ハンバーグにゼラチンを使うと上手く仕上がるという裏技がテレビやSNSで話題ですが、どうして上手く仕上がるのでしょうか。この記事ではハンバーグにゼラチンを使う効果などについて詳しく解説します。
お菓子作りなどによく使われるゼラチンとは、そもそもどのようなものなのでしょうか。
ゼラチンは、物の骨や皮などに含まれるコラーゲンを原料として生成される動物性たんぱく質の一種です。日本画の画材や工芸品の接着剤に使われる膠(にかわ)もゼラチンを原料としており、5000年以上前から使われていたと言われています。
ゼラチンは熱することで溶け、冷やすことで固まる性質を生かしてグミやキャンディー、ゼリーなどのお菓子やデザートに使われていますが、食品以外でも医療用のカプセルやトローチ、レントゲンフィルムなどにも使われています。
ゼラチンはその保水性の高さと温度で変質する特徴を生かして冷凍食品にも多く使われています。ゼラチンを使うことで冷凍及び解凍でパサパサになりがちな食品の水分を残りやすくなるほか、ゼラチンによるもっちりとした食感も楽しめます。
代表的なものでは餃子・小龍包、クリームコロッケ、チャーハンなどの冷凍食品に使用されています。
ゼラチンは人に対してアレルゲン性を示さない物質であると考えられてきました。しかし、1990年代の半ば、乳児用のワクチンに添加されたゼラチンに起因するアレルギー症例の報告があり、その頃にワクチン接種を受けた人々がゼラチンアレルギーの反応を起こす可能性があることがわかりました。
その後、ワクチンからゼラチンが除外されたため、基本的にゼラチンアレルギー起こしてしまうのは1990年代半ばにワクチン接種を受けた人々のみで、2023年現在で患者数は20代半ば~30代半ばの年齢になる200名程度とされています。
ただし、上記のワクチンに起因しない人でも極稀にアレルギー反応を引き起こすことがあるようです。しかし、他の食物アレルギー症例と比較して非常に数は少なく、また重篤な症例は極めて稀です。そのため、ゼラチンは現在、アレルギー食品としての表示が推奨されています。
出典:ゼラチンアレルギー概説(日本ゼラチン・コラーゲン工業組合)
ゼラチンを入れることで様々なメリットがあります。
上記の通り、ゼラチンには高い保水性と温度で形が変わる性質があるので、ハンバーグに使うことでハンバーグのタネの保水力を高め、焼いた後も柔らかくジューシーな仕上がりになります。
ゼラチンは焼いている間に溶けてハンバーグ内に水分を放出するので、ハンバーグの中に水分を保ちやすくなります。また、冷めるとゼリー状に固まるため、ハンバーグが冷めてももっちりとした食感を保ってくれます。
また、ゼラチンは無味無臭のため、ハンバーグに混ぜても味の変化はありません。むしろ口の中の温度で表面が溶け、滑りがよくなるため、食べやすくなる効果があり、介護用の食事に混ぜて使われることもあります。
ゼラチンは水を吸い込んで粘度を持つテクスチャーになるため、タネが水っぽくなりにくくなります。水を吸ったゼラチンの粘度はタネをまとめる役割も果たします。
そのため、タネがどこか水っぽい場合にはゼラチンを入れてタネを落ち着かせる使い方もできます。デザート作りで購入して余っている方は是非ハンバーグ作りで生かしてみましょう。
ハンバーグのタネに使うゼラチンの量は、ひき肉200g当たり5g(小さじ1)が目安です。タネの具材を混ぜる際に一緒に混ぜ込みましょう。広く流通している粉ゼラチンは水に溶けやすく、混ざりやすいのでとても使いやすいです。
ゼラチンは入れすぎに注意しましょう。入れすぎるとハンバーグがプルプルとしたおかしな食感になってしまいます。また、ゼラチンで無理矢理まとめたハンバーグのタネは焼いている最中にゼラチンが溶けてしまい、崩れてしまいます。
ちなみに、ゼラチンが使われているコーヒーゼリーをタネに混ぜるのもテレビなどで紹介され、人気です。コーヒーゼリーを使うと、甘味と苦味が良い隠し味にもなり、コクがあってジューシーなハンバーグに仕上がります。
使う量はハンバーグ2人前あたり大さじ1杯が適量で、細かく砕いてから他の材料と一緒に混ぜ込んでください。
ゼラチンのようなハンバーグをジューシーにするつなぎにはパン粉があります。
