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里芋・山芋・長芋の違いとは?分類や栄養、食べ方の違いを解説

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里芋・山芋・長芋の違いとは?分類や栄養、食べ方の違いを解説

里芋と山芋、長芋の違いを分かりやすく解説します。

里芋・山芋・長芋の違いまとめ

里芋はサトイモ科の植物です。里芋の「塊茎(かいけい)」(茎の地下部)と呼ばれるでんぷんなどを蓄積し、変形した茎の部分が可食部になります。一般的にスーパーなどで販売されている里芋は、丸みをおびていて表面が茶色く中身は白いです。じゃがいもやさつまいもなどのイモ類とは異なる、ぬめりがあるのが大きな特徴です。煮っころがしや煮物など、加熱調理をして食べます。

長芋はヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草で、肥大した担根体が可食部になります。長芋には様々な形がありますが、一般的に棒状の長細いものを指します。表面は肌色でひげ根が生えていて中身は白いです。長芋はねばりがあるのが特徴で、すりおろしてとろろにするなど生食することができます。

山芋は、ヤマノイモ科に属する芋類の総称です。長芋や大和芋、自然薯などはすべて山芋に分類されます。

里芋とは

原産地・品種

里芋は、サトイモ科の植物です。里芋の「塊茎(かいけい)」(茎の地下部)と呼ばれるでんぷんなどを蓄積し変形した茎の部分が可食部になります。

里芋の原産地は、インド東部からインドシナ半島と言われており、現地では「タロイモ」と呼ばれています。日本でも縄文時代から栽培されていたと言われていて、江戸時代まではじゃがいもやさつまいもよりも食べられていました。

株の中心に親いもができ、親いもから子いも、それに孫いも、さらにひこいもが生じる珍しい増え方をします。里芋の品種には、親いもを食べる「タケノコ芋」や子いもを食べる「土垂(どたれ)」や「石川早生(いしかわわせ)」、親いもと子いもどちらも食べる「えび芋」などがあります。

一般的にスーパーなどで販売されている里芋は、土垂や石川早生です。

特徴

里芋の大きさや形は品種によって異なりますが、一般的にスーパーなどで販売されている里芋は皮が茶色く中身は白いです。じゃがいもやさつまいもなどのイモ類とは異なる、ぬめりがあるのが大きな特徴です。

里芋の独特のぬめりは「ガラクタン」という成分によるものです。ぬめりの成分自体は体に悪いものではないですが、味が染み込みにくくなる他、煮汁が濁ったり吹きこぼれる原因となるため料理の出来を良くするために下処理をしてぬめりをとることが多いです。

また、里芋のぬめりは調理をするときに手が痒くなったり喉にイガイガとした不快感を与える原因にもなります。ぬめり自体が原因物質であるわけではありませんが、ぬめりにシュウ酸が加わることによって痒みを感じたり喉に不快感を与える原因となります。

シュウ酸とはいわゆる「アク」と呼ばれる成分で、栄養素というよりも老廃物です。シュウ酸はほうれん草やたけのこなどにも含まれています。ほうれん草などの場合、シュウ酸は水に溶けるカリウム塩やナトリウム塩の形で液胞という袋の中に閉じこめられていますが、植物によってはシュウ酸カルシウムの結晶となって液胞の中に含まれています。里芋にはシュウ酸カルシウムが針状結晶となっています。里芋の皮を剥くと手がかゆくなったり喉に不快感を与えるのはシュウ酸カルシウムの結晶が刺さって刺激するためであるといわれています。

里芋には初夏から秋が旬となる品種と冬から初春が旬となる品種があります。品種によって旬がずれ、一般的には秋から冬が里芋の旬の時期とされています。

一般的にスーパーなどで販売されている里芋の品種は、どの品種も11月から収穫量が多くなり、4月頃まで貯蔵されるため秋から春にかけてが最も里芋を安価で購入できる時期になります。

そもそも旬って?

一般的にいわれる「旬」とは、野菜や果実が全国的に露地栽培でよく収穫され、味が美味しい時期を指します。露地栽培とは、ハウスなどの施設を使わず屋外の畑で栽培する方法のことです。

栄養素・カロリー

里芋の可食部100gあたりに含まれる三大栄養素は下記の通りです。

  • エネルギー...53kcal

  • 水分...84.1g

  • たんぱく質...1.5g

  • 炭水化物...13.1g

  • 脂質...0.1g

  • 食物繊維...2.3g

糖質は10.8gです(炭水化物から食物繊維を引いた値)。

里芋にはカリウムも豊富に含まれています。カリウムはミネラルの一種で、ナトリウム(食塩)と協力し細胞の浸透圧を維持しています。体内に十分なカリウムがあると、余分な食塩を排出して血圧を正常に保ちます。しかし、カリウム不足や塩分の過剰摂取が続く、むくみなどの原因になります。そのほか、腎臓の老廃物の排出を助けたり、筋肉の収縮をスムーズにする働きがあると言われています。

出典:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(文部科学省)

食べ方

里芋は生食を避けるべき野菜であり、加熱料理をして食べるのが一般的です。煮物や煮っころがしにして食べるほか、蒸したりホイル焼きにして食べたり、マッシュやペーストにしてサラダやコロッケ、グラタンにすることもできます。

生食を避けるべき理由としては、上述したようにシュウ酸と呼ばれる苦味やえぐみを感じさせるアクがあることと、生のでんぷんは消化しにくいということがあげられます。

里芋などのイモ類にはでんぷんが大量に含まれています。でんぷんとは、植物が光合成によって実や根などに蓄積した炭水化物です。でんぷんは水に溶けない性質があり、水にさらすと水の中に沈みます。水に沈殿することから「殿粉(デンプン)」という名称がつきました。

水に溶けない生のでんぷんは人間にとって非常に消化しにくい状態であり、食べ過ぎるとお腹を壊してしまうことがあります。

でんぷんには水分を吸収する性質があり、水を加えて加熱すると50℃を過ぎたあたりから粘りがではじめ、70℃を超えると全体が軟らかくなります。これを「糊化(こか)」と言います。でんぷんは糊化するとようやく消化酵素で分解できるようになり消化することができます。そのためでんぷんを大量に含んでいる里芋は加熱をしてでんぷんを消化しやすい状態にしておく必要があります。

山芋とは

山芋はヤマノイモ科に属する芋類の総称であり、「山芋」という芋の品種はありません。

ヤマノイモ科に属するイモ類は600種以上存在すると言われており、一般的に私達が食べている長芋や大和芋、自然薯などはすべて「山芋」に分類されます。

長芋とは

原産地・品種

長芋は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草で、肥大した担根体が可食部になります。上述したとおり、長芋は山芋の一種です。

長芋の原産地は、中国南部の雲南地方と言われています。中国南部からしだいに北上し、北中国から東北中国・朝鮮半島に伝わり、さらに日本に渡来したものと考えられています。

長芋は、形状によって「ながいも群」、「いちょういも群」、「つくねいも群」に分けられており、一般的に棒状の長細い長芋群のものを指します。

品種は様々ありますが、スーパーなどではあまり品種名が記載されていることはありません。代表的な品種には「トロフィー」や「ずんぐり太郎」、いちょういもと長いもを交配した「ネバリスター(根張星)」などがあります。

特徴

長芋には様々な品種がありますが、どれも長さ50~80cm程度で直径は4~6cm程です。スーパーなどで一般的に販売されている長芋は表面は肌色でひげ根が生えており、中は白いです。

長芋には山芋特有の粘りがあるのが特徴ですが、水分量が多いため同じく山芋の一種である大和芋や自然薯と比較すると粘りは弱めです。

ねばりの元になっている成分は里芋のぬめり成分と同じく「ガラクタン」などです。また、長芋にも里芋と同じシュウ酸カルシウムが針状結晶となって含まれています。そのため、長芋も触ると痒みがでたり、喉にチクチクとした不快感を覚えることがあります。

