この記事では、人気のお酒ウイスキーと日本で生まれた焼酎の違いについて、原料や製法、味などの点から比較・解説します。
ウイスキーは、大麦、ライ麦、トウモロコシといった穀物から造られています。発祥はスコットランドとアイルランドの2説あるようですが、はっきり決着はついていないようです。
原料によって「モルト・ウイスキー(大麦)」、「グレーン・ウイスキー(穀物全体)」、「コーン・ウイスキー(トウモロコシ)」といった呼び名で分類されており、さらに産地によっても「スコッチ・ウイスキー(スコットランド)」、「アイリッシュ・ウイスキー(アイルランド島)」、「バーボン・ウイスキー(アメリカ・ケンタッキー州バーボン郡)」といった分類がされています。
焼酎の原料は多岐にわたります。製法の項目にて詳しく紹介しますが、製法で焼酎は「甲類焼酎」と「乙類焼酎」に分けられ、それぞれの代表的な原料は以下の通りです。
サトウキビ、酒粕(甲類):サトウキビの廃糖蜜(砂糖を作る際に出る搾りかす)や、日本酒を造る際に生じる酒粕を原料として発酵させます。
芋(乙類):芋焼酎の原料には、サツマイモが使われます。主に九州南部の宮崎県や鹿児島県で製造されています。現在では、焼き芋を原料とした「焼き芋焼酎」も作られています。
米(乙類):米焼酎の原料には、日本酒の原料と同じく、米が使用されます。主に熊本県の人吉地方や、新潟県や秋田県といったお米の生産県などで作られています。
麦(乙類):麦焼酎の原料には、大麦が使用されます。長崎県で製造が始まり、日本全国で作られています。
甲類焼酎でも米や芋、大麦、トウモロコシなどが使われる場合もあります。また、乙類焼酎でも、上記以外に黒糖やそば、粟など、様々な原料から造られています。
米麴から造られる沖縄県の「泡盛」も、製法にやや違いがあるものの、焼酎の一種と分類されています。
蒸留酒とは、醸造酒を加熱して造られるお酒で、スピリッツ(spirits)とも呼ばれます。蒸留によって純度の高いエタノールを生成する製造方法のため、アルコール度数が高いのが特徴です。
ウイスキー・焼酎のどちらも穀物などの原料を発酵・蒸留し、熟成させることで製造される蒸留酒の一種です。蒸留酒は他にブランデー、ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラなどがあります。
ウイスキー・焼酎の製法上における重要なポイントをそれぞれ解説します。
ウイスキーの製法を語る上で一番需要なのが熟成です。
蒸留によって精製したニューポットを木製の樽の中で長期間じっくり寝かせ、熟成を行います。期間もメーカーによって様々で、10年以上熟成するものもあれば2年程度しか熟成を行わないメーカーもあります。熟成期間が長いほどウイスキーの特徴とも言える琥珀色は濃いものとなり、アルコールの角が取れてまろやかで奥深い味わいとなります。
樽は樽材、大きさ、内面の焼き方などの違いによってさまざまな種類があり、ウイスキーの風味を大きく左右します。樽材にはホワイトオーク、スパニッシュオーク、ミズナラなどがよく使用されています。大きさも180L(バーレル)、230L(ホッグズヘッド)、480L(パンチョン、シェリー)と様々です。バーボン・ウイスキーは内側を焼いて焦がしたホワイトオークの樽を使用しています。
貯蔵環境(気温、湿度)によっても熟成の度合いが微妙に変化するとも言われており、基本的には冷涼な気候での熟成(保存)が常識とされてきましたが、近年では台湾などの亜熱帯地域で生産されたウイスキーが高い評価を得るなど、その常識は覆りつつあります。
ウイスキーは樽で熟成したものをいくつかブレンドする「ブレンデッド」が主流ですが、単一の樽で熟成されたウイスキー原酒のみをボトリングしたウイスキーは「シングルカスク」と呼ばれます。
焼酎は製法によって「甲類焼酎」と「乙類焼酎」に分類されます。