ハンバーグのタネにパン粉や潰したパンを加えることで、パン粉がタネの水分をしっかり保持し、ハンバーグをふっくらと柔らかく仕上げることができます。また、焼いている際にも肉汁を吸い込むことでハンバーグをジューシーに仕上げる効果があります。
また、パン粉の原材料である小麦粉由来の「グルテン」もハンバーグを崩れにくくするつなぎとしての役割に一役買っています。
グルテンは、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2つのたんぱく質が水に反応して結合することで形成されます。詳しく説明すると、バネのような細長い形をしたグルテニンが互いに絡み合い、その網目の部分に粒状をしたグリアジンが入り込むことで形成されています。
グルテンは生地に粘りと張力を与えます。そのため、ゆるいハンバーグのタネに小麦粉を加えることで、タネの中の水分に反応して生まれるグルテンが粘りを生み出し、タネがしっかりとまとまるので、崩れにくくなります。
パン粉以外では焼き麩や高野豆腐、生おから、米パン粉といった材料でも代用ができます。
パン粉とゼラチンはほとんど同じ働きをしますが、ハンバーグ作りでは同時に使っても問題ありません。ただし、パン粉とゼラチンを入れすぎるとハンバーグ本来の風味や食感が損なわれてしまうので、使いすぎには注意しましょう。
なお、ハンバーグ作りでパン粉を使わない場合、ゼラチンを使うことでパン粉の代用とすることも可能です。ただし、パン粉を使うことで生まれる特有の柔らかさや甘みを感じるようなテイストはゼラチンにはありません。
ハンバーグをジューシーにする具材はゼラチン以外にもあります。
豆乳は牛乳の代わりにハンバーグ作りに使われています。牛乳よりも低糖質・低脂質であり、タンパク質を多く含むことから肉汁を逃さず中に留めてくれる効果が高いとされ、豆乳を好んで使う人も多いです。
使う量は牛乳と同量です。
牛乳の代わりに氷を使うことでタネの温度を下げながらこねることができ、肉汁の元になる脂が溶けるのを防ぐことでハンバーグがジューシーに仕上がり、プロの味に近づくと人気です。
焼く際にも氷を入れることでハンバーグを蒸し焼きにでき、しっとりとしながらも肉汁がたっぷりのハンバーグになります。
肉の旨味が感じられるハンバーグに仕上げたいなら、スーパーでも無料でもらうことができる牛脂を隠し味として入れることで、肉汁と旨味がたっぷりのジューシーなハンバーグになります。
使う量は、ハンバーグ1人前(150~200g)あたり牛脂1個(5~10g)です。包丁で細かく刻み、タネをこねる際に混ぜ込みましょう。
少量(ひき肉の5%程度の量)のマヨネーズをタネに混ぜると、タネにまろやかさが加わります。乳化された植物油が加熱によるたんぱく質の結合をソフトにし、ふんわりジューシーに仕上げる効果もあります。
ただし、加えすぎるとハンバーグの風味が変わってしまうので注意しましょう。適量はひき肉の5%程度の量(ハンバーグ2人前あたり大さじ1)です。
粉ゼラチンをタネに混ぜることで、肉汁の流出を防ぎ、ハンバーグをジューシーに仕上げることができます。ゼラチンの量は、ひき肉200g当たり5g(小さじ1)程度が目安です。
ハンバーグを作る際にパン粉をつなぎに使う人が多いですが、パン粉の代わりにパウダー状にした高野豆腐を使うと、ジューシーに仕上げることが可能です。高野豆腐は吸水性が高い食材なので、肉汁をしっかり吸収し、旨味を残してくれます。
2人分のハンバーグにつき高野豆腐8gが適量で、糖質カットにもつながるのでおすすめです。
タネの作り方や焼き方にひと工夫加えることでハンバーグを美味しく仕上げることができます。
ひき肉はこねる直前まで冷蔵庫に入れておきましょう。ハンバーグのタネは温度が上がることでひき肉の脂肪が溶けてタネがゆるくなるほか、焼いた時に肉汁が流れ出て固い仕上がりになってしまいます。
また、タネをこねる際に室温が高いとタネの温度が高くなり、タネがゆるくなってしまうこともあります。夏場は冷房をつけ、冬場は暖房を切ってタネをこねるのがおすすめです。
ハンバーグのタネをこねすぎてしまうと脂が溶けて肉汁が少なくなるので、ハンバーグが固くなってしまいます。ただし、こねることで具材が良く混ざる以外にも、肉の粘り気が増えて肉同士がくっついた状態になり、焼いたときに肉汁が出るのを防ぐ役割もあるのでよくこねるようにしましょう。目安は白っぽくなっていて、粘り気があり、肉を突いてみた時にボウルが浮くくらいです。
