本記事では、アイナメの刺し身が危険と言われている理由を紹介します。
まずはじめに、アイナメについて紹介します。
アイナメは、本の岩礁帯でよく見られる白身魚の一種で、北海道から九州地方まで広く分布しています。
岩やテトラポットの隙間に身を潜めて生息しており、一般的には30cmから40cmほどの大きさで、個体では60cmに達することもあります。
アイナメは鮎のように群れを作らず、縄張り意識が強いため、「鮎並」と呼ばていたことから発展し「アイナメ」と名前がつきました。
アブラメやアブラコとも呼ばれることもあります。
アイナメの旬は4月から8月にかけてです。
春から夏にかけて、海水温が上昇し、魚の活動が活発になる時期には身が引き締まり、味が良くなります。
アイナメは、身がやわらかくて風味が豊かな白身魚であり、身の間に脂肪が多く含まれています。
調理する際には身が崩れやすいことに注意が必要です。皮がある部分を焼いて食べる方法や、刺身や煮付け、味噌汁などさまざまな料理に利用されます。
アイナメ100gあたりの栄養成分・カロリーは下記の通りです。
エネルギー…105kcal
たんぱく質…19.1kcal
脂質…3.4g
炭水化物…0.1g
ナトリウム…150mg
カリウム…370mg
カルシウム…55mg
マグネシウム…39mg
リン…220mg
鉄…0.4mg
亜鉛…0.5mg
銅…0.06mg
ビタミンA…6μg
ビタミンD…9.0μg
ビタミンE…1.7mg
ビタミンB1…0.24mg
ビタミンB2…0.26mg
ナイアシン…2.6mg
ビタミンB6…0.18mg
ビタミンB12…2.2μg
葉酸…8μg
パントテン酸…0.98mg
ビタミンC…2mg
食塩相当量…0.4g
アイナメは他の魚類と同様に、刺し身にして食べることができますが「アイナメの刺し身は危険」と言われることがあります。
ここからは、アイナメの刺し身が危険と言われる理由を紹介します。
本記事は情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。
アイナメの刺し身が危険と言われる理由は、寄生虫がいる可能性があるためです。
アイナメにいる可能性が高いと言われている寄生虫は下記の通りです。
「アニサキス」は、アイナメにいることがある寄生虫の一種です。
アニサキスは、白い糸状の寄生虫で、大きさは15mmほどで、サバやアジ、サンマ、イワシ、イカなど様々な魚介類に寄生します。
「メタセルカリア(被嚢幼虫)」は、寄生虫の形態名の一つで、寄生虫のさなぎのような状態をいいます。
メタセルカリアは、白色や黒い色で1〜2mmほどの大きさで、主に吸虫などがメタセルカリアになったものが多いです。
アニサキス魚介類の内蔵に寄生しており、寄生している魚介類が死亡すると内臓から筋肉に移動することがわかっています。
そのため死後時間が経ったアイナメを捌くと、表面に白いミミズのような寄生虫が目視で確認できることがあります。
メタセルカリアが寄生する場所は、魚の皮膚や筋肉、に寄生していることが多いです。
ただし、特定の種類の魚によって部位が異なり、内蔵に寄生していることもあります。
アニサキスが寄生したアイナメを食べてしまうと、下記の症状が出ることがあります。
急性胃アニサキス症
急性腸アニサキス症
急性胃アニサキス症は、食後数時間後から十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐などの症状が現れます。胃にアニサキスが寄生することで、胃壁に刺激を与え、急激な痛みや不快感を引き起こします。また、アニサキスの消化酵素によって胃壁が炎症を起こし、悪心や嘔吐の原因となります。
急性腸アニサキス症は、食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じます。アニサキスが消化器官を通って腸に到達し、腸壁に穴を開けることで炎症を引き起こします。このため、激しい下腹部の痛みや腹部の膨満感、発熱、下痢などの症状が現れます。
アニサキス症の多くは急性胃アニサキス症ですが、場合によっては急性腸アニサキス症も発症します。
出典:アニサキスによる食中毒を予防しましょう(厚生労働省)
メタセルカリアが寄生したアイナメを食べてしまっても多くの場合は、何の症状も出ません。
アイナメに寄生しているメタセルカリアは、主に吸虫で、そのまま人間の胃に入り込んでしまっても成虫になれず死滅してしまうことが多いためです。
ただし、多数寄生してしまった場合は腹痛や下痢といった症状が出ることがあります。
出典:食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書(食品安全委員会)
食中毒の症状が出てしまうアニサキスがアイナメに寄生している可能性はどれぐらいの確率なのか気になりますよね。
東京都保健医療局が発表している、魚別アニサキス寄生状況によると、平成24年から令和2年度3月まで、アイナメ30匹中アニサキスが寄生していたのは1匹です。
30匹中1匹となると寄生している可能性は低いように思えますが、捕れた場所などによっても異なり、地域によってはかなりの確率で寄生していたり、反対に全く寄生していないということもあります。
出典:魚別アニサキス寄生状況について(東京都保険医療局)
アニサキスを食べても、何の症状もでないこともあります。アニサキスが体内に入ってしまったとしても1週間以内に死滅するといわれているので、症状が出ない場合は特に問題はありません。
万が一症状が出た場合は、自己判断で市販の下痢止めなどの薬を飲むのはやめた方が良いとされています。自己判断で市販の薬を使うと、症状の原因である細菌やウイルスの排出を邪魔してしまい病状が悪化してしまうことがあります。
