さつまいもに限らず野菜は冷凍することで長く保存することができますが、栄養は減ってしまわないの?と心配になったことがある方も多いのではないでしょうか。本記事ではさつまいもを冷凍すると栄養はどうなるのか解説します。
さつまいもはビタミンCをはじめとするビタミンや、カルシウムをはじめとするミネラルが含まれています。
ビタミンB6は肉や魚に豊富で、特に生魚に豊富です。
ビタミンB6はたんぱく質を分解する補酵素としての役割を担います。血液のもととなる赤血球や神経伝達物質セロトニンの合成にも働きます。
また、免疫機能を正常に保つ役割も担います。
ビタミンCはたんぱく質からコラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは、細胞間の結合組織で、血管や皮膚、骨、筋肉などを丈夫にします。コラーゲンによって、肌にハリ・ツヤが生まれます。シミのもとであるメラニン色素の合成も抑えるなど美肌づくりに大切な栄養素です。
その他、ビタミンCには白血球を活性化させて免疫力を高める作用もあります。抗ストレスホルモンの合成にも欠かせない栄養素です。
体内の99%のカルシウムは貯蔵カルシウムとして、骨や歯の材料となります。骨の代謝に関わり骨の健康を保っています。
残りの1%は機能カルシウムとして、血液や筋肉、細胞内などに存在し、大切な情報の伝達を行っています。それによって筋肉のなめらかな動きをサポートしたり、精神を安定させたりします。
カルシウムが不足すると、骨が弱くなったりこむら返りを起こすことがあります。特に野菜などのカルシウムは吸収率が低いため、ビタミンKなどカルシウムの吸収を助ける栄養素と一緒に摂取するといいでしょう。
マグネシウムはカルシウムの量を調整し、筋肉の収縮を促します。摂り過ぎたカルシウムが血管壁に溜まるのも防ぎます。そしてカルシウムやリンとともに働き、丈夫な骨や歯を作ります。
またストレスが生じると、マグネシウムの消費量が増えます。そのため、疲れているときやイライラしているときはマグネシウムを積極的に摂取しましょう。マグネシウムは過剰に摂取しても腸管からの吸収は抑えられ、余分なものは速やかに排泄されるので食事で摂取している限りは過剰症の恐れはありません。
さつまいもの皮には、アントシアニンというポリフェノールの一種で紫色の主成分になっている色素が含まれています。
アントシアニンには、目の網膜にあるロドプシンの再結合を促進し、視覚機能の改善が期待できます。さらに、網膜の酸化防止や毛細血管の血行改善の働きにより、視力低下予防や眼精疲労の回復効果も期待できます。
また、ポリフェノールには強い抗酸化作用があります。他にもコレステロール値を下げる働きもあると言われています。
参考文献:栄養学博士 白鳥早奈英 監修(2021)『最新改訂版 知っておきたい栄養学』学研プラス
ヤラピンはさつまいもを切った際に出てくる白い液のことです。
胃の粘膜を保護し、腸を綺麗にする効果があります。そのため食物繊維とともに腸内環境を整え、便秘の改善が期待できます。
レジスタントスターチは和名で難消化性でんぷんと呼ばれます。その名の通り消化されにくい特徴があります。そのため小腸内で消化されず、大腸まで届いて善玉菌のエサになるので、食物繊維同様に腸内環境を整える働きがあります。それにより、便秘解消やダイエット、血糖値の上昇抑制効果が期待できます。
さつまいもは冷凍すると解凍したときに、凍っていたさつまいもの水分と一緒に水溶性の栄養素が流出してしまいますが、大幅に栄養が減ってしまうことはありません。
基本的に野菜などの食材の鮮度が落ち、栄養価が落ちたり腐敗してしまうのは、空気に触れて酸化が進んだり、乾燥したりといった外的要因や食品に含まれる酵素や微生物の働きなどの内的要因によるものです。
冷凍庫などの低温の環境では、腐敗や食中毒の原因になるほとんどの菌類や微生物、酵素の分解作用が働くことはありませんので、外的要因である乾燥や酸化を防げれば鮮度が落ちたり栄養価が落ちてしまうことを防ぐことができます。
さつまいもは加熱後に冷やすと、上記で紹介したレジスタントスターチが増えることがわかっています。
でんぷんは、水を加えて加熱するとぬめりが出る性質があります。この現象は「糊化」と言います。糊化したでんぷんは、再び冷やすことで固くなります。これを「老化」と言い、老化が進むとでんぷんの一部が難消化性のレジスタントスターチになります。
