この記事では、ショットで飲まれる強いお酒というイメージの強いテキーラの味について詳しく解説します。
テキーラは、アガベのフルーティーでフレッシュな香りとともに、甘い香りが混ざり合った濃厚なテイストが特徴ですが、熟成度によって味や香りが変化します。
テキーラは熟成期間や、熟成に使う樽の種類等によって5つの種類(ブランコ(Blanco)、ホーベン(Joven)、レポサド(Reposado)、アネホ(Anejo)、エクストラ・アネホ(Extra Anejo))に分けられています。熟成期間が短いものほどすっきりとキレのある味わいと苦みがあり、長いものほどトロっとした甘みや旨味が感じられ、アルコールの苦みも薄くなります。
テキーラは、メキシコ発祥の蒸留酒(スピリッツ)の一種です。蒸留酒はアルコール度数が高く、火をつければ燃えることから、「火酒(かしゅ)」と呼ばれることもあります。
テキーラは、サボテンから造られるお酒とよく勘違いされていますが、アガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られています。
100%ブルーアガベから造られるテキーラを「プレミアムテキーラ」、原料の51%以上がブルーアガベで、蜂蜜や砂糖などの副原料も使われているテキーラを「ミクストテキーラ(ただのテキーラとも呼ばれる)」と区別しています。市場に流通しているテキーラのほとんどは後者の「ミクストテキーラ」です。
テキーラのアルコール度数は、「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。ショットで飲むことが多く、強いお酒というイメージのあるテキーラですが、96度の「スピリタス」という銘柄があるウォッカや、75.5度の「151プルーフ」という種類があるラム酒と比べるとそこまで強いお酒ではないことがわかります。
蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
テキーラ以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジン、ラム酒も蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです。
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。
香りや味わいが楽しめるテキーラの有名な銘柄をいくつか紹介します。
「サウザ(Sauza)」は、1873年に創業された銘柄です。創業者のドン・セノビオ・サウザは、初めてラベルに「テキーラ」と記載した人物であり、「テキーラの父」とも呼ばれています。
2代目の社長は樽売りが一般的だった時代に瓶詰による販売を拡大し、3代目は販売拠点を拡大させてテキーラを世界的に広めた人物であり、メキシコ政府に働きかけることによってテキーラの原産地呼称制を成立させるた立役者でもあるなど、テキーラの知名度上昇に大きく貢献してきたメーカーでもあります。
サウザは、「Gentle Extracion」と呼ばれる、ピニャを丸ごと蒸し焼きにせず、とれたてのピニャをシュレッダーで細かくして一度ジュース状にしてから圧搾を行う丁寧な手法によって、アガベの繊維に由来する不要な香味成分(エグ味)を抽出せず、アガベ本来の旨味を味わえるテキーラを作っています。
サウザのテキーラは、ミクストテキーラにはスパイシーな「サウザ シルバー(ブランコ・40度)」と、コクのある甘みが味わえる「サウザ ゴールド(レポサド・40度)」があり、プレミアムテキーラには、スパイシーでまろやかな「サウザ ブルー(ブランコ・40度)」と、アガベの甘みやコクをじっくりと味わうことができる、「サウザ レポサド(レポサド・40度)」などがあります。
1758年にホセ・アントニオ・クエルボによって創業したテキーラメーカーが「ホセ・クエルボ(Jose Cuervo)」です。世界最古の蒸留所を持つ銘柄として、世界中で知名度・人気を得ています。世界で年間700万ケース以上を販売しており、世界一のシェアを持つとも言われています。
スペイン語でクエルボとは「カラス」の意味します。当時スペイン語が読めない人たちでもクエルボのテキーラだとわかるように、ラベルにはカラスが描かれています。原産地であるテキーラ村ではカラスのオブジェが飾られており、現地でも人気の銘柄です。
ホセ・クエルボのテキーラは、原料のピニャを伝統の石造りオーブン「マンポステラ」で約40時間をかけ蒸し焼きにし、香ばしくコクと深みのある甘さのあるものにしています。また、熟成では様々な材質の樽を使い分け、個性が異なる原酒をつくり分けしています。
ラインナップは、ミクストテキーラにはキレのある滑らかな口当たりの「クエルボ・エスペシャル・シルバー(ブランコ・40度)」と、まろやかなコクのある口当たりの「クエルボ・エスペシャル(レポサド・40度)」があり、プレミアムテキーラでは「1800」シリーズがとても有名で、フレッシュで滑らかな「1800 シルバー(ブランコ・40度)」、フルーティでまろやかな「1800 レポサド(レポサド・40度)」、深いコクが味わえる「1800 アネホ(アネホ・40度)」などがあります。
