1. Fily
  2. Food
  3. Encyclopedia
  4. じゃがいもは冷凍がダメな理由とは?美味しく保存するポイントを解説

じゃがいもは冷凍がダメな理由とは?美味しく保存するポイントを解説

公開日

更新日

じゃがいもは冷凍がダメな理由とは?美味しく保存するポイントを解説

じゃがいもは冷凍保存に向いていないと耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。本記事ではじゃがいもは冷蔵保存できないといわれる原因やまずくならない冷凍保存方法などを解説します。

じゃがいもは冷凍保存できる?できない?

じゃがいもは常温でも長持ちする

じゃがいもは最も保存しやすい野菜の一つです。冷暗所なら常温で数ヶ月も保存できるので、基本的に常温保存が推奨されます。

じゃがいもは水分が多い野菜ですが、貯蔵において低温に弱いわけではありません(低温で保存できないわけではありません)。しかし、0〜5℃の温度で保存すると、でんぷんが糖化し、ホクホクとした食感が損なわれてしまいます。そのため、冷蔵・冷凍保存にはあまり向かないといわれています。

ちなみに、じゃがいもを20℃の環境に1週間ほど放置しておけば、糖化したでんぷんは8割ほど元に戻ります。

冷蔵・冷凍保存も可能

じゃがいもは冷蔵・冷凍保存にあまり向かないといわれていますが、冷蔵・冷凍保存ができないというわけではありません

夏場などの気温が高い季節やカットして使いきれなかったじゃがいもは、冷蔵保存や冷凍保存のほうが長持ちさせることができます。状況に応じて保存方法を選ぶのが良いでしょう、

じゃがいもが冷凍保存できないといわれる理由

じゃがいもが常温・冷蔵はできても特に冷凍保存はだめと言われる理由は下記の通りです。

低温障害

じゃがいもは貯蔵において低温に弱いわけではありません(低温で保存できないわけではありません)。しかし、2.5℃以下の環境では低温障害が起きやすくなります。

低温障害は低温の環境に置いておくことが原因で出る障害のことをいいます。じゃがいもの他にも里芋やなすなどの野菜にもよく起こる現象です。

低温障害になってしまうと食感や風味が悪くなったり、赤やピンクに変色してしまって見た目が悪くなってしまうことがあります。

解凍すると食感が悪くなる

じゃがいもなどの根菜には多くの繊維が含まれています。そのため生の状態ではしっかりとした固さがありますが、冷凍をすると組織が壊れたり、繊維に含まれている水分が氷となって解凍する際に水分となって抜けてしまうためスカスカになったり、ぶよぶよとした柔らかい食感になってしまいます。

食感が変化してしまうことが原因で美味しくなくなってしまうのも、じゃがいもは冷凍保存しないほうが良いといわれる原因の一つです。

冷凍することで食感が悪くなってしまうのはじゃがいも以外の野菜にも起こることで、なかなか防ぐのは難しいのですが、組織が壊れることで味が染み込みやすくなるメリットもあります。

風味が悪くなる

じゃがいもに限ったことではありませんが、食品を冷凍すると冷凍特有の臭いをおびることがあり、食材そのものの風味が悪くなってしまうことが多いです。

食品を冷凍したときに感じる特有の臭いの原因は、冷凍庫内についてしまっているその他の食材の臭いや冷凍庫内の雑菌の臭いなどです。食材が凍るときに、臭い成分も一緒に氷となって食材につくため食べるときに臭いが気になってしまうことがあります。

冷凍庫はこまめに拭き掃除しておくなど、清潔な状態にしておくことも大切です。

有害物質が生成される?

