この記事では、お菓子作りなどにも使われる、ラム酒の香りについて解説します。
ラム酒は、甘い香りや味わいが特徴ですが、製法(主に熟成期間)で香りや味わいが大きく変化します。
最新技術で蒸留され、熟成期間が短く、濾過されているものは他のスピリッツ(ウォッカなど)に近いすっきりとしたテイストです。一方、伝統的な方法で蒸留され、オークの樽でじっくりと熟成されたものは色も褐色で、コク深い香りを持ち、ウイスキーやブランデーに近いまろやかなテイストになります。
ラム酒はサトウキビから造られる、カリブ地域原産の蒸留酒(スピリッツ)の一種です。蒸留酒はアルコール度数が高く、火をつければ燃えることから、「火酒(かしゅ)」と呼ばれることもあります。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズで海賊たちがラム酒を飲んでいたことで人気が急上昇しました。
飲み方・使い方は多岐にわたり、ストレートやロックで飲んだり、カクテルのベースとして用いたりする以外にも、ケーキ、タルトなど焼き菓子、紅茶の風味づけにも使用されています。レーズンをラムに漬け込んだ「ラムレーズン」がよく知られていますよね。
蒸留酒なので高めのアルコール度数となっており、基本的に40~50度のアルコール度数で売られている製品が多くなっていますが、飲む人の好みに合わせて37度前後、75.5度のラム酒も販売されています。
蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
ラム酒以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジン、テキーラも蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです。
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。
ラム酒の定番カクテルをいくつか紹介します。
ラム酒の甘い香りや味わいをすっきりと手軽に飲みたい方におすすめです。ただし、割材に味や風味がない分、アルコール感が強いので、アルコールの味が苦手という方はラム酒の分量を減らしたり、柑橘類を絞ったりしてみると飲みやすくなります。
★割合は、ラム酒:水または炭酸水=1:3
デザートにも使われるラム酒は牛乳やココアとの相性も良く、冬にホットで飲めば体が温まりますよ。風味豊かなダーク・ラムで割るのがおすすめで、ホットならラム酒の甘い香りが引き立ち、香りも楽しむことができます。お好みでクリームやバターを加えればデザートのような味わいになります。割合はお好みでどうぞ。
トニックウォーターは炭酸水に柑橘類の皮から抽出されたエキスや糖分を加えたもので、ラム酒と割ることで「ラム・トニック」となります。ラム酒の芳醇な香りに爽やかさが加わり、コクのある甘みがも楽しめますよ。炭酸水で割るよりも味や香りがあるので、アルコールが苦手だけどさわやかにお酒を楽しみたい方におすすめです。お好みでレモンやライムなどを絞ると更にさわやかさが増しますよ。
★割合は、ラム酒:トニックウォーター=1:3
ラムベースの伝統的な人気カクテル「ラム・コーク(キューバ・リブレ)」は、ラム酒をコーラで割り、ライム果汁を加えたカクテルです。ラム酒とコーラの相性はばっちりで、コーラがコク深い香りと味わいになります。とても飲みやすくゴクゴクと飲めてしまいますが、ラムベースなので度数が高く、コーラは糖分量が多いので、飲みすぎに注意です。
★割合は、ラム酒:コーラ=1:2または3+ライム果汁10ml
ラム酒にジンジャーエールと少量のライムジュースを混ぜれば「ジンジャーラム」というカクテルにもなります。ジンジャーエールは甘口と辛口がありますが、どちらで割っても違った美味しさがあります。コクのあるスパイシーな香りと、さっぱり甘い味わいでとても飲みやすいですよ。
★割合は、ラム酒:ジンジャーエール=1:2または3、お好みでレモンまたはライムを絞る
モヒートは、炭酸水の有無で2種類のレシピがありますが、現在では炭酸水を使うものが一般的と言えるでしょう。ミントを軽くつぶし、ラム酒45ml、ライム1/2の果汁、ガムシロップ小さじ1を加え、グラスを氷と炭酸水で満たして軽くかき混ぜれば完成です。すっきりとした香りと味わいが病みつきになります。お好みでフルーツを入れても美味しいですよ。
カクテルでは定番のライムはラム酒との相性が抜群で、ラム酒に少量のライムジュースと砂糖を加えれば人気のショートカクテル「ダイキリ」になります。コク深いラム酒の香りと味わいをライムの爽快感が引き立てています。
★割合は、ラム酒:ライムジュース=3:1、砂糖小さじ1
