この記事では、ウイスキーに使われる原料や、独特な香りとなる製法について解説します。
ウイスキーは、大麦、ライ麦、トウモロコシといった穀物を発酵・蒸留し、樽熟成することで造られる蒸留酒の一種です。発祥はスコットランドとアイルランドの2説あるようですが、はっきり決着はついていないようです。
ウイスキーは、木製の樽で熟成するため、ウッディーな香りとビターな風味が特徴的ですが、原料や熟成に用いる樽によって風味が大きく異なります。香りも、スモーキーなものからフルーティーなものがあり、味わいも軽いもの(ライト・ボディ)から重たいもの(フル・ボディ)まで様々です。
欧州連合(EU)がウイスキーの最低度数を40度と定めていることもあり、ウイスキーは基本的に40~43度の製品が多くなっています。イギリスでは43度、アメリカでは40度が標準度数と定められています。
飲み方はストレートやロック、ソーダ割りといった飲み方が好まれていますが、ウイスキーを使ったカクテルもあり、「マンハッタン」「オールド・ファッションド」などの有名なカクテルがあります。
ウイスキーの原料となる穀類についてそれぞれ詳しく解説します。
大麦はビールの原料として有名ですが、ウイスキーの原料としても使われており、大麦を原料とするウイスキーは「モルト・ウイスキー」と呼ばれています。大麦は収穫したての状態ではデンプンが糖に変化しにくく、発酵しづらいため、発芽させた状態で使われています。
モルトウイスキーは最も伝統的なウイスキーとされ、人気も高く、世界中で生産されています。ただし、モルトウイスキーの定義はあいまいで、スコットランドやアイルランド、日本などでは原料に大麦だけを用いてるものが「モルトウイスキー」と定義されていますが、アメリカでは、原料の51%以上が大麦であれば「モルトウイスキー」と名乗ることができます。
モルトウイスキーの多くが単式蒸留という伝統的な製造方法で造られていることもあり、他の原料から造られるウイスキーよりも原料由来の香りや味わいが色濃く残ります。そのため、ブレンドを行わない人気の「シングルカスク」はモルトウイスキーが多いですよ。
原料・製造方法のどちらもコストがかかるため大量生産が難しく、流通している製品の多くは次の項目で紹介するグレーン・ウイスキーとブレンドして瓶詰めされた「ブレンデッド・ウイスキー」がほとんどとなっています。
様々な穀類を原料として造られるウイスキーは「グレーン・ウイスキー」と呼ばれています。基本的には小麦、ライ麦、トウモロコシなどを大麦の麦芽で発酵させることで製造されています。
効率的な蒸留ができる連続式蒸留という製造方法によって蒸留が行われているため大量生産がしやすいウイスキーです。純度の高いアルコールを製錬できる連続式蒸留によって製造されているため、香りや味は弱く、穏やかなテイストのため、モルトウイスキーが主張の強いテイストから「ラウドスピリッツ」と呼ばれるのに対し、グレーン・ウイスキーは「サイレントスピリッツ」と呼ばれています。
モルト・ウイスキーの味や香りがトゥーマッチだと感じたら、すっきりとしたテイストのグレーン・ウイスキーがおすすめです。
パンの材料でも健康志向なイメージのあるライ麦もウイスキーの材料として使われており、ライ麦から造られるウイスキーは「ライ・ウイスキー」と呼ばれています。
ライ・ウイスキーはほろ苦く、スパイシーさのある独特な味で、北アメリカを中心に生産されており、アメリカ国内では原料の51パーセント以上がライ麦であるものをライ・ウイスキーと定義しています。また、ライ・ウイスキーを名乗るためには2年以上の樽熟成も義務付けられています。
ただし、モルト・ウイスキーやグレーン・ウイスキーに比べると生産量は少なく、販売されているライ・ウイスキーのラインナップは少なくなっています。
トウモロコシを原料とするウイスキーは「コーン・ウイスキー」と呼ばれています。主な生産地はアメリカで、アメリカ国内では原料の80パーセント以上がトウモロコシであるものをコーン・ウイスキーと定義しています。熟成期間に関する決まりがなく、一切樽熟成しなくても出荷できるのも特徴的と言えるでしょう。
