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人参の食べ過ぎはNG?1日の摂取目安量はどのくらい?

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人参の食べ過ぎはNG?1日の摂取目安量はどのくらい?

家庭でもよく使われるポピュラーな野菜である人参。抗酸化作用の強いβ-カロテンが豊富なことで有名ですが、食べ過ぎには注意が必要です。人参を食べ過ぎた場合のリスクを解説していきます。この記事は管理栄養士が監修しています。

人参の食べ過ぎの症状と対処法

食物繊維

人参には食物繊維が含まれています。食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があり、便秘・下痢の改善や腸内環境を整える際に、この2つのバランスが重要となります。

人参はどちらも含まれていますが、不溶性食物繊維が3倍多いです。

不溶性食物繊維は摂りすぎると大腸を刺激しすぎてしまい、大腸の収縮が強くなって起こる痙攣性便秘の原因になります。

ちなみに、水溶性食物繊維は摂りすぎると軟便や下痢に可能性があります。また、ビタミンやミネラルなど必要な栄養素の吸収も妨げてしまうことになりますので注意しましょう。

どのくらい摂取すると過剰摂取になるかの明確な数値はありません。

出典:

栄養バランス

人参に限った話ではありませんが、ひとつの食材だけを摂取していると栄養が偏ってしまいます。

例えば、人参にあまり豊富に含まれていない栄養素にはビタミンCがあります。含有量は0ではないですが、他の野菜と比べるととても少なくなっています。ビタミンCを多く含む食品には、野菜であればピーマンやブロッコリーがあります。実はピーマンやブロッコリーはレモンよりも多くビタミンCが含まれています。それからアセロラにも多く含まれています。

ビタミンB群も少なめです。野菜にはなかなか含まれていないビタミンB12は赤血球の中のヘモグロビンの生成を助ける働きがあります。レバーや牡蠣、あさりやしじみ、海苔などに多く含まれています。

同じ栄養素であっても複数の食材から摂取した方がよいとされています。バランスのよい食事を心がけましょう。

出典:農林水産省「食事バランスガイド」

柑皮症

柑皮症(かんぴしょう)は、β-カロテンなどのカロテノイド色素の過剰な摂取で皮膚が黄色くなることをいいます。これは皮膚がミカンの皮のように黄色になるので柑皮症と呼ばれています。

人参にはβ-カロテンが多く含まれているので、食べ過ぎることで柑皮症になる可能性があります。みかんを食べすぎて手が黄色くなるのもこの柑皮症です。有害ではなく、β-カロテンの摂取をやめれば回復するといわれています。

出典:厚生労働省|eJIM『ビタミンA』

カリウム

人参には多くのカリウムが含まれています。

カリウムは普通の食事で摂りすぎることはあまり考えられませんが、腎機能が低下している方がカリウムの多い生野菜や果物、いも類、海藻類などを過剰摂取したり、腎機能に問題ない方でもサプリメントで摂りすぎた場合は「高カリウム血症」という症状になる恐れがあります。

塩や醤油、味噌を多く使う日本人は塩分を摂りすぎる傾向があり、塩分に含まれるナトリウムの摂取量が多くなるため、腎機能に問題がなければカリウムを食材から積極的に摂ることが推奨されます。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

人参ジュースも飲みすぎ注意

手軽に人参の栄養が取れるからと、人参が含まれる野菜ジュースを日常的に飲んでいる方も多いかもしれません。しかし、野菜ジュースは味を調整するために果物が配合されていたり、砂糖が入っている場合があります。100%の野菜ジュースでも、加工過程で不溶性食物繊維が取り除かれているため、血糖値が上がりやすくなっていると想定されます。そのため、ダイエット中は野菜ジュースは飲まず、野菜そのものを飲むのが推奨されます。

参考文献:津川友介(2018)『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』東洋経済新報社

ビタミンA

ビタミンAは過剰摂取によって頭痛や筋肉痛、皮膚の乾燥や脱毛などの症状が現れます。

しかし、野菜に含まれるβ-カロテンは必要量のみビタミンAに変換されるので心配いりません。基本的に、ビタミン過剰症などはサプリメントの過剰摂取などから引き起こることが多いです。通常の食事や、1日に1つの食材を普段より多く食べたくらいでは過剰症の心配はありません。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

カロリー・糖質

人参と主要野菜のカロリー・糖質を比較した表

人参は100gあたり35kcalで糖質6.5gなので、食べすぎて太る心配はほとんどありません。人参に限らず野菜は基本的にカロリーや糖質が低いのでたくさん食べて太ることはないでしょう。ただ、味付けには注意が必要です。砂糖や油、塩分を多く使って調理するとその分カロリーは上がってしまいます。

ちなみに、人参のGI値は70で、高GIに分類されます。濃い味付けの人参を一度に大量摂取すると、高血糖になる場合があります。高血糖の血液は流れが悪くなるため、頭痛になることがあります。

GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。

出典:文部科学省|日本食品標準成分表2020年版(八訂)

人参はビタミンCを破壊する?

