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鮎の塩焼きは内臓取らない?天然と養殖で違いは?取り方は?

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鮎の塩焼きは内臓取らない?天然と養殖で違いは?取り方は?

ほとんどの魚は内臓を取り除く必要がありますが、鮎に関しては内臓を取り除かなくても良いと言われています。一方で、内臓の苦みが美味しいという意見もあります。本記事では、鮎の内臓を取らない理由や、美味しく塩焼きを楽しむ下ごしらえ法と調理法をご紹介します。

魚の内臓を取る理由

魚の「内臓」というと、一般的に胃、腸、肝臓、腎臓、胆嚢などを含みます。これらの内臓を取り除く必要性を解説します。

寄生虫

魚の内臓には細菌や寄生虫が付着している可能性があり、これらが食中毒や感染症の原因になります。特に生食や加熱調理をせずに内臓が残っている場合、健康リスクが高まります。内臓を取り除くことで食品安全を確保し、安心して料理を楽しむことができます。

寄生虫には様々な種類がありますが、特に注意したいのがアニキサスです。アニサキスは魚の寄生虫で、特に生または未加熱の魚から摂取されることがあります。これらの寄生虫は消化器系に感染し、胃や腸で痛みや不快感を引き起こす可能性があります。アニサキス感染は重篤な症状を引き起こすことがあり、嘔吐、腹痛、下痢、消化不良などの症状が現れます。

さらに、アニサキスはアレルギー反応を引き起こす可能性もあります。生の魚を食べることが一般的な料理や食文化において、アニサキス感染は重大な公衆衛生上の問題です。

臭み・苦み

魚の内臓を取り除くことは、料理の品質を向上させる重要な要素です。内臓を取り除くことで、魚の血液や内部臓器から発生する特有の臭いが消え、食材の新鮮さや清潔さが保たれます。この臭いが料理に移ると、食欲を減退させる可能性があります。特に処理された血液の臭いは、食事の満足度を低下させる要因となります。

さらに、内臓が残っていると魚の肉が苦味を帯びることもあります。これは、内臓に含まれる苦味成分が肉に移るためです。そのため、内臓を取り除くことで料理の風味が向上し、より美味しい料理を提供することができます。

料理の仕上がり

内臓が取り除かれた魚は見た目が清潔であり、料理のプレゼンテーションが格段に美しくなります。食卓に美しい料理を提供することで、食事の満足度や興味を高めることができ、食事がより楽しいものになります。

一方、内臓が残っていると、料理の美しさが損なわれ、食欲をそそる効果が減少します。特に、内臓が目立つと料理全体のアピールが低下し、食事の楽しみも減少する可能性があります。そのため、内臓を取り除くことは料理の魅力を最大限に引き出し、食事の満足度を高める重要な手段と言えます。

鮎の塩焼きは内臓を取らない理由

旬の鮎

鮎に関しては内臓は取らなくても良いという意見があります。ここでは鮎の内臓を取らない理由をご紹介します。

ちなみに、内臓部分に白い塊がある場合は、内臓ではなく鮎の卵です。子持ち鮎はさらに美味しく食べることができます。

天然の鮎は取らなくてよいとされる

天然鮎は川に生息し、主食として苔(こけ)を摂取します。この苔は動物性のエサと比べて消化が早く、臭みもほとんどありません。そのため、天然鮎の内臓を取らなくても、臭みや苦みが残ることはほとんどありません。

ただし、寄生虫の心配は完全にないわけではありません。横川吸虫などの寄生虫が天然鮎に生息する可能性がありますので、天然鮎を食べる際には十分な加熱処理が必要です。適切な加熱を行うことで、寄生虫のリスクを最小限に抑えることができます。したがって、天然鮎の内臓を取るかどうかは個々の好みや判断によるところがありますが、適切な調理法を用いれば、安全かつ美味しく食べることができます。

