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冷凍した里芋がまずい...正しい冷凍&解凍方法を解説

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冷凍した里芋がまずい...正しい冷凍&解凍方法を解説

冷凍した里芋が美味しくないと感じたことがある方は多いのではないでしょうか。本記事では冷凍した里芋が美味しくない理由や、まずくなりにくい冷凍のコツなどを解説します。

冷凍した里芋が美味しくない理由

低温障害

里芋は元々暖かい場所で育つ野菜であるため、低温に耐えうる能力が備わっていません。寒さに弱く5℃以下の環境での保存が向かないという特徴があり、特に生の状態のまま冷凍しておくなど低温の環境に長期間置かれていると、低温障害が起こり味や食感が悪くなります。

また、低温障害が起こると、アントシアニンが多く生成されます。アントシアニン(アントシアン)は、ポリフェノールの一種です。ポリフェノールとは、主に植物の葉や花、果実などに含まれている渋みや苦味の成分となる化合物の総称で、構造の違いによって様々な種類があります。アントシアニンは紫色の色素で、酸化すると赤→茶色→黒と変色する性質があり、低温障害によってアントシアニンが増えることによって紫色や赤色に変色してしまいます。ポリフェノールには抗酸化作用があると言われていて、人体に害がある成分ではありませんが、料理の見た目が悪くなってしまいます。

食感が悪くなる

里芋などの根菜には多くの繊維が含まれています。そのため生の状態ではしっかりとした固さがありますが、冷凍をすると組織が壊れたり、繊維に含まれている水分が氷となって解凍する際に水分となって抜けてしまうためぶよぶよとした食感になってしまいます。

この食感の悪さも冷凍した里芋が美味しくないと感じる原因の一つです。

冷凍することで食感が悪くなってしまうのは里芋以外の野菜にも起こることで、なかなか防ぐのは難しいのですが、組織が壊れることで味が染み込みやすくなるメリットもあります。

質の悪い里芋だった

冷凍する前から元々質の悪い里芋だった可能性もあります。

例えば栽培中、成長期に水分不足になってしまったり低温が続くといったことが原因で生育不良になってしまった里芋や収穫時期を過ぎてしまい里芋の養分が根に戻る「転流」が起こった里芋は栄養障害が起こり、食感や味が悪くなっていたりすることがあります。「ガリ芋」や「水晶芋」とも言われる現象で、見た目からはわかりにくいため生産者側も気が付かずに店頭に並んでいることも多いです。

元々質の悪い里芋であった場合、冷凍することによる食感や風味の変化などでより美味しくないと感じてしまいやすいです。

臭くなる

里芋に限りませんが、食品を冷凍すると冷凍特有の臭いをおびることがあり、臭いが原因で美味しくないと感じることも多くあります。

食品を冷凍したときに感じる特有の臭いの原因は、冷凍庫内についてしまっているその他の食材の臭いや冷凍庫内の雑菌の臭いなどです。食材が凍るときに、臭い成分も一緒に氷となって食材につくため食べるときに臭いが気になってしまうことがあります。

冷凍庫はこまめに拭き掃除しておくなど、清潔な状態にしておくことも大切です。

栄養はあまり変化しない

冷凍することで食感や味が変わってしまうことがあるなら、栄養価も下がってしまうのではないかと思う方も多いと思いますが、栄養価が大きく下がってしまうことはありません。

基本的に野菜などの食材の鮮度が落ち、栄養価が落ちたり腐敗してしまうのは、空気に触れて酸化が進んだり、乾燥したりといった外的要因や食品に含まれる酵素や微生物の働きなどの内的要因によるものです。

冷凍庫などの低温の環境では、腐敗や食中毒の原因になるほとんどの菌類や微生物、酵素の分解作用が働くことはありませんので、外的要因である乾燥や酸化を防げれば鮮度が落ちたり栄養価が落ちてしまうことを防ぐことができます。常温や冷蔵で保存するよりも冷凍保存する方が長く保存することができるのは、このためです。

ただし、茹でてから保存する場合は茹でることで水溶性の栄養素が流出してしまうので、全く栄養素の変化がないというわけではありません。

まずくなりにくい里芋の冷凍のコツ

常温保存だと1週間程しか日持ちしませんが、冷凍だと1ヶ月程保存しておくことができるので、まとめ買いしてすぐに使い切れない場合などは、冷凍保存しておくと良いでしょう。ここからはまずくなりにくい里芋の冷凍のコツを紹介します。