生の人参に含まれる酵素「アスコルビナーゼ」はビタミンCを破壊するというのが定説でしたが、実際には酸化させるだけで、酸化したビタミンCは体内で還元され通常のビタミンCと同じ働きをするといわれています。

この酵素は細かくすることで活性化します。すりおろしのドレッシングやジュースなどで使うとき、ビタミンCの酸化が心配な方は、レモン汁や酢などと混ぜるか、50℃以上で加熱すると酵素の働きを止めることができます。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス

人参の一日の摂取目安量は?

人参の1日の摂取目安量は明確に定まっていませんが、厚生労働省が発表している野菜の摂取目標量を基準に目安を把握することはできます。

緑黄色野菜の摂取目安量を基準にして

大人の野菜の摂取目安量は1日あたり350g以上と設定されており、緑黄色野菜は120g以上、淡色野菜は230g以上です。

緑黄色野菜とは、原則として可食部100g中に600μg以上のβ-カロテンが含まれている野菜を指します。600μg未満の野菜は淡色野菜です。600μg未満でも、食べる量や回数が多いと緑黄色野菜に分類されます。

人参は緑黄色野菜に分類されるので、他の緑黄色野菜と合わせて120g以上を目安にするということになります。緑黄色野菜にはほうれん草やかぼちゃ、ピーマン、トマト、ほうれん草などがあります。

他の緑黄色野菜も食べることを考えると、人参の1日の摂取量は50g程が目安になります。人参は1本150g程なので、1/3本程度ということになります。

出典:厚生労働省|健康日本21(第二次)

人参の栄養と効能

木製のボウルに入った複数の人参

人参は栄養が豊富なので適量を食べれば体によい効能が見込めます。

ちなみに、人参は葉の部分の方が栄養価が高くなっています。ビタミンAは2倍、たんぱく質は3倍、カルシウムは5倍にもなりますので、人参の葉も調理に使うようにするといいでしょう。ただし、根を食べるために栽培されている人参は葉に多くの農薬が付いていることがあるので、食べるときはよく洗うようにしましょう。

人参の詳しい栄養素についてはこちらの記事をご覧ください。

β-カロテン(ビタミンA)

人参は特にβ-カロテンが豊富に含まれています。人参のオレンジ色はβ-カロテンの色です。

β-カロテンは体内で必要量がビタミンAに変換されます。皮膚や喉など全身の粘膜を健康に保ち、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぐことで免疫力をアップします。また、抗酸化作用もあるので、アンチエイジング効果や生活習慣病の予防効果が期待できます。

カロテンの語源はキャロット(carrot)であることからも、人参のβ-カロテン含有量は野菜の中でトップです。

他の野菜と比較すると、

  • 人参…8600μg

  • ほうれん草…5400μg

  • 赤色パプリカ…1100μg

  • かぼちゃ…730μg

  • トマト…540μg

  • ピーマン…400μg

で、人参の含有量の多さが分かります。中サイズの人参半分で一日の推奨摂取量を軽く上回るといわれています。

変換されたビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあります。視力を正常に保つ役目や視力低下の抑制効果、他にも皮膚の健康維持に関与していることから乾燥肌やニキビ肌の改善など美肌効果も期待できます。

α-カロテン

α−カロテンは、緑黄色野菜に含まれるカロテノイドのひとつで、β-カロテンと同じく体内でビタミンAに変換されます。ビタミンAは、皮膚や目、口、喉、内臓などの粘膜や細胞の代謝を促進する働きがあるため健康に保ちます。そのため、体外からのウィルスや細菌の侵入を防ぎ感染症を予防する効果が大きく、免疫力を高めます。

ビタミンB1

日本人が不足しがちなビタミンB1が含まれています。

ビタミンB1は糖質がエネルギーに変換されるのをサポートする栄養素です。不足すると、体のだるさや倦怠感、足のむくみ、動悸の症状、太りやすくなったりします。また、糖質は脳や神経系のエネルギー源なので、ビタミンB1には精神を安定させる作用があるといわれています。

昔、日本人の主食は精白米ではなく玄米で、その玄米にはビタミンB1が含まれていたために、意識していなくても摂取することができました。
しかし、昨今ではビタミンB1が豊富に含まれている米ぬかの部分が、精白米にする段階でほとんど取り除かれてしまいます。他にもお菓子やジュースなどの過剰摂取でビタミンB1は不足するとも言われているため、積極的に摂取したい栄養素です。

カリウム

カリウムはミネラルの一種です。

カリウムはナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。

そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きもあります。

カルシウム

体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして骨や歯の材料となります。骨の代謝に関わり骨の健康を保っています。

残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉、細胞内などに存在し、大切な情報の伝達を行っています。それによって筋肉のなめらかな動きをサポートしたり、精神を安定させたりします。

カルシウムが不足すると、骨が弱くなったりこむら返りを起こすことがあります。特に野菜などのカルシウムは吸収率が低いため、ビタミンKなどカルシウムの吸収を助ける栄養素と一緒に摂取するといいでしょう。

参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス