れんこんは調理をするときに酢水にさらすことが多いですが、なぜ酢水にさらすのかご存知でしょうか。本記事ではれんこんを酢水にさらす理由や酢水にさらす手順や時間などを解説します。
れんこんをさらすのは水でもよいですが、酢水の方が複数のよい効果が期待できます。
れんこんを酢水につける理由は、酢水につけておくことで変色を防ぐことができるためです。
れんこんは切り口が赤色や茶色、黒色に変色してしまうことがあります。これは、れんこんに含まれているポリフェノールが酸化してしまうことが原因です。
ポリフェノールは植物の渋みや苦味の成分となる化合物の総称で、構造によってさまざまな種類に分類されます。れんこんにはタンニンが多く含まれていることで知られています。
タンニンはポリフェノールの一種ではありますが、構造上の名称ではなく強い結合能力をもつ一部の物質に対する名称で、アントシアニンなどが含まれるフラバノール骨格をもつ「縮合型タンニン」と、カテキンなどの芳香化合物とグルコースなどの糖がエステル結合を形成した「加水分解型タンニン」があります。れんこんに含まれているタンニンは紫色の色素であるアントシアニンが含まれる縮合型タンニンであると考えられます。
アントシアニンはポリフェノールの一種で、元々紫色をしている成分です。例えばぶどうが紫色をしているのはアントシアニンが多く含まれているためです。アントシアニンは酸化すると赤→茶色→黒と変色する性質があります。れんこんには元々ポリフェノールオキシターゼなどの酵素が含まれており、酵素の働きや空気に含まれる酸素に触れることが原因で酸化し変色してしまいます。
酢水につけておけば、酸素にふれる時間を少なくすることができるため酸化による変色を防ぐことができます。また、ごぼうに含まれているフラボノイド色素は酸性になると無色になる性質があります。そのため、水に酢を入れて酸度を下げることでごぼうが白くなり、料理の見た目をよくすることができます。
変色を防ぐ目的であれば水につけても十分な効果が得られますが、酢水につけておくことで食感が柔らかくならずシャキシャキとした食感を保つことができます。
野菜の細胞壁は、セルロースからできた繊維が重なっており、その間をペクチンが塗り固めて固い壁を作っています。野菜を加熱すると軟らかくなるのは、固い壁を作っているペクチンが熱によって分解されるためです。ペクチンはpH5以上およびpH3以下で急速に軟化し、pHが下がると分解されにくくなることがわかっています。私達が普段使っている水道水のpHは7なので、酢を入れてpHを下げることでペクチンの分解を抑え食感を保つことができます。
サラダにするときなどシャキシャキとした食感を楽しみたい場合は、酢水にさらすのがおすすめです。
れんこんを酢水につけることで苦味や渋みを抑えることもできます。
れんこんに含まれているポリフェノールは苦味や渋みを感じさせ料理の味を落とす「アク(灰汁)」の一つです。ポリフェノールは水溶性であるため酢水につけることで、落とすことができます。
しかし、ポリフェノールは体に害のある成分ではないので、苦味や渋みがそこまで気にならないようであれば酢水につける必要はありません。
苦味や渋みを抑える目的ならば酢水と水で大差ありません。
野菜を酢水にさらすときの酢水の濃度は約3%が良いとされています。具体的な量は、水1カップに対して酢小さじ1です。水1リットルの場合は酢大さじ1が目安です。
酢水にさらすことで、れんこんに酢の匂いや味がうつるのでは?と心配になる方も多いと思いますが、基本的に濃度3%であれば、匂いや味がれんこんにうつることはありません。
匂いや味がうつってしまうのは、濃度が高すぎることが原因であると考えられますので、酢は入れすぎないようにしましょう。酢の匂いや味が気になる場合はさっと流水で洗い流すと良いです。
私達が普段「れんこん」として食べているのは、蓮(はす)の地下茎が肥大した部分です。土に埋まった状態で育っているものを、掘り起こして出荷しているため泥汚れや土汚れがついていることが多いです。泥や土にはボツリヌス菌が分布していることもありますので、特に皮ごと調理をする場合はしっかりと洗って汚れを落としましょう。
れんこんの表面についている泥汚れや土汚れはスポンジなどでこすって落とします。くぼんでいる部分は丸めたアルミホイルを使ってこそげとるようにすると良いです。
れんこんは穴が空いているのが特徴ですが、穴の中にも泥や土が入り込んでいることもありますので穴の中もしっかりと綺麗に洗ってください。穴の中の汚れは割り箸などを入れて回すと落ちます。
根菜は皮の部分に繊維が多く含まれていて、固かったり火が通りにくかったりするので皮を剥いて食べるものも多いですが、れんこんの場合は皮が薄いので剥かなくても食べることができます。皮ごと食べることで、れんこんの風味を感じることができますし、皮の歯ごたえがアクセントになります。また、実の部分よりも皮にタンニンなどのポリフェノールが多く含まれているため、栄養の面でも皮ごと食べるのが理想的です。