長芋の旬は、11~12月と3~4月の2回です。

長芋には5月に植え付けて秋に収穫する秋堀り長芋と、春に収穫する春掘り長芋があり、各産地に低温貯蔵され年間を通して出荷されているため、一年を通して市場に出回ります。

11月〜12月に収穫された秋堀り長芋はみずみずしく、3月〜4月に収穫された春掘り長芋は冬を越しているため甘味が増しています。

栄養素・カロリー

長芋の可食部100gあたりに含まれる三大栄養素は下記の通りです。

  • エネルギー...64kcal

  • 水分...82.6g

  • たんぱく質...2.2g

  • 炭水化物...13.9g

  • 脂質...0.3g

  • 食物繊維...1.0g

糖質は12.9gです(炭水化物から食物繊維を引いた値)。

長芋にも里芋と同じくカリウムが豊富に含まれています。また、長芋には消化酵素のジアスターゼが含まれています。ジアスターゼはでんぷんを分解する酵素で、食べ物の消化をサポートし、さらに胸焼けや胃もたれを防ぐ効果があります。

食べ方

山芋の食べ方といえば、やはりすりおろして「とろろ」にする食べ方ですよね。長芋もとろろにすることができますが、上述したように水分量が多いため細切りにして醤油をかけて食べられることが多いです。また、生食だけではなく炒めものにしたり、スティック状にカットして揚げ物にするなど幅広い調理法で食べることができます。

里芋と異なる点は、やはり生食できるという点です。生食することで熱に弱い栄養成分などもしっかり摂取することができるというメリットがあります。

里芋と同じくイモ類であり、ねばりがあるのにも関わらず生で食べられることができるのは、でんぷんの構造が里芋などのイモ類と比較して弱いためであるといわれています。また、上述したように消化酵素であるジアスターゼが含まれており、でんぷんの一部が分解してくれるため生で食べても胃もたれしてしまうこともありません。

しかし、山芋にも里芋と同じくシュウ酸カルシウムが含まれているため痒みが出たりチクチクとした不快感を与えることがあります。シュウ酸カルシウムは皮付近に多く含まれているため、皮を厚めに剥いて食べるようにすると良いです。上述したようにシュウ酸カルシウムは熱に弱いため、口の周りに痒みが出て食べにくさを感じる方などは生食よりも加熱調理をして食べるのがおすすめです。

大和芋

大和芋(やまといも)も長芋と同じくヤマノイモ科に属する芋の一種で、原産地は中国南部の雲南地方と言われています。

長芋と大きく異る点は形です。長芋は細長い棒状ですが、大和芋は天候や気候、土壌の状態など周辺環境の影響を受けやすいため、棒状のものもあれば、でこぼこしたものなど形のものあります。関東地方ではイチョウの葉のような形をした大和芋が多く取れるため「いちょう芋」と呼ばれることもあります。

また、長芋よりも強いねっとりとした粘り気があり、すりおろして揚げ物やつくねなどのつなぎとして使われることも多いです。

自然薯

自然薯(じねんじょ)も、長芋と同じくヤマノイモ科に属する芋の一種です。山芋の中で唯一、原産国が日本の芋です。

自然薯は日本各地の山野に自生していて、「自然に生えている芋」という意味で「自然薯」と呼ばれるようになったといわれています。

自然薯には、大別して長芋のように細長く伸びていくタイプといちょう芋などのように塊になるタイプの2種類あります。いずれも長芋や大和芋と比較して値段が高価です。自然薯が高価な理由は、自然薯が育つ場所にあります。自然薯は山野のでこぼこした地表や斜面などの土奥に根を張って生育しています。そのため簡単に掘り起こすことができず、長芋や大和芋よりも高価になります。

自然薯は山芋の中でも圧倒的に強い粘りがあります。また皮ごと食べることができるという長芋や大和芋にはない特徴があり、皮ごと食べることで香りの良さも楽しむことができます。基本的にすりおろしてご飯にかけて食べれることが多く、細く切って醤油をかけて食べたり、天ぷらなどにして食べることもできます。