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ごぼうを酢水にさらす理由とは?茹でる時も必要?正しいさらし方は?

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ごぼうを酢水にさらす理由とは?茹でる時も必要?正しいさらし方は?

ごぼうは調理をするときに酢水にさらすことが多いですが、なぜ酢水にさらすのかご存知でしょうか。本記事ではごぼうを酢水にさらす理由や酢水にさらす手順や時間などを解説します。

ごぼうを酢水にさらす理由

変色を防ぐ

ごぼうを酢水につける理由は、酢水につけておくことで変色を防ぐことができるためです。

ごぼうは切り口が赤色や茶色、黒色に変色してしまうことがあります。これは、ごぼうに含まれているポリフェノールが酸化してしまうことが原因です。

ポリフェノールは植物の渋みや苦味の成分となる化合物の総称で、構造によってさまざまな種類があります。ごぼうにはタンニンやコーヒー酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸などのポリフェノールが含まれており、ごぼうに含まれているポリフェノールオキシターゼなどの酵素の働きや空気中の酸素に触れることによって酸化し、変色します。

ごぼうの場合は、液体が酸性・中性・アルカリ性のどこに分類されるかを測る尺度pHで表すと、pH5のときが最も変色することがわかっています。ちなみに水道水のpHは7です。pHの数値が低くなると酸性、反対に高くなるとアルカリ性になります。

そのため酢水につけておけば、酸素にふれる時間を少なくすることができる他、pHを下げることができるので酸化による変色を防ぐことができます。また、ごぼうに含まれているフラボノイド色素は酸性になると無色になる性質があります。そのため、水に酢を入れて酸度を下げることでごぼうが白くなり、料理の見た目をよくすることができます。

食感を良くする

変色を防ぐ目的であれば水につけても十分な効果が得られますが、酢水につけておくことで食感が柔らかくならずシャキシャキとした食感を保つことができます。

野菜の細胞壁は、セルロースからできた繊維が重なっており、その間をペクチンが塗り固めて固い壁をつくっています。野菜を加熱すると軟らかくなるのは、固い壁を作っているペクチンが熱によって分解されるためです。ペクチンはpH5以上およびpH3以下で急速に軟化し、pHが下がると分解されにくくなることがわかっています。私達が普段使っている水道水のpHは7なので、酢を入れてpHを下げることでペクチンの分解を抑え食感を保つことができます。

シャキシャキとした食感を楽しみたい場合は、酢水にさらすのがおすすめです。

苦味や渋みを抑える

ごぼうを酢水につけることで苦味や渋みを抑えることもできます。

ごぼうに含まれているポリフェノールは苦味や渋みを感じさせ料理の味を落とす「アク(灰汁)」の一つです。ポリフェノールは水溶性であるため酢水につけることで、落とすことができます。

しかし、ポリフェノールは体に害のある成分ではないので、苦味や渋みがそこまで気にならないようであれば酢水につける必要はありません。ごぼうは変色を防ぐ目的で酢水につけることが多いです。

そもそも酢水とは

濃度は?

野菜を酢水にさらすときの酢水の濃度は約3%が良いとされています。具体的な量は、水1カップに対して酢小さじ1です。水1リットルの場合は酢大さじ1が目安です。

匂いや味は野菜に映らない?

酢水にさらすことで、ごぼうに酢の匂いや味がうつるのでは?と心配になる方も多いと思いますが、基本的に濃度3%であれば、匂いや味がごぼうにうつることはありません。

匂いや味がうつってしまうのは、濃度が高すぎることが原因であると考えられますので、酢は入れすぎないようにしましょう。酢の匂いや味が気になる場合はさっと流水で洗い流すと良いです。

ごぼうを茹でる時に酢水は必要?

茹でる前に酢水にさらす必要ある?

ごぼうの苦味や渋みを抑える目的であれば、茹でることでアクとなるポリフェノールは流出するので酢水にさらす必要はありませんが、カットしてから茹でるまで時間をおくようであれば酢水につけておいたほうが酸化による変色を防ぐことができるので、料理の見た目が良くなります。

酢水から茹でる方がよい?

上述したように野菜の固い壁を作っているペクチンは熱によって分解されるため、茹でると柔らかくなりますが、酢を入れてpHを下げることでペクチンの分解が抑えられることがわかっています。酢水で茹でることで柔らかくなりすぎて食感が損なわれてしまうことを防ぐことができますが、煮物にする場合など柔らかく仕上げたいときには、酢水ではなく水で茹でるのが良いです。

出典:野菜の加熱とペクチン質(J-stage)

ごぼうを酢水にさらす手順

よく洗う

ごぼうをたわしを使ってよく洗う

私達が食べているのはごぼうの根の部分です。土の中に埋まっている状態で育ち、土から掘り出して収穫しています。近年は綺麗に洗いカットされた状態で販売されていることもありますが、鮮度を保つため泥が付いた状態で販売されていることも多くあります。