症状が出た場合は、速やかに病院を受診しましょう。
出典:食中毒かな?と思ったら(農林水産省)
アイナメの刺し身は寄生虫に注意をすれば美味しく安全に食べることができます。
アイナメの刺し身を安全に食べる方法を紹介します。
アニサキスは内蔵に寄生していることが多いので、内蔵を取り除くことが大切です。
上述したように魚の死後は内臓から筋肉へ移動します。そのため、ご自身でアイナメを釣って食べる場合は、その場で内蔵を取り除いてしまうのがベストです。
アニサキスは目視で確認することができます。販売されているアニサキスを食べる場合や、釣ってから時間が経っている場合は、しっかりと目視で確認し、アニサキスがいた場合はピンセットなどを使い取り除きましょう。
近年ではライトを当てるとアニサキスが光り、見つけやすくなる「アニサキスライト」も販売しています。アイナメ以外の魚介類を食べるときにも役立つので、心配な方はアニサキスライトの利用をおすすめします。
アニサキスは、−20℃で24時間以上冷凍すると、死滅する事がわかっています。
そのため、一度冷凍することでアニサキスによる食中毒を予防することができます。
お店などでアイナメを購入する場合も、冷凍されているものを選ぶと安心です。
出典:海の幸を安全に楽しむために(農林水産省)
アニサキスは、60℃で1分以上または70℃で加熱することで死滅することがわかっています。そのため、刺し身にする場合も一度炙れば安心して食べられるのではと考える方も多いでしょう。
しかし、炙りでは中まで火が通らないため表面のアニサキスは死滅しても中に潜むアニサキスを死滅させることはできません。
アイナメのさばき方を紹介します。
柔らかいので、力を入れすぎないようにすることがポイントです。
まずはじめにウロコ引きなどを用いて鱗を落とします。
上述したようにアイナメは身が柔らかい魚なので、力を入れすぎないように注意しましょう。
ウロコを落としたら、頭を落とします。
頭は、胸ビレと腹ビレに沿って両側から包丁を入れていきます。
頭を切り落としたら、腹を割り内蔵を取り出します。
内蔵を取り出したら、血わたなどを掃除していきます。大体の血わたを取り除いたら、水洗いをして水分を拭き取りましょう。
アイナメの中をきれいに洗い出したら、3枚おろしにしていきます。
3枚おろしにするときは、背びれに沿って中骨種骨に届くまで背中の部分から切れ込みを入れていきます。
切れ込みを入れたら魚を返して、今度は尻ビレに沿って腹身を切り開いていきます。
最後に尾の付け根から包丁を入れて、半身を切り取れば3枚おろしの完成です。
お刺身にする場合は、さらに腹骨をすきとっていきます。
腹骨をすき取ったら、細かい小骨をピンセットで抜き、骨切り包丁を使って食べやすい大きさに骨切りして完成です。
アイナメの刺し身の美味しい食べ方を紹介します。
アイナメは、寝かせることで熟成が進み、味わいが深まります。これはアイナメの身に含まれるアデノシン三リン酸が、アイナメの死後にイノシン酸に変化することによって旨味が引き出されるためです。
寝かせる時間は5〜6時間といわれています。寝かせすぎてしまうと鮮度が落ちて傷んでいってしまうので、注意しましょう。ピンク色がきれいに出てきたぐらいのタイミングがベストです。
湯引きは、アイナメの刺し身を熱湯にさっとくぐらせ、表面を固める方法です。
湯通しすることで、身の表面が白く変色し、食感がより柔らかくなります。
湯通し後、冷水にさっととかして水気を切り、薄切りにしてお皿に盛り付けます。ポン酢や柚子胡椒などの薬味を添えて食べるとさっぱりとした味わいが楽しめます。
アイナメの刺し身を軽く焼き色がつくまで炙る方法です。
炙ることで香ばしさを引き出します。炙った後は、刺し身のまま食べるか、薬味を添えてお召し上がりください。炙ることで、香ばしい風味と身の旨味が引き立ちます。
アイナメの刺し身をしょうゆに漬けて食べる方法もおすすめです。
しょうゆの旨味が身にしみ込み、深い味わいを楽しむことができます。
漬ける時間は10分程度が目安ですが、個々の好みに合わせて調整してください。
アイナメの刺し身を酢に漬けて、酢の物にする方法です。
酢と砂糖、塩で作ったさっぱりとした酢の物の中に、アイナメの刺し身を漬けておきます。漬け込んだ後は、薬味やごまを散らして食べると、爽やかな味わいが楽しめます。
アイナメの薄切りを盛り付け、オリーブオイルやレモン汁、塩などで味付けし、野菜やハーブなどと一緒に食べるカルパッチョもおすすめです。
生のままのアイナメの刺し身が、新鮮な風味を存分に楽しめます。
最後に、新鮮なアイナメの特徴を紹介します。新鮮であれば寄生虫がないといわけではありませんが、鮮度が高い方が美味しく食べることができます。
新鮮なアイナメは皮膚がつややかで、目が澄んでいます。
表面が乾燥していたりカサついているアイナメは鮮度が落ちてしまっている可能性が高いです。
新鮮なアイナメの身は指で押すと柔らかく、手に油がつくほど弾力があります。
硬い身やべたつきがある場合は鮮度が低い可能性があるので注意しましょう。
アイナメに限らず、魚介類は鮮度が落ちてくると生臭さが増してきます。生臭さが気になるアイナメは鮮度が落ちている可能性が高いです。
また、魚介類とは異なる異臭がする場合は腐敗している可能性が高いです。魚は傷みやすいので腐敗していないかしっかりチェックして判断しましょう。
アイナメの身と血合い(身と骨の間にある赤い組織)の境界が鮮やかで、色が鮮明です。
血合いが茶色っぽくなっていると鮮度が低い可能性があります。
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