豊富なトウモロコシを原料としており、熟成することなく効率的に出荷できるコーンウイスキーですが、香り・味ともに他のウイスキーに比べると軽いとされています。ただし比較的安価であり、禁酒法が施行されてお酒が禁止されていた1920年代のアメリカでは密造酒として人気を集めていたと言われています。
アメリカのテネシー州で生産されている人気の「バーボン・ウイスキー」もコーンを主原料としていますが、バーボン・ウイスキーは原料の51パーセント以上80パーセント未満がコーンと定められており、コーン・ウイスキーには含まれません。
パンや麺類の原料として使われる小麦を使ったウイスキーが「ウィート・ウイスキー」です。小麦はウイスキーの原料の一部(副原料)として使われることはありますが、メインの原料として使われることは少なく、主な生産地はアメリカですが、生産量はわずかとなっており、あまり一般的とは言えない知名度です。
小麦由来のふんわりとした芳ばしい香りと、柔らかな甘みのあるなめらかな味わいが特徴的です。
上記以外の原料では米やソバの実、キヌアを使ったウイスキーも存在しています。また、アイルランドにはオーツ麦を使ったウイスキー「ピュアポットスティルウイスキー」もあります。
ブランデーは果実を原料にして造られる蒸留酒ですが、一般的に「ブランデー」といえば、白ブドウを原料とする蒸留酒を指します。白ブドウ以外にはリンゴ(カルヴァドス)、サクランボ(キルシュワッサー)、キイチゴ(フランボワーズ)といった蒸留酒も、広い意味ではブランデーというくくりになります。
焼酎の原料は多岐にわたり、芋、米、麦、サトウキビ、酒粕などが原料とされています。珍しいものでは黒糖やそば、粟など、様々な原料から造られています。
米麴から造られる沖縄県の「泡盛」も、製法にやや違いがあるものの、焼酎の一種と分類されています。
ウォッカは、大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシ、ジャガイモといった穀物などの原料を加工して造られる、ロシア発祥のお酒です。氷点下でも凍らないため、超低温地域で重宝されてきた歴史があります。
なお、EU(欧州連合)では、サトウキビやブドウなどを原料とする蒸留酒をウォッカと認めるか意見が分かれていたようですが、最終的には原材料を明記することによって、ウォッカと認めることになりました。現在ではミルクやフルーツなど様々な原料から造られるウォッカが流通しています。
ジンの基本的な原料・製法はウォッカと同じ(小麦、大麦、ライ麦、じゃがいも)ですが、ジンは製造の過程において濾過は行わず、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)という低木の果実を乾燥させたスパイスをはじめ、様々なハーブやスパイス、フルーツで香りづけするため、独特の風味があります。
ラムはサトウキビから造られる、カリブ地域原産の蒸留酒です。サトウキビの搾り汁や廃糖蜜(搾りかす)を使用するため、甘い香りと味わいが特徴的なお酒で、アルコール度数は40~50度程度の製品が多くなっています。
テキーラはメキシコ発祥の蒸留酒で、サボテンから造られるお酒とよく勘違いされていますが、アガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られています。アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。味は製造方法によって様々で、まろやかなものから苦みや渋みの強いものまでありますよ。
ウイスキーは基本的に「糖化・発酵、蒸留、熟成、ブレンド、加水・後熟・瓶詰め」の5ステップによって製造されています。
モルト・ウイスキーと他のウイスキーでやや異なりますが、基本的には砕いた原料と水を混ぜてお粥に近い状態にしたものに、発芽した大麦を乾燥させた「大麦麦芽(モルト)」を混ぜます。ここで用いる水もウイスキー作りでは重要な要素の1つで、ウイスキーの味を大きく左右すると言われています。
