甘藷澱粉と葛粉の違いをご存知でしょうか。本記事では甘藷澱粉と葛粉の違いを解説します。
甘藷澱粉(かんしょでんぷん)と葛粉(くずこ)は、どちらも植物のでんぷんを原料に作るでんぷん粉の一種です。甘藷澱粉と葛粉は原料となる植物が異なります。
甘藷澱粉の原料はさつま芋のでんぷんです。
「甘藷」はさつま芋の別名です。普段口にしているさつま芋よりも一回り大きく、でんぷんを多く含んでいるさつまいものでんぷんを原料に作られています。
葛粉の原料は、マメ科植物クズの根から得られるでんぷんです。
クズのでんぷんも掘り出すのに手間がかかり高価であるため、近年は甘藷澱粉や馬鈴薯澱粉、コーンスターチなどが加えられていることが多いです。
クズのでんぷん粉に甘藷澱粉などを合わせたものが「葛粉」、クズのでんぷんのみを使用したものが「本葛粉(本葛)」という製品名で販売されています。
甘藷澱粉は上記で紹介したようにさつま芋のでんぷんです。
馬鈴薯澱粉とは、じゃが芋のでんぷんを沈殿させ乾燥さて粉状にしたものです。「馬鈴薯」はじゃが芋の別名です。じゃが芋の形が馬の首につける鈴に似ていたため「馬鈴薯」と呼ばれるようになったといわれています。国内で作られる馬鈴薯でん粉は、北海道で生産されたじゃが芋のみを原料として製造されています。
コーンスターチは、トウモロコシのでんぷんを乾燥させて粉状にしたものです。コーンスターチに使われるトウモロコシは、一般的によく食されるスイートコーン(甘味種)ではなく、デントコーン(馬歯種)という品種です。
甘藷澱粉はメーカーによって異なります。参考に芋類を原料に作られるでんぷん粉の一般的な製造方法を紹介します。
まず原料であるさつま芋を洗浄し皮を剥きます。皮をむいたら、細胞内にあるでんぷんを取り出しやすくするため、磨砕機で細かく砕きます。
次に、湯通しを行いでんぷんを溶かし出します。湯通しし終わったら、濾過してでんぷんを取り出します。濾過したら洗浄し、不純物を取り除いていきます。
最後に、洗浄したでんぷんを乾燥機で乾燥し粉末状にして完成です。
葛粉は、クズの根っこの部分を掘り起こし、粉砕して水の中でもみだし根の中に含まれているでんぷんを沈殿させます。その後、水に晒してアク抜きし沈殿させる工程を何度も繰り返して不純物を取り除き、適当な大きさに砕いて乾燥させるという製造方法で作られています。
さらに「葛粉」として販売されているものは、甘藷澱粉や馬鈴薯澱粉などが配合されます。配合量はメーカーによって異なります。
甘藷澱粉の見た目は白いです。
見た目は片栗粉と非常に似ていますが、片栗粉ほどしっとりとはしておらず、さらさらしています。
葛粉の見た目は、灰色がかった白色です。もともとクズからとれるでんぷんは灰色をしていて、葛粉の割合が多ければ多いほど灰色に近くなります。反対に、葛粉よりも甘藷澱粉などの割合が多いと白色になります。
葛粉は大きな固まりができていて、さらさらというよりはザクザクした触感です。
甘藷澱粉100gあたりに含まれている栄養素は下記の通りです。
たんぱく質…約0.11g
脂質…約0.22g
炭水化物…約90.2g
甘藷澱粉100gあたりのカロリーは332Kcal です。
葛粉100gに含まれる栄養素は、下記の通りです。
たんぱく質…0.2g
脂質…0.2g
炭水化物…85.6g
葛粉100gのカロリーは、347kcalです。
葛粉には、様々な効能があります。例えば、クズにはイソフラボンが多く含まれています。イソフラボンとは大豆胚芽に多く含まれるポリフェノールの一種です。イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをするため、更年期や月経前のつらい症状を和らげたり 肌荒れを改善するなどの美容効果や肩こり改善、イライラを抑えるなど精神を安定させるなどの効果が期待できます。
ただし、葛粉には葛粉以外のてんぷん粉も配合されているので、葛の効能を目的とするのであれば葛粉の配合量が多いものや本葛粉を選びましょう。
甘藷澱粉はスーパーなどでは取り扱っている店舗が少ないため、片栗粉などのでんぷん粉のように家庭で使われることは少ないです。
甘藷澱粉は主に、清涼飲料水などの果糖ブドウ糖液糖やぶどう糖、水あめなどの甘味料(糖化製品)の他、お菓子や麺、春雨、水産練製品などの加工食品の原料として使われるのが一般的です。
しかし、甘藷澱粉はでんぷん粉の一種なのでもちろん和菓子を作ったり、焼き菓子を作ることもできます。例えば甘藷澱粉でクッキーなどの焼き菓子を作るとサクサクとした軽さと口どけのよさを楽しむことができます。
葛粉は、葛湯を使うときに使われる事が多いです。
葛湯は、葛粉をお湯で溶いた飲み物です。葛粉を葛湯にすることで、身体を温めることができる他、風邪のひきはじめの症状改善など様々な効果が期待できます。
また、葛餅や水まんじゅう、葛切り、葛焼きなどの和菓子を作ることができます。
葛餅は、くず粉に砂糖と水を加え、加熱してできた透明な餅にきな粉と黒蜜をかけたものです。葛餅に餡(あん)を包むと透明で涼しげな水まんじゅうができます。
葛切りは、くず粉を水で溶かし型に入れてから加熱し後板状に固め、うどんのように細長く切ったものです。蜜をかけてデザートとして食べたり、乾燥させて鍋の具材として食べることができます。
葛焼きは、葛粉と餡(あん)を合わせて練った生地の表面を焼いて仕上げる京都の銘菓です。
その他、片栗粉の代用品として料理にとろみをつけたり、揚げ物の衣にすることもできます。
甘藷澱粉と葛粉はどちらも水を加えて加熱すると粘りが出て、糊状になる性質があります。そのため、甘藷澱粉と葛粉はお互いに代用することが可能です。
ただし、原料が異なるので風味などに違いがでます。葛粉を甘藷澱粉で代用すると葛粉のような風味はでません。反対に甘藷澱粉を葛粉で代用すると、葛粉の風味が出て料理の味を損ねることもあるので注意が必要です。
甘藷澱粉は葛粉の代用として葛湯を作ることはできません。なぜなら、甘藷澱粉には葛粉のような薬効はないためです。
そのため、甘藷澱粉をお湯で溶いても葛湯と似た飲み物を作ることはできますが、薬効目的で葛湯を飲みたい場合には代用になりません。
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