チアシードフラワーは、チアシードの種子を粉末状にしたものです。チアシードパウダーともいいます。本記事ではチアシードフラワーの原料や用途、栄養素について解説します。
チアシードフラワーの原料は、スーパーフードともいわれるチアシードの種子です。
チアシードを粉砕してパウダー状にしています。
チアシードは、シソ科アキギリ属の一年草「チア」の種子です。チアは1.75メートルほどの高さまで育ち、紫色や白色の花をつけます。
チアシードの種子は直径2mmで楕円形をなしており、1粒あたりの重さは約1.3mgとゴマよりも小さいです。種子の色は主に黒と白が多いですが、中には茶、灰、また斑模様になっているものもあります。
これらをパウダー状にすると、グレーや黒っぽい色になります。種子が白いもの(ホワイトチアシード)のみを粉砕したものは、白〜茶色っぽい色になります。チアシードフラワーはしっとりとした触感です。
チアシードフラワー自体は無味無臭で、チアシードのようなプチプチとした食感はありません。そのため、他の食材の味や食感などを邪魔することなく、様々な料理に合わせやすいです。
チアの原産地はメキシコ中南部やグアテマラです。歴史は古く、16世紀のメンドーザ絵文書には、コロンブス時代以前のアステカにおいて栽培されていた様子が記録されています。トウモロコシと同じくらい重要な食用作物であったと考えられています。
現在チアシードは、主にメキシコやグアテマラ、アルゼンチン、ボリビア、エクアドル、ニカラグア、オーストラリアなどで栽培されています。日本国内ではチアシードは生産されていません。
チアシードは、日本スーパーフード協会が考案した「プライマリースーパーフード10」に含まれます。一般的な食品よりも栄養価が高いものや栄養バランスが優れているもの、また特定の栄養成分が多く含まれているものなどを「スーパーフード」と呼びますが、明確な定義は存在しません。
チアシード以外には、スピルリナ・マカ・クコの実(ゴジベリー)・カカオ・ココナッツ・アサイー・カムカム・ブロッコリースプラウト・麻の実(ヘンプ)がプライマリースーパーフード10に該当します。これらはあらゆるスーパーフードの中でもとくに認知度が高いものだと考えられています。
出典:日本スーパーフード協会
チアシードフラワーとチアシードパウダーは同じものを指します。
「フラワー(flour)」と「パウダー(powder)」の違いですが、パウダーの方が広義で、あらゆる粉末状のものを指し、フラワーは、穀粉(穀物を粉砕したもの)を指します。
ちなみに米国では、チアフラワー(Chia flour)、チアパウダー(Chia powder)といいます。
チアシードフラワーには吸湿性があり、水などの液体に浸すと水分を吸収し10倍に膨らむといわれています。そのため、満腹感を得やすく、ダイエット中の食事に適しています。
さらに、チアシードフラワーに含まれる水溶性食物繊維のグルコマンナンは、胃の中での滞留時間を長くする作用があるため、腹持ちがよいです。
チアシードを粉末状にすることでさらに吸湿性が上がるため、ダイエット食品としておすすめの食材です。
チアシードフラワーはチアシードのみを原料にしています。チアシード自体がグルテンフリーなので、チアシードフラワーもグルテンフリー食品となります。
グルテンは小麦などに含まれるたんぱく質の一種です。グルテンは料理をおいしくしますが、アレルギーの原因となる他、消化されにくいという性質があり、肥満やむくみの原因となったり、疲れやすくなるなどの症状が身体に出ることもあります。そのため、近年グルテンを摂取しないグルテンフリーの生活をする人も多くいます。
チアシードフラワーにはグルテンが含まれないため、小麦アレルギーの方やグルテンフリーの生活をしている人も小麦粉の代用品として使うことができます。
チアシードフラワーが持つ吸湿性を生かし、料理の「つなぎ」の役割を果たすこともできます。そのため、卵アレルギーの方やヴィーガンの方、動物性食材を避けたい方が、卵の代替品としてチアシードフラワーを使うことも多いです。
例えば、クッキーやパンなどのお菓子や、お好み焼きやハンバーグなどに用いることで、生地や食材がまとまりやすくなります。
チアシードを使うことで、食物繊維などの栄養素をプラスすることができるという点も良いですね。
チアシードは、コロンブス時代以前のアステカにおいて、「小さじ1杯のチアシードと水で24時間走り続けることができる」と言い伝えられており、別名「ランニングフード」と呼ばれていました。
チアシードを水などの液体に浸すと、水分を吸収し膨らみ種子の周りにゼリー状のコーティングを形成します。このゼリー状の物質(グルコマンナン)が胃の中をコーティングし、炭水化物を分解して糖に変える胃の消化酵素との間のバリアとして機能します。分解プロセスを遅くすることによって、血糖値の急上昇を抑え、シュガークラッシュ(低血糖状態)を起こすまでの時間を先延ばしにすることが可能となり、結果として長時間のランニングが可能になるといわれています。
さらに、チアシードは10倍以上の水分を吸収するため、運動を行う人が手軽に水分補給することができます。
