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てんさい糖と含蜜糖の違い。原料・製法・見た目を比較

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てんさい糖と含蜜糖の違い。原料・製法・見た目を比較

てんさい糖と含蜜糖の違いをご存知でしょうか。本記事ではてんさい糖と含蜜糖の違いを解説します。

てんさい糖と含蜜糖のちがい

てんさい糖は、甜菜(てんさい)を原料に作られる砂糖です。上白糖とは異なり茶色い見た目をしていて、上白糖にはないまろやかな甘味とコクがあるのが特徴です。

含蜜糖(がんみつとう)とは、砂糖の製法上の分類の一つです。てんさい糖のように砂糖そのものの名前ではないので、比較対象にありません。

砂糖の製法上の分類には含蜜糖と分蜜糖の2つです。

含蜜糖は原料の絞り汁(糖汁)から、不要な成分や不純物を大まかに除去し、そのまま加熱・濃縮して固化させる製法です。一方、分蜜糖は原料を絞った搾り汁(糖汁)から不純物を取り除き、濃縮して得られる白下糖(結晶と糖蜜の混合物)を分離させて、結晶だけを取り出して乾燥させる製法です。

ちなみに、てんさい糖は、含蜜糖に該当する場合と分蜜糖を製造する際に得られる糖蜜のみを原料にしている場合があり、後者の場合は分蜜糖と含蜜糖のどちらにも該当しないということになります。一概にはてんさい糖=含蜜糖とはいえませんが、「てんさい含蜜糖」という製品名で販売されている含蜜糖のてんさい糖もあります。

てんさい糖とは

てんさい糖の原料

「てんさい糖」の名称で売られている砂糖は、甜菜(てんさい)の根を原料として製造した砂糖です。甜菜は、別名「サトウダイコン」や「ビート」ともいいます。

古代ギリシャやローマ時代から野菜として栽培されてきました。見た目は大根に似ていますが、植物学上ではホウレンソウと同じヒユ科に属します。甜菜には、紅白の2種類がありますが、砂糖の原料として使用されるのは白色のほうです。

甜菜は温かい地域では病虫害に侵されやすいため、一般的に寒地で栽培されます。元々、甜菜はヨーロッパ地域が主産地でした。温帯から亜寒帯を中心に栽培地域が広がり、日本では北海道で、年間約62.1万トン*もの甜菜が生産されています(サトウキビは約18.6万トン*)。
*2009年の国内原料における砂糖生産量

てんさい糖の製造方法

てんさい糖は、上述したように含蜜糖に該当する場合と、分蜜糖を製造する際に得られる糖蜜のみを原料にしているメーカーがあり、それぞれ製造方法が異なります。

含蜜糖の場合

含蜜糖として販売されているてんさい糖の場合、原料である甜菜の搾り汁から不純物を取り除き、搾り汁を煮詰めて作られます。糖蜜成分を含んだまま作られるため、ミネラルなどの栄養素が含まれているのが特徴です。含蜜糖のてんさい糖の場合は、オリゴ糖が配合されているのが特徴的です。

糖蜜から製造される場合

分蜜糖を製造する際に得られる糖蜜を煮詰めて作られるてんさい糖の一般的な作り方をご紹介します。

  1. 甜菜を洗い、スティック状にカットする。
  2. 切った甜菜を温水に浸して糖分を抽出し糖液を作る。
  3. 石灰乳を加えて炭酸ガスを反応させ、不純物を取り除く。
  4. 不純物を取り除いた糖液の水分を蒸発させ、煮詰めて濃縮する。
  5. 糖分以外の成分を取り除き、さらに煮詰めて砂糖を結晶化させる。
  6. 遠心分離機で結晶と糖蜜(液体)に分ける。
  7. 糖蜜(液体)を乾燥させ固め、ふるいにかけて粒を揃える。