しかし、生食する場合は泥汚れをしっかり落とすという点で皮は剥いたほうが良いです。皮ごと調理をすると口当たりが悪いと感じたり、見た目が悪くなるといったデメリットもあります。サラダにする場合などは皮は剥いた方が良いでしょう。
れんこんの皮は、にんじんの皮などを剥くのと同じようにピーラーを使うと簡単に薄く均一に剥くことができます。
れんこんを綺麗に洗ったら(皮を剥く場合は皮を剥いたら)、好みに合わせてカットします。
れんこんは繊維に沿って切ると歯ごたえが残ります。そのため生食する場合は、繊維に沿って切ったほうがシャキシャキとした食感を楽しむことができます。反対に少しでも柔らかく食べやすくしたい場合は、繊維を断ち切るようにカットすると良いです。
れんこんをカットしたら、すぐに濃度3%の酢水につけます。つける時間は5分〜10分です。ちなみに一晩つけるのは長すぎです。カリウムなど水溶性の栄養素が流れ出てしまうので注意しましょう。
上述したように、野菜の細胞壁の間にあるペクチンはpHが下がると分解されにくくなります。そのため、酢水に長時間浸けてしまうと固くなってしまいます。15分以上は浸けないようにしましょう。
また、酢水に浸けることで水溶性のポリフェノールが溶けて変色を防止したり苦味やエグみを感じにくくなるメリットがありますが、れんこんに多く含まれているポリフェノールの一種タンニンは、タンニンには消炎作用があり、胃炎や喉の傷みなどに効果的なほか、血管の老化を防ぐなどの抗酸化作用に優れている成分です。また、ポリフェノール以外にもビタミンCやカリウムなど水溶性の栄養素が一緒に流出してしまいます。栄養素の流出を最小限に抑えるためにも、長い時間浸けないようにすることが大切です。
れんこんの下ごしらえに使えるのは酢水だけではありません。
れんこんは、水に浸けておくだけでも十分に変色を抑えたり苦味やえぐみを抑えることができます。上述したように酢水に浸けることでシャキシャキとした固めの食感になるので、煮物にするときなど柔らかくホクホクとした食感に仕上げたい場合には酢水ではなく水に浸けるのが良いです。
水に浸ける場合も目安は10分〜20分です。長時間浸けすぎてしまうと水溶性の栄養素が流出してしまい大変勿体ないので、長時間浸けすぎないようにしましょう。
野菜は塩を揉みこんだり塩水に浸けることもあります。これは野菜の細胞内の水分が塩水に移動する「浸透圧」を利用したアク抜き方法です。野菜から水分を出すことで、アクとなるタンニンなどのポリフェノールをれんこんから出すことができるので、変色を抑えることもできます。
れんこんの場合は、水でも十分アク抜きができるので塩を使ってアク抜きすることはあまりありません。
<塩もみすると水分が出るのはなぜ?>
異なる物質同士の細胞の成分濃度が違うと、成分が薄い方から濃い方へと水が移動して、両方の濃さを揃えようとする力が働く。これを「浸透圧」という。野菜を塩でもむと、野菜の水分に塩が溶け濃い塩水ができ野菜の外側の塩分濃度が高くなるため、濃度を調整しようと浸透圧が働き、野菜の内側から水分が出てくる。
野菜のアク抜きには重曹が用いられることもあります。重曹を水に入れてアルカリ性の水にすることで野菜の繊維を柔らかくして膨張させる性質があり、水溶性のアクが水に溶け出しやすくなるためです。
れんこんの場合は上述したように水に浸けるだけでも十分にアク抜きをすることができますし、しっかりとアクを抜かなければいけないわけではないので、あまり使われません。
レンコンを厚めに切って調理する場合は、下茹でをしておくと良いです。このときに酢水で茹でるとレンコンの変色を防ぎ白く仕上げることができます。
下茹でする場合は酢水で3分ほど茹でます。長い時間茹ですぎてしまうと食感が損なわれてしまいますし、水溶性の栄養素も流出してしまうので、茹ですぎないように注意しましょう。
れんこんを保存するときは、輪切りや薄切りなど、料理に合わせてカットしてから保存することも可能です。その場合は乾燥しやすくまた変色も起きやすいので、酢水もしくは塩水に浸けて保存します。
カットしたれんこんを密閉容器に入れ、浸るくらいの水を入れて酢を少々(または塩をふたつまみ)入れて蓋をし冷蔵庫で保存します。2日に1度水を取り替えるようにしましょう。
ただしこの方法では、れんこんのビタミンCやデンプンが水中に流れ出てしまうので、栄養素的には△。傷みが早いので1〜2日を目安に食べきるようにしましょう。
れんこんはカットしてから冷凍すれば調理にすぐに使うことができて便利です。
れんこんを薄切りや厚切り、半月切り、乱切りなどお好みの大きさにカットします。用途がまだ決まっていない場合は縦半分に切るのもおすすめです。カットしたれんこんを酢水に5分ほどつけ変色を防ぎます。キッチンペーパーで水けをしっかり取り、冷凍用保存袋になるべく平らになるように入れます。小分けにしてラップに包んでから冷凍用保存に入れれば、使いたい量だけさっと取り出すことができてより便利です。
カットしてから冷凍したれんこんは、凍ったまま料理に使用してOKです。サラダや煮物、炒め物、汁物など幅広く使用することができます。
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