デクラインシットアップは、上体が下になった状態で実施するシットアップです。今回は、デクラインシットアップのやり方及びコツについてご紹介します。
デクラインシットアップは英語で「decline sit-up」で、「下を向いた状態で実施するシットアップ」を指します。
この「下を向く」ということがよくわからないかもしれませんが、筋トレにおいて「デクライン」とは「脚が頭よりも上にきた状態(=頭が脚よりも下にきた状態)」を指します(この逆がインクラインです)。
デクラインシットアップは、シットアップを実施する上で、重力の影響をより大きく受けることから、負荷が高くなることが特徴として挙げられます。デクラインの角度を大きくすればするほど負荷は高まり、90度のとき最大負荷となります。
デクラインシットアップは、専用のシットアップ台がないと実施するのが難しく、基本的にはジムで実施するエクササイズとなります。
デクラインシットアップでは腹直筋を鍛えることができます。
腹直筋とは、お腹の部分にある筋肉です。腹直筋と聞くと、なんとなく馴染みのない感じがしてしまいますが、所謂、我々が「腹筋」と呼ぶ筋肉は腹直筋を指します(厳密には、腹筋は、腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹横筋の総称であると想定されます)。 筋トレを少ししたことがある人ならば、「シックスパック」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、シックスパックとは特に腹直筋が身体の表面に浮き出た状態を指します(シックスパックは人によって様々な形をしており、エイトパックだったり、フォーパックだったりします)。
デクラインシットアップで腹直筋を鍛えることで、特にお腹周りについている脂肪を燃焼することを期待できます。しかし、腹直筋だけを鍛えるということで得られる効果は限定的です。腹直筋を鍛えるエクササイズに加えて、有酸素運動や食事制限を行う必要があります。
ちなみに、シックスパックを作りたい場合も同様で、計画的な有酸素運動と食事制限を実施する必要があります。
注意したいのが、 腹直筋を鍛えすぎるとむしろウエストが太くなる可能性がある点です。脂肪を燃焼させたいのか、がっつり筋肉をつけたいのか、目標によってダンベルの重さ、実施する回数を組む必要があります。
腹直筋は、身体の中ではそこまで大きな筋肉ではありません。そもそも腹直筋が分類される腹筋があまり大きい筋肉とはいえません。
代謝を上げることを主目的とするならば、大腿四頭筋や大臀筋など大きい筋肉を主に鍛えるべきです。
とはいえ、腹直筋は腹筋の中では最も大きい筋肉であり、シットアップで鍛えることで基礎代謝の改善効果を期待できます。代謝を改善するということは、脂肪を燃焼させやすい身体を作るということであり、ダイエットの下地を作ることができます。
朝に実施することで、一日の代謝がアップすることが期待できるのでおすすめです。
腹直筋は背筋とともに上半身を支える筋肉です。そのため、シットアップを実施することで、猫背の予防、改善の効果が期待できます。
ちなみに、反り腰はもともと猫背が原因になっていることが多いです。 また、腹直筋には骨盤の角度を調整する役割もあります。
腰痛は、姿勢が悪化し、上半身と下半身の付け根である腰に負担がかかることが原因の一つです。そのため、腹直筋を鍛えることで姿勢が改善すると、腰痛も予防・改善できる可能性があります。
筋トレ初心者の場合、デクラインシットアップは12〜15回を3セット実施します。
ディクラインシットアップは、シットアップ台の角度にもよりますが比較的強度の高いエクササイズです。そのため、実施する際には、一般的な筋トレで標準的な回数とされているものよりも少ない10〜12回を3セット実施するようにしましょう。
シットアップに少し慣れた方の場合、シットアップは、ウォーミングアップのセット、仕上げのセットを追加して5セット実施するようにします。
シットアップに少し慣れた方の場合、まず、ウォーミングアップのセットを追加します。ウォーミングアップのセットは、12〜15回を実施します。次に、仕上げのセットを追加します。仕上げのセットでは、本番の3セットに対してより丁寧に動きを意識して15回きっちりと実施しましょう。
筋トレ上級者の場合、前述したやり方に加えて、アセンディング法、スーパーセット等を実施するようにします。
アセンディング法とは、別名ピラミッドセットと呼ばれる方法です。Max重量の50%で12回程度、Max重量の60%で10回程度、Max重量の70%で8回程度、Max重量の80%で6回程度、Max重量の85%で4回程度と徐々に重量を増やしていきながら、それに伴って実施回数を減らすやり方です。怪我を防止しながら高強度のトレーニングを実施できるため、おすすめの方法です。
