ヨーロッパ生まれのジンと、日本生まれの焼酎。どちらも強めのお酒というイメージがありますが、この記事では、ジンと焼酎それぞれの原料や製法、味や香りといった観点から両者の違いについて紹介します。
ジンの基本的な原料は大麦、ライ麦、トウモロコシ、ジャガイモといった穀物ですが、ジンの場合、香り付け用に様々な原料が使用されており、ジンの香りの決め手となる「ジュニパーベリー」という果実を乾燥させたスパイスをはじめ、様々なハーブやスパイス、フルーツが用いられています。
ジュパニーベリーは、日本語では「セイヨウネズ(西洋杜松)」と呼ばれる針葉樹に成る果実で、「ベリー」という名前がついているものの、他のベリー系の果実とは少し異なる、スパイシーで爽やかな風味を持ち、これがジンのクリアでドライなテイストの決め手となります。
香りづけに用いるジュニパーベリー以外の原料は、コリアンダー、アニス、キャラウェイ、フェンネル、カルダモンなどの種子、アンジェリカ、オリス、リコリスなどの根、レモンやオレンジなどの果皮、シナモンの樹皮など様々です。
焼酎の原料は多岐にわたります。製法の項目にて詳しく紹介しますが、製法で焼酎は「甲類焼酎」と「乙類焼酎」に分けられ、それぞれの代表的な原料は以下の通りです。
サトウキビ、酒粕(甲類):サトウキビの廃糖蜜(砂糖を作る際に出る搾りかす)や、日本酒を造る際に生じる酒粕を原料として発酵させます。
芋(乙類):芋焼酎の原料には、サツマイモが使われます。主に九州南部の宮崎県や鹿児島県で製造されています。現在では、焼き芋を原料とした「焼き芋焼酎」も作られています。
米(乙類):米焼酎の原料には、日本酒の原料と同じく、米が使用されます。主に熊本県の人吉地方や、新潟県や秋田県といったお米の生産県などで作られています。
麦(乙類):麦焼酎の原料には、大麦が使用されます。長崎県で製造が始まり、日本全国で作られています。
甲類焼酎でも米や芋、大麦、トウモロコシなどが使われる場合もあります。また、乙類焼酎でも、上記以外に黒糖やそば、粟など、様々な原料から造られています。
米麴から造られる沖縄県の「泡盛」も、製法にやや違いがあるものの、焼酎の一種と分類されています。
ジン・焼酎のどちらも穀物などの原料を糖化・発酵させ、蒸留することで製造される蒸留酒です。大きな違いとしては、ジンは蒸留したものに香りづけを行い、熟成はさせないのですっきりとした味わいが特徴で、焼酎は蒸留したものを貯蔵・熟成させるのでまろやかな味わいとなります。焼酎は製法によって「甲類焼酎」と「乙類焼酎」に分類されます。
「甲類焼酎」は、近代的な蒸留方法である「連続式蒸留」によって蒸留された焼酎です。伝統的な方法で造られる乙類焼酎に対して、甲類焼酎は「新式焼酎」と呼ばれることもあります。
連続式蒸留はもともとはウイスキーやジン造りなどに使われていた蒸留方法で、19世紀のイギリスで誕生したものです。連続式蒸留機は大きな蒸留器の中で何度も蒸留を繰り返すシステムになっている蒸留方法で、単式蒸溜に比べて効率的に不純物を取り除き、純度の高いアルコールを抽出できることから、出来上がるお酒がクリアな味わいになるのが特徴です。
単式に比べると効率よく蒸留が行えることから、大量生産向きで、価格の低い製品が多くなっています。
「乙類焼酎」は、昔ながらの蒸留方法である「単式蒸溜」で蒸留された焼酎です。旧式の製法で造られることから、「旧式焼酎」と呼ばれることもあります。また、甲、乙という呼び名が優劣をつけるような呼び名であることから、乙類焼酎は「本格焼酎」とも呼ばれます。
単式蒸留とは、一度のもろみ(発酵させた焼酎の原料)の投入につき、一度だけ蒸留を行う蒸溜方法で、蒸留は一回のみなので、使われる原料の個性や癖が現れやすいのが特徴です。比較的シンプルな構造であり、設備も簡単に作れるため、小規模な蒸留所で用いられています。
甲類よりも乙類の方がアルコール度が高くなりますが、アルコール以外の成分も多く含まれており、濃厚で複雑な味わいと言われます。時間と手間がかかるため、値段の高い製品が多くなっています。
蒸留酒は高温で熱して造る「火の酒」であり、火の酒は人間の魂にはたらきかけ、肉体を目覚めさせ、また活力を与えることから、蒸留酒はスピリッツ(spirits)と呼ばれるようになったようです。