チアシードフラワーに含まれる栄養素は、文部科学省の食品成分データーベースなどにも記載がないため不明ですが、原料は100%チアシードであるためチアシードに含まれている栄養素とほぼ同じであると考えられます。
チアシード100gに含まれている栄養成分は下記の通りです。
たんぱく質…3.47
脂質…8.37
炭水化物…4.07
ミネラル類
カルシウム…570mg
マグネシウム…360mg
鉄…7.6mg
亜鉛…5.9mg
マンガン…4.8mg
セレン…11μg
ビタミン
βカロテン…3μg
ビタミンK…1μg
ビタミンB1…0.97mg
ビタミンB2…0.25mg
ナイアシン…9.8mg
ビタミンB6…0.42mg
葉酸…84μg
ビオチン…24μg
ビタミンC…1mg
チアシードには、三大栄養素といわれるたんぱく質・脂質・炭水化物の他、といわれるほどカルシウム・鉄・マグネシウムなどのミネラルや、ビタミンB郡などの栄養素を多く含んでいます。その栄養価の高さから、「生命維持にはチアシードと水があれば事足りる」ともいわれています。
チアシードのカロリー(エネルギー)は、100gあたり446kcalで、チアシードフラワーのカロリーもほぼ同じです。
白米のカロリーは156kcal、じゃがいものカロリーは76kcalなので、チアシードは高カロリー食品であることがわかります。
チアシードの糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は約6gです。白米100gの糖質量は約35g、じゃがいも100gの糖質量は約17gなので、チアシードは低糖質の食品であるといえます。
出典:文部科学省日本食品標準成分表2020年版(八訂)
チアシードフラワーに含まれている食物繊維「グルコマンナン」は、腸内に溜まっている便や不要なものを包み外に出す働きがあるため、便秘の改善や予防に繋がります。
また、グルコマナンは腸内細菌によって分解されるとオリゴ糖になり、ビフィズス菌の餌となるため腸内環境を整えることができるといわれています。腸内環境がよくなると免疫力が高まる他、肥満予防にも繋がります。
チアシードフラワーには、コラーゲンを構成するアミノ酸が含まれている他、ビタミン類やナイアシン、ビオチンなども含まれているため美肌効果も期待できます。
コラーゲンは肌のハリを保つために重要な成分です。体内のコラーゲンは加齢により減少してしまうので、チアシードフラワーはコラーゲンを補うのに有効な食品です。
ビタミン類には皮膚をすこやかに保つのを助けます。特にビタミンB2は、肌細胞の再生を促す働きがあるため、整った肌を育てることに繋がります。ビタミンB6は、ニキビの原因となる皮脂をコントロールする働きがあるため肌荒れを防ぐ効果が期待できます。
チアシードフラワーに含まれている脂質の主な構成成分はα−リノレン酸(オメガ3脂肪酸)です。α−リノレン酸は血流を良くし、組織細胞を正常に保つ働きがあるといわれています。
そのため、チアシードフラワーを摂取することで血液がサラサラになり、冷え性の原因の一つとなる血行不良を改善する効果が期待できます。
チアシードフラワーに含まれているセレンには抗酸化作用があり、活性酸素の働きを抑える働きがあることがわかっています。
活性酸素は、細胞を酸化させ血管をサビつかせる他、肌のシミやシワを増やしてしまうため、抗酸化作用のあるチアシードフラワーを摂取することは血管や肌の老化予防に繋がります。
食物繊維は、水に溶けることで食べたものの粘稠性を高めます。それによって食べたものの腸への移動がゆっくりになるため、血糖値の上昇がゆるやかになり生活習慣病の予防に繋がるといわれています。
血糖値の急上昇すると、血糖値の急降下につながり、空腹感を感じやすくなります。そのため、血糖値の上昇がゆるやかなチアシードフラワーは、食べた後の満腹感が長続きするため食べる量を抑えることができます(ただし、空腹感には個人差があります)
チアシードフラワーに多く含まれているカルシウムは、骨の健康を維持するのに大切な成分です。カルシウムが不足すると、骨が弱くなり、やがて骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を招きます。ビタミンKがカルシウムの吸収を助けるので、一緒に摂取するとより骨粗鬆症予防に繋がります。
また、カルシウムの1%は機能カルシウムとして血液や筋肉などに広く存在し大切な情報の伝達を行っており、それによって血液中のカルシウム濃度が常に一定に保たれています。機能カルシウムはこの細胞内外の濃度の差を利用して、血液の凝固や酵素の活性化、ホルモンや神経伝達物質の放出をしています。さらには神経の興奮を抑え精神を安定させたり、筋肉を収縮させたりする働きもあり、筋肉のなめらかな動きをサポートしています。そのため、カルシウム不足によるこむら返りを防ぐ効果があるといわれています。
チアシードフラワーにはヘモグロビンを構成している鉄分や、ヘモグロビンに必要な銅、赤血球の働きを助ける作用のある葉酸が含まれているため、貧血を予防する効果が期待できます。