スーパーセットとは、2種類の種目をインターバルなしで実施する方法です(3種目実施する場合にはトライセット、5種目以上実施する場合にはジャイアントセットと呼ばれます)。スーパーセットの種目の設定方法は様々であり、例えばデクラインシットアップと一緒に実施するならばシットアップ、レッグレイズ、オブリーククランチなどを実施するのがおすすめです。回数設定に厳密な指定はありませんが、基本的には何れの種目も10〜15回実施できるようにしましょう。
デクラインシットアップに限らず、ほぼ全てのエクササイズではエクササイズ実施中、常に負荷が入っていることが重要です。
デクラインシットアップの場合、よく実施されているフォームは「背中がベンチについた状態」から「お腹が太ももに付く状態」まで「上げ切る」というものです。しかし、これではボトムポジション(身体が最も低い位置にある状態)とトップポジション(身体が最も高い位置にある状態)で負荷が抜けています。
これを防ぐためには、「背中がベンチに対してやや上がった状態」から、「腹直筋の負荷が抜けない状態」までを可動域と設定して実施する必要があります。このことから、通常の「一般的に実施されているシットアップ」に対して可動域がかなり小さくなることに留意して実施するようにしましょう。
デクラインシットアップなどの腹直筋を鍛えるエクササイズは、筋肉をしっかり収縮させることが重要とされます。
デクラインシットアップにおいてはトップポジション(上体が起き上がった状態)でしっかりと腹直筋を収縮させる必要があります。
具体的には、トップポジションに移行するに伴い「顎を出す」ようにすることで、自然と腹直筋が収縮します。逆にボトムポジション(上体が床に付きそうな状態)では顎を引くようにします。
デクラインシットアップの強度は、腕の位置も関係します。
教科書的なシットアップでは、手を頭の後ろに設定してシットアップを実施することが推奨されますが、このように実施すると腕の重さも加味されるため、エクササイズ強度が比較的大きくなります。
そのため、まず実施する際には胸の前に手を組む様にしてシットアップを実施するようにしましょう。これがきちんとできるようになってきたら、手を頭の後ろで組む様にして実施しましょう。
手を身体の横に配置して実施しても良いですが、そのように実施すると手の勢いを使って実施しがちになるため注意しましょう。
デクラインシットアップは、シットアップよりも負荷が高いエクササイズであることから、一般的にはシットアップが問題なく実施できる人が多く取り入れているエクササイズです。
その様な方の多くは腹直筋に自信があることから、負荷を高めるためにベンチ台の角度をかなりきつくして実施しているケースが多いですが、その多くは正確なシットアップが実施することができていません。
正確にシットアップを実施するためには、ベンチ台の角度をきつくしすぎると余程の上級者でないと難しいということが言えます。以上の理由から、基本的にはベンチ台の角度はやや浅すぎる位で実施するようにしましょう。
また、シットアップは腰の怪我に繋がりやすい種目なので、筋トレ初心者の方はデクラインシットアップはそもそも実施しない方がよいと言えます。
デクラインシットアップに限った話ではありませんが、鍛えている部位を意識することは非常に有効です。これは、筋トレ用語で「マインドマッスルコネクション」と呼ばれるテクニックであり、トレーニング中は鍛えている部位の動きを意識しながら実施するとエクササイズの効率が大きく向上します。このため、最初は難しいですが、腹直筋の動きを鏡でチェックしながら、自身の実施している種目の中での腹直筋の動きを意識するのがおすすめです(トレーニング中上級者の動画を見ながら、それをイメージして実施するのも効果的です)。
デクラインシットアップに限った話ではありませんが、トレーニング中の全ての動作は自身の管理下に置く必要があります。トレーニング中の動作を管理下に置くには、筋トレの動作のスピードをコントロールする必要があります。これは、もう少し噛み砕くと、トレーニングをしている最中に扱っているバーベル、ダンベル、マシンの重量の動きをコントロールすることになります。ここで、高重量を扱いすぎると、動作の際に動きをコントロールできなくなり、エクササイズ効率が低下することはもちろんですが、怪我の原因にもなります。