ブランチングする

里芋を茹でる

里芋は皮ごと生のまま冷凍保存すると皮が剥きやすくなるというメリットがありますが、冷凍障害が起きて味や食感が悪くなってしまうことがあるので、食感や味を悪くしたり変色を防ぐために一度茹でて冷凍するのがおすすめです。

冷凍する前に茹でたり蒸気を当てたりと必要最低限の加熱処理を行うことを「ブランチング」と言います。里芋以外の野菜でも使える方法で、加熱して野菜の持っている酵素を不活性化させることにより変色を防いだり、組織を軟化させることにより冷凍によって組織が破壊され食感を損なわれるのを防ぐことができます。また、食品表面に付着している微生物の殺菌にもなります。

冷凍保存するときは、里芋をかために茹でて(基本の茹で方は下記参照)粗熱を取ってから冷凍します。

出典:冷凍食品Q&A冷凍食品の基礎知識(日本冷凍食品協会)

里芋の茹で方【基本】

1.里芋を水でよく洗い土をしっかり落とす

2.里芋の皮を厚めに剥く

3.ボウルに里芋と塩(適量)を入れ揉み込み、ぬめりを取る

4.大きい里芋は一口大にカットする

5.沸騰した湯(お米のとぎ汁ならさらに◎)で竹串がさっと通るまで茹でる

6.火が通ったら水で洗い流してぬめりを取る

ポリ袋の空気をしっかり抜いて密閉する

里芋を固めに茹でて粗熱がとれたら、ポリ袋に入れます。

里芋同士が重なってしまうと、里芋の組織が傷つき鮮度が落ちてしまったり食感が悪くなってしまう原因になるので、できるだけ重ならないように入れるようにしましょう。

密閉できるポリ袋に入れたら、空気をしっかり抜くことも大切です。空気をしっかりと抜いておくことで、里芋が空気に触れて酸化し、変色してしまったり味が悪くなってしまうのを防ぐことができます。また、冷蔵庫内のニオイが移ってしまうのを防げます。

金属トレイの下に置く

里芋に限らず、野菜を冷凍する場合は急速冷凍をしたほうが旨みをぎゅっと閉じ込めることができるため、味が悪くなってしまうのを防ぐことができます。冷蔵庫に急速冷凍機能がない場合は、金属トレイの上にのせて冷凍庫へ。

金属トレイは温度の伝達が早いため、急速冷凍と同じ効果を得ることができます。

冷凍庫の扉付近は開け閉めによる温度変化の影響を受けやすいため、できるだけ温度変化の少ない扉付近を避けた場所に置いた方が早く冷凍することができます。

遅くても1ヶ月以内に食べきる

冷凍すれば永遠に保存できてしまうような気がしてしまいますが、冷凍した里芋は、どんなに長く保存しても1ヶ月を目安に食べきるようにしましょう。

冷凍しても長く保存していると鮮度は落ちてしまうので、味や食感はどんどん悪くなってしまいます。冷凍しているからといっていつまでも入れておかず、なるべく早く食べきることが大切です。

冷凍した里芋の解凍方法

冷凍した里芋をまずくしないためには、解凍方法も重要です。

里芋を皮ごと冷凍した場合は、レンジで加熱して解凍することでツルンと簡単に皮を剥くことができますが、皮を剥いてブランチングしてから冷凍した里芋は、レンジで一気に加熱することで水分が出て食感や風味が悪くなってしまうことが多いのでレンジ以外の解凍方法をおすすめします。

自然解凍

冷凍した里芋を解凍してから使いたい場合は冷蔵庫に移して自然解凍がおすすめです。ゆっくりと解凍することで水分が沢山出てきてしまうことを防ぐことができます。

解凍時間は、里芋の大きさや厚みによって異なりますが、一般的には数時間から一晩程度かかります。この方法は、里芋の食感を損なわずに解凍できますが、時間がかかるため前もって準備しておく必要があります。

