この記事では、ドライなテイストで人気のジンの「味」に着目して、銘柄ごとの違いなどについて詳しく解説します。
ジンは、ジュニパーベリーを始めとしたスパイスやハーブ、フルーツなどの「ボタニカル」による香りづけが特徴的で、スパイシーで爽やかな独特の香りを持つ、切れ味のあるドライな味わいが特徴的です。製造しているメーカーで香り付けに使用している原料が異なるので、製品ごとに違った香りや味わいが楽しめます。
ジンは、「飲む香水」とも呼ばれる、ヨーロッパ生まれの蒸留酒(スピリッツ)の一種です。蒸留酒はアルコール度数が高く、火をつければ燃えることから、「火酒(かしゅ)」と呼ばれることもあります。
また、ジンには様々な種類がありますが、現在「ジン」と言えば、ほとんどの場合イギリス生まれの「ドライジン」を指します。定番の「ドライジン」以外には、まろやかな甘みを特徴としたオランダ産の「ジュネヴァ」、バランスの良い風味のドイツ産の「シュタインヘーガー」、甘めのドライジンともいえるイギリス産の「オールドトムジン」があります。また、生産されている地方によって風味の異なる「クラフトジン」が近年人気を博しています。
製品は40~50度のアルコール度数で売られている製品が多くなっていますが、飲む人の好みに合わせて37度前後、50度以上のジンも販売されています。ちなみに、EU(欧州連合)ではジンのアルコール度数は「37.5度以上」と定義づけられています。
蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
ジン以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ジン、ラム、テキーラも蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです。
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。
香りや味わいが楽しめるジンの有名な銘柄をいくつか紹介します。銘柄ごとに使用しているハーブやスパイスが異なるので、それぞれ違った香りや味わいになっていますよ。
「ビーフィーター(Beefeater)」は、ロンドンで製造されるジンの銘柄のひとつで、1820年代に創業した歴史ある銘柄です。「ビーフィーター」とは、ロンドンの象徴でもあるロンドン塔の近衛兵が、国王主催のパーティーで残った牛肉の持ち帰りを許可されていたことから“Beef eater”と呼ばれていたことに由来しています。
ビーフィーターのジンは、ジュニパーベリーをはじめとする9種類のスパイスやハーブ、フルーツを24時間漬け込んでから蒸留されています。ビーフィーターの味は、ジュニパーベリーの強い香りと、ハーブやスパイスの複雑でスパイシーな風味が特徴的な、いわばドライジンの王道ともいうべきテイストです。シンプルなカクテルにもよく合い、マティーニやジン・トニックなどのクラシックなジンカクテルに使われることも多いです。
ラインナップは、赤い兵士のラベルが象徴的なレギュラーモデル(40度、47度)に加え、日本茶がフレーバーに使われた「ビーフィーター 24(40度)」、ストロベリーの芳醇な香りと甘さが感じられる「ビーフィーター ピンクストロベリー(37度)」があります。
「ボンベイ・サファイア(Bombay Sapphire)」は、青いガラスのボトルが特徴的な、世界中で人気のジンです。4大ジンの中では最も新しい銘柄で、1987年に登場し、当時低迷期に陥っていたジン業界を再興した革新的なジンでもあります。「ヴェイパー・インフュージョン製法」という、ボタニカルを漬け込むのではなく、蒸留器の蒸気の通り道において香り付けするという独自の方法で製造していることでもよく知られています。
ボンベイ・サファイアは、世界中から集められた10種類のボタニカルを使用して製造されており、華やかでフローラルな香りと、ジンらしいドライな口当たりを持つジンに仕上がっています。ボタニカルの香りが強く感じられるので、ジンジャーエールやトニックウォーターとの相性がよく、「ジン・バック」や「ジン・トニック」などのカクテルによく使われます。