具体的に、動作のスピードは、教科書的には、重りが下がるときはゆっくり(「ネガティブ動作を意識する」とも表現されます)、重りが上がるときは素早く(「ポジティブ動作を意識する」とも表現されます)するということがあります (上級者になると、この限りではなく、全ての動作をゆっくりにするスロートレーニングや、スロートレーニングからさらにゆっくりにするスパースロートレーニングなどのテクニックもあります)。重りを下げるときは、地球では重力が下方向に常に働いているため、その重力に争う様にゆっくり下げます。一方、重りを上げるときは重力とは逆向きの運動になるため、素早く上げます。
ネガティブ動作とポジティブ動作のうち、特に重要なのがネガティブ動作です。このネガティブ動作をしっかりと意識するだけで、どんなトレーニングでもトレーニングの質は劇的に改善します。
デクラインシットアップに限った話ではありませんが、トレーニング中に呼吸方法を意識することでトレーニング効率の改善を期待できます。呼吸は、筋肉の伸展と収縮を促し、デクラインシットアップでは、上体を下ろすときに息を吸い、上体を上げるときに息を吐くことを意識しましょう。
慣れないうちは、これが逆になってしまってもそこまで重篤な問題が発生するわけではありませんが、息を止めてトレーニングを行うということは避けましょう。息を止めてトレーニングを行うと、一時的に大きな力を発揮できるという考え方もあります。しかし、これはあくまでも重量を競うパワーリフティングやウェイトリフティングでの話です。トレーニングをして、身体を成長させようとした場合には、必ずしも重量を扱う必要がないことから、呼吸を止めるのではなく、呼吸をしっかり行うことが重要です。ここで、呼吸を止めて実施すると、最悪、血圧が急激に上昇し倒れてしまうというケースもあるため注意が必要です。
シットアップは、デクラインシットアップの基本となる種目であるためです。
シットアップは、デクラインシットアップと同様に腹直筋全体を刺激するエクササイズです。実際に実施する場合には、シットアップをウォーミングアップ種目として先に実施し、デクラインシットアップを本番種目として実施するようにしましょう。
シットアップは、12〜15回3セット実施します。
シットアップは、腹直筋全体を鍛えるエクササイズですが、腰をかなり痛めやすいエクササイズです。このため、レッグレイズと同様に回数を多くして実施しないことがポイントであり、一般的なエクササイズでの推奨回数である12〜15回を実施するようにしましょう。
腹直筋に負荷が入る範囲で実施する(=上体を上げすぎない、下げすぎない)。
トップポジションで顎を出す。
上体を上げるときはしっかりと息を吐き、戻すときに息を吸う。
高回数で実施しない。
レッグレイズは、シットアップでは集中的に鍛えることが難しい腹直筋下部を鍛えることができるためです。
レッグレイズは、腹直筋下部を鍛えるためのエクササイズであり、エクササイズ強度はシットアップと比較すると高くありません。実際に実施する場合には、シットアップを先に実施し、レッグレイズをその後に実施することで腹筋全体をバランス良く鍛えることを期待できます。
レッグレイズは、15〜18回3セット実施します。
レッグレイズは、腹直筋下部を鍛えるための標準的な腹筋のエクササイズです。基本のレッグレイズはそこまで負荷が高くないため、標準的な筋トレの回数よりもやや回数が多い15〜18回を実施します。
とにかく足の動きをコントロールする。
腹直筋下部を鍛えるときよりも、トップポジションをやや深めに設定する。
足を床ぎりぎりまで下げる。
膝を真っ直ぐにしすぎない。
呼吸を意識する。
オブリーククランチは、シットアップでは集中的に鍛えることが難しい腹斜筋を鍛えることができるためです。
オブリーククランチは、腹斜筋を鍛えるためのエクササイズであり、シットアップと比較するとエクササイズ強度はそこまで高くありません。実際に実施する場合には、シットアップを先に実施し、オブリーククランチをその後に実施することで腹直筋全体をバランス良く鍛えることを期待できます。
オブリーククランチは、12〜15回を3セット実施します。 オブリーククランチは、腹斜筋を鍛えるための非常に基本的なエクササイズですが、フォームが非常に重要な種目です。このため、オブリーククランチ自体の負荷を考えると回数は少ないですが、一般的なエクササイズでの推奨回数である12〜15回を実施し、フォームをしっかりと意識することが重要です。
1回ずつ頭を床につけない。
腹斜筋の収縮、伸展を意識する。
頭を上げるときはしっかりと息を吐き、戻すときに息を吸う。
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