アルコール度数が高く、クリアなテイストが特徴的なウォッカはどのような原料から造られているのでしょうか。この記事では、ウォッカの原料や製法などを紹介します。
ウォッカは、大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモといった穀物などの原料を加工して造られる、ロシア発祥の蒸留酒(スピリッツ)の一種です。蒸留酒はアルコール度数が高く、火をつければ燃えることから、「火酒(かしゅ)」と呼ばれることもあります。ウォッカはアルコール度数が40度と高く、氷点下でも凍らないため、超低温地域で重宝されてきた歴史があります。
ウォッカは製造過程において、白樺の木炭などのフィルターで濾過する工程があり、これによって雑味が取り除かれるため、無味無臭ですっきりとした味わい、まろやかな爽快感が特徴的で、世界4大スピリッツ(ウォッカ、ジン、ラム、テキーラ)の中では最も癖のない風味と言われています。
なお、クリアさが特徴的なウォッカですが、香りや味を加えた「フレーバードウォッカ」もあり、世界中で様々な味のウォッカが流通しています。
これらの特徴から、カクテルベースとして使われることが多いものの、ストレートやロックなど、様々な飲み方で嗜まれています。
伝統的な原料は大麦、小麦、ライ麦などの穀物やジャガイモですが、国や地域によって様々な原料から造られています。しかし、ウォッカは純度の高い蒸留酒であり、製造の工程で濾過も行うため、原料によって味や香りに大きな差が生じるということはなく、わずかな違いが生じる程度となっています。ただし、このわずかな違いがウォッカの良し悪しや、選ぶ決め手にもなるので、各メーカーは原料にこだわって製造しています。
なお、EU(欧州連合)では、サトウキビやブドウなどを原料とする蒸留酒をウォッカと認めるか意見が分かれていたようですが、最終的には原材料を明記することによって、ウォッカと認めることになりました。現在ではミルクやフルーツなど様々な原料から造られるウォッカが流通しています。
多くのウォッカは「グレーン・ウォッカ」と呼ばれ、大麦や小麦、ライ麦、トウモロコシといった穀物を組み合わせて使用してウォッカを製造しています。一方、ジャガイモを原料としたウォッカは「ポテト・ウォッカ」と呼ばれます。
従来の無色透明でスッキリとした風味の「ピュアウォッカ」は上記の原料のみが使われていますが、「フレーバードウォッカ」と呼ばれる風味づけされたウォッカには、香り付けにハーブやスパイス、フルーツのフレーバーが使われています。
小麦はパンや麺類の原料として、大麦はビールの原料として有名ですが、ウォッカの原料としても使われており、流通しているウォッカのほとんどが小麦や大麦を原料としています。小麦・大麦から造られるウォッカは、すっきりとした味わいの中にわずかな甘みを感じられます。有名な銘柄では「スミノフ」、「アブソルート」、「グレイグース」などが挙げられます。
パンの材料でも健康志向なイメージのあるライ麦もウォッカの材料として使われています。ポーランド産のウォッカの原料として使われることが多く、大麦や小麦よりもすっきりとした味わいになります。銘柄では「ズブロッカ」が有名です。
様々な用途のあるトウモロコシもウォッカの原料の1つで、原料の中では最も安価で、甘味はあるものの、麦系と比べると香りの弱い原料です。
じゃがいもは北欧やロシアなど一部の寒冷地でウォッカの原料として使われてきました。穀物よりも風味が強く、ストレートで嗜まれるウォッカが多くなっています。穀類を原料とするウォッカと比べると市場への流通は少なく、日本でもあまり一般的ではありません。
上記の原料以外にも、フランスにはぶどうから造られたウォッカ「シロック」があり、日本ではお米を原料としたウォッカ「HAKU」などが製造されています。また、流通量はごくわずかですが、バナナやミルクといった原料から造られるウォッカもあります。
ウォッカ以外のスピリッツにはジン、ラム、テキーラがあります。
ジンの基本的な原料・製法はウォッカと同じ(小麦、大麦、ライ麦、じゃがいも)ですが、ジンは製造の過程において濾過は行わず、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)という低木の果実を乾燥させたスパイスをはじめ、様々なハーブやスパイス、フルーツで香りづけするため、独特の風味があります。
ラムはサトウキビから造られる、カリブ地域原産の蒸留酒です。サトウキビの搾り汁や廃糖蜜(搾りかす)を使用するため、甘い香りと味わいが特徴的なお酒で、アルコール度数は40~50度程度の製品が多くなっています。
テキーラはメキシコ発祥の蒸留酒で、サボテンから造られるお酒とよく勘違いされていますが、アガベ(リュウゼツラン)という多肉植物から造られています。アルコール度数は、テキーラにおいては「35~55度」と認定機関の規則によって厳格に決められています。味は製造方法によって様々で、まろやかなものから苦みや渋みの強いものまでありますよ。