大麦麦芽の酵素によって、原料のデンプンが糖に変化(糖化)します。糖化が完了したものを濾過することで得られる「麦汁(ウォート)」に酵母を加えて発酵させることで、アルコール度数7〜8%の「ウォッシュ」と呼ばれる液体が出来上がります。
ウォッシュを蒸留器で蒸留し、水とアルコール、その他の化学物質に分離させます。アルコールは水よりも早く沸騰するため、ウォッシュを沸騰させるとアルコールが先に蒸気となり、アルコールのみ分離させることが可能です。
伝統的な方法で手間がかかるものの、原料の個性や癖が現れやすい単式蒸留と、純度の高いアルコールが精製でき、大量生産も可能な連続式蒸留のどちらかによって蒸留が行われます。蒸留の回数や蒸留機の種類などはメーカーによって様々です。
ここで得られる液体は「ニューポット」と呼ばれます。
ウイスキーの製法を語る上で一番需要なのが熟成です。
蒸留によって精製したニューポットを木製の樽の中で長期間じっくり寝かせ、熟成を行います。期間もメーカーによって様々で、10年以上熟成するものもあれば2年程度しか熟成を行わないメーカーもあります。熟成期間が長いほどウイスキーの特徴とも言える琥珀色は濃いものとなり、アルコールの角が取れてまろやかで奥深い味わいとなります。
樽は樽材、大きさ、内面の焼き方などの違いによってさまざまな種類があり、ウイスキーの風味を大きく左右します。樽材にはホワイトオーク、スパニッシュオーク、ミズナラなどがよく使用されています。大きさも180L(バーレル)、230L(ホッグズヘッド)、480L(パンチョン、シェリー)と様々です。バーボン・ウイスキーは内側を焼いて焦がしたホワイトオークの樽を使用しています。
貯蔵環境(気温、湿度)によっても熟成の度合いが微妙に変化するとも言われており、基本的には冷涼な気候での熟成(保存)が常識とされてきましたが、近年では台湾などの亜熱帯地域で生産されたウイスキーが高い評価を得るなど、その常識は覆りつつあります。
熟成させた原酒を組み合わます。この時、モルトウイスキーの原酒同士を組み合わせることを「ヴァッティング」と呼び、モルトウイスキーの原酒とグレーンウイスキーの原酒を組み合わせることを「ブレンディング」と呼びます。
1つの蒸留所内だけで樽の中身を組み合わせたウイスキーは「シングルモルト」や「シングルグレーン」などと呼ばれ、1つの樽の中身だけを使うウイスキーは「シングルカスク」と呼ばれます。
ブレンドを終えたウイスキーはアルコール度数が40~43度になるように水を加えた後、1カ月~1年さらに熟成させる「後熟(マリッジ)」と呼ばれる工程を経て、瓶詰めされ出荷されます。
ウイスキーは生産地で原料や製法、使う樽の種類などが大きく異なるのも特徴です。
現在世界で最も人気のスコッチ・ウイスキーはイギリスのあるグレートブリテン島の北部にあるスコットランドで生産されているウイスキーです。ピート(泥炭)由来のスモーキーな独特の香りが人気で、生産量はウイスキー全体の約7割になると言われています。
スコッチ・ウイスキーは、大麦を原料とする「モルト・ウイスキー」と他の穀類原料とする「グレーン・ウイスキー」、両者を混ぜる「ブレンデッド・ウイスキー」などがあります。特徴的なのはその生産方法で、発芽させた大麦の成長を止めるために乾燥させる際、燃料として焚かれるピート(泥炭)の香りが移ることで、出来上がるウイスキーが特徴的なスモーキーな香りとなります。
蒸留はポットスチルと呼ばれる銅製の蒸留器で2回程度行われるのが主流で、原料の持つ香りや味わいを残したテイストに仕上がります。熟成にはミズナラ樽やシェリー樽など、様々な種類の樽が使用されており、熟成樽によるテイストの違いも楽しむことができます。
スコッチ・ウイスキーは伝統的に食前酒・食後酒として飲まれてきましたが、ハイボール人気などもあり、食中酒としても楽しまれています。人気の銘柄に「マッカラン」、「タリスカー」、「ジョニーウォーカー」などがあります。
