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ラム酒の原料は何?サトウキビ?製法は?銘柄別に解説

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ラム酒の原料は何?サトウキビ?製法は?銘柄別に解説

甘い香りと味わいが楽しめるラム酒。この記事では、ラム酒の原料や製法について紹介します。

ラム酒とは

ラム酒はサトウキビから造られる、カリブ海地域原産の蒸留酒(スピリッツ)の一種です。蒸留酒はアルコール度数が高く、火をつければ燃えることから、「火酒(かしゅ)」と呼ばれることもあります。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズで海賊たちがラム酒を飲んでいたことで人気が急上昇しました。
 
ラム酒は、甘い香りや味わいが特徴ですが、製法でテイストが大きく異なっています。最新技術で蒸留され、熟成期間が短く、濾過されているものは他のスピリッツ(ウォッカなど)に近いすっきりとしたテイストです。伝統的な方法で蒸留され、オークの樽でじっくりと熟成されたものは色も褐色で、味わいもウイスキーやブランデーに近いまろやかなテイストになります。
 
飲み方・使い方は多岐にわたり、ストレートやロックで飲んだり、カクテルのベースとして用いたりする以外にも、ケーキ、タルトなど焼き菓子、紅茶の風味づけにも使用されています。レーズンをラムに漬け込んだ「ラムレーズン」がよく知られていますよね。
 
蒸留酒なので高めのアルコール度数となっており、基本的に40~50度のアルコール度数で売られている製品が多くなっていますが、飲む人の好みに合わせて37度前後、75.5度のラム酒も販売されています。

ラム酒の原料

ラム酒の原料はサトウキビですが、原料としての使い方で2種類に分けられます。

インダストリアル・ラム

インダストリアル・ラム」は、サトウキビから砂糖を精製する過程で出る副産物の黒いシロップ「モラセス(廃糖蜜)」を原料とするラム酒です。全世界でのラム酒の総生産量の97~98%を占めています。
 
モラセスを貯蔵しておくことで、いつでも製造可能なため、サトウキビの収穫時期によらず、年中ラム酒を製造できます。また、モラセスを輸入してラム酒の原料となる醸造酒の製造をすることもできるため、サトウキビの生産地以外でもラム酒の製造を可能としています。現在、ラム酒はカリブ海地域以外の世界中で生産されています。

アグリコール・ラム

アグリコール・ラム」は、サトウキビの搾り汁を原料とするラム酒です。サトウキビ本来の甘さが味わえる一方、サトウキビは劣化が進むのが早く、収穫したての新鮮なサトウキビをすぐに加工する必要があるため、限られた場所と時期でしか作ることができないラム酒です。流通量はわずかで、流通しているラム酒の2~3%程度と言われています。
 
なお、この2つのハイブリッドともいえる、「ハイテストモラセス」という製法も近年登場しています。この製法では、サトウキビ100%のジュースをシロップ状に凝縮させたものを原料として使用します。モラセスよりも糖度が高く、鮮度を気にする必要がないため、革新的な原料として注目を集めています。

他のスピリッツの原料

ウォッカ

ウォッカは、大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシ、ジャガイモといった穀物などの原料を加工して造られる、ロシア発祥のお酒です。氷点下でも凍らないため、超低温地域で重宝されてきた歴史があります。
 
なお、EU(欧州連合)では、サトウキビやブドウなどを原料とする蒸留酒をウォッカと認めるか意見が分かれていたようですが、最終的には原材料を明記することによって、ウォッカと認めることになりました。現在ではミルクやフルーツなど様々な原料から造られるウォッカが流通しています。

ジン

ジンの基本的な原料・製法はウォッカと同じ(小麦、大麦、ライ麦、じゃがいも)ですが、ジンは製造の過程において、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)という低木の果実を乾燥させたスパイスをはじめ、様々なハーブやスパイス、フルーツで香りづけするため、スパイシーな独特の風味があります。

テキーラ

テキーラはメキシコ発祥の蒸留酒で、サボテンから造られるお酒とよく勘違いされていますが、アガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られています。アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。味は製造方法によって様々で、まろやかなものから苦みや渋みの強いものまでありますよ。