ちなみに、天然の鮎は基本的に全国各地の川に生息しますが、中でも美味しい鮎が取れることで有名な地域は高知県の四万十川や秋田県の阿仁川、島根県の高津川などです。これらの川付近には大きなダムがなく、水流によって自然にごみなどが流されるため、川底の石まで太陽の光が届き苔がよく育ちます。天然鮎や秋〜冬に川で産卵をし、稚魚となった鮎は一度海へ移動し、プランクトンを食べて成長します。春になるとまた川へと戻り、石に付着した藻類を食べます。川の中の石をよく見ると、鮎が苔を食べた跡が残っており、漁師はこの食べた跡を見ておおよその撮れ高が予想できるそうです。

天然の鮎はとても美味しいですが、希少価値が高いため販売価格も高いのが現状です。

養殖の場合は取ることが多い

上記で、天然鮎の内臓は取らなくてもいいと説明しましたが、養殖鮎の場合はどうなのでしょうか?

養殖の鮎は通常、魚粉などの動物性のエサを与えられます。この動物性のエサにより、内臓に臭みや苦みが出る傾向があります。そのため、養殖鮎の内臓は取り除くことで、料理の品質を向上させ全性を確保することができます。

一方で、養殖鮎は養殖業者の管理下で育てられているため、寄生虫の心配は天然鮎に比べて少ないと言えます。養殖業者は鮎の健康状態を管理し、寄生虫の発生を抑えるための対策を行っています。しかし寄生虫が全く生息しないということではないので、養殖の鮎を食べる際も十分に加熱してから食べるようにしましょう。

取り除いた内臓は塩漬けに

天然鮎の内臓は必ず取り除く必要はありませんが、あえて取り除いて内臓のみの味わいを楽しむことができます。

天然鮎の内臓を塩漬けし熟成させたものを「うるか」といいます。うるかはお酒のあてとしてそのまま舌にのせて溶かしながら味わうのが一般的な嗜み方です。他にはオリーブオイルなどの調味料と混ぜ合わせてドレッシングやパスタソースなどとして楽しむこともできます。

鮎の内臓にはビタミンAやビタミンB12などのビタミン類や鉄分など含まれています。天然か養殖かによって栄養価の高さは異なります。天然の鮎には養殖の鮎の6倍もの量のビタミンB12が含まれています(ビタミンAに関しては養殖の鮎の方が多く含まれています)。

養殖の鮎の内臓はうるかとして食べることは難しいです。上述したように、動物性の餌を主食とする養殖鮎の内臓は臭みや苦みが強いことがほとんどなためです。養殖鮎の内臓は処分するようにしましょう。

鮎以外に内臓を取らなくていい魚は?

ほとんどの魚は内臓を取り除く必要がありますが、鮎と同様に内臓を取らなくても良い魚があります。

それは秋刀魚(さんま)です。サンマは「無胃魚」に分類される、胃を持たない魚です。動物性プランクトンと主食とする秋刀魚は、数十分で消化することができます。日中に捕食する秋刀魚の漁は夜中に行われるので、漁獲された秋刀魚の体内には消化物がほとんどない状態です。

したがって、秋刀魚の内臓は天然鮎と同じように取り除かなくても美味しく食べることができます。ただし、寄生虫などの危険性はあるため、必ず十分加熱してから食べるようにしましょう。

鮎の塩焼きの下ごしらえ

鮎のつかみ取り

鮎の塩焼きを美味しく食べるための下処理方法を解説します。

フン抜き

まずは鮎の体内に残っている糞を取り除く必要があります。

鮎の肛門は、腹部の下側に位置しています。腹ビレ(腹びれ)と尾ビレ(尾びれ)の間、魚の下側に近い位置にあります。お腹から肛門に向かって指で押し出し、糞が出てこなくなるまで繰り返します。

ヌメリを落とす

糞を取り出したら体のヌメリや汚れを落とします。基本的には流水で洗い流すだけでOKですが、ヌメリが強い時は塩をこすり、流水で洗い流します。

ヌメリが取れたらキッチンペーパーなどで水分を拭き取ります。

串打ち

下処理をした鮎を串に刺します。1本刺しの場合と複数刺しの場合で串打ちの方法は異なります。

1本刺しの場合は、口から串を入れ、身をくねらせ串を打っていきます。中骨に沿うように行うのがポイントです。串の終わりは尾を上に上げる(尻ビレの後ろ側に串がくる)ようにします。