そのためごぼうを食べるときはごぼうの表面をしっかりと洗い泥汚れを落とすことが大切です。泥にはボツリヌス菌などの細菌がいることもありますし、食べたときに泥臭さを強く感じてしまいます。泥を落とすことは、泥に含まれる農薬を取り除くことにも繋がりますので綺麗に洗ってから食べましょう。

ごぼうを洗うときは、たわしを使うと良いです。ごぼうの表面には凹凸があり、凹凸部分に泥汚れが入り込んでいるため流水や手でこするだけではなかなか綺麗に落とせませんが、たわしを使うと綺麗に落とすことができます。たわしがない場合は、クシュクシュにしたアルミホイルでも◎

ごぼうは皮のすぐ下にうまみや香りがあるので、あまり強くこすって傷つけてしまわないように注意しましょう。

ちなみに泥汚れを落としてから販売されている洗いごぼうも、汚れが全くついていないというわけではないので、軽く流水で汚れを落としてから使うと良いです。

皮を剥く

ごぼうの皮を包丁の背を使ってこそぎ落とす

根菜の多くは皮を厚めにむくことが多いですが、ごぼうは皮ごと食べることができます。皮には風味となる成分や栄養素が含まれているので皮ごと調理をするのが理想的ではありますが、見た目を損ねたり食感が悪くなるなどのデメリットもあるため、皮をむいてから調理することが多いです。

ごぼうは「皮をむく」というよりは、こそげるのが良いです。「こそげる」とは「素材の表面の不要な部分をごく薄くこすり落とす」という意味で、例えば魚の鱗(うろこ)を落とすことをいいます。

ごぼうは包丁の背を使ってこそげることができます。まずごぼうを片手で持ったら、包丁の背で表面を薄く削るようにまわしながらこそげていきます。白い部分が少し見える程度にこそげたら、水でさっと洗い、水気を切って完了です。包丁の背ではなく刃を使っても良いです。刃を使うと力を入れることなくこそげることができますが、刃が深く入り厚くむきすぎてしまいやすいので注意しましょう。

クシュクシュにしたアルミホイルでこすったり、スプーンを使ってこそげることもできます。

カットする

ごぼうのささがき

ごぼうを洗い、皮をこそぎ落としたらささがきや、千切りなど食べやすい大きさにカットします。

酢水にさらす

カットしたごぼうを酢水につける

ごぼうをカットしたら、すぐに濃度3%の酢水につけます。つける時間は30秒程です。

つけすぎると固くなる・栄養素が流出する

上述したように、野菜の細胞壁の間にあるペクチンはpHが下がると分解されにくくなります。そのため、酢水に長時間つけてしまうと固くなってしまいます。

また、酢水につけることで水溶性のポリフェノールが溶けて変色を防止したり苦味やエグみを感じにくくなるメリットがありますが、ごぼうに含まれているポリフェノールは、抗酸化作用があります。また、ポリフェノール以外にもビタミンCやカリウムなど水溶性の栄養素が一緒に流出してしまいます。栄養素の流出を最小限に抑えるためにも、長い時間つけないようにすることが大切です。

ごぼうの下ごしらえで使う酢水の代用

ごぼうの下ごしらえに使えるのは酢水だけではありません。

れんこんは、水につけておくだけでも十分に変色を抑えたり苦味やえぐみを抑えることができます。上述したように酢水につけることでシャキシャキとした固めの食感になるので、煮物にするときなど柔らかい食感に仕上げたい場合には酢水ではなく水につけるのが良いです。

水につける場合も長時間つけすぎてしまうと水溶性の栄養素が流出してしまい大変勿体ないので、長時間つけすぎないようにしましょう。

野菜は塩をもみこんだり塩水につけることもあります。これは野菜の細胞内の水分が塩水に移動する「浸透圧」を利用したアク抜き方法です。野菜から水分を出すことで、アクとなるタンニンなどのポリフェノールをれんこんから出すことができるので、変色を抑えることもできます。

ごぼうの場合は、水でも十分アク抜きができるので塩を使ってアク抜きすることはあまりありません。

<塩もみすると水分が出るのはなぜ?>

異なる物質同士の細胞の成分濃度が違うと、成分が薄い方から濃い方へと水が移動して、両方の濃さを揃えようとする力が働く。これを「浸透圧」という。野菜を塩でもむと、野菜の水分に塩が溶け濃い塩水ができ野菜の外側の塩分濃度が高くなるため、濃度を調整しようと浸透圧が働き、野菜の内側から水分が出てくる。

重曹

野菜のアク抜きには重曹が用いられることもあります。重曹を水にいれてアルカリ性の水にすることで野菜の繊維をやわらかくして膨張させる性質があり、水溶性のアクが水に溶け出しやすくなるためです。

ごぼうの場合は上述したように水につけるだけでも十分にアク抜きをすることができますし、しっかりとアクを抜かなければいけないわけではないので、あまり使われません。