本記事ではてんさい糖と素焚糖の違いを紹介します。
てんさい糖の原料は、甜菜(てんさい)です。甜菜は、別名「サトウダイコン」や「ビート」ともいいます。
甜菜は古代ギリシャやローマ時代から野菜として栽培されてきました。見た目は大根に似ていますが、植物学上ではホウレンソウと同じヒユ科に属します。甜菜には、紅白の2種類がありますが、砂糖の原料として使用されるのは白色のほうです。
甜菜は温かい地域では病虫害に侵されやすいため、一般的に寒地で栽培されます。元々、甜菜はヨーロッパ地域が主産地でした。温帯から亜寒帯を中心に栽培地域が広がり、日本では北海道で、年間約62.1万トン*もの甜菜が生産されています(サトウキビは約18.6万トン*)。
*2009年の国内原料における砂糖生産量
素焚糖(すだきとう)の原料は、サトウキビです。
サトウキビを原料に作られる砂糖には「きび砂糖」があります。素焚糖は、鹿児島県の奄美諸島産のサトウキビのみを使用して作られた砂糖で、大東製糖株式会社が製造、販売しています。
砂糖には、下記の2通りの製造方法があります。
分蜜糖
原料を絞った搾り汁(糖汁)から不純物を取り除き、濃縮して得られる白下糖(結晶と糖蜜の混合物)を分離させて、結晶だけを取り出して乾燥させた砂糖のことを指します。さらに分蜜糖はザラメ糖や車糖、加工糖などに細分化されます。グラニュー糖や上白糖、三温糖などは分蜜糖に分類されます。
含蜜糖
原料の絞り汁(糖汁)から、不要な成分や不純物を大まかに除去し、そのまま加熱・濃縮して固化させた砂糖のことを指します。黒砂糖、きび砂糖、てんさい糖、パームシュガーなどが含蜜糖に分類されます。
てんさい糖は含蜜糖に該当する場合と、分蜜糖を製造する際に得られる糖蜜のみを原料にしているメーカーがあります。後者の場合は含蜜糖と分蜜糖のどちらにも当てはまりません。
含蜜糖として販売されているてんさい糖の場合、原料である甜菜の搾り汁から不純物を取り除き、搾り汁を煮詰めて作られます。
分蜜糖を製造する際に得られる糖蜜を煮詰めて作られるてんさい糖の一般的な作り方は下記の通りです。
ちなみに、6. で振り分けられた結晶を使うと、上白糖やグラニュー糖ができます。
製造法による分類では含蜜糖に該当します。
サトウキビの搾り汁からは、含蜜糖の原料となる原料糖(結晶)と糖蜜(液体)が作られ、原料糖から不純物を取り除き粉末化して作られます。サトウキビがもつミネラルや風味などを閉じ込める独自製法で作られることから「素のままじっくり丁寧に焚き上げた砂糖」で、素焚糖といいます。
てんさい糖の見た目は、一般的に家庭で使われることが多い上白糖とは異なり、茶色い見た目をしています。
黒糖ほど強くはありませんが、上白糖とは異なる独特の風味があり、まろやかな甘さが特徴です。
素焚糖もてんさい糖と同じく茶色い見た目をしていますが、てんさい糖よりも色が薄いです。また、てんさい糖よりも粒子が細かくサラサラしています。
素焚糖の甘さはくどくなく、やわらかい甘さです。
一般的なてんさい糖の栄養素は下記の通りです。製造方法によって栄養素は若干異なります。
<含蜜糖に該当するてんさい糖の場合>
エネルギー・・・395kcal
たんぱく質・・・0g
脂質・・・0g
炭水化物・・・98.8g
無機質
カルシウム・・・1.0mg
カリウム・・・4.0mg
マグネシウム・・・0.3mg
鉄・・・0.18mg
食物繊維総量・・・0g
<糖蜜からつくられるてんさい糖の場合>
エネルギー・・・382kcal
たんぱく質・・・0.5g
脂質・・・0g
炭水化物・・・97.5g
無機質
ナトリウム・・・32〜78mg
カルシウム・・・0〜2mg
カリウム・・・6〜55mg
マグネシウム・・・0〜0.2mg
リン・・・0〜6mg
鉄・・・0〜0.2mg
亜鉛・・・0〜0.1mg
銅、マンガン・・・0mg