「オレンダイン(ORENDAIN)」は1926年創業の老舗メーカーで、メキシコ国内でのシェア1位ともいわれ、サウザ、ホセ・クエルボと並んで御三家のうちの1つとも称されています。
オレンダインは、5000ヘクタール(東京ドーム1000個分)の自社畑でブルーアガベを生産しており、蒸留所では、伝統的な製法にてスパイシーで香り高いテキーラが造られています。
ラインナップは、40度未満で飲みやすいミクストテキーラの「オリータス」シリーズと、プレミアムテキーラの「グラン・オレンダイン」シリーズが有名です。オリータスシリーズには定番の「ブランコ・35度」と「レポサド・35度」に加え、レポサド、アネホ、エクストラアネホをミックスしたものを濾過した、熟成テキーラの香りや特徴を保ちながらも無色透明な見た目の「クリスタリーノ(レポサド・38度)」があります。
アメリカでの売り上げ1位となっている、ウルトラプレミアムテキーラの銘柄が「パトロン(PATRON)」です。糖度の高い高品質のブルーアガベを使用することによって、「極上の蜂蜜のような甘く香り高い、なめらかな味わい」というキャッチコピーの通り、上質な甘さを楽しめ、ハリウッドのセレブからも非常に大きな支持を得ています。
パトロンは、糖度がピークになる時期に収獲されたアガベの中から、最高品質のものを厳選して使用しています。製造でも、煉瓦釜での蒸し焼きを行い、蒸留で得られる味わいが安定している部分だけを使用するなど、様々なこだわりによって世界トップクラスのプレミアムテキーラが作られています。
ラインナップは、フレッシュな「パトロン シルバー(ブランコ・40度)」、甘くまろやかな「パトロン レポサド(レポサド・40度)」、コク深い「パトロン アネホ(アネホ・40度)」などがあります。
「ドンフリオ(Don Julio)」は、プレミアムテキーラの代名詞とも言えるブランドで、日本でも高い人気を誇る銘柄です。テキーラ界の伝説の男「フリオ・ゴンザレス」が造り上げたプレミアム感あふれるテキーラは、ハリウッドセレブからの支持も根強いとされています。
ドンフリオは、ハリスコ州・ロスアルトス地方の人里離れた高原にある「ドンフリオ蒸留所」で製造されています。アガベの栽培から樽での熟成まで、全て丁寧な作業が徹底されており、これによって雑味やえぐみはもちろん、テキーラの典型的な苦味も取り除かれているので、高品質で滑らかな仕上がりになっています。
ドン・フリオのテキーラは、甘みのきいたスムースで飲みやすい味わいで、度数も38度の製品が多く、テキーラ初心者向けとも言えます。ラインナップは、「ブランコ・38度」、「レポサド・38度」、「アネホ・38度」、縦長の瓶がおしゃれな「1942(アネホ・38度)」などがあります。
メキシコ最古の古代文明に因んで名づけられたのが「オルメカ(OLMECA)」です。オルメカ文明の象徴でもある、ラベルの巨大な石像の顔模様が印象的な銘柄で、メキシコ国内はもちろん、欧米でも人気が高い銘柄です。
オルメカは、厳選した高品質なアガベを原料に質の高いテキーラを生産しています。シルバー(ブランコ)とレポサドがメインで、ラインナップ展開はやや乏しいですが、アガベの香りや甘みをしっかり感じられる、スタンダードな味わいが魅力です。シルバーはカクテルベースとして、レポサドはストレートやロックで嗜むのがおすすめです。
ラインナップは、フレッシュなスパイシーさが楽しめる「シルバー・40度」と、オーク樽で6ヶ月間熟成した、まろやかで深みのある「レポサド・40度」に加え、近年人気が高いプレミアムテキーラのアルトスシリーズ(シルバー・40度、レポサド・40度)などを生産しています。
毒蜘蛛のタランチュラをモチーフとしたロゴが特徴的な銘柄「タランチュラ(TARANTULA)」は、ただでさえテキーラは度数が強いイメージがあるのに、タランチュラのテキーラと言うと更に強そうなイメージが湧くかもしれませんが、シトラスやストロベリーなどのフレーバードテキーラが女性をはじめ幅広い人気を得ている銘柄です。
ただし、タランチュラの製品のうち、人気のフレーバードテキーラはベースとなるお酒がテキーラではなく、テキーラと同じ原料から作られるメスカルです。そして、様々なフレーバー等が加えられて製造されているため、厳密にはテキーラではなくリキュールに分類されるお酒ですが、テキーラとして扱われることが多いので、今回はテキーラの一種として紹介します。
タランチュラは、テキーラとは思えないほどの飲みやすさと、水色やピンクのカラフルな見た目から女性からの人気も高く、テキーラ初心者にもピッタリの銘柄です。高品質なアガベを原料に使用しているので、アガベ本来の柔らかな甘さも楽しめますよ。
ラインナップは、シトラス(ライム)の爽やかさが楽しめる水色が特徴的な「アズール(35度)」や、ストロベリーのほのかに甘酸っぱい味わいが楽しめるビビッドなピンク色の「ストロベリー(35度)」が有名ですが、100%アガベを原料とするプレミアムテキーラの「プラタ(ブランコ・50度)」なども扱っています。また、伝統的な銅製ポットスチルによる蒸留とオーク樽による熟成を行った「レポサド(レポサド・40度)」も扱っています。
