1. Fily
  2. Food
  3. Encyclopedia
  4. 玉ねぎの食べ過ぎはNG?適量はどのくらい?

玉ねぎの食べ過ぎはNG?適量はどのくらい?

公開日

更新日

玉ねぎの食べ過ぎはNG?適量はどのくらい?

保存性が高くさまざまな料理に使える玉ねぎは食卓に登場する頻度が高い野菜ですが、食べ過ぎるとリスクがあるのはご存知ですか?本記事では玉ねぎの食べ過ぎによる症状とその原因、対処法を分かりやすく解説していきます。

玉ねぎを食べ過ぎるとどうなる?

アリシン

玉ねぎにはアリシンという香気成分が含まれています。アリシンはニンニクやネギにも多く含まれています。

アリシンは殺菌作用が強く、刺激も強いです。そのため食べすぎると胃壁や腸内を刺激してしまい、胃痛や下痢などの症状が出てしまいます。胃腸が弱っているときは摂取量を控えた方がいいでしょう。

アリシンによる健康被害の一般的な対処法は、

  • 白湯など水分を摂って安静にする

  • それでも腹痛が収まらなければ、病院へ

  • 玉ねぎを食べる前に乳製品を摂取しておく

  • 玉ねぎを加熱してから食べる

  • 生で食べる場合は水にさらす(アリシンは水溶性なため)

などです。

水分を摂取して胃の中を薄め、安静にしましょう。それでも腹痛や頭痛などが治らない場合は、アリシンの刺激ではなくアレルギー等の可能性もあるので、医療機関に相談をして治療を受けましょう。また、事前に乳製品を摂取しておくことで胃粘膜が保護され、アリシンの吸収を抑えることができるといわれています。オニオンサラダなど生で大量に食べるのは控えましょう。

腹痛にならなくとも臭いが強いため、食後の口当たりが悪く、気持ち悪くなることがあります。

また、口臭が気になることも...。りんごに含まれるリンゴ酸がアリシンを分解する作用があるといわれているため、口臭対策にリンゴジュースがおすすめです。玉ねぎの食べ過ぎは、口臭だけでなく体臭が臭くなることもあります。

参考文献:お茶の水女子大学大学院教授 飯田薫子・関東学院大学准教授 寺本あい 監修(2019)『一生役立つきちんとわかる栄養学』西東社

糖質

玉ねぎと他の野菜のカロリー・糖質を比較した表

玉ねぎは野菜の中で糖質が高い部類に入りますので、食べ過ぎたら太ります。

玉ねぎ100gあたりの糖質は6.9gです。他の野菜と比べてみると、よく食卓に並ぶトマトは100gあたりカロリー20kcalで糖質は3.7g、ピーマンは100gあたりカロリー20kcalで糖質は2.8gと低いです。糖質の高いイメージのあるじゃがいもでも100gあたりカロリー59kcalで糖質8.4gです。

ちなみにごはん(白米)の糖質は100gあたり35.6g、カロリーは156kcalとなっています。チョコレートの糖質は、ミルクチョコレートの場合100gあたり51.9gで550kcalにもなります。ごはんやお菓子に比べたら、玉ねぎの糖質は低いといえます。

出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)

栄養バランス

玉ねぎはお世辞にも栄養価の高い野菜とは言えず、玉ねぎばかり食べると栄養が偏ってしまいます。

玉ねぎに不足している栄養素には、例えば、βカロテン(ビタミンA)とビタミンB1、ビタミンB12とビタミンDなどがあります。

βカロテンは体内でビタミンAに変化し皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進して健康を保ちます。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変えるのを助ける大切な栄養素です。不足すると疲労症状などが出てしまいます。

ビタミンB12・Dは野菜にはほとんど含まれない栄養素です。ビタミンDは骨の形成を助け、ビタミンB12は赤血球の中のヘモグロビンの生成を助ける働きがあります。

出典:農林水産省|食事バランスガイド

食物繊維

玉ねぎ100gあたりの食物繊維の量は1.5gです。食物繊維には不溶性と水溶性があるのですが、玉ねぎには両方が含まれます。

不溶性食物繊維は摂りすぎると大腸を刺激しすぎてしまい、大腸の収縮が強くなって起こる痙攣性便秘の原因になる可能性があります。

水溶性食物繊維は摂りすぎるとお腹がゆるくなってしまう可能性があります。また、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素の吸収も妨げてしまう場合もあるので注意が必要です。