じゃがいもは冷凍することで有害物質が生成されるため、冷凍しないほうが良いと言われることもあります。

じゃがいもは低温で保存すると、還元糖が増えることがわかっています。還元糖が増えたじゃがいもを高温で加熱調理すると「アクリルアミド」とよばれる成分が生成されやすくなります。アクリルアミドは長期摂取すると人体に悪影響があるといわれている成分であるため、冷蔵・冷凍はしないほうが良いと思っている方も多いようです。

しかし、アクリルアミドと大きく関係しているのは高温で加熱調理をすることです。蒸す・茹でる・煮るといった調理法では冷蔵・冷凍したじゃがいもでも生成されません。

心配な方は冷蔵・冷凍したじゃがいもは揚げ物や炒め物に使わないようにすると良いでしょう。ちなみに炒め物にしたい場合などでも、常温に戻しておくことで還元糖が減るのでアクリルアミドの生成を抑えることができます。

出典:アクリルアミドを減らすために家庭でできること(農林水産省)

まずくならないじゃがいもの冷凍方法

じゃがいもは冷凍保存することができますが、美味しくなくなってしまうならやめたほうが良いのでは?と思いますよね。まずくならないじゃがいもの冷凍方法を紹介します。

生のままなら丸ごと

じゃがいもを生のまま丸ごと冷凍する

じゃがいもを生のまま冷凍するなら、カットして冷凍するよりも丸ごとが良いです。生のままなら丸ごと冷凍したほうが鮮度を保つことができます。

丸ごとのじゃがいもは表面積が小さく凍結時の水分の結晶化や細胞の破裂が起こりにくいです。そのため、解凍後に水分が抜けてしまい、食感や風味が損なわれるリスクが低くなります。一方、カットしたじゃがいもは表面積が増え、断面から水分が失われやすくなるため、食感や風味の劣化が丸ごと冷凍したときと比較してより顕著に現れる可能性があります。

そのため、生のまますぐに冷凍したい場合は、じゃがいもを綺麗に洗い芽をとったら、カットせずに冷凍することをおすすめします。皮がついたまま丸ごと冷凍し、そのまま調理をすれば皮に含まれている栄養も無駄にならないので栄養面的にも◎

ただし、解凍方法には十分注意しなければいけません。解凍方法については後述しますので、そちらを参考にしてください。

下茹でをする

じゃがいもを茹でる

じゃがいもは生のまま冷凍することも可能ですが、冷凍障害が起きて味や食感が悪くなってしまうことがあるので、食感や味を悪くしたり変色を防ぐために一度茹でて冷凍するのがおすすめです。

冷凍する前に茹でたり蒸気をあてたりと必要最低限の加熱処理を行うことを「ブランチング」といいます。里芋以外の野菜でも使える方法で、加熱して野菜の持っている酵素を不活性化させることにより変色を防いだり、組織を軟化させることにより冷凍によって組織が破壊され食感を損なわれるのを防ぐことができます。また、食品表面に付着している微生物の殺菌にもなります。

冷凍保存するときは、じゃがいもををかために茹でて(基本の茹で方は下記参照)粗熱を取ってから冷凍します。

出典:冷凍食品Q&A冷凍食品の基礎知識(日本冷凍食品協会)

じゃがいもの茹で方の基本

1.じゃがいもをきれいに洗う

2.鍋にじゃがいもを入れ、かぶるくらいの水を入れる

3.中火にかけ、沸騰したら弱中火にし、竹串がスッと中に通るまで加熱する

マッシュがおすすめ

茹でたじゃがいもをマッシュして冷凍する

じゃがいもを冷凍するときは一度茹でてマッシュにしてからがおすすめです。解凍されると食感が悪くなってしまいがちなじゃがいもも、予めマッシュにしておけば食感も悪さが気にならなくなります。

マッシュにして冷凍するときは、皮を剥いてひと口サイズに切って熱湯で15分ほど茹で、潰してマッシュポテトを作ります。しっかり粗熱をとってから、小分けにし平たくラップに包み、冷凍用ジッパー付きポリ袋に入れて、空気をしっかり抜いて冷凍します。

