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里芋は生で食べられる?生食のメリットと注意点を解説。

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里芋は生で食べられる?生食のメリットと注意点を解説。

野菜の中には生で食べられる種類も多くありますが、里芋はどうなのだろうと疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。本記事では、里芋は生で食べられるのかどうか、下茹での仕方なども合わせて解説します。

里芋の生食は避けるべき!理由は?

野菜にはキャベツや大根のように生食できる種類もたくさんありますが、里芋は生食することができません。生食できない理由は、下記の通りです。

えぐみが強い

里芋にはシュウ酸と呼ばれる成分が含まれています。シュウ酸とはいわゆる「アク」と呼ばれる苦味やえぐみを感じさせる成分の一つで、栄養素というよりも老廃物です。

そのため、里芋は生の状態では苦味やえぐみを感じるため美味しく食べることができません。長芋のようにすりおろして食べることももちろんできませんので、必ず加熱をしてアクを抜いてから食べましょう。

喉がイガイガしたり痒みがでる

上述した苦味やえぐみを感じさせる成分であるシュウ酸は、ほうれん草やタケノコなどにも含まれています。ほうれん草やタケノコも生で食べることができないのは、生の状態だと苦味やえぐみを強く感じるためです。

ほうれん草などの場合、シュウ酸は水に溶けるカリウム塩やナトリウム塩の形で液胞という袋の中に閉じこめられていますが、植物によってはシュウ酸カルシウムの結晶となって液胞の中に含まれています。里芋にはシュウ酸カルシウムが針状結晶となっています。そのため、里芋を生で食べるとシュウ酸カルシウムが喉を刺激し、イガイガとした不快感を与えます。シュウ酸カルシウムは不溶性ですが、熱に弱いため加熱調理をすることで喉に不快感を与えるのを防ぐことができます。

ちなみに、里芋を触ったときに手が痒くなるのもシュウ酸カルシウムの結晶が肌を刺激するためだと言われています。

でんぷんが生では消化しづらい

里芋を生で食べることができない理由はシュウ酸だけではありません。里芋に含まれているでんぷんも生で食べることができない理由の一つです。

里芋などのイモ類にはでんぷんが大量に含まれています。でんぷんとは、植物が光合成によって実や根などに蓄積した炭水化物です。でんぷんは水に溶けない性質があり、水にさらすと水の中に沈みます。水に沈殿することから「殿粉(デンプン)」という名称がつきました。

水に溶けない生のでんぷんは人間にとって非常に消化しにくい状態であり、食べ過ぎるとお腹を壊してしまうことがあります。

でんぷんには水分を吸収する性質があり、水を加えて加熱すると50℃を過ぎたあたりから粘りがではじめ、70℃を超えると全体が軟らかくなります。これを「糊化(こか)」と言います。でんぷんは糊化するとようやく消化酵素で分解できるようになり消化することができます。そのため、でんぷんを大量に含んでいる里芋は加熱をしてでんぷんを消化しやすい状態にしておく必要があります。

里芋以外のイモ類は生食できる?

イモ類には里芋と同じように多くのでんぷんが含まれていますが、必ずしも里芋のように生食を避けるべきというわけではありません。

じゃがいも

最も家庭で使うことが多いイモ類の野菜といえば、やはりじゃがいもではないでしょうか。肉じゃがやフライドポテトなど加熱調理をして食べることの方が圧倒的に多いと思いますが、じゃがいもの場合は生で食べることができます。

生のじゃがいもはシャキシャキとした食感を楽しむことができる他、加熱することで失われやすい栄養素(ビタミンやミネラルなど)を効率よく摂取することができます。じゃがいもは、「畑のりんご」と呼ばれるくらいビタミンCが豊富に含まれています。じゃがいもに含まれているビタミンCは、でんぷんに守られているため熱に強く壊れにくいのが特長ですが、それでも皮を剥いたり、細かく切って火にかけたりすると、4〜5割のビタミンCは失われると言われています。

ただし、生のじゃがいもも大量摂取はでんぷんが消化しきれずにお腹を壊す原因となります。生のじゃがいもの食べ過ぎは避け、1日1個(150〜200g)程度にとどめておくのがよいでしょう。

さつまいも

さつまいもも実は生でも食べられるイモ類の野菜です。新鮮なさつまいもは、栗のようなコリコリとした食感を楽しむことができます。日本ではあまりポピュラーではありませんが、韓国など日常的にさつまいもを生で食べる国もあります。

