ほうれん草の苦味やエグみの原因であるシュウ酸は、水溶性であるため茹でることで取り除くことができますが、同じく水溶性であるビタミンCなどの栄養素も流出してしまうというデメリットがあります。本記事では栄養素を逃さない茹で方を紹介します。
ほうれん草にはシュウ酸と呼ばれる成分が含まれているため、食べるときにはアク抜きが必須です。シュウ酸は栄養素というよりも老廃物で、えぐみや苦味を感じさせ料理の味を損ねるいわゆるアク(灰汁)となる成分です。たけのこや里芋などにも含まれていることで知られています。
シュウ酸のデメリットは苦味やエグミを感じさせて料理の味を損ねるだけではありません。シュウ酸は大量に摂取することで結石を作る原因になるといわれています。
シュウ酸は水溶性であるため、取り除くことができます。しかし、シュウ酸をしっかり取り除くということはほうれん草に含まれている水溶性の栄養素の流出に繋がります。ほうれん草に含まれている水溶性の栄養素にはビタミンCやビタミンB1、B2、カリウムなどがあります。これらの栄養素の流出を抑えるということはシュウ酸も残りやすいというデメリットがあります。
ほうれん草を茹でる方法には、鍋を使って茹でるだけではなく、フライパンを使って蒸し茹でにしたりレンジを使って茹でる方法があります。
鍋やフライパンを使って茹でる場合はアク抜きをすることができますが、レンジで茹でる場合は別でアク抜きをする必要があります。なぜなら、シュウ酸は加熱するだけでは落とすことができないためです。
栄養素の流出を最小限に抑えるためには、ほうれん草を茹でたり水につけてアク抜きをする時間を短くすることが大切です。茹でたり水につける時間が長ければ長いほど、水溶性の栄養素もどんどん流れ出ていってしまいます。
ちなみに、茹で時間によるビタミンCの残存率は、生鮮ほうれん草を100%とすると、1分で74%、2分で61%、3分で48%となります。
ほうれん草を茹でるときに、丸ごと茹でるかカットしてから茹でるか迷ったことがある方は多いのではないでしょうか。ほうれん草は、カットせずに丸ごと茹でたほうが栄養素の流出を抑えることができます。
カットしてから茹でると、カットした断面から栄養素がどんどん流出してしまいます。レンジで加熱する場合も丸ごとラップに包んで加熱し、さらにアク抜きをする際もそのまま水につけたほうが栄養素が流出しにくいです。
ほうれん草を茹でるときには、先にしっかりと洗っておく必要があります。
まず、ほうれん草の根に十字の切り込みを入れます。
ほうれん草は根の部分に最も砂や土がついています。そのため、根に十字の切り込みを入れて洗うことで根についている汚れを綺麗に落とすことができます。また、根は葉と比べて火が通りにくいですが、切込みを入れておくことで火の通りが早くなるメリットもあります。
ひげ根がついている場合は、切り落としておきましょう。
根に切り込みを入れたら、ボウルに水をためてほうれん草を洗っていきます。
根元の汚れは落としにくいため、水に浸けながら根元を開いて間に入り込んでいる土や砂を綺麗に落としましょう。根元の汚れが落とせたら、茎と葉を流水でふり洗いして汚れを落とします。
洗った後に輪ゴムで根元を縛ってまとめておくと、茹でるときに扱いやすくなります。また茹でた後にカットする際も切りやすいです。
ほうれん草はシュウ酸というアクが多く含まれているため、下茹でが必須の野菜です。しかし、茹ですぎてしまうと水溶性の栄養素まで流れて出てしまうことに。
そこで、まずおすすめなのがカットせずに茹でる方法です。そうすることで切り口から栄養素が流失するのを防ぎます。カットする手間も省けて一石二鳥です。
本記事では鍋を使っていますが、深めのフライパンで茹でても問題ありません。
ほうれん草の汚れを落としたら、鍋にたっぷりの湯を沸かして塩を加えます。塩の量の目安はお湯1リットルにつき小さじ1です。
じゃがいもなどの固い野菜を下茹でするときは水から茹でますが、ほうれん草などの葉物野菜は火の通りが早いため沸騰したお湯から茹でて加熱時間を短くすることで、栄養素の流出を最小限に抑えることができるほか、歯ごたえを残すことができます。
塩を入れる理由は、変色を防ぐためです。ほうれん草の鮮やかな緑色は「クロロフィル」と呼ばれる色素によるものです。クロロフィルは熱に弱い成分であるため、茹でることで変色してしまうことがありますが、塩を加えることで色素が安定するため変色を防ぐことができます。