テキーラをベースに作る定番カクテルの味を紹介します。
テキーラそのものの味や香りをすっきりと手軽に味わいたいという方におすすめです。ただし、割材に味や風味がない分、アルコール感が強いので、アルコールの味が苦手という方はテキーラの分量を減らしたり、柑橘類を絞ったりしてみると飲みやすくなります。
★割合は、テキーラ:水または炭酸水=1:3
トニックウォーターは炭酸水に柑橘類の皮から抽出されたエキスや糖分を加えたもので、テキーラと割ることで「テキーラ・トニック」となります。炭酸水で割るよりも味や香りがあるので、アルコールが苦手だけどさわやかにお酒を楽しみたい方におすすめです。お好みでレモンやライムなどを絞ると更にさわやかさが増しますよ。
★割合は、テキーラ:トニックウォーター=1:3
テキーラ40ml+トニックウォーター30ml+グレープフルーツジュース20ml+ライムまたはレモンの果汁で作るカクテル「パロマ」は、本場メキシコでも人気のカクテルです。
テキーラにオレンジジュースを混ぜれば「メキシカン・スクリュー」というカクテルになります。フルーティーな香りと味わいで飲みやすいですが、テキーラベースでアルコール度数の高いカクテルなので、飲みすぎに注意です。
★割合は、テキーラ:オレンジジュース=1:2または3
少量のグレナデン・シロップ10ml(ザクロやベリー系の赤いシロップ)を混ぜれば「テキーラ・サンライズ」というカクテルにもなります。名前の通りメキシコの夜明け(サンライズ)をイメージさせる真っ赤な色合いがきれいですよ。
「メキシコーク」は、テキーラをコーラで割り、レモンまたはライム果汁を加えたカクテルです。コーラの風味が強く、とても飲みやすいのでゴクゴクと飲めてしまいますが、アルコール度数は高めで、コーラは糖分量が多いので、飲みすぎに注意です。
★割合は、テキーラ:コーラ=1:2または3+レモンまたはライムの果汁10ml
レモン果汁を加えたものは「チャロ・ネロ」と呼ばれています。
テキーラにジンジャーエールと少量のライムジュースを混ぜれば「テキーラ・バック」というカクテルにもなり、ジンジャーエールの爽やかな風味が楽しめます。ジンジャーエールは甘口と辛口がありますが、どちらで割っても違った美味しさがあります。
★割合は、テキーラ:ジンジャーエール=1:2または3、お好みでレモンまたはライムを絞る
テキーラをトマトジュースと割ることで、トマトジュースのコク深い風味が楽しめる、赤い見た目が鮮やかな「ストロー・ハット」というカクテルになります。トマトジュースに含まれるリコピンという成分には酔いを穏やかに進める効果があるなど、やや健康志向なカクテルです。お好みでレモンジュース、タバスコ、ウスターソース、塩、コショウを加える方もいるようです。
★割合は、テキーラ:トマトジュース=1:3
レシピは、テキーラ30ml+ライム果汁15ml+ホワイトキュラソー10mlをシェイカーで混ぜ、フチに塩をまぶしたカクテルグラスに注いで完成です。
「マタドール」は、パイナップルのトロピカルなフルーティーさで口当たりがよく、飲みやすいことから人気のあるカクテルです。
レシピは、テキーラ30ml+パイナップルジュース45ml+ライム果汁15ml+ホワイトキュラソー10mlをシェイカーで混ぜ、グラスに注いで完成です。
ウォッカは大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモといった穀物などの原料を加工して造られる、ロシア発祥のお酒です。製造工程で白樺の木炭などのフィルターによる濾過によって雑味が取り除かれるため、無味無臭ですっきりとした味わい、まろやかな爽快感が特徴的で、世界4大スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)の中では最も癖のない風味と言われています。
ウォッカはアルコール度数が40度と高く、氷点下でも凍らないため、超低温地域で重宝されてきた歴史があります。
ジンは西ヨーロッパで造られた蒸留酒で、元々は薬用酒として造られたお酒です。カクテルベースとしてよく使われる蒸留酒で、アルコール度数は40~50度程度の製品が多くなっています。日本でも近年人気が高まっており、CMなどで見かける機会が増えていますよね。
基本的な原料・製法はウォッカとほとんど同じですが、ジンは製造の過程において濾過が行われないことが多く、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)という低木の果実を乾燥させたスパイスや、ハーブで香りづけするため、スパイシーな独特の風味があります。
ラム酒はサトウキビから造られる、カリブ地域原産の蒸留酒です。甘い香りと味わいが特徴的で、アルコール度数は40~50度程度の製品が多くなっています。
飲み方・使い方は多岐にわたり、ストレートやロックで飲んだり、カクテルのベースとして用いたりする以外にも、ケーキ、タルトなど焼き菓子、紅茶の風味づけにも使用されています。レーズンをラムに漬け込んだ「ラムレーズン」がよく知られていますよね。
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