ただし、さつまいも大量摂取はでんぷんが消化しきれずにお腹を壊す原因となります。また鮮度が落ちているさつまいもはアクが強いため、生で食べる場合は新鮮なさつまいもを選ぶことも大切です。

長芋・大和芋・自然薯

長芋や大和芋、自然薯などの山芋は、生で食べることができます。

長芋や大和芋、自然薯も里芋と同じくイモ類であり、ねばりがあるのにも関わらず生で食べられることができるのは、でんぷんの構造が里芋などのイモ類と比較して弱いためであると言われています。また、消化酵素であるジアスターゼが含まれており、でんぷんの一部が分解されるため、生で食べても胃もたれしてしまうこともありません。

しかし、山芋にも里芋と同じくシュウ酸カルシウムが含まれているため痒みが出たりチクチクとした不快感を与えることがあります。シュウ酸カルシウムは皮付近に多く含まれているため、皮を厚めに剥いて食べるようにすると良いです。上述したようにシュウ酸カルシウムは熱に弱いため、口の周りに痒みが出て食べにくさを感じる方などは生食よりも加熱調理をして食べるのがおすすめです。

里芋の下茹で方法

泥汚れを落とす

里芋の泥汚れを落とす

普段私達が食べている部分は、里芋の「塊茎」(茎の地下部)です。土の中で成長したものを掘り出して出荷しています。また、里芋は乾燥に弱いため、乾燥させないためにあえて洗わずに土がついた状態で出荷されたり、土がついたまま保管されることも多いです。そのため、下茹でをする際はしっかりと泥汚れを落とす必要があります。泥汚れを落とさずに下茹でしてしまうと、泥臭さが残ってしまいます。

特に皮に生えている毛のような部分(毛羽)には、土が入り込みやすいので念入りに洗いましょう。泥がこびりついてしまっている場合は、水に浸けてふやかしてから洗うと落としやすくなります。

茹でる

里芋を茹でる

里芋の表面についている泥汚れを落とし綺麗にしたら、鍋に入れて里芋がかぶるぐらいの水を入れて火にかけます。茹で時間は沸騰してから15分程で、竹串などがすっと通れば完了です。里芋の大きさによっても茹で時間は異なるので様子を見ながら調節してください。

皮付きのまま茹でる場合は、里芋を横向きに持って包丁を入れて一周回しながら切り目を入れてから茹でると皮が剥きやすくなります。

皮をあらかじめ剥いてから茹でてもOKです。皮を剥いてから茹でた方がしっかりとぬめりを取ることができますが、茹でているときにぬめりによって吹きこぼれてしまいやすいので、塩もみをしてある程度ぬめりをとってから茹でると良いです。

お湯を捨てて粗熱をとる

里芋の皮を手で剥く

竹串などがすっと通るぐらいまで茹でたら、ザルなどに上げてお湯を捨てて粗熱をとります。皮を剥かずに下茹でをした場合はしっかりと水気をきった後、切り目の両端をひっぱるようにして皮を剥きます。

皮はよく洗えば食べられる

里芋を皮ごとフライパンで焼く

里芋は皮を剥いて調理に使うことが多いですが、実は皮ごと食べることができます。じゃがいもを皮ごとフライドポテトなどに調理をするのと同じような感覚で、味もじゃがいもの皮と似ています。

里芋の皮付近にはぬめり成分である「ガラクタン」などが含まれています。ガラクタンには免疫力向上作用が期待できます。そのため、皮ごと食べた方が栄養価は高くなります。

しかし、上述したように里芋の皮には苦味やえぐみの元であるシュウ酸も含まれています。また、皮には泥汚れやの他に残留農薬がある可能性もあります。皮ごと食べる場合は、しっかりと洗ってから食べるようにしましょう。

新鮮な里芋の特徴

ふっくらと丸みをおびている

里芋の形は品種によって球形や楕円形など様々ですが、どの品種においてもふっくらとして丸みをおびているものを選ぶのが良いです。

ふっくらと丸みをおびているのは、生育環境が良かった印です。生育環境が悪いと形がいびつになるだけではなく、中身が変色している可能性も高いです。

押すと固くずっしりと重い

生の状態の里芋はじゃがいものように固いです。柔らかくなってしまっているものは、傷んでいる可能性が高いので、触ってみて柔らかいものは避けた方が良いです。

また、手に持ったときにずっしりとした重みがあるものを選ぶことも大切です。軽いものは傷んでいて中がふかふかになってしまっていることがあります。

表面に泥が付いていて湿っている

里芋は乾燥に弱い野菜です。そのため、あえて洗わずに泥付きのまま出荷・販売をして里芋を乾燥から守り鮮度を保っていることが多いです。洗浄しきれいな状態で販売されていることもありますが、泥付きの里芋の方が鮮度が高いので、泥付きで湿り気のある里芋を購入するのが良いです。泥付きのままであれば、購入後も鮮度を保った状態で保存することができます。

表面が乾燥していたり、ひびが入っているものは鮮度が落ちていますので選ばないようにしましょう。

はっきりとしたしま模様が均等に入っている

里芋の皮は、よく見るとしま模様が入っているのがわかります。このしま模様が均等に入っている里芋は生育環境がよく、すくすくと順調に育った証拠です。泥付きのまま販売されている里芋は、しま模様が見えにくいこともありますが、しま模様をチェックして購入することも大切です。

食べてはいけない里芋の特徴

生食ができない里芋ですが、加熱調理すれば全て食べていいわけではありません。

全体的に変色している

カットしたときに全体的に黒色や茶色など通常の色ではない色に変色してしまっている場合は、腐敗している可能性が高いです。

里芋は生理障害などが原因で茶色など様々な色に変色してしまうこともあり、必ずしも変色=腐敗というわけではありませんが、全体的に変色してしまっている場合はアクが強かったりなど味も食感も悪くなってしまっていることが多いので、美味しく食べるのは難しいです。

カビが生えている

里芋の表面に白いふわふわとしたホコリのようなものがついている場合や、黒く変色している箇所がある場合はカビが生えています。

ふわふわとした白い綿のようなカビは白カビで、黒く変色しているカビは黒カビです。

一度カビの生えた食品は、カビを除いてもカビの菌などが内部に入り込んでいる可能性があるため基本的には破棄する必要がありますが、里芋のように固い野菜は密度が高いため表面にカビが生えただけで中身に異常が見られなければ、皮を厚めに剥きしっかりと取り除けば食べることができます。

しかし、皮だけではなく中までカビが侵食してしまっている場合は残念ですが食べることはできません。カビの胞子は目に見えないほど小さいため、カビが生えていない部分にもすでに移ってしまっている可能性もあります。カビは、カビ毒を発生させ、中毒症状を起こすこともありますので心配な方や小さなお子様、高齢者の方などは食べるのを避けた方が良いでしょう。

ぶよぶよになっている

触ってみてすぐにヘコんでしまうなどぶよぶよとした感触がある場合は、中が腐敗してしまっている可能性が高いです。

表面には何の異変も見られなくても触ってみると妙に柔らかかったりすることがあるので、見た目だけではなく触って確認することも大切です。

溶け出している

里芋が溶け出して水っぽくべちゃべちゃしている場合は、かなり腐敗が進んでいる状態です。

里芋に限らず食材の多くは腐敗が進むと柔らかくなり、次第に溶け出していきます。溶け出すぐらいまで腐敗が進んでいると、異臭がしていることも多いです。

酸っぱい臭いや味がする

里芋は多少土臭いことはありますが、そこまで臭いのきつい野菜ではありません。普段とは異なる酸っぱい臭いがする場合は、腐敗している可能性が高いです。

食材は腐敗すると、多くのバクテリアが活動し酢酸発酵することが多いので酸っぱい臭いがしたり酸っぱい味がしたりします。この現象は味噌や醤油といった発酵食品にも起きていますが、発酵とは異なり次第に味や臭い、形が崩れるなど食材が変化していく現象はあるときに「腐敗」と呼ばれます。

腐敗が進むと生ゴミのような臭いがすることもあります。臭いや味に異変を感じたら直ちに食べるのを止め、すべて廃棄するようにしましょう。

カビ臭い

里芋に限ったことではありませんが、表面や内部など特にカビが生えているように見えなくても、カビの臭いがすることがあります。この場合はカビが目に見えない状態でも胞子が入り込み生育している可能性が高いです。この場合は早めに食べきるか、心配な方は破棄するのが無難です。