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テキーラとプルケの違い。原料・製法・味・度数・飲み方を比較

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テキーラとプルケの違い。原料・製法・味・度数・飲み方を比較

この記事では、テキーラと同じメキシコ原産のお酒「プルケ」と、テキーラの違いを解説します。

テキーラとプルケは同じ原料から造られるお酒

メキシコ原産のテキーラは、日本でもバーなどでカクテルのベースやショットとして飲まれており馴染みのあるお酒ですが、プルケは聞き馴染みのない方も多いでしょう。
 
テキーラとプルケのどちらもアガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られるお酒で、テキーラはウイスキーやウォッカと同じ蒸留酒で、プルケは日本酒やワインと同じ醸造酒です。

醸造酒

醸造酒とは、穀物や果実などの原料を酵母によってアルコール発酵させて造られるお酒で、世界最古のお酒と言われています。
ビール、ワイン、日本酒、紹興酒などが醸造酒に分類されます。
 
醸造酒のアルコール度数は、原料の糖分がアルコールに変わってしまうと発酵が止まるため、基本的にアルコール度数は20度以下となっています。

蒸留酒

蒸留酒とは、醸造酒を加熱して造られるお酒で、蒸留によって純度の高いエタノールを生成する製造方法のため、アルコール度数が高いのが特徴です。
 
蒸留酒には、ブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラなどがあります。

スピリッツと他の蒸留酒の違い

蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
 
テキーラ以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ラム酒、テキーラも蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
 
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
 
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。

テキーラとプルケの歴史

アガベを原料としたお酒は、アガベの一種であるアガベ・アトロビレンスの搾り汁を発酵させた「プルケ(Pulque)」が西暦200年頃から造られていたと言われています。プルケは先住民時代には儀式のための特別な酒として扱われていました。
 
プルケはアステカ文明の衰退後に一般に広まり、メキシコ国内で人気を博しました。一時は他のお酒に押されて衰退していた時期もありましたが、現代ではジュース割りが若者に人気で、メキシコではポピュラーなお酒となっています。
 
テキーラの起源は、18世紀半ばのスペイン統治時代のメキシコまでさかのぼります。この頃にメキシコ西部のテキーラ村の近くで起きた山火事で、焦げたアガベから甘いチョコレート色の汁が出ていることに村人が偶然気付き、その後スペイン人がこの汁を発酵させて蒸留してみると美味しいスピリッツが出来上がったため、テキーラ村に蒸留所が建てられたのがテキーラの起源かつ語源とされています。
 
テキーラは、テキーラベースのカクテル「マルガリータ」の1949年の全米カクテルコンテストでの入選、1957年のラテン・リズムの楽曲「テキーラ」の大ヒットや、1968年のメキシコオリンピックなどで世界中で知られるようになり、現在ではウォッカ、ジン、ラム酒と並び、4大スピリッツとして世界で愛されています。

テキーラとプルケの違い①原料・産地

テキーラ

テキーラの原料は認定機関「テキーラ規制委員会」の規則によって厳格に決められています。テキーラの主原料に使用できるのは、数あるアガベの品種のうち、テキーラ村を中心とする特定地域で栽培された「アガベ・アスール・テキラーナ(英名:ブルーアガベ)」という品種のみとされています。
 
100%ブルーアガベから造られるテキーラを「プレミアムテキーラ」、原料の51%以上がブルーアガベで、蜂蜜や砂糖(サトウキビ)などの副原料も使われているテキーラを「ミクストテキーラ(ただのテキーラとも呼ばれる)」と区別しています。市場に流通しているテキーラのほとんどは後者の「ミクストテキーラ」です。
 
なお、アガベは収穫までに最低でも6年かかることから、テキーラは造るのに手間がかかる貴重なお酒としても知られています。

プルケ

プルケの原料もテキーラと同じアガベですが、プルケの場合はアガベの品種の指定はなく、200種類近くある品種のどれも原料となります。ただし、よく使われるのは「サルミアナ」と「アントロビレンス」という種類のアガベです。
 
上質のプルケは「プルケ・フィノ」と呼ばれ、それ以外の品種で作られたプルケはプルケ・コリエンテ(普通のプルケ)、トラチケなどと呼ばれています。

テキーラとプルケの違い②製法

テキーラ

テキーラは、原料のブルーアガベの大きな球根のような茎の部分(ピニャ)から糖分を抽出したものを発酵・蒸留し、熟成させることで造られています。蒸留の回数は最低2回と定められています。
 
テキーラは熟成期間や、熟成に使う樽の種類によって5つの種類(ブランコ(Blanco)、ホーベン(Joven)、レポサド(Reposado)、アネホ(Anejo)、エクストラ・アネホ(Extra Anejo))に分けられています。熟成期間が短いものほどすっきりとキレのある味わいと苦みがあり、長いものほどトロっとした甘みや旨味が感じられ、アルコールの苦みも薄くなります。

プルケ

プルケはアガベの樹液を抽出し、酵母を加えて発酵させることで造られています。抽出はテキーラのように加熱は行わず、茎の部分(ピニャ)から直接樹液を取り出し、発酵させています。

プルケは発酵が進むのが早く、発酵期間は1日半~2週間程度です。現地では汲んで一日置いたアガベの樹液をそのまま飲む習慣もあるようです。

テキーラとプルケの違い③味・香り・度数

テキーラ

テキーラは、アガベのフルーティーでフレッシュな香りとともに、甘い香りが混ざり合った濃厚なテイストが特徴ですが、熟成度の具合いによって味や香りが変化します。
 
熟成期間が短いものほどすっきりとキレのある味わいと苦みがあり、長いものほどトロっとした甘みや旨味が感じられ、アルコールの苦みも薄くなります。
 
アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。

プルケ

プルケはアガベの樹液そのままの優しい甘みが特徴的で、発酵させているためテイストは乳酸菌飲料に近く、日本人になじみのあるお酒でいえば韓国のマッコリに近い風味と言われています。
 
なお、プルケは栄養価が高く、ミネラル、アミノ酸、酵素、ビタミンが豊富なため、古くは薬用酒としても飲まれていました。現在でも妊婦にノンアルコールのプルケを飲ませる習慣があるようですが、基本的な度数は4~8%程度です。

テキーラプルケの違い④飲み方

テキーラ

日本ではバーなどでショットとして嗜まれることが多いほか、カクテルの材料としてよく知られていますが、現地ではストレートで飲まれることが多く、ライムを口へ絞りながら楽しみ、最後にグラスにまぶした食塩を舐めるのが正統な飲み方とされています。
 
カクテルでは「マルガリータ」「テキーラ・サンライズ」などが有名で、原料のアガベの甘みはフルーツ系との相性が良いことでも知られています。

プルケ

プルケはそのまま飲むのはもちろんですが、現地ではフルーツジュースなどと割って飲まれることが多いようです。メキシコの首都メキシコシティなどにあるプルケを飲むことのできるバー「プルケリア」では、グァバジュースやパイナップルジュース、コーヒーなどで割った「プルケ・クラド」が味わえます。
 
プルケは発酵が進むのが早く、日持ちしないため、メキシコ以外ではほとんど飲むことができないお酒としても知られていますが、メキシコの一部のメーカーは低温殺菌を施して缶詰めしたものを販売しており、やや高価ですが日本でも輸入品を購入することができますよ。