マッシュしたじゃがいもはポテトサラダなどにすることができますが、ハムなど他の食材を入れると日持ちしなくなるので、混ぜないようにしましょう。

じゃがいもの冷凍のポイント

しっかりと水気をとる

茹でたじゃがいもの水けをキッチンペーパーで取る

生のまま丸ごと冷凍する場合はじゃがいもを綺麗に洗った後、茹でてから冷凍する場合は茹でた後にしっかりと水気をふきとりましょう。

水分が残ったまま冷凍してしまうと余分な水分まで凍ってしまい、調理をするときにべちょべちょになってしまいます。キッチンペーパーで拭き取るなどし、しっかりと水けを切っておくことも冷凍じゃがいもを解凍したときにぶよぶよにならない大切なポイントです。

空気を抜いてしっかり密閉する

じゃがいもを冷凍する際は、冷凍袋の空気をしっかりと抜いてから口を閉じる

水気をしっかり拭き取って、保存用ポリ袋にいれたら、空気をしっかり抜いて密閉します。

しっかり密閉しておくことで、空気中の酸素に触れて変色したり味が落ちてしまうことを防ぐことができます。また、冷凍庫内の臭い移り防止にもなります。

金属トレイの上に置く

じゃがいもを冷凍する時は金属トレイの上にのせてから冷凍するのがおすすめ

じゃがいもに限らず、野菜を冷凍する場合は急速冷凍をしたほうが旨みをぎゅっと閉じ込めることができます。特に茹でてから冷凍する場合は、水分が多くなっている状態ですので短時間で凍らせるのがポイントになります。

冷蔵庫に急速冷凍機能がない場合は、金属トレイの上にのせて冷凍庫へ。金属トレイは温度の伝達が早いため、急速冷凍と同じ効果を得ることができます。

また、冷凍庫の扉付近は開け閉めによる温度変化の影響を受けやすいため、できるだけ温度変化の少ない扉付近を避けた場所に置いたほうが早く冷凍することができます。

遅くても1ヶ月以内に食べる

冷凍すれば永遠に保存できてしまうような気がしてしまいますが、どんなに長く保存しても1ヶ月を目安に食べきるようにしましょう。

冷凍しても長く保存していると鮮度は落ちてしまうので、味や食感はどんどん悪くなってしまいます。冷凍しているからといっていつまでも入れておかず、なるべく早く食べきることが大切です。

冷凍したじゃがいもの解凍方法

冷凍したじゃがいもを美味しく食べるためには解凍方法も重要です。冷凍したじゃがいもでも美味しく食べられるおすすめの解答法を紹介します。

丸ごとは蒸し解凍がおすすめ

丸ごと冷凍したじゃがいもは蒸して解凍するのがおすすめ

丸ごと冷凍したじゃがいもは蒸し解凍がおすすめです。蒸し解凍すれば、水分を守りホクホクのじゃがいもに仕上げることができます。

「蒸す」といっても蒸し器がない・蒸し器を使うのは面倒と思う方も多いと思いますが、レンジで代用可能です。ラップに包んでレンジで解凍することで、じゃがいもから出た水分が蒸気となって蒸しているのとほぼ同じ状態になるのです。

レンジを使う場合は、電子レンジ(600W)で2~3分加熱し、上下を返してさらに2~3分加熱します。加熱時間はレンジのワット数やじゃがいもの大きさによっても異なるので、様子を見ながらお好みの固さになるまで少しずつ加熱時間を増やしていってください。

マッシュは自然解凍かレンジ解凍

マッシュして冷凍したじゃがいもは自然解凍もしくはレンジ解凍するのがおすすめ

マッシュしてから冷凍したじゃがいもはそのままでは使えないので、冷蔵庫に移して自然解凍します。

冷蔵庫にうつして低温でゆっくり解凍することで、水分がですぎて食感や味が悪くなってしまうことを防げます。時間はかかってしまうので、使う日の前日に冷蔵庫にうつして置くと良いでしょう。

早く解凍したい場合はレンジ解凍しても大丈夫です。電子レンジを使うとホクホクとした食感になります。しかし、加熱しすぎてしまうとボソボソになってしまうので注意してください。様子を見ながら加熱することが大切です。

カットして茹でたじゃがいもはそのまま加熱調理

カットして冷凍したじゃがいもは加熱調理して解凍するのがおすすめ

カットしてから冷凍したじゃがいもは、断面から水分が出てきてしまうので自然解凍は避けましょう。カットして茹でたじゃがいもは、解凍せずにそのまま加熱調理がベストです。