ジン以外にもブランデー、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ラム、テキーラも蒸留酒であり、広い意味ではこれら全て「スピリッツ」と呼べますが、日本において「スピリッツ」とはウォッカ、ジン、ラム、テキーラを指すことが多く、この4種類のお酒は「世界4大スピリッツ」とも呼ばれています。
日本における狭い意味での「スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)」という呼称は、1953年に制定された酒税法における分類によって形作られたようです。
1953年当時、蒸留酒のうち、既に日本である程度の知名度があった「ブランデー」、「ウイスキー」、「焼酎」は個別の分類とし、それ以外(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ等)が「スピリッツ」に分類されました。
ちなみに、日本の酒税法における分類としての「スピリッツ」は、やや複雑な定義にはなりますが、「焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール以外の蒸留酒類で、エキス分が2度(2%)未満のもの」とされています。
なお、海外では蒸留酒は専ら「liquor(リカー)」と呼ばれています。
ジンは、ジュニパーベリーを始めとしたスパイスやハーブ、フルーツなどのスパイシーで爽やかな独特の香りを持つ、切れ味のあるクリアな味わいが特徴的です。製造しているメーカーで香り付けに使用している原料が異なるので、製品ごとに違った味わいが楽しめます。
定番の「ドライジン」以外には、まろやかな甘みを特徴としたオランダ産の「ジュネヴァ」、バランスの良い風味のドイツ産の「シュタインヘーガー」、甘めのドライジンともいえるイギリス産の「オールドトムジン」があります。また、生産されている地方によって風味の異なる「クラフトジン」が近年人気を博しています。
製品は40~50度のアルコール度数で売られている製品が多くなっていますが、飲む人の好みに合わせて37度前後、50度以上のジンも販売されています。ちなみに、EU(欧州連合)ではジンのアルコール度数は「37.5度以上」と定義づけられています。
焼酎は甲類と乙類で味わいが異なります。甲類はすっきりとクリアな味わいで初心者でも飲みやすく、乙類は素材の味わいを感じられるようなまろやかなテイストです。
乙類は使われる素材ごとに味や香りが異なり、代表的なもので言えば、芋焼酎は芋のまろやかな甘みが感じられ、米焼酎はお米のふんわりとしたどこかフルーティーな甘みがあり、麦焼酎は癖が少なく、香ばしくすっきりとした味わいが特徴的です。
なお、甲類と乙類をブレンドした焼酎もあり、乙類の風味を甲類にブレンドした「甲乙混和焼酎」、癖の強い乙類を飲みやすくするために甲類をブレンドした「乙甲混和焼酎」があります。
アルコール度数は、甲類と乙類で上限が違うものの、どちらも熟成後に加水されて濃度が下げられており、甲類は20度、乙類は25度の製品が多くなっています。ジンやウイスキー、ブランデーといったほかの蒸留酒よりも度数が低いので飲みやすいとされています。
ジンは、その切れ味ある飲み口から、炭酸水やトニックウォーター、ライムとの相性が良く、カクテルの「ジン・トニック」はとても有名ですね。また、「マティーニ」、「ネグローニ」、「ギムレット」はジンをベースとした人気のカクテルです。
ジュースで割るなら柑橘系のジュースや、炭酸系のコーラやジンジャーエールと相性が良いですよ。オランダやドイツで生産されている甘めのジンはストレートやロックでも飲まれています。
焼酎はロック、水割り、ソーダ割り、お湯割りが王道の飲み方とされています。
クリアな味わいの甲類は、すっきりと楽しめるソーダ割や、お茶割りがおすすめです。癖の少ない味わいなので、レモンサワーなどのチューハイのベースにしても美味しく飲むことができます。
素材の味が強めの乙類は、焼酎そのものの味が楽しめるロックや水割りがおすすめです。お湯割りにすると焼酎の風味が引き立ちますよ。
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