さつまいもは水にさらしてアク抜きをすることがあります。なぜアク抜きをするのかご存知ですか?本記事ではさつまいものアク抜きについて詳しく解説します。
アクとは、一般的に苦味やえぐみ、渋みなど味を損ねる成分の総称です。
アクには害のあるものと、そうでないものがあります。害のある代表的なアクには、たけのこのシュウ酸などがあります。体に害のあるアクは必ず下茹でや水にさらす工程を実施する必要があります。
一方、害のないアクの場合は、料理によってアク抜きを実施したり、しなかったりします。料理の味を良くするために行うこともありますが、食感が悪くなるのでやらない場合もあります。
また、アクの中には野菜を変色させるものもあります。しかし、変色させる成分が全てアクというわけではありません。変色を防ぐための下ごしらえは「色止め」であり、アク抜きではありません。
さつまいもにアク抜きは必要なのか解説します。
さつまいものアクとなる成分はポリフェノールです。
ポリフェノールとは植物がもつ苦味や渋みの成分となる化合物の総称です。構造の違いによって様々な種類があり、さつまいのアクとなる主な成分はクロロゲン酸です。またアントシアニンも多く含まれています。アントシアニンは紫色の色素でもあります。さつまいもの皮が紫色をしているのは、皮にアントシアニンが多く含まれている為です。その他、タンニンなども含まれています。果肉の黄色みがかった白色はタンニンの色です。
ポリフェノールは抗酸化作用があり、人体にとって良い影響をもたらす成分です。たけのこなどに多く含まれているアクの成分「シュウ酸」などとは異なり、害はないのでアク抜きは必須ではありません。
上記で紹介したように、さつまいものアク抜きは必須ではありません。
しかし、アク抜きをしないと、
苦味や渋みを感じやすい
断面が青・緑に変色する
煮汁が青くなることがある
などのデメリットがあります。
さつまいもはそこまで苦味・渋みが強い野菜ではありませんが、やはりポリフェノールは苦味・渋みを感じさせる成分なので、小さなお子様など人によっては食べにくいと感じることもあるでしょう。
ポリフェノールは空気中の酸素に触れることで酸化し、茶色→黒と変化する性質があります。そのためカット後にしばらく置いておくと断面が変色してしまいます。さらに、ポリフェノールは水溶性の成分であるため、煮物にしたりスープにしたときに汁が青っぽくなってしまうこともあります。
また、さつまいもに含まれているポリフェノールの一種クロロゲン酸は、アルカリ性に反応すると緑色に変色する性質があります。緑色の輪ができるのは、皮付近にクロロゲン酸が多く含まれているためです。
アク抜きをすることには、栄養面でデメリットもあります。上述したようにポリフェノールには抗酸化作用などがあり、人体にとって良い効果をもたらす成分なのでアク抜きをしてしまうのは勿体ないです。
また、アク抜きすることでポリフェノール以外の水溶性栄養素が流出してしまいます。さつまいもに含まれている水溶性の栄養素には、例えばカリウム、ビタミンCなどがあります。
そのため、
苦味や渋みが気にならない
皮を剥いて調理するとき(皮に最もポリフェノールが含まれているため)
カットしてからすぐ加熱調理するとき
などは、アク抜きをしない方が栄養面ではメリットがあると言えます。
用途に応じてアク抜きをする・しないを判断するのが良いでしょう。
上述したように、さつまいもはアク抜きをせずに食べても問題ない野菜ですが、料理によってはアク抜きした方が良い場合があるので紹介します。
煮物をするときは、アク抜きをしておくのがおすすめです。
煮物にする場合はアク抜きをしておくと、苦味が出てしまうことがないので美味しく仕上げることができますし、アク抜きをしておくことで調味料が染み込みやすくなるメリットもあります。
また、煮汁が青っぽくなってしまい見た目が悪くなってしまうのを防げるので、アク抜きをしてから調理をすると良いでしょう。
天ぷらもさつまいもの定番料理の一つですよね。天ぷらにするときもアク抜きをしておきましょう。
天ぷらにする場合は、天ぷら粉にベーキングパウダーなどのアルカリ性の成分が含まれているため、クロロゲン酸が化学反応を起こして緑色に変色(青)してしまうことが多いです。
変色しても食べることはできますが、見た目が悪くなってしまうのでアク抜きをしておくと良いでしょう。
離乳食に使うさつまいもは、アク抜きをするのが良いでしょう。赤ちゃんは苦味に敏感なので、アク抜きをして苦味を抑えた方が食べやすくなります。