解凍しなくても煮物や炒めもの、スープ、フライドポテトを作ることができます。そのまま加熱調理すれば水分と一緒にビタミンCなどの水溶性の栄養素が流出してしまうことがないので栄養面的にも◎

冷凍以外のじゃがいもの保存方法

上述したようにじゃがいもは冷凍以外の保存方法でも比較的長持ちする野菜です。最後に冷凍以外のじゃがいもの保存方法を紹介します。

常温保存

段ボールに入れて(夏:1ヶ月、秋冬:3ヶ月)

じゃがいもを新聞紙を敷いた段ボールに入れて、上からも新聞紙をかぶせて冷暗所で保存する

じゃがいもはそこまで乾燥に弱いわけではないので、一つずつ新聞紙(またはキッチンペーパー)に包まなくても、長く保存できます。特に数が多いときは面倒なのでまとめて保湿。直射日光が当たらず風通しのよい涼しい場所なら、秋・冬は3ヶ月、夏場でも1ヶ月は常温保存が可能です。

じゃがいもを多く購入した場合は、新聞紙を下に敷いたダンボール等にまとめて入れて、上からも新聞紙をかぶせます。

紙袋に入れて(夏:1ヶ月、秋冬:3ヶ月)

じゃがいもを常温保存する際は紙袋に入れて保存してもよい

じゃがいもの数がそこまで多くない場合や、ダンボールや新聞紙がない場合は、紙袋に入れましょう。

ビタミンが多く「大地のりんご」ともいわれるじゃがいもですが、りんごと一緒に常温保存するのがおすすめです。りんごから放出されるエチレンガスは果実の熟成を進めますが、じゃがいもの発芽を抑える効果があります。じゃがいもは暖かく明るい場所で発芽が進むので、繰り返しになりますが、冷暗所で保存することが大切!じゃがいもの芽はソラニンなどの天然の毒を持っているので、必ず取り除いてから食べるようにしましょう。

冷蔵保存

基本的には常温保存がおすすめなじゃがいもですが、下記の場合は冷蔵保存がおすすめです。

  • 夏場に1ヶ月よりも長く保存したい(夏も安心して保存したい)

  • 冬場であっても3ヶ月より長く保存したい

  • カットしたじゃがいもを保存したい

じゃがいもは正しく冷蔵すれば半年ほど保存することができます。また、じゃがいもは低温保存すると、収穫直後では少なかった糖分(0.1〜0.5%)が、増加(0.5〜2.5%)します。

丸ごと(最大6ヶ月)

丸ごとのじゃがいもを1個ずつキッチンペーパー包みポリ袋に入れて冷蔵保存する

丸ごとじゃがいも冷蔵保存する場合は、一つずつキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて軽く口を締め、野菜室に入れます。キッチンペーパーに包むことで寒さからじゃがいもを守ることができます。ポリ袋に入れることで乾燥しすぎることを防ぎながら、口は軽く締めることで通気性を保ちます。

1週間に1度はキッチンペーパーが湿っていないか確認し、湿っている場合は新しいものに取り替えましょう。
野菜室は温度・湿度ともに冷蔵室より高いので、じゃがいもに適しています。冷蔵保存でもりんごを一緒に入れると効果があります。

この方法で保存すれば、最大で6ヶ月も日持ちします。

カット(2〜3日)

カットしたじゃがいもは水につけて冷蔵する

切ったじゃがいもは傷みが早く、生のまま放置すると切り口が褐変します。これはポリフェノール物質がポリフェノラーゼなどの酵素によって酸化するためです。また、チロシンがチロシナーゼによってメラニンとなるのも褐色に変わる原因です。

カットしたじゃがいもは常温保存できないので、水に浸けて冷蔵保存します。2〜3日以内に食べるようにしましょう。茹でたじゃいがもはさらに傷みが早いので、極力その日のうちに消費するようにしましょう。