「甲類焼酎」は、近代的な蒸留方法である「連続式蒸留」によって蒸留された焼酎です。伝統的な方法で造られる乙類焼酎に対して、甲類焼酎は「新式焼酎」と呼ばれることもあります。
連続式蒸留はもともとはウイスキーやジン造りなどに使われていた蒸留方法で、19世紀のイギリスで誕生したものです。連続式蒸留機は大きな蒸留器の中で何度も蒸留を繰り返すシステムになっている蒸留方法で、単式蒸溜に比べて効率的に不純物を取り除き、純度の高いアルコールを抽出できることから、出来上がるお酒がクリアな味わいになるのが特徴です。
単式に比べると効率よく蒸留が行えることから、大量生産向きで、価格の低い製品が多くなっています。
「乙類焼酎」は、昔ながらの蒸留方法である「単式蒸溜」で蒸留された焼酎です。旧式の製法で造られることから、「旧式焼酎」と呼ばれることもあります。また、甲、乙という呼び名が優劣をつけるような呼び名であることから、乙類焼酎は「本格焼酎」とも呼ばれます。
単式蒸留とは、一度のもろみ(発酵させた焼酎の原料)の投入につき、一度だけ蒸留を行う蒸溜方法で、蒸留は一回のみなので、使われる原料の個性や癖が現れやすいのが特徴です。比較的シンプルな構造であり、設備も簡単に作れるため、小規模な蒸留所で用いられています。
甲類よりも乙類の方がアルコール度が高くなりますが、アルコール以外の成分も多く含まれており、濃厚で複雑な味わいと言われます。時間と手間がかかるため、値段の高い製品が多くなっています。
ウイスキーは、木製の樽で熟成するため、ウッディーな香りとビターな風味が特徴的ですが、原料や産地によって風味が大きく異なります。香りもスモーキーなものからフルーティーなものがあり、味わいも軽いもの(ライト・ボディ)から重たいもの(フル・ボディ)まで様々です。
欧州連合(EU)がウイスキーの最低度数を40度と定めていることもあり、ウイスキーは基本的に40~43度の製品が多くなっています。イギリスでは43度、アメリカでは40度が標準度数と定められています。飲む人の好みに合わせて50度以上の製品も販売されています。
焼酎は甲類と乙類で味わいが異なります。甲類はすっきりとクリアな味わいで初心者でも飲みやすく、乙類は素材の味わいを感じられるようなまろやかなテイストです。
乙類は使われる素材ごとに味や香りが異なり、代表的なもので言えば、芋焼酎は芋のまろやかな甘みが感じられ、米焼酎はお米のふんわりとしたどこかフルーティーな甘みがあり、麦焼酎は癖が少なく、香ばしくすっきりとした味わいが特徴的です。
なお、甲類と乙類をブレンドした焼酎もあり、乙類の風味を甲類にブレンドした「甲乙混和焼酎」、癖の強い乙類を飲みやすくするために甲類をブレンドした「乙甲混和焼酎」があります。
アルコール度数は、甲類と乙類で上限が違うものの、どちらも熟成後に加水されて濃度が下げられており、甲類は20度、乙類は25度の製品が多くなっています。ジンやウイスキー、ブランデーといったほかの蒸留酒よりも度数が低いので飲みやすいとされています。
ウイスキーは風味が強い分、その風味を味わう飲み方である、ストレートやロック、ソーダ割りといった飲み方が好まれていますが、ウイスキーを使ったカクテルもあり、「マンハッタン」、「オールド・ファッションド」などの有名なカクテルがあります。
焼酎はロック、水割り、ソーダ割り、お湯割りが王道の飲み方とされています。
クリアな味わいの甲類は、すっきりと楽しめるソーダ割りや、お茶割りがおすすめです。癖の少ない味わいなので、レモンサワーなどのチューハイのベースにしても美味しく飲むことができます。
素材の味が強めの乙類は、焼酎そのものの味が楽しめるロックや水割りがおすすめです。お湯割りにすると焼酎の風味が引き立ちますよ。
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