ラム酒の製法

ラム酒は、原料となるサトウキビを発酵・蒸留させることで造られますが、国や地域で製法に違いがあり、製法によって下記の3種類に分類されています。

ライト・ラム

「ライト・ラム」は、モラセスを発酵させて醸造酒を作り、純度の高い液体を生成しやすい「連続式蒸留機」で蒸留し、ホワイトオークの樽で短期間熟成させる(もしくは熟成させない)ことで造られるラム酒です。スペイン系とも呼ばれ、製品のラベルにはスペイン語由来の「RON」という表記が見られることが多いです。

ヘビー・ラム

「ヘビー・ラム」は、自然発酵させたモラセスから醸造酒を作り、素材の味を生かしやすい「単式蒸留器」を使って蒸留を行います。蒸留後は内側を焦がしたオークの樽で熟成させるため、見た目は褐色で、風味が強く、芳ばしい甘みを持ちます。イギリス系とも呼ばれ、製品のラベルには英語由来の「RUM」という表記が見られることが多いです。

ミディアム・ラム

「ミディアム・ラム」は、自然発酵させたモラセスから醸造酒を作り、蒸留することで造られています(蒸留方法は銘柄によって様々です)。ライト・ラムとヘビー・ラムをブレンドして造ることもあり、バランスの良い味わいが楽しめます。フランス系とも呼ばれ、製品のラベルにはフランス語由来の「RHUM」という表記が見られることが多いです。

有名な銘柄の原料・製法

ラム酒で有名な銘柄の、原料や製法のこだわりを紹介します。

バカルディ(BACARDI)

バカルディ(BACARDI)」は、キューバ発の世界最大のラム酒ブランドです。最も有名なラム酒ブランドでもあり、設立は1862年と、歴史あるブランドでもあります。
 
バカルディは、原料には世界中から取り寄せた高品質の糖蜜(モラセス)を使用しています。また、ラム酒の製造工程において世界で初めて木炭による濾過を行ったメーカーとしても知られ、濾過には13種類の異なる炭が使われています。そのすっきりと洗練された香りと味わいがカクテルのベースとして人気を博し、現在でも世界で最もカクテルに使用されています。

アプルトン(APPLETON)

アプルトン(APPLETON)」は、1749年に創業した、ジャマイカ最古ともいわれている銘柄です。サトウキビの栽培からビン詰めまで、すべて自社で行っています。
 
アプルトンのラム酒は、原料に自然培養酵母と天然の湧き水を使用しており、自然の恵みを生かしたお酒造りがされています。銅製のポットによる単式蒸留の後、オーク樽の中で最低でも12年以上熟成させたものがブレンドして使用されており、濃厚な深い味わいが堪能できます

ディプロマティコ(DIPLOMATICO)

ディプロマティコ(DIPLOMATICO)」は、1959年にベネズエラで生産が始まったラム酒の銘柄です。ベネズエラのラム酒を名乗るには、「アルコール度数40度以上であること」、「2年以上白オークの酒樽で熟成されていること」、「原料に他国産の糖蜜やアルコールを使用していないこと」という3つの高水準な要件を満たす必要があり、これらの条件を満たすディプロマティコのラム酒はその高品質さで世界中から高い評価を得ています。
 
ディプロマティコのラム酒は、原料にモラセスとシュガーケインハニー(搾り汁)のブレンドを使用しているほか、3種類の蒸留器による「ライト」、「セミヘビー」、「ヘビー」の3タイプをブレンドする独特の製法により、味わいの変化に富んだラム酒を作り出しています。また、樽での熟成も長期間行われるため、カカオやチョコレートを連想させる甘い香りが特徴的な、まろやかで深い味わいが楽しめます。

マウントゲイ(MOUNT GAY)

マウントゲイ(MOUNT GAY)」は、元イギリス連邦加盟国、バルバドス産の銘柄です。ラム酒では世界最古の1703年から製造されており、ギルボア山にあるマウントゲイ蒸留所は世界最古の蒸留所としても知られています。
 
マウントゲイのラム酒はバルバドス島の良質なサトウキビから抽出される糖蜜と、珊瑚の地層によって自然濾過された地下水を原料に作られています。連続式蒸留と単式蒸留のブレンドによる、バランスの良い味わいが特徴的です。

マイヤーズ(MYERS)

マイヤーズ(MYERS)」は、1879年にジャマイカで生産が始まった銘柄です。ダーク・ラムが有名で、「ダーク・ラムのプレミアム品」「世界標準」とも称され、高いクオリティが良く知られています。
 
マイヤーズのダーク・ラムは、100%ジャマイカ産のモラセスを使用しています。ホワイトオーク樽での長期熟成による濃厚な風味と豊かな香りが特徴で、バーテンダーやラム酒の愛好家だけではなく、製菓用のラム酒としても世界中の洋菓子店からも愛されています。

ロン・サカパ(RON ZACAPA)

ロン・サカパ(RON ZACAPA)」は、1976年にグアテマラ東部のサカパ市で、創立100周年の記念として製造が始まった高級ラム酒です。国際ラムフェスティバルで初めて殿堂入りしたラム酒で、世界中の愛好家から人気です。
 
ロン・サカパは、「バージン・シュガーケイン・ハニー」というサトウキビの一番搾りを原料に使用しています。また、海抜2,300メートルにある高地で熟成が行われており、独特の複雑な味わいと、深い色、豊かな香りが生み出されています。

ロンリコ(RONRIKO)

ロンリコ(RONRIKO)」は、1860年創業のプエルトリコの老舗メーカーが手がける銘柄です。「ロンリコ」とはスペイン語で「味わい豊かなラム」を意味します。20世紀前半にアメリカで禁酒法が適用されていた頃、アメリカ領では唯一製造を許可されていたことでも有名です。
 
ロンリコはプエルトリコ産のサトウキビを使用し、国内の蒸留所で製造されています。ドライですっきりとした味わいが特徴です。

パンペロ(Pampero)

パンペロ(Pampero)」は、ベネズエラを代表するラム酒のブランドのひとつです。現在、世界的に有名な酒類メーカーであり、ウォッカの「スミノフ」などの製造権も持つイギリスの「ディアジオ社」の傘下で運営しています。
 
パンペロという名前は「アルゼンチンの大草原パンパを吹き抜ける風」という意味です。ベネズエラ産のモラセスを自家製の酵母で発酵させています。熟成はバーボンやシェリーの熟成で使われた樽を使用し、熟成したものをブレンドしているので、重厚で複雑な味わいで、口いっぱいに広がる甘さとスパイシーな香りが魅力です。また、ラム酒の中では珍しい辛口なテイストなのも特徴的です。

レモンハート(Lemon Hart)

レモンハート(Lemon Hart)」は、1804年にイギリスのコーンウェル地方で製造が始まった世界的に人気のラム酒です。英国海軍に支給されていたラム酒としても有名です。
 
レモンハートのラインナップの中で最も人気の「デメララ」は、イギリス連邦加盟国のガイアナにあるデメララ川付近で作られたサトウキビを原料とするダーク・ラムで、コクのある香りとほのかな甘みで愛飲者の多い銘柄です。

キャプテン・モルガン(Captain Morgan)

海賊のラベルが印象的な「キャプテン・モルガン(Captain Morgan)」は、17世紀にカリブ海で活躍した伝説の海賊「ヘンリー・モーガン」に因んで生まれた、1944年ジャマイカ発のブランドです。現在はパンペロ同様、イギリスの「ディアジオ社」が製造・販売を行っています。
 
キャプテン・モルガンのラム酒は、現在アメリカ領のヴァージン諸島の蒸留所で製造されていますが、原料や製法などはあまり公開されていません。スパイストラムのメーカーとして有名で、フルーツやスパイス、バニラなどの芳醇な香りのラム酒が世界中で人気です。まろやかな口当たりでとても飲みやすいので、ラム酒初心者の方にお勧めです。