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トマトを食べ過ぎるとどうなる?1日何個が適量?

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トマトを食べ過ぎるとどうなる?1日何個が適量?

サラダや煮込み料理でよく使われるトマトですが、食べ過ぎると身体にどんな影響があるのでしょうか?どのくらいトマトを食べたら食べ過ぎになってしまうのか解説します。

トマトが食べ過ぎNGな理由

冷え

トマトは漢方や薬膳、東洋医学では体を冷やす野菜とされています。体温が上がってしまう夏場には嬉しい効能ですが、食べ過ぎると胃腸の機能が低下したり、おトイレが近くなってしまうので注意しましょう。

「トマトは体を冷やす」の栄養学的な根拠としては2点挙げられます。1つ目は水分量が多いことです。トマトは94%が水分です。野菜は多くが9割程度水分ですが、トマトは特に水分量が多い野菜に分類されます。水分が多いとその分トイレが近くなるので、体温が下がりやすくなります。

2つ目は、トマトに含まれるカリウムの働きです。カリウムは利尿作用があり、体内の塩分(ナトリウム)を体の外に排出します。尿を出すことで体温が奪われ体が冷えます。日本人は塩分を摂り過ぎる傾向があるため、カリウムは非常に重要な栄養素です。トマトに塩をふってしまうと、カリウムの効能が相殺されてしまうので避けた方がよいでしょう。

出典:MSDマニュアル家庭版『低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度が低いこと)』

食物繊維

トマト100gあたりの食物繊維の量は1.0gです。野菜の中で特に多いというわけではありませんが、食べ過ぎればその分食物繊維の摂取量は上がります。食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があり、トマトにはそのどちらも含まれています。

不溶性食物繊維は摂りすぎると大腸を刺激しすぎてしまい、大腸の収縮が強くなって起こる痙攣性便秘の原因になります。

水溶性食物繊維は摂りすぎると軟便や下痢に可能性があります。また、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素の吸収も妨げてしまうことになりますので注意しましょう。

どのくらい摂取すると過剰摂取になるかの明確な数値はありませんが、普通の食事で便秘になることはほとんどありません。摂取目標量については後述しています。

出典:

栄養バランス

トマトは栄養が豊富な食材ですが、トマトばかり食べていたら栄養が偏ってしまいます。

例えば、トマトに不足している栄養素には、ビタミンB1・B12・Dなどがあります。ビタミンDは骨の形成を助け、ビタミンB12は赤血球の中のヘモグロビンの生成を助ける働きがあります。ビタミンDは肉類や卵に、ビタミンB12はレバーや牡蠣、あさりやしじみなどの魚介類、海苔をはじめとする藻類に多く含まれています。

さらに、同じ栄養素であっても、複数の食材から摂取した方が良いと言われているため、一つの食材のみを食べ過ぎるのは避けるべきと言えます。様々な食材を摂取して、バランスの良い食事を心がけましょう。

出典:農林水産省 厚生労働省「食事バランスガイド」

シュウ酸

トマトには胆石や尿路結石の原因となるシュウ酸が含まれています。トマト以外にもほうれん草やバナナなどにも多く含まれています。

シュウ酸はカルシウムと一緒に摂ることで体への吸収を減らすことが報告されているため、カルシウムを多く含んでいる乳製品や干しエビ、豆腐や納豆などの大豆製品といっしょに摂るとリスクを下げることができるとされます。

出典:日本医師会|尿路結石

リコピン

トマトに含まれる赤い色素のリコピンが体内に吸収されなかった場合、便が赤くなる、もしくは黒くなることが報告されています。これは健康上問題ないのであまり気に留める必要はありません。単純に、色素によって便も着色してしまっただけです。

β-カロテン

トマトを食べすぎると肌が黄色くなることがあります。これは柑皮症(かんぴしょう)といって、食物に含まれるβ-カロテンなどのカロテノイド色素をたくさん摂ると起こります。皮膚がミカンの皮のように黄色になるので柑皮症と呼ばれています。トマトにはβ-カロテンが多く含まれているため柑皮症が起こる可能性があります。