特に、4℃以下の低温で冷却すると、老化が緩やかに進行し、その結果、レジスタントスターチが増加することがわかっています。
上述したようにレジスタントスターチには便秘解消やダイエットに効果があると言われている成分なので、焼き芋にしたり蒸したさつまいもは特に冷凍または冷蔵して食べるのがおすすめです。
出典:さつまいもの加熱調理直後、冷蔵保存及び再加熱によるレジスタントスターチ量の変化(J‐stage)
冷凍によって大幅に栄養が減ってしまうことはありませんが、茹でてから冷凍する場合は茹でることによって水溶性の栄養素は流出してしまいます。
さつまいもに含まれている水溶性の栄養素には例えばビタミンCやカリウム、アントシアニンなどがあります。茹でてから冷凍すると、生のまま冷凍したときと比較して味や風味、食感の変化や変色を防ぐことができますが、水溶性の栄養素は茹でることでどうしても流出してしまうことになります。
水溶性の栄養素の流出を最小限に抑えたい場合は、茹でる以外の加熱方法で加熱してから冷凍することをおすすめします。
食材によっては冷凍することで食感が柔らかくなってしまうため、冷凍保存するとまずくなると言われることがあり、さつまいもも例外ではありません。
さつまいもは冷凍し解凍するとぶよぶよの食感になってしまったり、水っぽくべちゃっとしてしまうことがあります。また、酸化によって変色してしまったり風味が悪くなってしまうことも。
しかし、正しい冷凍方法で冷凍し、解凍方法にも注意すれば冷凍かぼちゃも美味しく食べることができますよ。
冷凍保存には直接冷凍する(ダイレクトフリージング)という方法がありますが、家庭用冷凍庫では急速凍結(瞬間冷凍)ができないため、味や食感、色が悪くなることが多いです。また、緩慢冷凍(徐々に冷凍すること)する過程で身の中に氷結晶ができ、開け閉めで冷凍庫内の温度が上がったときに、それが水蒸気となり身がスカスカになってしまいます。
そのため、加熱してから冷凍することをおすすめします。冷凍する前に茹でたり蒸気を当てたりと必要最低限の加熱処理を行うことを「ブランチング」と言います。
さつまいも以外の野菜でも使える方法で、加熱して野菜の持っている酵素を不活性化させることにより変色を防いだり、組織を軟化させることにより冷凍によって組織が破壊され食感を損なわれるのを防ぐことができます。また、食品表面に付着している微生物の殺菌にもなります。
茹でても良いのですが、どうしても水分を含んでしまいますし、水溶性の栄養素が流出してしまうためレンジでの加熱をおすすめします。
出典:冷凍食品Q&A冷凍食品の基礎知識(日本冷凍食品協会)
冷凍したさつまいもの食感の悪さが気になる場合は、マッシュにしてから冷凍するのがおすすめです。予めマッシュにした状態で冷凍をすれば、食感の悪さをカバーすることができます。
さつまいもの皮を剥き、適当な大きさに切って蒸したら、さつまいもが熱いうちにマッシャーなどを使ってつぶします。粗熱が取れたら冷凍用保存袋に平らになるように入れます。
マッシュにしてから冷凍したさつまいもは、サラダにしたりスイートポテトにするのに便利です。
焼き芋や甘煮にしてから冷凍することも可能です。
焼き芋を冷凍する場合は、食べやすい大きさにカットしてから一つずつラップに包み保存袋に入れます。
再度加熱して焼き芋として食べたい場合は、丸ごとラップに包んでから冷凍し、温め直して食べることもできます。
甘煮にしてから冷凍する場合は、汁気を切って保存袋に入れます。甘煮にしておくことで、解凍後すぐに食べられるのでお弁当のおかずの作り置きなどに便利です。ただし、水分を含んでいるぶん食感が損なわれやすいのが難点です。
冷凍するさつまいもが水分を帯びている場合、保存の前にその水分をきちんと取り除くことが重要です。そのため、キッチンペーパーや布巾を使用して、さつまいもの表面の水分を丁寧に拭き取ることをおすすめします。
水分をそのままにして冷凍すると、余分な水が氷結晶として付着し、さつまいもを解凍したときに水っぽくなってしまい食感や風味が損なわれる可能性が高まります。特に、さつまいもは自然に甘みがあるので、その甘みや風味を最大限に楽しむためにも、余計な水分を取り除く工程は欠かせません。
冷凍保存する際には、さつまいもの風味を長持ちさせるためにも、手間を惜しまず水分をきちんと拭き取ることを心がけましょう。
レンジで蒸したさつまいもを保存袋に入れたら、しっかり空気を抜いて密閉します。