ハンバーグをこねる際はこねすぎにも注意ですが、手が温かいと脂肪が溶けやすいため、手を冷やしてからこねると良いでしょう。手ではなくすりこぎ棒や木べら、割り箸などを使っても良いでしょう。こだわる方は牛乳の代わりに氷を使ったり、タネの入ったボウルを氷水の入った大きなボウルで冷やしながらこねたりしているようです。
タネをこね終わった後、寝かせることで水分と油分がなじみ、タネが柔らかくなるだけでなく、お肉が熟成して旨味が増します。ただし、タネを常温で寝かせたり、長時間寝かせたりしてしまうと、雑菌が繁殖する原因となります。冷蔵庫で1~2時間程度寝かせるようにしましょう。また、なるべく空気に触れないようにするため、ラップをかけて寝かせましょう。
なお、空気を抜いて成型した後に寝かせるとひびが入って割れやすくなってしまうので、必ず成型前に寝かせましょう。
タネを混ぜ終わってから空気を抜いて成型しますが、この作業が十分でないとハンバーグが割れやすくなってしまい、割れて肉汁が出て固くなってしまうので要注意です。
ハンバーグの空気を抜く作業はよく「両手でキャッチボールをするようにしながら」と言われます。しかし、この方法ではよくわからないという方も多いでしょう。分かりやすく簡単な方法は、利き手に載せたタネを、利き手ではない方の手を受け皿にして、3~4回軽く打ち付ける方法です。この時、手にサラダ油を薄く塗っておくと、ミンチ内の水分が蒸発するのを防ぎながら成形することができます。
ただし、この作業をやりすぎるとハンバーグが固めの仕上がりになってしまうので要注意です。
ハンバーグのサイズを大きくしてしまうと、焼く前の空気抜きの作業で空気を抜くのが難しくなるほか、火の通りが悪くなり、崩れやすくなってしまいます。真ん中まで火が通りにくく、生焼きになる可能性も高まります。
ハンバーグのサイズは手のひらに収まる程度に収めましょう。厚さは1.5~2cm程度が一般的なサイズです。
ハンバーグの厚い中央部分は火が通りにくいので、生焼けを防ぎ、調理時間を短くするために真ん中をへこませましょう。
ただし、最近はへこませる必要についての議論もあり、へこんだ部分に焼き目がつけられない、蒸し焼きにすれば中までしっかり火が通るといった理由からへこませる必要がないと言われることもあります。典型的なハンバーグのような形ではなく、薄めに作ることでへこませるのを省く方法もあります。
ハンバーグを焼く際、しっかり火を通すために弱火で長時間焼いている方が多いのではないでしょうか。長時間焼くことでハンバーグから肉汁が出すぎてしまい、ハンバーグが固くなってしまいます。
ハンバーグを焼く際は、まずは中火で表面を焼き、裏返したら弱火にし、中までじっくりと火を通しましょう。強火で焼くと焦げやすく、ハンバーグの外側ばかり焼けてしまって中心部は生焼けになってしまうことが多く、野菜に含まれる栄養素が分解されてしまったり、肉汁の水分と一緒に流れ出てしまったりします。基本的に中火以下で調理しましょう。
中火で焼き目を付けてハンバーグをひっくり返した後、フタをして弱火で加熱することで水分の蒸発を防ぎ、蒸し焼きにすることができるので、焼いている面以外にも熱を通すことができ、焼きムラを防ぐとともに、時短調理となります。
フタがない時はアルミホイルをフライパンを覆うサイズに成形して上から被せることで蓋代わりにできます。この時、フライパンが熱いのでフライパンに触ってやけどしないように注意しましょう。
アルミホイルを使って包み焼きにするのもおすすめです。熱がハンバーグに均等に伝わり、焼きムラを防ぐことができます。アルミホイルには遠赤外線効果という食材の内側に熱を伝えやすくする効果もあるので、生焼け防止にぴったりの調理方法です。付け合わせのブロッコリーやニンジンなどの野菜も一緒に包んで焼けば時短調理にもなります。
フタをして蒸し焼きにする際、少量の料理酒(小さじ1~)を加え、弱火で蒸し焼きにすることでハンバーグに旨味を加え、ふっくらと仕上げることができます。
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