トロピカルな香りと味わいが楽しめる人気のカクテル「ピニャ・コラーダ」は、パイナップルジュースのフルーティーさとココナッツミルクのミルキーなマイルドさで口当たりがよく、人気のカクテルです。ホワイト・ラム30ml、パイナップルジュース80ml、ココナッツミルク45mlを氷の入れたシェイカーでシェイクすれば完成です。グラスで混ぜるだけでも十分美味しいですよ。
コーヒーはラム酒との相性が良く、ラム酒をコーヒーで割れば人気のショートカクテル「ブラックローズ」になり、ビターな香りと味わいが楽しめます。ホットでもおいしいですよ。
★割合は、ラム酒:コーヒー=1:1、ガムシロップ適量
香りが楽しめるラム酒の有名な銘柄をいくつか紹介します。
「バカルディ(BACARDI)」は、キューバ発の世界最大のラム酒ブランドです。最も有名なラム酒ブランドでもあり、設立は1862年と、歴史あるブランドでもあります。
バカルディは、ラム酒の製造工程において世界で初めて木炭による濾過を行ったメーカーです。ラム酒の中でもすっきりと洗練された香りと味わいがカクテルのベースとして人気を博し、現在でも世界で最もカクテルに使用されています。カクテルベースとなるラム酒のパイオニア的存在であり、キューバ生まれのカクテル「モヒート」、「キューバ・リブレ」の誕生に多大なる貢献をしたラム酒ブランドです。
「アプルトン(APPLETON)」は、1749年に創業した、ジャマイカ最古ともいわれている銘柄です。サトウキビの栽培からビン詰めまで、すべて自社で行っています。
アプルトンのラム酒は、原料に自然培養酵母と天然の湧き水を使用しており、自然の恵みを生かしたお酒造りがされています。銅製のポットによる単式蒸留の後、オーク樽の中で最低でも12年以上熟成させたものがブレンドして使用されており、濃厚な深い香りと味わいが堪能できます。飲み方はロックやストレートがおすすめですが、カクテルベースとしても活用できます。
「ディプロマティコ(DIPLOMATICO)」は、1959年にベネズエラで生産が始まったラム酒の銘柄です。ベネズエラのラム酒を名乗るには、「アルコール度数40度以上であること」、「2年以上ホワイトオークの酒樽で熟成されていること」、「原料に他国産の糖蜜やアルコールを使用していないこと」という3つの高水準な要件を満たす必要があり、これらの条件を満たすディプロマティコのラム酒はその高品質さで世界中から高い評価を得ています。
ディプロマティコのラム酒は、原料にモラセスとシュガーケインハニー(搾り汁)のブレンドを使用しているほか、3種類の蒸留器による「ライト」、「セミヘビー」、「ヘビー」の3タイプをブレンドする独特の製法により、味わいの変化に富んだラム酒を作り出しています。また、樽での熟成も長期間行われるため、カカオやチョコレートを連想させる甘い香りが特徴的な、まろやかで深い味わいが楽しめます。そのため、ストレートで飲んでも、またカクテルに使用しても美味しく楽しめますよ。
「マウントゲイ(MOUNT GAY)」は、元イギリス連邦加盟国、バルバドス産の銘柄です。ラム酒では世界最古の1703年から製造されており、ギルボア山にあるマウントゲイ蒸留所は世界最古の蒸留所としても知られています。
マウントゲイのラム酒はバルバドス島の良質なサトウキビから抽出される糖蜜と、珊瑚の地層によって自然濾過された地下水を原料に作られています。連続式蒸留と単式蒸留のブレンドによる、バランスの良い香りと味わいが特徴的です。飲み方はストレートからカクテルベースまで幅広い楽しみ方ができます。
「マイヤーズ(MYERS'S)」は、1879年にジャマイカで生産が始まった銘柄です。ダーク・ラムが有名で、「ダーク・ラムのプレミアム品」「世界標準」とも称され、高いクオリティが良く知られています。
マイヤーズのダーク・ラムは濃厚な風味と豊かな香りが特徴で、バーテンダーやラム酒の愛好家だけではなく、製菓用のラム酒としても世界中の洋菓子店からも愛されています。ストレートやロックはもちろん、ラムコークなどのカクテルベースにしても際立ったクオリティが実感できるでしょう。
「ロン・サカパ(RON ZACAPA)」は、1976年にグアテマラ東部のサカパ市で、創立100周年の記念として製造が始まった高級ラム酒です。国際ラムフェスティバルで初めて殿堂入りしたラム酒で、世界中の愛好家から人気です。
ロン・サカパは、「バージン・シュガーケイン・ハニー」というサトウキビの一番搾りを原料に使用しています。また、海抜2,300メートルにある高地で熟成が行われており、独特の複雑な味わいと、深い色、豊かな香りが生み出されています。濃厚な味わいはぜひストレートで味わってみてください。