ラインナップは、レギュラーモデルの「ボンベイ・サファイア(47度)」、柑橘類の香り際立つ「ボンベイ・サファイア プレミアクリュ(47度)」、エレガントな味わいの「ボンベイ・サファイア サンセット(43度)」、伝統的な味わいが楽しめる「ボンベイ・ドライ(40度)」などがあります。
「ゴードン(Gordon's Gin)」は、イギリスのロンドンで創業されたジンの銘柄で、1769年にアレクサンダー・ゴードンが作り始めたドライジンです。1925年には、ジンとしては初めて「ロイヤルワラント(英国王室御用達)」の認定を取得するなど、知名度とクオリティの両方が高いジンでもあります。
ゴードンのジンは、ジュニパーベリーをはじめとする数種類のボタニカルを使用して製造されており、味の特徴としてはジュニパーベリーのウッディーな風味が強く、スパイシーな風味が特徴的なジンに仕上がっています。ジン・トニックやマティーニなどのシンプルかつジンの風味が活きるカクテルによく使用されています。
ラインナップは、定番の「ゴードン ロンドン ドライジン(37.5度、43度)」、イチゴやラズベリーのフレーバー香る「ゴードン プレミアムピンク ジン(37.5度)」、シチリアレモンの爽やかな香りが楽しめる「ゴードン シシリアンレモン ジン(37.5度)」、などがあります。4大ジンの中ではアルコール度数が低めなのも特徴です。
「ボルス(Bols Genever)」は、オランダ発祥のジン「ジュネヴァ」の銘柄で、1664年にルーカス・ボルスによって創業されました。世界最古の歴史を持つ酒造メーカーでもあります。
ボルスは、ライ麦、トウモロコシ、小麦を蒸留して造られるモルトワインに、ジュニパーベリー単独の蒸溜液とアンジェリカ・ジンジャー・コリアンダーといったボタニカルの蒸溜液を加え、さらに秘伝の材料をブレンドすることで作り出されています。ライ麦や穀物の風味が強く、やや甘味もある複雑でまろやかな味わいは、ウォッカやウイスキーに近い味わいとも評されます。ネグローニやオールド・ファッションドなどのカクテルによく使われるほか、ストレートで楽しむこともできます。
ラインナップはレギュラーモデルの「ボルス ジュネヴァ(42度)」、オーク樽で熟成されることで、まろやかで芳醇な味わいの、黄金色の見た目をした「ボルス バレル エイジド ジュネヴァ(42度)」があります。
「シュリヒテ(Steinhäger Schlichte)」は、ドイツ北西部のニーダーザクセン州で製造される「シュタインヘーガー」と呼ばれるジンの銘柄の1つで、ドイツでもっとも有名なブランドです。
シュタインヘーガーは、他のジンとは異なり、乾燥させたジュニパーベリーのスパイスではなく、生のジュニパーベリーを蒸留させて製造されているのが特徴で、ジュニパーベリーの蒸留液と通常のジンのベーススピリッツをブレンドして作られており、味わいはドライジンとジェネヴァの中間程度のバランスの良い風味で比較的飲みやすいと言われています。ドイツではストレートで飲まれることが多いですが、カクテルに使用されることもあります。
ラインナップは、アルコール度数38度のレギュラーモデル「シュリヒテ(Steinhäger Schlichte)」のみとなっています。
「翠(SUI)」、「ジャパニーズクラフトジン ROKU(六)」は、どちらも日本のサントリーが製造するジャパニーズクラフトジンです。
日本の食事に合うジンとして開発された「翠(SUI)」は、2020年に販売が開始され、CMや店頭で見かけることの多いジンです。
ジュニパーベリーをはじめとした伝統的なジンの8種のボタニカルに加え、日本の食卓に馴染みの深い和素材3種(柚子・緑茶・生姜)を使用しており、柚子の華やかな香りや緑茶のうまみ、後味に感じる生姜のすっきりとした辛みなどが引き出されています。ソーダ割での飲み方が推奨されており、初めてジンを飲む方にも飲みやすいジンとなっています。
ラインナップはアルコール度数40度のレギュラーモデルに加え、ソーダ割になっていて手軽に楽しめる缶のタイプ(7度)があります。
同じサントリーの「ROKU(六)」は、海外進出を意識して造られたジンです。厳選された素材と高級感のあるデザインが特徴的で、日本のみならず世界中で人気を博しているクラフトジンです。
ROKUには、ジュニパーベリーをはじめとした、8種類のジンの伝統的なハーブやスパイスに加え、6つの日本産の原料(桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子)が使用されており、四季を感じるような華やかで深みのある味わいが特徴です。飲み方は、ストレートで深い味わいを感じることもできますが、炭酸水やトニックウォーターとの相性も良く、爽やかでフルーティーな味わいを楽しむことができます。また、ROKUは瓶も美しくデザインされており、贈り物としても人気があります。
ラインナップは、アルコール度数47度のレギュラーモデルと、空港免税店でのみ購入できる、桜の香りが際立つ「ジャパニーズクラフトジン ROKU〈SELECT EDITION〉(43度)」があります。
ジン・ソーダは、ジンをすっきりと手軽に飲みたい方におすすめです。ただし、割材に味や風味がない分、アルコール感が強いので、アルコールの味が苦手という方はジンの分量を減らしたり、柑橘類を絞ったりしてみると飲みやすくなります。
トニックウォーターは炭酸水に柑橘類の皮から抽出されたエキスや糖分を加えたもので、ジンと割ることで有名な「ジン・トニック」となります。炭酸水で割るよりよりも味や香りがあるので、アルコールが苦手だけどさわやかにお酒を楽しみたい方におすすめです。お好みでレモンやライムなどを絞ると更にさわやかさが増しますよ。
トニックウォーターを半分炭酸水に変えると「ジン・ソニック」というカクテルになります。バランスの良い爽やかさが魅力です。
ジンをオレンジジュースと割れば、「オレンジ・ブロッサム」というカクテルになります。フルーティーで甘く、とても飲みやすいですが、ベースがジンなので意外と度数が高いので要注意です。
オレンジジュースの一部を炭酸水に変えれば爽やかな「オレンジ・フィズ」というカクテルにもなります。オレンジフレーバーのソーダで作っても美味しいですよ。また、アンゴスチュラビターズというリキュールを1dash(1振り、5~6滴)加えれば少しビターな味わいの「ゴールデン・スクリュー」というカクテルにもなります。
クリアで切れのあるジンには爽やかな風味のレモンジュースがよく合うので、レモンジュースを使ったカクテルがいくつかあります。
レモンの甘酸っぱさが楽しめるスタンダードなカクテルの「ジン・サワー」、炭酸水の爽やかな味わいが楽しめる「ジン・フィズ」、シャンパンのフルーティーな味わいが魅力の「フレンチ75」などがあります。
トマトジュースと割ることで、トマトジュースのうまみとジンのドライなテイストがマッチした、赤い見た目も鮮やかな「ブラッディ・サム」というカクテルになります。トマトジュースに含まれるリコピンという成分には酔いを穏やかに進める効果があるなど、やや健康志向なカクテルです。お好みでレモンジュース、タバスコ、ウスターソース、塩、コショウを加える方もいるようです。
ジンをコーラで割った「ジン・コーク」というカクテルはコーラの風味が強く、とても飲みやすく、ゴクゴクと飲めてしまいますが、ジンベースなので度数が高く、コーラは糖分量が多いので、飲みすぎに注意です。
★割合は、ジン:コーラ=1:2または3
ジンジャーエールと少量のライムジュースを混ぜれば「ジン・バック」というカクテルにもなります。ジンジャーエールは甘口と辛口がありますが、どちらで割っても違った美味しさがあります。ライムなしでも十分美味しく、手軽に楽しむことができます。
カクテルでは定番のライムはジンとの相性が抜群です。ジンにライム果汁を絞ればライムの爽やかな風味が楽しめる「ジン・ライム」になります。
ジン30ml+ライム1/2に好みの量の炭酸水を足せば「ジン・リッキー」というカクテルになります。
「ドッグズノーズ」はジンとビールを使ったカクテルで、ビールグラスに注いで作ります。ビールより度数は高くなりますが、ビールの苦みにジンのドライなテイストが加わって奥行きのある味わいになります。食事とも合わせやすく、食中酒にもおすすめです。
ジン+ドライ・ベルモットで作る「マティーニ」は、映画でもよく登場するカクテルの代名詞ともいえる、大人のカクテルです。ドライで辛口な味わいが世界中で人気のカクテルです。
「ギブソン」は、ジンベースのカクテルではトップレベルで人気の辛口カクテルです。マティーニと似たレシピですが、こちらの方がジンの割合が多く、きりっとした味わいです。アメリカのイラストレーターのチャールズ・ダナ・ギブソン氏が考案したといわれています。
「ギムレット」はジンの香りの良さと、すっきりしたライムジュースの味わいが絶妙なジンベースのカクテルです。爽やかなライムの香りとほのかな甘みがあり、癖の少ない味わいでカクテル初心者にもおすすめです。
1915年にシンガポールのラッフルズ・ホテルで誕生した「シンガポール・スリング」は、ジンべースの中では比較的有名で、トロピカルで甘酸っぱい味わいが世界中で人気のカクテルです。「スリング」は、ドイツ語の「Schlingen」が語源で、「飲み込む」という意味です。
「トム・コリンズ」は、19世紀のロンドンでボーイをしていたジョン・コリンズが考案したカクテルで、当初ジョン・コリンズと呼ばれていたカクテルでしたが、ジンにオールドトムジンを使用してからはトム・コリンズと呼ばれるようになったカクテルです。ジン・フィズにレシピが似ていますが、こちらの方が少し甘く、飲みやすいカクテルです。
「ネグローニ」は、ジンべースのカクテルではトップレベルの人気カクテルです。食前・食後どちらにもおすすめで、スパイシーですっきりとした味わいです。名前はイタリア人の貴族ネグローニ伯爵がフィレンツェにあるレストランで愛飲していたことに由来しています。
「ブロンクス」は、オレンジジュースの風味が強く感じられ、飲みやすく人気のカクテルです。マティーニにオレンジジュースを加えたようなレシピで、シェイクして作ることでアルコールの角が取れ、フルーティーさとまろやかさが引き立ちます。
ウォッカは大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモといった穀物などの原料を加工して造られる、ロシア発祥のお酒です。製造工程で白樺の木炭などのフィルターによる濾過によって雑味が取り除かれるため、無味無臭ですっきりとした味わい、まろやかな爽快感が特徴的で、世界4大スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)の中では最も癖のない風味と言われています。
ウォッカはアルコール度数が40度と高く、氷点下でも凍らないため、超低温地域で重宝されてきた歴史があります。
ラムはサトウキビから造られる、カリブ地域原産の蒸留酒です。甘い香りと味わいが特徴的で、熟成期間が長いものほど濃厚な風味があります。アルコール度数は40~50度程度の製品が多くなっています。
飲み方・使い方は多岐にわたり、ストレートやロックで飲んだり、カクテルのベース酒として用いたりする以外にも、ケーキ、タルトなど焼き菓子、紅茶の風味づけにも使用されています。レーズンをラムに漬け込んだ「ラムレーズン」がよく知られていますよね。
テキーラはメキシコ発祥の蒸留酒で、サボテンから造られるお酒とよく勘違いされていますが、アガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られています。アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。香りや味は製造方法や熟成期間によって様々で、すっきりとしたものから、熟成に使われるオークの樽によるバニラやドライフルーツのような香りや味わいのあるものもあります。
日本ではバーなどでショットとして嗜まれることが多いほか、カクテルの材料としてよく知られていますが、現地ではストレートで飲まれることが多く、ライムを口へ絞りながら楽しみ、最後にグラスにまぶした食塩を舐めるのが正統な飲み方とされています。
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