手軽に食べられるファストフードとして人気のある牛丼は牛めしと何が違うのでしょうか。この記事では牛丼と牛めしの違いや由来などを解説します。
牛めしと牛丼は、どちらも甘辛く煮た牛肉とタマネギを白いご飯の上に載せた、いわゆる「丼もの」と呼ばれる料理です。呼び名が違うだけで味や具材などの違いはありません。
元々牛めしと呼ばれていたものが牛丼と呼ばれるようになり、一般的な呼び名となりました。
大手チェーン店でも吉野家やすき家は「牛丼」と呼びますが、松屋では「牛めし」と呼んでおり、現在でも牛めしの呼び名が使われることもあります。
松屋が「牛めし」という名称を使っているのは、吉野家を意識してあえて「牛丼」ではない呼び名を選んだためのようです。
「牛皿」は、吉野家やすき家などのチェーン店で牛丼の具材部分だけを注文するメニューの1つです。テイクアウトで注文されることの多いメニューで、自宅でお店の味が楽しめます。
吉野家には「牛皿定食」というメニューもあり、牛皿と白いご飯、生卵、みそ汁がそれぞれ別皿で提供されています。それぞれ別に注文するよりもお得で、卵を好きなタイミングで混ぜることができ、人気のあるメニューです。
牛めしと牛丼の源流は、牛肉や野菜を煮込んで作る「牛鍋」です。夏目漱石の好物だった料理としてもよく知られています。
明治時代まで日本では牛肉を食べる習慣がほとんどありませんでしたが、鎖国が終わり、文明開化とともに牛肉を食べる習慣が海外から持ち込まれました。幕末期の1862年に横浜で牛鍋屋が開業し、牛鍋は明治時代に大流行しました。牛鍋屋は1875年(明治8年)の時点では東京に70軒ありましたが、2年後の1877年(明治10年)には550軒にも増えました。
牛鍋は人気のすき焼きの源流ともいえる料理で、作り方や具材にやや違いがあるものの、ほとんど同じ料理として認識されています。すき焼きが一度牛肉を焼いてから煮るのに対し、牛鍋は最初から牛肉や具材を煮込むことから、家庭で作られるすき焼きの多くはむしろ牛鍋であるとも言えます。
なお、すき焼きが主流となった現代でも、日本の牛鍋発祥の地である横浜などには牛鍋屋が残っています。
牛鍋が人気になるとともに、牛鍋を白いご飯に載せたどんぶりスタイルの料理が忙しい町人向けに1890年代に提供され始めました。これがいわゆる「牛めし」で、手軽に食べられることから人気を博すようになりました。
この料理は当時「牛めし」以外にも「牛鍋ぶっかけ」や「かめちゃぶ」とも呼ばれていましたが、呼びやすい「牛めし」の名前が浸透したようです。
1923年に関東大震災が起こった後、牛めしを販売する露天や屋台などが登場し、この頃から「牛丼」という呼び名が多く使われるようになりました。
安くボリューム感があり、手軽に食べられることから牛丼はさらに人気となりましたが、牛丼は戦争を経た後も長い間東京周辺のローカルフードでした。全国的に牛丼が広まったのは、現在でも牛丼の一大チェーンである吉野家による影響が大きいとされています。
吉野家は1899年創業で、創業当時から「牛丼屋」という屋号を用いていました。1970年代にファストフード店として全国展開を始めたことで、牛丼という料理が「牛丼」という呼び名とともに日本中に広がりました。
牛めしや牛丼は、元々の牛鍋の具材である牛肉や白ネギ、豆腐などを白いご飯に載せた料理でしたが、次第に牛肉だけ、牛肉と白ネギだけといった具材が使われるようになりました。お店ごとに異なる具材が使われていたようです。
1959年に吉野家が牛肉とタマネギだけの牛丼を提供し始めました。その後、他社もこれに追随する形で同じ具材を使った牛丼を提供し始めたことで、今日では牛肉とタマネギが最も一般的な牛丼の具材となったようです。
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