セレン、ヨウ素、クロム、モリブデン・・・0μg
食物繊維総量・・・0g
※可食部100gあたり
特筆すべき点は、てんさい糖にはオリゴ糖が含まれていることです。上白糖など他の砂糖にはオリゴ糖は含まれていません。
オリゴ糖は、糖質の一種で、ビフィズス菌などの善玉菌の栄養源となるといわれています。したがって、腸内環境を整える効果が期待できます。
ただし、オリゴ糖を摂りすぎると、おなかがゆるくなったり、ミネラルやビタミンなどの栄養素の吸収が抑制されてしまう場合があります。
素焚糖の栄養表は下記の通りです。
エネルギー・・・382kcal
たんぱく質・・・0.2g
脂質・・・0g
炭水化物・・・98.4g
食塩相当量・・・0.1g
無機質
カリウム・・・247mg
カルシウム・・・44mg
マグネシウム・・・14mg
リン・・・6mg
鉄・・・0.5mg
亜鉛・・・0mg
銅・・・0.02mg
マンガン・・・0.20mg
セレン、ヨウ素、モリブテン・・・0μg
食物繊維総量・・・0g
※可食部100gあたり
素焚糖は含蜜糖であるため、ミネラル類が豊富に配合されているのが特徴です。ミネラルは、私たち人間の体にとって必要不可欠な成分です。体の成分になったり、神経や筋肉を正常に保ったり、代謝を促進するなどの役割があります。残念ながら体内では合成されないため、食事を通してミネラルを摂取する必要があります。
てんさい糖にもミネラル類は含まれていますが、素焚糖よりも含有量は少ないです。
てんさい糖と素焚糖はどちらも上白糖の代用品として、様々な用途で使うことができます。
例えば煮物料理に使うと、ミネラル類が含まれているためコクを出すことができます。また、クッキーなどのお菓子作りやパン作りの他、コーヒーなどの飲み物に甘みを加えたいときにも使えます。
上述したように、てんさい糖と素焚糖の用途はほぼ同じなので代用可能です。それぞれ原料や製法が異なるので全く同じになるわけではありませんが、大きく味が変わってしまうことはないでしょう。
ただし、てんさい糖のほうが素焚糖と比較して料理に色がつきやすいため、お菓子作りをするときなど見た目が気になる場合は、別の砂糖で代用するのが良いです。
てんさい糖のカロリーは含蜜糖の場合が100gあたり395kcal、糖蜜からつくられるてんさい糖の場合が100gあたり382kcalです。
一方、素焚糖のカロリーは382kcalなので、含蜜糖のてんさい糖と比較すると素焚糖のほうがカロリーは低くなりますが、さほど大きな差はないといえます。
しかし、血糖値の上昇度を表すGI値には違いがあります。てんさい糖のGI値はG65であり、中GI値食品に分類されます。一方、素焚糖のGI値は不明ですが、素焚糖とほぼ同じきび砂糖のGI値は100であり、高GI値食品に分類されます。
血糖値の急激な上昇は急激な下降に繋がり、空腹感を感じやすくなるためダイエット中は低GI値のものを選ぶのが良いです。そのため、ダイエット中の方はてんさい糖を選ぶのがおすすめです。
GIとは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後の血糖値の上昇度を表す値です。食品の炭水化物を50g摂取した際の血糖値の上昇度合いを、ブドウ糖(グルコース)を100とした場合の相対値で表します。55以下を低GI、56〜69を中GI、70以上を高GIと分類し、GI値が高ければ高いほど血糖値が急上昇します。急激な血糖値の上昇は、体に負担をかけるため、緩やかな上昇が理想的です。
他の砂糖のGI値は、上白糖(白砂糖)は109、三温糖は108、黒砂糖は99です。てんさい糖は、あらゆる砂糖の中でもGI値が低いことがわかります。
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