ウォッカは基本的に「糖化・発酵、蒸留、加水、濾過、瓶詰め」の5ステップによって製造されています。ただし、蒸留や濾過の方法や回数はメーカーごとに異なり、この違いによってウォッカの風味に大きな差が生まれています。
原料を砕いて水を加え、加熱することでデンプンが糖に変化(糖化)し、ドロドロの液体(マッシュ)になります。このマッシュに酵母を加え、発酵させることでアルコール性の液体(ウォッシュ)が出来上がります。
ウォッシュを蒸留器で蒸留し、水とアルコール、その他の化学物質に分離させます。アルコールは水よりも早く沸騰するため、ウォッシュを沸騰させるとアルコールが先に蒸気となり、アルコールのみ分離させることが可能です。
蒸気の最初と最後には不純物が混ざりやすいため、それらの蒸気を破棄するか、蒸留したアルコールと混ぜて2、3回蒸留して不純物を取り除きます。蒸留の回数を増やすほど高純度となります。
蒸留によってアルコール度数が非常に高くなっているため、水を加えて度数を調整します。どの程度加水するかは、そのウォッカのアルコール度数により異なりますが、一般的なウォッカであれば40度前後になるように加水します。
ウォッカの製造工程の中で最も特徴的で、ウォッカ造りの肝とも言えるのがこの「濾過」です。木炭等のフィルターを使って濾過することで、蒸留では分離できなかった不純物を取り除き、ウォッカ特有のクリアさ、無味無臭さへと近づけます。
フィルターの木炭は、主に伝統的な素材である白樺や、アカシアなどの活性炭が使用されますが、メーカーによりフィルターの素材は様々です。木炭以外では、砂、溶岩等の自然物質やダイヤモンドの粉末、ステンレス鋼などの鉱石や貴金属など、様々な素材が使用されています。
濾過の工程を最小限にとどめることで原料の持つ風味を生かす製造方法を採用しているメーカーもあります。
フレーバードウォッカの場合、この濾過の工程の後に香り付けを行います。
濾過した液体を瓶詰めすることでウォッカの完成です。様々なデザインの瓶のウォッカが流通しているので、瓶のデザインでウォッカを選ぶのも一興でしょう。
有名なものとしては、コバルトブルーが美しいアメリカの「スカイウォッカ」、薬瓶のようなレトロで無機質なデザインが特徴的なスウェーデンの「アブソルート」があります。
有名ブランドのウォッカの原料は、こだわっている企業もある一方で、企業秘密なのためわからないことが多いです。各社はウォッカづくりの肝である「濾過」を中心に、自社製法の独自性を全面に出して宣伝広告しています。
最後に、有名ブランドの製法について紹介していきます。
スミノフは3回の蒸留の後、伝統的な白樺の活性炭で10回濾過しており、1滴1滴を作り出すのにじっくりと8時間以上もかけています。スミノフはウォッカの中でも雑味・濁りを徹底的に取り除いた、無色透明のクリアなテイストが特長で、ミックスするものを選ばず、どんなカクテルにも合うウォッカです。
ギルビーは、35mの非常に背の高い連続式蒸留器を使用し2回蒸留する「連続蒸留法」によって純度の高いアルコールを洗練し、雑味をしっかり取り除いています。また、原料となる純度の高いアルコールを専用のタンクで貯蔵し、その品質を常に管理し続けています。
厳密な品質チェックを行い、合格をしたものだけが保管されてウォッカに使用されているので、ギルビーウォッカは滑らかで雑味やくせがない味わいで、様々なカクテルのベースに使われることの多いウォッカです。
原料には南スウェーデン産の小麦と、天然水を使用しているスウェーデン産ウォッカの「アブソルート」は、ギルビーと同じく「連続蒸留法」によって一切の不純物を残さず取り除いていることから、クリアさが特徴的なウォッカの中でも、高級感のある滑らかさや、ドライフルーツの香りが芳醇な味わいが特長のウォッカです。
厳選された小麦やライ麦、トウモロコシといった穀物と、ミネラル豊富な天然温泉水から造られているロシアの「ストリチナヤ」は、石英(せきえい)の砂と白樺の木炭で4回濾過することで、なめらかな舌触りとすっきりとした味わいになっています。甘いクリームの香りやホットペッパーのかすかな刺激、温泉水ならではのミネラルも感じられます。
「シロック」は、2003年にフランスで誕生したウォッカで、伝統的な大麦やジャガイモといった穀物を原料とせず、100%フランス産のぶどうから造られている、革新的なウォッカです。
高級ワインの製法に用いられる、熱を加えないこだわりの低温製法と、独自の蒸留方法によって5回蒸留されるシロックは、ブドウの香りはもちろん、さわやかなシトラス系の香りもあり、まろやかさが際だつウォッカです。 ウォッカならではの高いアルコール度数も、ぶどう由来のやわらかな香りがアルコールの強さを抑えています。
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