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「さやいんげん」「さやえんどう」「絹さや」の違い

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「さやいんげん」「さやえんどう」「絹さや」の違い

さやいんげん・さやえんどう・絹さやはどれも「さや」という言葉が付きますが、どのような違いがあるのでしょうか?それぞれの野菜の特徴と原産地、用途などを詳しく解説していきます。

さやいんげん・さやえんどう・絹さやの違い


サヤインゲンとサヤエンドウはどちらも「サヤ」が付いていますが、サヤインゲンはマメ科インゲン属、サヤエンドウはマメ科エンドウ属に分類される別の野菜です。

さらに、サヤエンドウは大きさサヤの群と、小さいサヤの群に分かれており、小さいサヤの群のことを一般的に「絹さや」といいます。そのため、サヤエンドウ=絹さやと説明されることが多いですが、厳密には違います。

さやいんげんとは

サヤインゲンは若いサヤを食べる種類のインゲンマメを指します。インゲンマメとは、豆(種実)を指すのではなく、複数の豆がサヤに包まれた細長い緑色の野菜そのものを指します。一般的に「いんげん」と呼ばれるのはサヤインゲンを指します(「いんげん」はサヤインゲンの略語ということになります)。厳密には「いんげん」という名称の野菜は存在しません。

サヤインゲンの原産地は中南米で古くより原住民により栽培されていました。アメリカ大陸に渡ったコロンブスにより、16世紀にスペインとイタリアに伝えられ、17世紀にはヨーロッパ全域で広く栽培・利用されるようになりました。日本へは1654年(江戸時代)に中国からの帰化僧である隠元が伝えたとされており、それがインゲンのの名前の由来となっています。現在ではマメ科の食用作物の中で最も栽培面積が広いとされます。

サヤインゲンの最も一般的な品種は「ケンタッキー・ワンダー」で、日本に馴化したものは「どじょういんげん」「尺五寸」とも呼ばれます。つるあり、まるざやの代表的な品種です。スーパーでよく見かけるのはこの品種です。柔らかく独自の香りで味がよいとされます。その他にも「モロッコいんげん」「平ざやいんげん」などがあります。

いんげん(サヤインゲン)は緑色を活かして各種の料理に使われます。柔らかく煮崩れしないので煮物はじめ、胡麻和えや揚げ物、炒め物に適しています。また、サヤインゲン自体を味わう料理の他に、色を目的に使われることも多く、スープやシチューなどの青みや五目寿司の彩りとして用いられることもあります。フランス料理ではソテーにして肉料理の付け合せとしてよく使われます。

いんげんの下ごしらえ方法はこちらの記事をご覧ください。

さやえんどう・絹さやとは

サヤエンドウは若いサヤを食べる種類のエンドウを指します。エンドウまたはエンドウマメが野菜そのものの名称です。エンドウマメはエンドウの豆を指すわけではありません。サヤエンドウのことを「えんどう」とは略しません。

エンドウは地中海沿岸から中央アジア原産で、17世紀に英国で野菜用品種の育種が行われ、現在の品種が誕生しました。その後、米国で加工用品種の改良が行われ、日本へ奈良時代に入ったとされています。サヤエンドウ(絹さや)は江戸中期にオランダ船がもたらしたとされています。スナップえんどうは1970代に米国から導入された新種です。

エンドウ(エンドウマメ)は若いサヤを食べる「サヤエンドウ」以外にも、幼苗(ようびょう)を食べる「豆苗(とうみょう)」、ある程度肥大化した未熟種子とサヤを一緒に食べる「スナップエンドウ」、青実を食べる「実エンドウ(通称グリーンピース)」などがあります。

サヤエンドウはサヤが柔らかいのが特徴で、洋種大ざや群と矮性小ざや群、高性小ざや群のグループがあります。小さいサヤのことを俗に「絹さや」といいます。つまり、厳密にはサヤエンドウ=絹さやではありません。例えば、洋種大ざや群の代表的な品種にオランダエンドウがありますが、これはサヤエンドウではありますが絹さやではありません。日本で一般的に食されるのは絹さやです。

絹さやはお吸い物や和え物、五目寿司などの飾りとして季節感などを出すために主に用いられます。絹さや自体を味わう料理では「絹さやの卵とじ」が人気です。サヤインゲンの方が用途が広いといえます。

出典:公益財団法人日本豆類協会

さやいんげん・さやえんどう以外のマメ科の野菜

これまで説明してきた野菜以外にもマメ科の野菜は存在します。インゲンマメとエンドウとよく混同されがちな2つのマメ科の野菜を紹介します。

ササゲ

ササゲは見た目はサヤインゲンと大変似ており、旬の時期も夏で重なります。日本でもあまり馴染みがありませんが、東南・南アジアでは一般的に食べられます。ササゲは、サヤインゲンと同じように調理して食べることができますが、やや味が劣ります。代表的な品種は「十六ささげ」です。十六ささげは愛知県特産で長さが20cmにもなり豆の数が16個であることからこのように名付けられました。

フジマメ

西日本ではフジマメのことをインゲンマメと呼び、一般的なインゲンマメのことをサンドマメと呼ぶことがあります。フジマメもインゲンマメに似ていますが、品種群が違います。フジマメはマメ科フジマメ属です。アフリカやアジアが原産地とされています。地域によって「千石豆」や「つる豆」など別の呼び方をします。見た目は絹さやに似ていて、甘味も風味もあり美味しい野菜です。

ソラマメ

マメ科の野菜で同じく食卓で人気が高いのがソラマメです。原産地は北アフリカからカスピ海沿岸といわれています。欧州では新石器時代から発見されており、世界最古の農作物ともいわれています。ソラマメもインゲンマメやエンドウと同じく、(未熟種子を食べる)子種用と(サヤごと食べる)野菜用があります。

エダマメ

野菜用として未成熟な種実を利用する目的で栽培される大豆のことをえだ豆と呼びます。大豆は中国北部原産で、日本には有史以前に渡来したと推定されます。えだまめをおいしく茹でるにはお湯に対して4%の塩を入れるのがポイントです。