アイリッシュ・ウイスキーは、イギリスのあるグレートブリテン島の西側にあるアイルランド島のアイルランドや北アイルランドで生産されているウイスキーです。アイルランド島は年間の気温差が小さく涼しい気候で、程よい湿度があるため、ウイスキーの製造に適しているとされています。
20世紀の初めごろ、アイリッシュ・ウイスキーは世界のウイスキー市場のシェアの6割を占めていましたが、1920年代のアメリカでの禁酒法の施行によって市場が縮小し、一時は消滅の危機にも瀕していました。現在、世界的なウイスキー人気の後押しもあり、再生の兆しを見せています。
アイリッシュ・ウイスキーもモルト・ウイスキー、グレーン・ウイスキー、ブレンデッド・ウイスキーがありますが、特徴的なのが発芽させていない大麦とオーツ麦を使った「ピュアポットスティルウイスキー」です。ピリッとした独特の味わいがあり、ピート(泥炭)を使わないのですっきりとした香りとなっています。
製法も、多くのウイスキーが2回蒸留されるところ、3回蒸留を行っているため、よりまろやかな味わいとなっています。熟成はオーク樽で5~8年程度行われることが多くなっています。人気の銘柄に「ブッシュミルズ」、「ジェムソン」、「レッドブレスト」などがありますよ。
アメリカン・ウイスキーはその名の通りアメリカで生産されるウイスキーで、他の地域で生産されるウイスキーよりも軽くて甘みのあるテイストが特徴的です。アメリカでは様々な原料からウイスキーを造っていますが、有名なのがトウモロコシを主原料とする「バーボン・ウイスキー」です。
バーボン・ウイスキーはアメリカのケンタッキー州で生産される「ケンタッキー・バーボン」とテネシー州で生産される「テネシーウイスキー」が有名で、名前の由来はケンタッキー州の「バーボン郡」に由来しています。
原料は51パーセント以上80パーセント未満のトウモロコシに他の穀物(大麦、小麦、ライ麦など)が使われています。また、他に特徴的なのが熟成に使用する樽で、基本的に内側を焼いて焦がした新品のホワイトオークの樽を使って熟成が行われています。
バニラやココナッツを思わせるような甘い香りと、トウモロコシ由来の柔らかい甘みが楽しむことができます。人気の銘柄に「ジャック・ダニエル」、「ジムビーム」、「メーカーズマーク」などがあります。
カナディアン・ウイスキーは、その名の通りカナダで生産されているウイスキーです。日本ではややなじみの薄いウイスキーと言えます。
原料はトウモロコシやライ麦で、純度の高いアルコールが精製できる連続式蒸留で造られることもあり、カナディアン・ウイスキーは他の地域で作られるウイスキーよりもすっきりとした香りと味わいで、悪い言い方をすれば特徴に乏しい、薄いテイストのウイスキーと言われてしまうことがあります。
飲み方はもっぱらソーダやジンジャーエールなどの炭酸飲料で割って飲まれることが多くなっています。人気の銘柄に「カナディアンクラブ」、「カナディアンミスト」などがあります。
ジャパニーズ・ウイスキーは、日本で生産されるウイスキーで、スコッチ・ウイスキーを手本として始まりましたが、味わいはスモーキーさを抑えたクセの少ないテイストのウイスキーが多くなっています。SUNTORYやニッカウヰスキー(現在はアサヒグループの子会社)などの大企業から小さな蒸留所まで様々なメーカーがウイスキーを生産しているので、様々なテイストのウイスキーが流通しています。
高級ウイスキーとして人気の「シングルモルト・ウイスキー」、一般的な「ブレンデッド・ウイスキー」、すっきりとした味わいの「グレーン・ウイスキー」があります。原料も製造方法もメーカーによって様々ですが、質の高いウイスキーが生産されており、世界中で人気を博しています。
人気の銘柄にSUNTORYの「山崎」や「角瓶」、ニッカウヰスキーの「竹鶴」や「ブラックニッカ」がなどあります。
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