離乳食にする場合は、厚めに皮を剥きしっかりと加熱してから裏ごししてペースト状にしてあげるようにしましょう。固さなどは月齢に合わせて判断してください。
さつまいものアク抜き方法を紹介します。
普段私達が食べている部分は、さつまいもの「根」です。土の中で成長したものを掘り出しています。
収穫後はすぐ土汚れを落としてしまうと乾燥してしまったり、濡れてしまったことが原因でカビが生えやすくなってしまうため、軽く土を払うことはあっても洗わずに出荷されることがほとんどです。スーパーなどで販売されているさつまいもは綺麗に見えますが、調理をする際はしっかりと洗いましょう。
流水で十分汚れを落とすことができますが、土汚れがひどい場合はしばらく水につけておきます。そうすると汚れがふやけて綺麗に落ちます。
たわしなどでゴシゴシ擦ってしまうのはNGです。これだけでミネラル類である鉄分やマグネシウムは30〜50%、表皮に多く含まれているカルシウムは約90%が流れ出てしまうんです。そのため道具を使うならスポンジで優しく洗いましょう。こうするだけでミネラル類の流出を10%以下に抑えられます。
栄養がたっぷり含まれている皮が剥がれてしまったり、さつまいもに傷をつけてしまわないためにも優しく洗うことが大切です。
さつまいもを洗ったら、調理に合わせてカットします。
離乳食に使いたい場合やスイートポテトにしたい場合など皮を剥く必要がある場合は、カットしたタイミングで皮も剥いておきましょう。
皮は剥かなくてもOK!皮にも食物繊維などの栄養がたっぷり入っているので、剥く必要がない場合は栄養面的には剥かずに調理をするのがベストです。
さつまいもをカットしたら、水を入れたボウルに入れて10分程さらします。
上述したように、長くさらしすぎてしまうとビタミンCなどの水溶性の栄養素もどんどん流出してしまいます。非常に勿体ないので、水にさらしすぎないように注意しましょう。
10分ほど水にさらしたら、水けをしっかりきって調理します。
特に天ぷらなど揚げ物にする場合は水分が残っていると油がハネて危ないので、キッチンペーパーなどを使ってしっかりと水分を拭き取っておくことが大切です。
変色を防ぐという点では水でも十分効果がありますが、酢水につけると酵素の働きを抑えることができるのでより変色防止の効果が高まるので酢水にさらすのも◎
ただし、長く酢水にさらしすぎてしまうと固く仕上がってしまうことがあるので注意しましょう。
野菜の細胞壁は、セルロースからできた繊維が重なっており、その間をペクチンが塗り固めて固い壁を作っています。野菜を加熱すると軟らかくなるのは、固い壁を作っているペクチンが熱によって分解されるためです。ペクチンはpH5以上およびpH3以下で急速に軟化し、pHが下がると分解されにくくなることがわかっています。私達が普段使っている水道水のpHは7なので、酢を入れてpHを下げることでペクチンの分解を抑え食感を保つことができます。
さつまいもを煮物にする場合など柔らかくしたい場合は、酢水ではなく水にさらすのが良いでしょう。
時短の為に調理をする前日から水にさらしておきたいと考える方も多いでしょう。しかし、一晩水にさらすのはNGです。
前もって水にさらしておけばすぐに調理に使えるので時短にはなりますが、上述したように水溶性の栄養素が流出してしまうので栄養価が落ちてしまいます。
カットしたさつまいもを保存する場合は変色を防ぐために水にさらした状態で保存することがありますが、変色は防げても栄養価は下がってしまいますし、長持ちしないので早めに食べきるようにしましょう。
さつまいものアク抜きを時短したい場合は、水にさらした後そのまま放置するのではなく、くるくるとかき混ぜるのが良いでしょう。
かき混ぜて水が白っぽくなってきたら、アクが出ているサインなので水を取り替えて再び混ぜます。2〜3回水を取り替えるとアクが抜けているので調理に使うことができます。
アク抜きを忘れた場合、残念ながら調理後にアク抜きをすることはできません(当たり前ですが)。
苦味やエグみを感じやすいといったデメリットはあるものの、さつまいものアクとなるポリフェノールは抗酸化作用があり、そのまま食べても人体に害があるわけではないので心配しすぎないでよいでしょう。
近年販売されているさつまいもは苦味やエグみが軽減されているものも多いので、食べられないほど苦味があるわけではないですし、アク抜きをしなくても美味しく食べることができますよ。
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