お湯が沸いたら、数株手にとり葉の部分をもって茎の部分を鍋にいれそのまま30秒ほど茹でます。いっぺんにたくさんの量を入れてしまうとお湯の温度が下がり、再沸騰するまでに時間がかかるのでムラができてしまうことがあります。あまりいっぺんにたくさんの量を茹ですぎないようにしましょう。
ほうれん草は葉と茎で火の通りが異なるため、はじめに茎を茹でておくことで火の通りを均一にすることができます。
茎を30秒ほど茹でたら、全体をお湯に入れて葉にも火を通していきます。茹で時間の目安は20秒〜30秒ほどで、葉が鮮やかな緑色になったらOKです。上述したように、長く茹ですぎてしまうとビタミン類などの水溶性の栄養素も流出してしまうため注意しましょう。
ほうれん草は茹でているときに浮いてきてしまうので、菜箸やトングなどで抑えて湯に沈めながら茹でると加熱ムラを防ぐことができます。
ほうれん草を茹でたら、ザルなどにあげてお湯を捨てましょう。お湯を捨てたらボウルに入れた冷水にさらします。冷水にさらすことでさらにしっかりとシュウ酸を落とすことができますし、変色を防ぎきれいな色を保つことができます。
冷水にさらしたら、ほうれん草の根元を上にしても持ち、上から下へ握る位置をずらしながら水けを絞ります。水けをしぼらないと料理が水っぽくなってしまいます。
食べやすい大きさ(4cm〜5cm)に切ってからさらに水けを絞ると、調味料が馴染みやすくなります。
栄養を守る”茹で方”には電子レンジを使う方法も。
レンジで加熱するだけだとシュウ酸を取り除くことができないので、加熱後に水にさらすのがポイントです。
茹でるのと比べるとシュウ酸が取り除くづらいので、心配な方はレンジ加熱はせず、熱湯で茹でるようにしましょう。
レンジを使って茹でる場合は、ほうれん草を綺麗に洗ったら、根元を揃えて丸ごとラップに包んでレンジに入れ加熱します。加熱時間はレンジのワット数にもよりますが600Wのレンジの場合、3分程です。
ラップに包む量は200gほどに抑えると良いです。あまり量が多いと加熱ムラができてしまうので注意しましょう。
ほうれん草を加熱したら菜箸やトングを使って取り出し、ラップに包んだままの状態で冷水にさらします。ある程度粗熱がとれたら、ラップを外してさらに冷水にさらします。
冷水にさらすことで、ある程度シュウ酸を落とすことができます。長い時間水につけてしまうと水溶性の栄養素も流出してしまうので注意してください。
シュウ酸は水溶性なので水につけるだけでもある程度シュウ酸を取り除くことができます。近年販売されているほうれん草は、アクが弱いものも多いので水につけるだけでも苦味やエグみを感じにくくなります。炒めものにするときなどほうれん草のシャキシャキとした食感を残したい場合は、茹でてアク抜きをするよりも水にさらしてアク抜きをするのがおすすめです。
水につけてアク抜きする場合は、一本ずつバラバラにして洗うと良いです。ほうれん草をバラバラにして洗ったらボウルにほうれん草の下の方を10分程つけます。水につける時間が長いと水溶性の栄養素も流出してしまいやすいので長時間つけすぎないようにしましょう。
水につけてアク抜きする場合は、茹でるのと比較してしっかりと取り除けるというわけではありません。しっかりとアク抜きをした方は5センチ程度の幅でカットしてから水につけると良いです。カットすることで水の触れる面積が広がるためアクが抜けやすくなります。また、切り口から水分を吸収することによりシャキシャキとした食感になるというメリットもあります。しかし、水溶性の成分も流出しやすいというデメリットがあります。
ほうれん草に含まれているβ-カロテン(ビタミンA)は脂溶性なので、油と一緒に摂ることで吸収率を高めることができます。ほうれん草にはβ-カロテン以外にも、ビタミンEやKも含まれており、これらも脂溶性です。さらに、油はほうれん草に豊富に含まれるカルシウムの吸収率もアップさせます。
また、炒めものは茹でるのとは異なり短時間で加熱するため熱に弱い栄養素の損失を最小限に抑えることができ、炒めることでカサも少なくなるので、たくさん食べられるメリットもあります。
炒めるときにおすすめなのが、オリーブオイルです。
オリーブオイルは、オリーブの果実から抽出した植物油の一種です。オリーブオイルには悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを維持する働きがあるオレイン酸が豊富に含まれており、熱に強い性質があるため炒めものに使っても酸化しにくく健康効果を維持することができるといわれています。
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