貧血を予防することで、集中力の低下や頭痛、食欲不振、筋力低下を防ぎ、疲労感の軽減に繋がります。
チアシードフラワーの原料である、チアシードには発芽毒と呼ばれるアブシジン酸が含まれています。
発芽毒は種子を虫や鳥などの外敵から守るための天然の毒素であり、発芽の時期まで発芽しないように抑制する働きもあります。
高濃度のアブシジン酸を培養細胞に添加した実験において、ミトコンドリアに機能障害が起きたことから、「発芽毒」と呼ばれ人体に有害であると騒がれるようになりました。しかし、アブシジン酸が体内で高濃度になるとは考えにくく、実際に健康被害が認められたという事例はありません。内閣府の食品安全委員会でもアブシジン酸の安全性が示されています。
出典:内閣府食品安全員会
チアシードフラワーに含まれるα−リノレン酸は熱に弱いため、加熱することで油の酸化が進み、栄養素がなくなってしまいます。
チアシードフラワーの栄養素を摂取するためには、加熱調理は避けたほうが良いでしょう。
栄養素が豊富に含まれるチアシードフラワーですが、食べ過ぎには注意が必要です。
100gあたりのカロリー(熱量)が446kcalと高カロリーです。1日の摂取目安量である大さじ1杯だと50kcalほどなので、そこまで気にする必要はないかもしれませんが、白ごはんなどと比較するとカロリーが高いことは頭の片隅に入れておきましょう。
また、チアシードフラワーには水溶性食物繊維であるグルコマンナンが含まれますが、水溶性食物繊維は摂りすぎると軟便や下痢症状を引き起こします。
チアシードフラワーの原料であるチアシードはシソ科に属する植物ですので、タイムやオレガノなどのシソ科植物でアレルギー反応が出る方は注意が必要です。
また、ゴマアレルギーをお持ちの方も、アレルギー反応を起こす可能性がありますので、心配な方は専門医の受診を推奨します。
チアシードフラワーが自宅になくても、チアシードがあれば簡単に作ることができます。
用意するものはチアシードとミルサーやミキサーなどの粉砕機です。適量のチアシードをミルサー等に入れ、細かくするだけです。
容器の底や側面に付着しやすいので、ゴムベラなどで混ぜながら、全体的にパウダー状になるまで細かくします。
エゴマ(荏胡麻)はシソ科シソ属の一年生草です。原産地はヒマラヤ山麗から中国南部にかけての地域といわれていますが、インドや中国中部あるいは南部を原産地とする説もあります。日本には縄文時代以前に伝わったとされており、日本での主な産地は福島県や岐阜県、広島県などです。
エゴマの葉は、韓国ではキムチに加工して利用されます。エゴマの種子から得られる油はエゴマ油として料理に用いられます。「油」ではありますが、サラッとしているため食べやすいです。チアシードと同様にα−リノレン酸を豊富に含むため、加熱料理には適しておらず、サラダなどにかけて食べます。
キヌア(キノアともいいます)は、アカザ科アカザ属の一年生草です。原産地は南米アンデス山脈のティティカカ湖付近(ペルー、ボリビア)といわれています。日本へ伝わった時期は不明とされています。現在はペルーやボリビア、エクアドルなどが主な生産国です。
キヌアの種子は全粒のままスープやサラダ、炊き込みご飯などに入れたり、揚げ物の衣として利用したり、加熱により膨化させてポップ菓子として食されます。また、キヌアは麦茶のような香りがすることからキヌア茶としても市販されています。キヌアで作られた味噌や醤油などもあります。キヌアを粉砕し、クッキーやパン、ビスケット、パスタなどの生地に練り込んで食べることもあります。
バジルは、シソ科メボウキ属の一年生草です。原産国はインドやアフリカといわれています。主な生産国はアメリカやモロッコ、北地中海沿岸です。
バジルには様々な品種がありますが、一般的なのはスイートバジルです。バジルの葉はピザやパスタ、サラダ、マリネなどに用いられます。バジルの種子はチアシードと同じような食べ方をします。
チアシードとバジルシードは見た目がほぼ同じですが、バジルシードの方が低カロリー(1gあたり1kcal)です。栄養素にほとんど差はありませんが、チアシードにのみ必須アミノ酸を多く含みます。
ヘンプシードとは、アサ科アサ属の一年生草本である麻の種子を指します。中央アジアが原産といわれています。
麻の実(ヘンプシード)は、食用油「ヘンプシードオイル」として、また種子のまま食されます。七味唐辛子に入っている大きめの黒い粒が麻の実です。種子のまま食べる場合は、チアシードと同様に、サラダやヨーグルトなどのトッピングや、クッキーなどのつなぎ、ドレッシングなどとして食べることができます。
ポピーシードは、ケシ科ケシ属に属する一年草である芥子(ケシ)から得られる種子です。芥子を英語で「Poppy(ポピー)」ということから、ポピーシードと名付けられました。
ポピーシードには多量の油分が含まれているため、圧搾して食用油のポピーシードオイルとして使われます。また、種子は煎ると香ばしくなるため、パンやケーキのトッピングとして使用したり、七味唐辛子に混ぜて使用されます。
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