹の砂払い」などといわれるほど、腸中の老廃物を押し出してくれる作用があります。
生いもからこんにゃく粉を製粉したときの残留物である「とび粉」には、血圧降下やコレステロール低下などの機能成分が含まれているといわれています。そのため、とび粉を混合してこんにゃくが作られることもあります。
刺身こんにゃくには上述したように水溶性食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維自体は身体に良いのですが、摂りすぎると胃痛や腹痛、軟便、下痢症状を引き起こす恐れがあります。刺身こんにゃくの1日の摂取目安量は明確には決められていませんが、ダイエットに良いからといって食べすぎないように注意してください。
また、体質的に食物繊維が合わない方もいます。食べてみて調子が悪くなるようであれば無理して食べないようにしましょう。
刺身こんにゃくは、スーパーやコンビニで購入できます。
スーパーにある場合は、こんにゃくなどが陳列されているコーナーに置かれていることが多いです。コンビニにある場合は、冷蔵コーナーに陳列されています。
刺身こんにゃくの価格は、メーカーや種類、大きさなどによって異なりますが、100gで100〜300円前後が一般的です。
スーパーやコンビニで売っていない場合は、楽天市場やAmazonなどのネット通販で購入が可能です。
ネット通販では発祥の地である茨城県など、ご当地の刺身こんにゃくを購入することができるので、あえてお取り寄せをしてみるのも良いでしょう。スーパーで販売されている刺身こんにゃくとはまた違った味わいを楽しむことができます。
刺身こんにゃくはスーパーやコンビニなどで購入することができますが、万が一販売されていない場合は手作りすることが可能です。必要な食材と作り方、そして切り方を詳しく解説します。
刺身こんにゃくを手作りする場合に必要な食材は下記の通りです。
こんにゃく粉・・・50g
凝固剤(水酸化カルシウムなど)・・・3g
水・・・1600cc(のりかき)、200cc(アク作り)
こんにゃくが出来上がったら、薄くスライスします。薄くスライスする方法をご紹介します。
こんにゃくを、適当な大きさにまで細かくしたら、こんにゃくを削ぐように包丁を手前に引いて薄くスライスします。刺身を切るようなイメージです。
こんにゃくの表面はつるつるしていて滑りやすいので、十分注意しながらスライスしましょう。
普通のこんにゃくでも薄くスライスすれば、もちろん刺身こんにゃくとして食べることができます。こんにゃくが余っているときや、おつまみとして一品欲しいときなどにおすすめです。
ただし、上述したように普通のこんにゃくは下処理をしないと生臭く、苦味もあるので食べにくいです。普通のこんにゃくを刺し身こんにゃくにするときは、さっと茹でて下処理をしてから薄くスライスして刺し身こんにゃくとして食べましょう。
刺身こんにゃくの賞味期限は、メーカーや刺身こんにゃくの種類によって異なります。未開封の場合、製造日から60〜180日であることが一般的です。
刺身こんにゃくは、できるだけ要冷蔵で保存するのが好ましいですが、高温多湿や直射日光を避けての保存も可です。開封後の刺身こんにゃくは冷蔵保存のみ可です。開封後は劣化が早いため、賞味期限に関わらずなるべく早めに食べきりましょう。
なお、刺身こんにゃくの冷凍保存はあまりおすすめしません。こんにゃくを冷凍してしまうと、食感が劣ってしまうためです。
あまり日持ちする食べ物ではありませんので、賞味期限内に早めに食べきることが大切です。
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