「ロンリコ(RONRIKO)」は、1860年創業のプエルトリコの老舗メーカーが手がける銘柄です。「ロンリコ」とはスペイン語で「味わい豊かなラム」を意味します。20世紀前半にアメリカで禁酒法が適用されていた頃、アメリカ領では唯一製造を許可されていたことでも有名です。
ロンリコはドライですっきりとした香りと味わいが特徴で、コーラやフルーツジュースで割って楽しむのがおすすめです。ロンリコは日本国内ではSUNTORYが販売を手掛けており、リーズナブルな値段で手に入りやすいほか、アルコール度数75.5度のモデルが人気で、バーなどでショットとして嗜まれています。
「パンペロ(Pampero)」は、ベネズエラを代表するラム酒のブランドのひとつです。現在、世界的に有名な酒類メーカーであり、ウォッカの「スミノフ」などの製造権も持つイギリスの「ディアジオ社」の傘下で運営しています。
パンペロという名前は「アルゼンチンの大草原パンパを吹き抜ける風」という意味で、口いっぱいに広がる甘さとスパイシーな香りが魅力のラム酒です。また、ラム酒の中では珍しい辛口なテイストなのも特徴的です。独特な味わいはストレートやロックで味わうのがおすすめです。
「レモンハート(Lemon Hart)」は、1804年にイギリスのコーンウェル地方で製造が始まった世界的に人気のラム酒です。英国海軍に支給されていたラム酒としても有名です。
レモンハートのラインナップの中で最も人気の「デメララ・ラム」は、イギリス連邦加盟国のガイアナにあるデメララ川付近で作られたダーク・ラムで、コクのある香りとほのかな甘みで愛飲者の多い銘柄です。飲み方は、ストレートはもちろん、カクテルベースとしても活躍できます。
海賊のラベルが印象的な「キャプテン・モルガン(Captain Morgan)」は、17世紀にカリブ海で活躍した伝説の海賊「ヘンリー・モーガン」に因んで生まれた、1944年ジャマイカ発のブランドです。現在はパンペロ同様、イギリスの「ディアジオ社」が製造・販売を行っています。
キャプテン・モルガンはスパイストラムのメーカーとして有名で、フルーツやスパイス、バニラなどの芳醇な香りのラム酒が世界中で人気です。まろやかな口当たりでとても飲みやすいので、ラム酒初心者の方にお勧めです。飲み方はストレートやロックはもちろん、バニラの甘いテイストがコーラにマッチします。バニラアイスにかけても美味しいですよ。
ウォッカは大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモといった穀物などの原料を加工して造られる、ロシア発祥のお酒です。製造工程で白樺の木炭などのフィルターによる濾過によって雑味が取り除かれるため、無味無臭ですっきりとした味わい、まろやかな爽快感が特徴的で、世界4大スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)の中では最も癖のない風味と言われています。
ウォッカはアルコール度数が40度と高く、氷点下でも凍らないため、超低温地域で重宝されてきた歴史があります。
ジンは西ヨーロッパで造られた蒸留酒で、元々は薬用酒として造られたお酒です。カクテルベースとしてよく使われる蒸留酒で、アルコール度数は40~50度程度の製品が多くなっています。日本でも近年人気が高まっており、CMなどで見かける機会が増えていますよね。
基本的な原料・製法はウォッカとほとんど同じですが、ジンは製造の過程において濾過が行われないことが多く、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)という低木の果実を乾燥させたスパイスや、ハーブで香りづけするため、スパイシーな独特の風味があります。
テキーラはメキシコ発祥の蒸留酒で、サボテンから造られるお酒とよく勘違いされていますが、アガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られています。アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。香りは製造方法や熟成期間によって様々で、すっきりとしたものから、熟成に使われるオークの樽によるバニラやドライフルーツのような香りのするものもあります。
日本ではバーなどでショットとして嗜まれることが多いほか、カクテルの材料としてよく知られていますが、現地ではストレートで飲まれることが多く、ライムを口へ絞りながら楽しみ、最後にグラスにまぶした食塩を舐めるのが正統な飲み方とされています。
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