ちなみに、6. で振り分けられた結晶を使うと、上白糖やグラニュー糖ができます。

てんさい糖の見た目・特徴

てんさい糖の見た目は、一般的に家庭で使われることが多い上白糖とは異なり、茶色い見た目をしています。

上白糖とは異なる独特なコクと風味まろやかな甘さが特徴です。

てんさい糖のカロリー・糖質・GI値

てんさい糖の栄養素は、製造方法によって若干異なります。

<含蜜糖に該当するてんさい糖の場合>

エネルギー・・・395kcal

たんぱく質・・・0g

脂質・・・0g

炭水化物・・・98.8g


無機質

  カルシウム・・・1.0mg

  カリウム・・・4.0mg

  マグネシウム・・・0.3mg

  鉄・・・0.18mg

食物繊維総量・・・0g


<糖蜜からつくられるてんさい糖の場合>

エネルギー・・・382kcal

たんぱく質・・・0.5g

脂質・・・0g

炭水化物・・・97.5g


無機質

  ナトリウム・・・32〜78mg

  カルシウム・・・0〜2mg

  カリウム・・・6〜55mg

  マグネシウム・・・0〜0.2mg

  リン・・・0〜6mg

  鉄・・・0〜0.2mg

  亜鉛・・・0〜0.1mg

  銅、マンガン・・・0mg

  セレン、ヨウ素、クロム、モリブデン・・・0μg

食物繊維総量・・・0g


※可食部100gあたり

特筆すべき点は、てんさい糖には天然のオリゴ糖が含まれていることです。上白糖など他の砂糖にはオリゴ糖は含まれていません。

オリゴ糖は、糖質の一種で、ビフィズス菌などの善玉菌の栄養源となるといわれています。したがって、腸内環境を整える効果が期待できます。

てんさい糖の用途

煮物などの料理

煮物

てんさい糖には様々な用途がありますが、特に煮物料理におすすめです。

てんさい糖はまろやかな甘味があり、ミネラル類が豊富に含まれているため上白糖をてんさい糖に変えるだけで料理にコクを与えてくれます。また、しっかりとした照りを与えツヤが出るため照り焼きを作るのにも適しています。

焼き菓子

クッキー

てんさい糖も上白糖と同じようにクッキーやマドレーヌなどの焼き菓子を作るときに使うこともできます。

まろやかな甘味のあるてんさい糖を使うことで、上品な甘みの焼き菓子に仕上げることができます。また、上白糖よりもメイラード反応が起こりやすいため、きれいな焼色をつけることができます。

ただし、てんさい糖は上白糖よりも粒子がやや粗いためしっかりと混ぜて溶かして使う必要があります。口当たりなめらかに仕上げたい場合は上白糖を使うのが良いですが、あえててんさい糖を使うことでザクっとした食感を出すのもありです。

パン作り

食パン

焼き菓子を作るときだけではなく、パン作りをするときにも使うことができます。

まろやかな甘味のてんさい糖を使うことで、風味豊かなパンに仕上げることができます。甘みが強調されすぎないので、ジャムを塗ったり、卵やハムなどの食材にもよく合います。

飲み物やヨーグルトにも

ヨーグルト

てんさい糖は飲み物に甘みを加えたいときにもおすすめです。例えばコーヒーに加えることで、コーヒーのコクと深みが増します。

また、ヨーグルトに甘みを加えたいときにもてんさい糖を使うこともできます。ヨーグルトにてんさい糖を加えることで、酸味がまろやかになり食べやすくなります。

含蜜糖とは

砂糖の製法上の分類の一つ

砂糖には、「含蜜糖」と「分蜜糖」の二つの製造方法があります。

含蜜糖は、原料の絞り汁(糖汁)から、不要な成分や不純物を大まかに除去し、そのまま加熱・濃縮して固化させた砂糖です。

一方の分蜜糖は、原料を絞った搾り汁(糖汁)から不純物を取り除き、濃縮して得られる白下糖(結晶と糖蜜の混合物)を分離させて、結晶だけを取り出して乾燥させた砂糖です。

含蜜糖の特徴

含蜜糖は、分蜜糖に分類される白砂糖などとは異なり、濃厚な甘みが特徴です。

また原料の絞り汁(糖汁)から、不要な成分や不純物を大まかに除去し、そのまま加熱・濃縮して固化しているため、ミネラル類などが豊富に含まれています。

含蜜糖に分類される砂糖

含蜜糖に分類される砂糖は下記の通りです。

  • 黒糖(黒砂糖)

  • 赤砂糖

  • きび砂糖

  • メープルシュガー(かえで糖)

  • ココナッツシュガー

  • パームシュガー

ちなみに、分蜜糖に分類される砂糖には、一般的に家庭で使われることが多い上白糖やグラニュー糖、三温糖などがあります。