出典:

オリゴ糖

玉ねぎにはオリゴ糖が含まれています。オリゴ糖は善玉菌のエサとなり腸内フローラを整える働きがあります。糖質の中ではカロリーが低いと言われ、ダイエッターからも人気な成分です。

ただし、オリゴ糖は消化があまりよくありません。そのまま吸収されることがないため、カロリーが低くなっているのですが、摂取しすぎるとフルクタンやラフィノースというオリゴ糖に含まれる成分が下痢症状を引き起こしたり、お腹が張ってしまうことがあります。

オリゴ糖製品によるオリゴ糖の有効摂取量は1日あたり2〜10gとされているので、それを目安にするといいでしょう。腸に良いからといって、闇雲に多量摂取するのは控えましょう。また、過敏性腸症候群の方はオリゴ糖の摂取を控えるよう推奨されています。

出典:厚生労働省|e-ヘルスネット『腸内細菌と健康』

中毒

玉ねぎは食べ過ぎると、いわゆる「タマネギ中毒」といって、貧血を引き起こす場合があります。犬や猫に玉ねぎをあげてはいけない理由がこのタマネギ中毒です。

タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラなどのネギ属に含まれる有機チオ硫酸化合物がヘモグロビンを酸化させることにより溶血性貧血を起こします。

玉ねぎの1日の摂取目安量

テーブルに並んだ玉ねぎ

玉ねぎの1日の摂取量の上限は定められていませんが、野菜の摂取目安量を参考に、目安を把握することが可能です。

淡色野菜の摂取目安量を基準にして

大人の野菜の摂取目安量は1日あたり350g以上と設定されており、緑黄色野菜は120g以上、淡色野菜は230g以上です。

緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。

玉ねぎは淡色野菜に分類されるので、他の淡色野菜と合わせて230gほどを目安にするとよいでしょう。玉ねぎ以外の淡色野菜には、もやす、キャベツ、大根、れんこん、セロリなどがあります。

他の淡色野菜を食べることを考慮すれば、1日に50gほど、中くらいの玉ねぎ1/4個程度が目安と一般的にいわれています。

出典:厚生労働省|健康日本21(第二次)

玉ねぎの栄養と効能

アリシン(硫化アリル)

アリシンは匂いや辛味成分のひとつで、硫化アリルの仲間です。玉ねぎやにんにくに多く含まれる成分です。

アリシンは糖の代謝を促し、エネルギーを生み出すビタミンB1と結びついてその効果を持続させる働きがあります。また、ビタミンB1と協力して血糖値とコレステロール値の上昇を抑え、生活習慣病予防の効果が期待されています。さらに、アリシンには抗酸化作用があるので、その点でも生活習慣病予防に役立つとされています。

また強い殺菌力による風邪予防や、アリシンの香りによる食欲増進と消化吸収上昇の効果も期待できます。その他にも血液が固まりやすくなるのを防ぐため、血栓ができにくくなります。

カリウム

カリウムは98%が細胞内液に存在し、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など、様々な効果があります。腎臓でナトリウムが再吸収されるのを抑制し排泄を促進する働きがあるため、血圧を正常に保ちます。そのため、高血圧の予防になるミネラルの一つです。また心臓や筋肉を動かし、熱中症やむくみの予防、また不要な老廃物を体外へ出す働きもあります。

またカリウムは水に溶けやすい性質があります。根菜類やブロッコリーは比較的損失が少なくなっていますが、葉菜類は茹でると50%以上が失われてしまうのでスープなどにして汁ごと食べることがおすすめです。ただしナトリウムを摂りすぎないよう薄味にしましょう。

リン

リンの約80%はカルシウムやマグネシウムと結合して歯や骨の構成成分となっています。体内でビタミンB1やB2と結合して補酵素になり、糖質の代謝促進をします。さらに、エネルギー代謝にも関わり、エネルギー発生やエネルギーの貯蓄に関わっています。さらに筋肉や神経などの機能を正常に保つ効果もあります。

リンとカルシウムは血液中で一定のバランスを保っているため、この2つの成分のバランスがとても大切です。カルシウムとリンの割合は1:1で摂取するのが理想的な比率とされていますが、加工食品や清涼飲料水をよく飲食する人はリンを多く摂取しがちですので、カルシウムもバランスよく摂取するようにしましょう。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス