カリブ海地域原産の「ラム酒」と、果実酒の漬け込みによく使われる「ホワイトリカー」について、原料や製法、味などの違いから解説します。
ラム酒はサトウキビから造られるカリブ海地域原産の蒸留酒の一種です。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズで海賊たちがラム酒を飲んでいたことで人気が急上昇しました。
ラム酒には、サトウキビから砂糖を精製する過程で出る副産物の黒いシロップ「モラセス(廃糖蜜)」を原料とする「インダストリアル・ラム」と、サトウキビの搾り汁を原料とする「アグリコール・ラム」がありますが、「アグリコール・ラム」はサトウキビ本来の甘さが味わえる一方、限られた場所と時期でしか作ることができないラム酒であり、流通しているラム酒のほとんどは「インダストリアル・ラム」となっています。
ホワイトリカーの原料は、砂糖をつくる際に出る副産物の廃糖蜜(モラセス)で、ラム酒と同じ原料になります。ただし、日本では焼酎に分類されています。
「ホワイトリカー」という名称は、ウイスキーやブランデーを「ブラウンリカー」と呼んでいたことの対比で呼ばれるようになった呼称で、いわゆる和製英語です。
ラム酒・ホワイトリカーのどちらも原料を発酵させ、蒸留することで製造される蒸留酒です。
ラム酒は工程における濾過の有無や、樽での熟成の期間等の違いによって風味と色に違いが生まれ、風味の違いで「ライト・ラム」、「ミディアム・ラム」、「ヘビー・ラム」の3種類に、色の違いによって「ホワイト・ラム」、「ゴールド・ラム」、「ダーク・ラム」の3種類に分けられます。
ホワイトリカーは、純度の高いエタノールを生成できる連続式蒸留で造られることが多く、焼酎の中では「甲類焼酎」に分類されます。ラム酒とは異なり、濾過や熟成は行われません。
なお、伝統的な蒸留方法である単式蒸留で造られる「乙類焼酎」に分類されるホワイトリカーもありますが、流通はわずかです。
「甲類焼酎」は、近代的な蒸留方法である「連続式蒸留」によって蒸留された焼酎です。伝統的な方法で造られる乙類焼酎に対して、甲類焼酎は「新式焼酎」と呼ばれることもあります。
連続式蒸留はもともとはウイスキーやジン造りなどに使われていた蒸留方法で、19世紀のイギリスで誕生したものです。連続式蒸留機は大きな蒸留器の中で何度も蒸留を繰り返すシステムになっている蒸留方法で、単式蒸溜に比べて効率的に不純物を取り除き、純度の高いアルコールを抽出できることから、出来上がるお酒がクリアな味わいになるのが特徴です。
単式に比べると効率よく蒸留が行えることから、大量生産向きで、価格の低い製品が多くなっています。
「乙類焼酎」は、昔ながらの蒸留方法である「単式蒸溜」で蒸留された焼酎です。旧式の製法で造られることから、「旧式焼酎」と呼ばれることもあります。また、甲、乙という呼び名が優劣をつけるような呼び名であることから、乙類焼酎は「本格焼酎」とも呼ばれます。
単式蒸留とは、一度のもろみ(発酵させた焼酎の原料)の投入につき、一度だけ蒸留を行う蒸溜方法で、蒸留は一回のみなので、使われる原料の個性や癖が現れやすいのが特徴です。比較的シンプルな構造であり、設備も簡単に作れるため、小規模な蒸留所で用いられています。
甲類よりも乙類の方がアルコール度が高くなりますが、アルコール以外の成分も多く含まれており、濃厚で複雑な味わいと言われます。時間と手間がかかるため、値段の高い製品が多くなっています。
蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
ラム酒以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジン、テキーラも蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム酒、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです。
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。
ラム酒は、甘い香りや味わいが特徴ですが、前述の「ホワイト・ラム」、「ゴールド・ラム」、「ダーク・ラム」でテイストが大きく異なっています。
「ホワイト・ラム」は無色でクセが少なく、比較的すっきりとした味わいで、「ゴールド・ラム」は3種の中間ともいえるバランスの良い味わいが魅力、「ダーク・ラム」はラムの中では一番濃厚で強い風味を持ちます。
アルコール度数は40度前後の製品が多く、飲む人の好みに合わせて37度前後の製品や、70度以上の製品もあります。
ホワイトリカーは、雑味の少ないすっきりとした香りと味わいですが、悪い言い方をすれば、アルコールそのものといった香り・味わいです。
アルコール度数は、甲類焼酎は36度未満と法律で定められているため、その上限ギリギリの35度で売られている製品がほとんどです。他のお酒と比べるとリーズナブルな価格となっています。
上記の通り、3種類の異なるテイストのラム酒で、それぞれ違った楽しみ方があり、様々な方法で嗜まれています。「ホワイト・ラム」はカクテルベースとしての使用がほとんどで、「モヒート」や「ダイキリ」といった有名なカクテルがあります。また、コーラ、ジンジャーエールといった甘い炭酸飲料との相性がとても良いことでも知られています。
「ゴールド・ラム」と「ダーク・ラム」はストレートやロックで嗜まれることが多く、芳醇なサトウキビの甘みを楽しむことができます。
ホワイトリカーは、その癖のないテイストが果実のうまみを存分に引き出すことができるため、家庭ではもっぱら果実酒の漬け込みに使われています。高いアルコール度数は果実の成分浸出を早めると同時に、カビの発生や味の劣化を抑えてくれます(果実から出る水分で仕上がりのアルコール度数が低くなります)。
ただし、上記の通りアルコールそのものといった味なので、果実酒の漬け込みや、缶チューハイなどの市販されているアルコール飲料の原料として以外の用途はあまりなく、ロックやストレートといった飲み方をされることはなく、カクテルベースとして使われることもほとんどありません。
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