複数刺す場合も、1本刺しと同様に口から串を入れ刺していきますが、皮の外に串が出るように打ちます。皮から出た串の部分に、別の串を横方向に刺します。これで複数本同時に焼くことができます。おすすめの本数は3〜5本です。

化粧塩

串に刺したら化粧塩を施します。化粧塩は味付けのためではなく、ヒレが焦げないように保護するのが目的となります。そのため、背ビレや尻ビレ、尾びれをピンと立たせながら指でつまむように塩をつけます。

化粧塩を施したら、味付けの目的で全体的に塩を振りかけます。高い場所から均一に塩を振るのがポイントです。

ちなみに、旬の鮎の骨は柔らかいので、骨まで食べることができます。旬以外の鮎を食べる際や骨が気になる場合は取り除きます。

焼き上がった鮎の身を箸でほぐし、頭の後ろの部分に箸を入れ身と皮を切ります(骨はそのまま)。頭を持って引っ張ると骨がスルスルと抜けます。力を入れすぎると骨が途中で折れてしまうので、肩の力を抜いて行いましょう。

内臓を取り除く方法

鮎の内臓の食感や味が苦手な方は、塩焼きにする前に内臓を取り除きましょう。内臓を取り除く方法は主に2パターンあります。

包丁を使う方法

包丁を使う方法は最も一般的です。よく研いだ包丁を使うのがポイントです。

鮎の腹に包丁で切れ目を入れ、内臓を取り出します。流水でお腹の中をきれいに洗ったら完了です。

割り箸を使う方法

割り箸を使えばお腹を切らずに内臓を取り出すことができます。串刺しにしたい場合におすすめです。

鮎のエラを取り除きます。鮎のエラは頭部の裏側(お腹側)に位置している袋状のエラ蓋を開いてエラを手でむしり取ります。あごのつなぎ目は取り除かないようにしましょう。

割り箸の先をピンセットのように開き、その状態でエラ蓋の部分から中に突き刺します。口から刺してもOKです。突き当たるまで刺したら開いていた割り箸を閉じ、一回転させます。数回回転させながら割り箸を引き抜くと内臓が割り箸に挟まって出てきます。この作業を数回繰り返して内臓をきれいに取り出したら水洗いして完了です。

鮎の塩焼きの美味しい焼き方

炭火

飲食店で販売されている鮎の塩焼きの多くは炭火焼きされています。炭火や燃焼時に水分を発生しないので、表面がパリッとした焼き上がりになります。また、鮎の脂が炭に落ちることでミスト化され鮎全体を包むことで、炭火焼き特有の香りを楽しむことができます。

炭火焼きするのに適した炭の特徴は下記の通りです。

  • 硬い炭

  • 高純度の炭

  • 仕上がりにムラのない炭

魚焼きグリル

鮎の塩焼きを自宅で調理する際、炭火を用意するのは手間も時間もかかりますよね。自宅で焼く場合は、家庭用魚焼きグリルを活用するのがおすすめです。序盤は弱火〜中火程度の火加減で身の中までじっくりと乾かし、裏表を複数回返して焼くのがポイントです。火が強すぎると、表面が焦げ、中まで火が通りづらいので注意が必要です。具体的な焼き方は下記の通りです。

  1. 一面を弱火できつね色になるまで5〜10分ほど焼く。
  2. 1.の面を中火で1〜2分焼き、焼き目をつける。
  3. 裏返しにし弱火できつね色になるまで4〜6分ほど焼く。
  4. 3.の面を中火で1〜2分焼き、焼き目をつける。
  5. 再度表面に返して水分を飛ばすために弱火で1〜2分ほど焼く。
  6. グリルの火を止め、そのままグリルの中で5分ほど蒸らして完成。

フライパン

もっと手軽な調理方法が、フライパンを使用する方法です。魚焼きグリルよりも片付けや調理法が手軽なので、初心者でも美味しく焼き上げることができます。具体的な焼き方は下記の通りです。

  1. フライパンを中火で熱し、油を適量入れ、焼き色が付くまで両面を返しながら焼く。
  2. 蓋をして弱火で10分ほど蒸し焼きにする。
  3. 蓋を取り、皮がパリっとするまで中火で熱する。