空気を抜いて密閉することで、さつまいもが酸化して劣化してしまうのを防ぐことができます。また、冷蔵庫の臭い移りもしないので、さつまいもそのものの風味や味を損ねてしまうことがありません。
さつまいもに限らず、野菜を冷凍する場合は急速冷凍をした方が旨みをぎゅっと閉じ込めることができます。冷蔵庫に急速冷凍機能がない場合は、金属トレイの上にのせて冷凍庫へ。
金属トレイは温度の伝達が早いため、急速冷凍と同じ効果を得ることができます。
冷凍庫の扉付近は開け閉めによる温度変化の影響を受けやすいため、できるだけ温度変化の少ない扉付近を避けた場所に置いた方が早く冷凍することができます。
冷凍すれば永遠に保存できてしまうような気がしてしまいますが、どんなに長く保存しても1ヶ月を目安に食べきるようにしましょう。
冷凍しても長く保存していると鮮度は落ちてしまうので、味や食感はどんどん悪くなってしまいます。冷凍しているからといっていつまでも入れておかず、なるべく早く食べきることが大切です。
冷凍したさつまいもを美味しく食べるには、解凍方法も重要です。冷凍したさつまいもにおすすめの解凍方法は下記の通りです。
冷凍したさつまいもは、解凍せずにそのまま加熱調理するのがベストです。解凍してしまうとどうしても水分が出てきてしまい、食感が悪くなったり水っぽくなってしまいます。
そのまま加熱調理をすれば、水分が出てしまうのを最小限に抑えることができますし、水分と一緒に出てきてしまった水溶性の栄養素も無駄にすることがありません。
さつまいもは基本的に煮物にするなど加熱調理をして食べることが多い野菜なので、そのまま調理に使って良いと覚えておくと良いでしょう。
マッシュや甘煮にして冷凍したさつまいもは、冷蔵庫に入れて自然解凍しましょう。レンジで加熱して解凍すれば早いのですが、やはり水分が出てきすぎてびちゃびちゃになってしまいます。
冷蔵庫に入れて低温でゆっくり解凍すれば、水分が出てきすぎず、さつまいもの風味を守ることができます。ただ、時間がかかるので前日には冷蔵庫に移しておくようにしましょう。
お急ぎの場合はレンジの解凍モードを利用しましょう。ただし、レンジでの加熱はやはり一気に加熱することにより水分が出てきてしまいやすいので、ワット数や加熱時間に注意が必要です。様子を見ながら調節しましょう。
冷凍した焼き芋は、室温に5分ほど置いて少し溶かしてから食べると、アイスクリームのような感覚でスプーンですくって食べることができます。トッピングにアイスを乗せるのもおすすめです。
再び焼き芋として食べたい場合は、アルミホイルに包んでオーブンで焼くと再び焼き芋として食べることができます。お好みに合わせて解凍してください。
冷凍したさつまいもは、解凍せずにそのまま煮物にすることができます。
加熱してから冷凍したさつまいもは、その加熱と冷凍のプロセスによって調味料を吸収しやすくなっています。そのため、煮物の際には、短時間でしっかりと味が染み込みます。
また、さつまいもは柔らかくなるのに時間がかかりますが、予め蒸してあるさつまいもを使用することで時短になります。
冷凍したさつまいもは、味噌汁などの汁物に入れても美味しく食べることができます。汁物にすれば、冷凍することで損なわれてしまった食感もカバーすることができます。
汁物にすることで、流出してしまうビタミンCなどの水溶性の栄養素も一緒にいただくことができるので、栄養面的にも◎
加熱してから冷凍したさつまいもは、繊維が壊れずに甘みが凝縮されており、そのままスイートポテトにするのもおすすめです。
加熱して冷凍したさつまいもは細胞壁の破壊が少ないため、凍った状態でも食感や風味が保たれています。マッシュにして冷凍したさつまいもでスイートポテトを作る場合は、上述したように前日に冷蔵庫に移して解凍しておきましょう。
冷凍したさつまいもは解凍せずにそのままミキサーに入れて撹拌すれば、スムージーを作ることができます。近年はスムージーの作り方も多様化しており、生の状態の野菜や果物をミキサーに入れて作ることも多いですが、本来スムージーは冷凍した野菜や果物をミキサーに入れて作ります。
そのため冷凍したさつまいもは解凍しなくても、そのままミキサーに入れればスムージーになります。果物などと一緒にスムージーにするとさらに飲みやすくなるのでおすすめです。栄養満点なので朝ごはんなどの置き換えにも良いでしょう。
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