流水解凍

冷凍した里芋は流水解凍することもできます。

流水解凍とは冷凍した食材を水をためたボウルに入れて、水を流しながら解凍していく方法です。里芋を密閉袋に入れて、常温の水につけます。水を入れ替えながら、里芋が完全に解凍されるまで待ちます。

流水解凍は、自然解凍と比較的早く解凍できるのですぐに使いたい場合におすすめです。しかし、ゆっくり時間をかけて解凍する自然解凍よりも水っぽくなってしまったり食感が変わることがあります。

解凍せず直接料理に使う

冷凍した里芋は、凍ったまま調理に使用することができます。

もちろん解凍してから使うこともできますが、全解凍してしまうと里芋の水分が流れ出てしまい食感や味が悪くなってしまいますし、水分と一緒にビタミンCやカリウムなどの水溶性の栄養も流出してしまいます。

そのため、冷凍した里芋は解凍せずに直接料理に使うのが栄養価的にもおすすめです。

それでは、次に冷凍した里芋のおすすめの活用法を紹介します。

冷凍した里芋の活用法

煮物

冷凍した里芋は解凍せずにそのまま煮物にするのがおすすめです。冷凍することで組織が壊れているため、火も通りやすい状態ですし、味も染み込みやすくなっています。煮れば柔らかくなるので食感の悪さも気になりませんし、しっかりとした濃いめの味付けにすれば味の悪さもカバーすることができます。

味噌汁・スープ

味噌汁やスープにすれば、食感の悪さをカバーすることができます。また、解凍されたときに流出してしまう水溶性の栄養素も、味噌汁やスープであれば無駄にすることなく摂取することができるので、おすすめです。

コロッケ・サラダ

食感の悪さがどうしても気になってしまう方は、一度解凍してマッシュやペーストにして使うと良いでしょう。マッシュやペーストにすれば食感の悪さが気にならなくなります。マッシュやペーストにした里芋は、コロッケにしたりグラタンにすることができます。

マッシュにしてから冷凍しておくこともできるので、茹でた後予め潰してマッシュにしてから保存袋に入れて冷凍しておいても良いでしょう。

美味しい里芋の選び方

そもそも里芋の旬は?

里芋には初夏から秋が旬となる品種と冬から初春が旬となる品種があります。品種によって旬がずれ、一般的には秋から冬が里芋の旬の時期とされています。

一般的に言われる「旬」とは、野菜や果実が全国的に露地栽培でよく収穫され、味が美味しい時期を指します。露地栽培とは、ハウスなどの施設を使わず屋外の畑で栽培する方法のことです。

一般的にスーパーなどで販売されている里芋の品種は、どの品種も11月から収穫量が多くなり、4月頃まで貯蔵されるため秋から春にかけてが最も里芋を安価で購入できる時期になります。

ふっくらと丸みをおびている

里芋の形は品種によって球形や楕円形など様々ですが、どの品種においてもふっくらとして丸みをおびているものを選ぶのが良いです。

ふっくらと丸みをおびているのは、生育環境が良かった印です。生育環境が悪いと形がいびつになるだけではなく、中身が変色している可能性も高いです。

押すと固くずっしりと重い

生の状態の里芋はじゃがいものように固いです。柔らかくなってしまっているものは、傷んでいる可能性が高いので、触ってみて柔らかいものは避けた方が良いです。

また、手に持ったときにずっしりとした重みがあるものを選ぶことも大切です。軽いものは傷んでいて中がふかふかになってしまっていることがあります。

表面に泥が付いていて湿っている

里芋は乾燥に弱い野菜です。そのため、あえて洗わずに泥付きのまま出荷・販売をして里芋を乾燥から守り鮮度を保っていることが多いです。洗浄しきれいな状態で販売されていることもありますが、泥付きの里芋の方が鮮度が高いので、泥付きで湿り気のある里芋を購入するのが良いです。泥付きのままであれば、購入後も鮮度を保った状態で保存することができます。

表面が乾燥していたり、ひびが入っているものは鮮度が落ちていますので選ばないようにしましょう。

はっきりとしたしま模様が均等に入っている

里芋の皮は、よく見るとしま様が入っているのがわかります。このしま模様が均等に入っている里芋は生育環境がよく、すくすくと順調に育った証拠です。泥付きのまま販売されている里芋は、しま模様が見えにくいこともありますが、しま模様をチェックして購入することも大切です。