出典:厚生労働省|eJIM『ビタミンA』

アセチルコリン

トマトによって仮性アレルゲンというかゆみや蕁麻疹といったアレルギーに似た症状を引き起こすことがあります。これはトマトに含まれるアセチルコリンという物質が原因と考えられています。仮性アレルゲンは発疹やかゆみが出ることが多く、症状は比較的軽いと言われています。しかし、大量に食べると強く症状がでることがあるため、症状が出る場合は大量に食べるのは控えましょう。

出典:

カリウム

トマトは野菜の中で比較的多くカリウムが含まれています。

カリウムは普通の食事で摂りすぎることはあまり考えられませんが、腎機能が低下している方がカリウムの多い生野菜や果物、いも類、海藻類などを過剰摂取したり、腎機能に問題ない方でもサプリメントで摂りすぎた場合は「高カリウム血症」という症状になる恐れがあります。

塩や醤油、味噌を頻繁に使う日本人は塩分を摂りすぎる傾向があり、塩分に含まれるナトリウムの摂取量が多くなるため、腎機能に問題がなければカリウムを食材から積極的に摂ることが推奨されます。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

カロリー・糖質

トマトと他の野菜のカロリー・糖質を比較した表

トマト可食部100gあたりのエネルギー量は20kcalで、糖質は3.7gです。トマトは低カロリー・低糖質な野菜なので食べ過ぎによって太ってしまうという心配はあまりありません。

ただし、サラダなどで食べる場合、ドレッシングなどによってカロリーが上がってしまうことがあるので注意しましょう。

ちなみに、ごはん100gあたりカロリー156kcal、糖質35.6gです。

出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)

トマトの1日の摂取目安量

ボウルに入ったトマト

トマトの1日の摂取量は定められていませんが、緑黄色野菜の推奨摂取量を参考に目安を把握することができます。

緑黄色野菜を基準にして

大人の野菜の摂取目安量は1日あたり350g以上と設定されており、緑黄色野菜は120g以上、淡色野菜は230g以上です。

緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。

トマトのβ-カロテンの含有量は600μg未満ですが一度に食べる量が多いので緑黄色野菜に分類されます(ちなみに、ピーマンも同じ理由で緑黄色野菜です)。他の緑黄色野菜と合わせて120g以上を目安にするということになります。

トマトは1個で150〜200gくらいありますから、1/2個くらいが1日の摂取目安量と言えます。上記の数値は目標量なので、より多く食べても問題なく、1〜2個食べても食べ過ぎになるとは言えません。

トマト以外の緑黄色野菜には、人参やほうれん草、かぼちゃ、ピーマン、小松菜などがあります。

出典:厚生労働省|健康日本21(第二次)

トマトの栄養と効能

カリウム

カリウムは98%が細胞内液に存在し、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など、様々な効果があります。さらに腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑制し排泄を促進する働きがあるため、血圧を正常に保ちます。また、心臓や筋肉を動かし、熱中症やむくみの予防、また不要な老廃物を体外へ出す働きもあります。

カリウムは水に溶けやすい性質があり、茹でると50%以上が失われてしまうこともあるので、スープなどにして汁ごと食べることがおすすめです。ただしスープでナトリウムを摂りすぎないよう薄味にしましょう。

GABA(ギャバ)

GABA(ギャバ)もアミノ酸の一種です。野菜や果物に多く、その中でもトマトは含有量が高くなっています。ただし、明確な含有量は分かっていません。

GABAの代表的な働きはリラックス効果です。ストレスを感じたり運動をして興奮状態になると、脳内で活発にアドレナリンが分泌されますが、GABAはアドレナリンの分泌を抑制します。アドレナリン分泌が抑制されることで血圧が正常にし、酸素の供給を助けるとされています。

また、GABAはコレステロールと中性脂肪の増加の抑制する働きもあります。

β-カロテン

トマトは、β-カロテンが豊富に含まれています。

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます

リコピン

トマトが赤いのは、赤い色素であるリコピンが含まれているからです。トマトのほかにもスイカや金時人参、柿にも含まれています。

リコピンは抗酸化作用のある栄養素です。リコピンの抗酸化作用は同じ抗酸化作用を持つベータカロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上と言われています。肌や血管の老化を予防する効果が高いことがわかっています。

熟すにつれてリコピン(と、カロテン)が増加し、緑色素のクロロフィルが消失するため赤色になります。

ビタミンC

ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。

そのほか、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。


参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス