薄力粉と米粉の違いをご存知でしょうか。本記事では薄力粉と米粉の違いについて詳しく解説します。
薄力粉の原料は粒が柔らかい軟質小麦(なんしつこむぎ)です。米国産のウエスタンホワイトホイートという品種が使われることが多いです。
ちなみに、硬質小麦を原料に作られるのが強力粉、中間質小麦を原料に作られるのが中力粉です。
米粉は米を原料に作られる粉の総称です。
米粉は大別してもち米から作られるものと、うるち米から作られるものがあります。
うるち米は一般的に食べられている半透明のお米のことです。有名な品種にはコシヒカリやあきたこまちなどがあります。もち米は白く不透明で、お餅やお赤飯にする粘性のあるお米のことです。
もち米からなる代表的な米粉は白玉粉で、うるち米からなる代表的な米粉は上新粉です。
さらに製法によって、「アルファ型(α型)」と「ベータ型(β型)」に分類されます。
「アルファ型」は、製造の過程で加熱処理していない米粉を指し、「生粉製品(なまこせいひん)」ともいいます。アルファ型の米粉は上新粉や白玉粉などです。
「ベータ型」は、製造の過程で加熱処理している米粉を指し、「糊化製品(こかせいひん)」ともいいます。ベータ型の米粉はみじん粉や寒梅粉、道明寺粉などです。
一般的にスーパーなどで「米粉」または「米の粉」という名称で売られている商品は単に「製菓用米粉」と呼ばれます。原料がうるち米かつベータ型で、粒子がとても細かいです。本記事での「米粉」とは、この製菓用米粉を指します。
薄力粉などの小麦粉は、多数のロール製粉機とふるいの組み合わせにより、小麦の胚乳組織を粗く砕いて分離し、これを粉砕するという方法で作られています。粉砕する際に数十種類の粉が得られますが、最終的には2〜4種類に仕分けされて、その性状により希望する等級になるようにそれぞれの粉を組み合わせます。
胚乳部分にある灰分の含有量によって特等粉、1等粉、2等粉、3等粉、末分にわけられ、これを等級といいます。灰分含有量が0.3~0.35%のものは特等粉、0.35~0.45%のものが1等粉、0.45~0.65%のものが2等粉、0.7~1.0%のものが3等粉、1.2~2.0%のものが末粉と分類されます。
灰分の含有量が少ない方が白くなり(その分栄養価は少ないですが…)上級粉となります。灰分の含有量が多いと茶褐色になり、下級粉となります。例えば、強力粉の1等粉は高級食パンに、強力粉の3等粉は通常の食パンなどと使い分けされます。
また、仕分けせずに全部を混合したものがあり、これを「ストレート粉」といいます。
灰分は外皮や胚芽部分に多く含まれるミネラルや食物繊維のことです。小麦粉は調理過程で加熱されると、たんぱく質や脂質は燃えてなくなってしまうのですが、一部のミネラルや食物繊維は灰として残るため、このように記載されています。
うるち米を原料に作られる粉は、2ロール製法で作られた粉が「上新粉」、胴搗き製法(どうつきせいほう)で作られた粉が「製菓用米粉」となります。
2ロール製法は、水洗いした米を乾燥させロール製粉機で製粉するという方法です。胴搗き製法したものよりも強い粘性がありますが、水分量が少ないため硬化が早いです。
胴搗き製法は、精米後に米の水分が多く保たれた状態で、杆搗き臼(きねつきうす)で徐々に細かくしていく製法です。別名杵搗き式(きねつきしき)ともいいます。時間はかかりますが、良い粉を得ることができます。関西では、古くから胴付き製法で作られています。
グルテンとは主に小麦や大麦、ライ麦などに含まれる成分です。弾力に富むが伸びにくいグルテニンと、弾力は弱いが伸びやすいグリアジンの2種類のたんぱく質が、水分によって結びついたものをグルテンといいます。
薄力粉にはグルテンが含まれます。
上述したように薄力粉の原料は粒が柔らかい軟質小麦です。「粒が柔らかい」=「グルテン量が少ない」ことを意味し、薄力粉はグルテンの含有量が6.5~8%(原料小麦によって違いがあります)と最も少ない小麦粉です。
ちなみにグルテン含有量がさらに少ないものを「超薄力粉」ということがありますが、商品名としては使われていません。
米粉の原料はうるち米であり、小麦や大麦、ライ麦ではないためグルテンは含まれません。
グルテンはアレルギーの原因となる他、消化されにくいという性質があり、むくみの原因となったり、疲れやすくなるなどの症状が身体に出ることもあります。近年グルテンを摂取しないグルテンフリーの生活を実践する人も多くいます。米粉は、小麦アレルギーの方やグルテンフリーの生活をしている方から、小麦粉の代用品として人気です。
薄力粉の色は白いですが、米粉と比較するとやや黄みがかった白色です。
薄力粉は小麦粉の中では最も粒子が細かいですが、米粉と比較すると粗いです。薄力粉の原料である軟質小麦は粒が柔らかいため、触ると手にまとわりつく感覚があります。
米粉の原料はうるち米であるため、綺麗な白色をしています。
米粉の粒度は40メッシュ〜500メッシュのものがあり、数字が大きいほど粒子が細かいことを表します。上新粉などの米粉が90メッシュスルーであるのに対して、製菓用米粉は200メッシュスルーから400メッシュスルーと粒子が細かいのが大きな特徴です。
米粉は小麦粉とは異なり、サラサラとしています。
薄力粉100gに含まれる成分は下記の通りです。
水分…14.0g
たんぱく質…8.3g
脂質…1.5g
炭水化物…75.8g
灰分…0.4g
薄力粉100gのカロリーは349kcalで、糖質量(炭水化物から食物繊維を引いた値)は75.4gです。
米粉100gに含まれる成分は、下記の通りです。
水分…11.6g
たんぱく質…6.0g
脂質…0.7g
炭水化物…81.9g
灰分…0.3g
米粉100gのカロリーは356kcalで、糖質量はおよそ81.3gです。
米粉は小麦粉と比較して、必須アミノ酸を多く含みます。
必須アミノ酸は、約20種類あるアミノ酸のうち体内で作り出せない9種類のアミノ酸(イソロイシン・ロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・スレオニン・トリプトファン・バリン・ヒスチジン)のことです。1つでも不足してしまうと健康な身体を維持する事が出来なくなってしまいますが、体内で作りだすことができないため食べ物で摂取するしかありません。
この9種類の必須アミノ酸の含有率を数値化した「アミノ酸スコア」は米粉が65、薄力粉が44、です。アミノ酸スコアは100に近い数値であるほど理想的であるといわれており、薄力粉と比較すると米粉のほうが栄養素が高く健康的であるといえます。
米粉と薄力粉のカロリーは、上述した通り米粉のほうが若干高いです。しかし、GI値は米粉のほうが薄力粉よりも低いです。
GI値とは、炭水化物を摂取した際の血糖値の上昇度を表す値です。GI値が高ければ高いほど食後に高血糖になりやすく身体に負担をかけてしまう他、脂肪が体内に蓄積されやすいといわれています。さらに、血糖値の急上昇は血糖値の急降下にも繋がるため、空腹を感じやすくなってしまいます。
そのため、米粉の方が薄力粉よりも脂肪として蓄積されにくく、食べた後の満腹感が長続きするため食べる量を抑えることができるといえます(ただし、空腹感には個人差があります)。
ちなみに、薄力粉より全粒粉、米粉より玄米粉の方がGI値は小さくなり、ミネラル類・食物繊維も多くなります。そのため、一般的に白い穀類より茶色い穀類がベターといわれます。しかし、茶色穀類は食物繊維が多いので整腸作用がある一方で、人によっては腸の調子が悪くなる場合もあるので注意しましょう。
GI値だけではなく小麦粉に含まれているグルテンにも、脳内の中枢神経を刺激して食欲を増進させる働きがあります。タバコに含まれるニコチンやコーヒーなどに含まれるカフェインと同じように「もっと食べたい」「食べないと気が済まない」思わせる依存性があります。
そのため、グルテンが含まれていない米粉を使って調理をしたほうが食欲の増進を抑えることができるといえます。
パンや揚げ物などの油料理などでは、米粉を使ったほうが小麦粉よりもカロリーが低くなります。例えば、粉を使ってパンを作る場合のカロリーは100gあたりおよそ243kcalであるのに対して、薄力粉を使って食パンを作る場合のカロリー100gあたりおよそ260kcalです。
これは、上油の吸収率が大きく関係しています。米粉は薄力粉に比べ油の吸収率が低いため調理をしたときにカロリーが低くなります。
薄力粉よりGI値が低いことや油の吸収率が低いことから、ダイエットには米粉の方が利点が多いといえます。
しかしながら、野菜や肉類と比べれば、米粉の方が糖質が高いのも事実です。また、米粉にはグルテンの依存性はありませんが、一気に食べれば血糖値が急上昇し、その後低血糖になり、大きな空腹感を感じます。これを繰り返していると、いわゆる「糖中毒」になってしまいます。
そのため、米粉でも食べ過ぎれば、もっと食べたくなり、太る原因になってしまいます。そもそも、糖質制限をするならば、米粉は避けた方がよいでしょう。
米粉と薄力粉の使用用途は同じです。
上述したように小麦アレルギーの方やグルテンフリーの生活をしている方、ダイエットや健康のためにカロリーを抑えたい方が薄力粉などの代用品として使うことが多いです。
ただし、原料が異なるため風味や食感などに違いがでます。米粉を小麦粉の代用品にしたときの違いを解説します。
米粉は原料がうるち米であるため、薄力粉の代用品としてパンを作ると小麦の香ばしい風味や香りはしませんが、お米の優しい甘みがでます。
また、米粉はグルテンを含まないため小麦粉の代用品にパンを作る場合はベーキングパウダーを一緒に使う必要があり、薄力粉を使って作るパンほどふんわりとしはしません。米粉を使って作るパンは、キメが細かく歯切れの良い食感になります。ふんわりと仕上げたい場合にはベーキングパウダーを使うなどの工夫をすると良いです。
米粉を使ってクッキーやシフォンケーキなどのケーキ、ドーナツ、どら焼きなどのお菓子作りをする際も、小麦粉と比較してふんわりとはしませんが、キメ細かくなめらかな口当たりに仕上げることができます。
例えば中力粉や強力粉を使ってクッキーを作ると、グルテンの含有量が多いためコチコチになってしまうため、コーンスターチなどを混ぜてグルテン量を抑えるなどの工夫が必要ですが、薄力粉はグルテンの含有量が少なく、米粉はグルテンが含まれないためサクっとした食感に仕上げることができます。
餃子の皮を作るときの薄力粉の代用として米粉を使うこともできます。
米粉には「アミロペクチン」とよばれるでんぷんが多く含まれているため、薄力粉を使用したときとは異なるもっちりとした食感の餃子に仕上がり、原料であるお米の優しい甘みが味わえます。
米粉を使ってたこ焼きやお好み焼きを作ることもできます。
ただし、米粉を使って作るたこ焼きやお好み焼きは上手く固まらず、べちゃべちゃとしたり粉っぽくなってしまうことがあります。米粉を使う場合はキャベツにすりおろした長芋を加えて、米粉の分量を少なめにすると固まりやすいです。
べっちゃっとしているように感じるのは、米粉の原料であるうるち米に熱を加えると糊化(こか)するという性質があるためです。また、粉が多すぎると粉っぽくなってしまう傾向があるので様子を見ながら調節することが大切です。
米粉を薄力粉の代用品として唐揚げなどの衣に使うと、米粉のほうが粒子が細かいため衣が薄くつき、カラっと揚がります。また、上述したように薄力粉と比較して油の吸収率が低いため低カロリーで、時間が経ってもべちょっとしてしまうことがありません。
ただし、かき揚げを作るときなどしっかりとした衣の食感を楽しみたい場合は、米粉よりも薄力粉のほうが適しています。
米粉を薄力粉の代用品として料理にとろみをつけると、米粉のほうが水に溶けやすいため小麦粉と比較して簡単にとろみをつけることができます。
米粉を料理のとろみ付けに使う場合も、薄力粉でとろみをつけるのと同じように水で溶いてから使います。ただし、薄力粉と比較してとろみがつくのが遅いため「とろみがつかない」と思って大量に米粉を入れてしまうと失敗してしまう原因になります。かき混ぜながら様子を見て、とろみが足りない場合は追加しましょう。
米粉と薄力粉を混ぜて使うことも可能です。ただし、混ぜ合わせる割合によって生地の粘りやもちもち感が変わってしまうため、混ぜる割合には注意が必要です。
米粉を多く使うと小麦粉よりも粘りが強く、米粉のアミロペクチンによるもちもち感が強くなる傾向があります。逆に薄力粉を多く使うと、米粉の風味やもちもち感は控えめになり小麦粉の風味が出ます。
混ぜ合わせる割合は、料理やお好みに合わせて調整してください。一般的には、米粉と薄力粉を半々ずつ混ぜることが多いです。調整が難しい場合は、まずは半々に近い割合で混ぜてみて少しずつ調整すると良いでしょう。
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